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まず行ってみる。仲良くなったら、通ってみる。私が鹿児島県・与論島で始めた「島活」のススメ。

若い世代を中心に「地方」や「田舎」への関心が高まっています。2017年度に発表された国土交通白書でにおいて、三大都市圏に住む若者の4人に1人が「地方移住に関心がある」ということが報告されていることからもそれは明らかです。

一方「地方と関わるきっかけがない」「移住は不安」という方も多いのではないでしょうか。実は私も数年前まで埼玉で暮らしながら、地方に関心がある若者の一人でした。今回は私が見つけた「島活」という、地域との関わり方をご紹介します。

24歳で沖縄移住

私は趣味の国内旅行をする中で、地域を盛り上げようとしている様々な方たちと出会ってきました。そうした人たちがいる魅力的な地域に人を送りたいという想いで、大学卒業後は東京の旅行会社に就職しました。

しかし、海外旅行を扱う部署に配属されてしまったので、国内の地方には全く関わることが出来ず。まずは「東京で働きながら、地方と関わる方法」を模索していました。入社してから半年後のある日、ネットで偶然、沖縄で地域振興に関われるような仕事の求人を見つけてしまいました。私は新卒で入社した会社を半年で退職。2018年の年末に沖縄へ移住しました。

今は仕事で地域振興やまちづくりを学びつつ、月に1度「島活」をするため、休日に与論島へ通っています。

与論島ってどこ

与論島は沖縄本島から北へ約22kmのところに位置する鹿児島県最南端の島。5000人の人と5000頭の牛が暮らす小さな島です。島の周囲に広がる「ヨロンブルー」の美しい海は訪れる人を虜にