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“社会に対して何もできない“無力感を克服するために。学び方を1.0から3.0へバージョンアップしよう #学習するコミュニティに夢を見て

こんにちは、最近勝手にいろいろな考え方がかけあわさってきて、「学び3.0」という考え方にまとめれるんじゃないかと興奮しはじめている信岡良亮です。

今日はちょっと僕なりの学びの型をバージョン1.0、2.0、3.0として分けてみると、めちゃくちゃ学びのバージョンアップがしやすくなるんじゃないかという仮説にお付き合いください。

というのも意識高い系(笑) だった時代の僕は、学び方をあまり知らなくて、学び1.0というスタイルでしか勉強してこなかったので、いくら学んでも社会に対して何もできない無力感から抜け出せない状態になっていたと思うのです。

その無力感から脱するためには、OSをアップデートするかのように、学びのアップデートが必要だったんです。個人ではなく、チームとしての学びを通して社会接続できるのが、僕の目指す学び3.0の社会です。ではそのためにはどうしたらいいのでしょうか。みなさんと一緒に考えてみようと思います。

秩序とカオスの間を目指して

学びの型を考え始めたのは、「複雑系」の世界を知ったことが大きいです。僕たちが生きるこの世界には、秩序とカオスがあります。

みなさんは、ライフゲームを知っていますか? 1970年にイギリスの数学者John Horton Conway(ジョン・ホートン・コンウェイ)が考案した、生命の誕生、進化、淘汰などのプロセスを簡易的なモデルで再現したシミュレーションゲームのことです。(参照元: https://ja.wikipedia.org/wiki/ライフゲーム

一見、無秩序に動いているように見えるのですが、実はそれぞれの動きには秩序があります。固定化したり、同じ動きを繰り返したり、フラクタル(※)な構造になったり…。しかしその流れの中で、何の法則性もない動きがたまに訪れます。この、秩序とカオスを行き来する様は、まさに生命のようだなと感心します。
(※)図形の部分と全体が自己相似になっている図形を指す。

ライフゲーム図…第一学習社の「ライフゲーム」を参考

複雑系の研究をしているチームが、このライフゲームからこんな図をつくりました。

左下が、全部0か1(白か黒)の一様の世界。

左上が秩序だけの世界で、ずっと同じ状態で止まっているかまたは、同じ構造だけがとめどなく増殖していく世界。右下がカオスの世界で法則性をまったく見出せない世界。そして右上がエッジ・オブ・カオス(カオスの縁)と呼ばれる秩序とカオスが両方ある、まるで生命がバランスを取りながら新陳代謝を繰り返しているような世界で、この右上の場所にこそ、生命らしさがあるのではないかという仮説です。

この複雑系の世界を学びにあてはめてみましょう。

秩序型の学びは、正解がある問題を解くことで“どのように正解を再現するか”を学習します。大量生産・大量消費社会において、全体に向けての最適化を図るこの学びの型を「学び1.0」と呼んでいます。身近な学びの場では、学校教育がこれに当てはまると思います。

一方で個々人の興味関心に合わせた学びの型を「学び2.0」としてみました。これは一人ずつが違う学習スタイルをとるため、全体での学びの場を設計することが難しいですよね。学び1.0とは違い、目的や秩序だった行動はここではしません。

僕たちはいままで学び1.0のことを「お勉強」、学び2.0のことを「探求」と呼んできたのかなとざっくり区切ってみました。どちらの学びも大切なのですが、全体や個人にフォーカスするのではなく、それぞれの見たい未来が重なり合うとき、自分だけの学びから誰かと共創的に生きるための学びになっていく、それこそが一番面白い学びなのでは? という感覚があり、それを「学び3.0」と名付けてみました。

例えば文化祭でみんなと何か屋台をつくるときに、ひとりは売上を管理するために会計を学び、ひとりは盛り上げるために呼び込みの仕方を学び、ひとりは美味しいご飯をつくるために料理を学び…といったように、それぞれは別のことを学びつつ、チームとして一緒の未来に向かって協働学習することが、学び3.0の面白さなのだと思います。

ティール組織から見た学び3.0の可能性

組織のマネジメントにおいて注目を集めている「ティール組織」というものがあります。その中で語られる、RED/AMBER/ORANGE/GREEN/TEALの5段階に分けられた組織のあり方を参考にし、学び3.0の世界を言語化してみました。

ティール組織図…「『組織の進化形態』(『Reinventing Organaization』等より翻訳編集加工)Shiro Yoshihara and Kenshu Kamura」を参考

まず色別に見ると、REDは狼の群れのような、力での支配が主です。

AMBERは権力や階級といった身分を重んじる組織で、軍隊がこれに当てはまります。

ORANGEはひとつの正解を細部まで広げる機械のような組織。これらは全て上下関係があり、協調性を重視するため、個人の創造性は豊かになりにくいです。

対してGREENは成果よりも主体性や多様性を大切にする家族のような組織を指します。NPO法人がこれに近いとされています。従来のトップダウンではなく、ボトムアップ型組織のため、それぞれの創造性は尊重されますが、トップがいないためチームとしての統率性に欠けます。

最後のTEALはというと、ひとつの生命体のようにフラットな関係性のもと、権限や責任を任される組織のこと。進化しつづける組織とも呼ばれています。TEALにはある程度の秩序があり、メンバーは同じ方向を向いているけれど、それぞれの創造性は担保されているのが特徴です。

これを学びの型にはめると、こんな感じになります。

学び1.0はこのAMBER/ORANGEがベース。教える側と教えられる側が存在し、学び手がどうあるかは関係なく、学び提供側の意図によって学習を進めることが良しとされます。

学び2.0はGREEN型の学習スタイル。教える・教えられる側は存在しつつも関係性はフラットで、学び手それぞれが自主的に学びたいものを、提供側がチューターとしてサポートします。

僕らが目指したい学び3.0は、個人も組織も進化し続けるTEAL型の学びです。学び手の学習目的と、学びの場全体における進みたい方向性の一致から、全体のための学びと個人のための学びを行き来している状態を指します。

さとのば大学でみる、学び3.0化するためのカリキュラム設計

僕がつくる学びの場「さとのば大学」では、講師も受講生も運営も、全員が学び3.0化していくためにこんなカリキュラムを設計しました。

・講師によるインプット多めの講義=学び1.0
安心安全がないと学び手が自分の考えや気持ちを表明できないため、まずは学びの場に秩序を創る

・オープンスペース・テクノロジー、マイプロジェクト=学び2.0
学び手が主体的に好きな時間をつくったり、プロジェクトを行ったりする

・プロジェクトベースでのマッチング=学び3.0
さとのば大学で互いに学び合うコミュニティが形成されることで、マイプロジェクトをともに進める関係性が生まれる

オンライン講義には、全国各地から受講生が集まります。知らない人同士で、いきなりコミュニケーションを図ることは難しい。そこでまずは、今まで慣れ親しんできたであろう「学び1.0」のインプット型の講義を多めに設計することで、「さとのば大学」という学びの場に、秩序をつくりました。

その秩序の中に少しだけ、カオスを混ぜます。学び手が熱量をもって話せるテーマを持ち寄り、オープンな話し合いの場をつくる「オープン・スペース・テクノロジー」という技法や、個人的な問題意識をきっかけに自発的に始めたプロジェクトをつくる「マイプロジェクト」を活用し、受講生の主体的な環境を整えます。

学び1.0と2.0を行き来することで、学習するコミュニティが形成されていきます。さとのば大学6か月コースのゴールは、このカリキュラムを経てマイプロジェクトをともに進める関係性が生まれるところまで持って行くというもの。つまり、学び3.0化です。2020年7月現在、まだ6ヵ月コースは走っている最中。どうなるかは、まだ僕らにもわかりません。

プロジェクトと学び3.0

「さとのば大学」のカリキュラムでは先にも述べたように、マイプロジェクトを採用しています。なぜならマイプロジェクトをつくり、動かすことは、学び3.0化するために大切なことだからです。

ある組織では、作業効率の悪い上司を解雇にすることで、「頑張ってもどうせ解雇にされてしまう」と組織全体のモチベーションが下がってしまう問題がありました。そこで上司・部下という関係性をやめようと、プロジェクト型の組織をつくります。

プロジェクトが動いているときはリーダーを置き、プロジェクトが終わればリーダーもフォロワーもないフラットな関係に戻します。これにより、プロジェクトチーム内ではヒエラルキーが生まれますが、関係性はフラットなままのため、上司・部下という力関係は発生しません。

プロジェクト型の組織は、単にフラットな関係性をつくるのが目的ではありません。物事を進める上で、いろいろな人の力を集めないと創造性は生まれませんが、それがいつの間にか上に立つ人の個人的な力へと変換された形での支配が行われるのも、創造性を発揮しにくい要因になります。その力の集め方を「プロジェクト」という形で瞬発的に行い、終わると同時に力も分散させるのがプロジェクト型組織です。

この、「終える」「分散する」仕組みは組織において非常に大切になってきます。安心する環境だけでは新しいものは生まれにくく、思考が拡散するだけではアイデアを仕事につなげることは難しい。「安心⇔挑戦」、「拡散⇔収束」といったようなアンバランスなものを新陳代謝としてつくることが、今の組織に求められていることだと思います。

このように、学び3.0を考える上で「プロジェクト」という枠組みは重要な要素になってきます。

マイプロジェクトのような、個人で納期や目標設定を行う「個人プロジェクト学習」が学び2.0だとすると、個人としての探求と、仲間と共にプロジェクトを動かす「共創型プロジェクト学習」は学び3.0といえます。

「共創型プロジェクト学習」というと分かりにくいかもしれませんが、サッカーやバスケットボールのようなチームプレー競技に置き換えるとどうでしょうか。

選手それぞれが個人技ばかりを磨いても、試合で連携がとれなければ先に進むことが難しいですよね。個人技を磨きつつ、チームとしての戦術を磨くことで強いチームへと成長していきます。共創型プロジェクト学習も、個人としてのマイプロジェクトや探求は行いつつ、仲間と共に未来をつくり上げるための一歩をともに学ぶ必要があります。

このように学び3.0化していくためには、教える側・教えられる側といった関係性をなくし、プロジェクト単位で力の集め方やものごとの進め方、仲間とともにつくり上げる関係づくりを学び、振り返り、新しい学びにつなげることが求められています。

「未来の学びや社会には希望がある気がする」

以前、学習するコミュニティに夢を見ての連載の中で、フェアパラダイムの話をしました。「私たちは違う文化や世界を生きている」というフェアパラダイムの感覚をもつことは、他者と分かり合えないことの受容です。でも、「それぞれ好きなように発展しましょう」も寂しいですよね。

社会がTEAL化していき、フェア・パラダイムの世界が広がっていくのは喜ばしいことですが、私とあなたの間に境界線を引いてしまうのは少し違うように思います。TEAL化ってつまり、社会を変えていけるタイミングが増えることだと思うんです。

だから僕は「フェア・パラダイム同士で一緒に遊びましょう」といろいろな人にプロジェクトのお誘いをし合っていけるといいなと思っています。

学び3.0について考えを深めてきましたが、結局はこれに尽きるのかなと。

しかしまだ、この学び3.0という感覚はおぼろげに生まれている概念なので、ティール組織がどんなものか、複雑系の科学ではどんな風に社会を捉えているかなど、まだまだ学んでいきたいと思っています。

次回からはそんなことを「zoom革命」の田原真人さんティール組織第一人者の嘉村賢州さんといった方たちにインタビューする記事も展開していきつつ、この新しい考え方をみなさんと一緒に深めていけたらと思います。

人をくじけさせるのも人だけど、人を勇気付けるのも人なのだなと、つくづく。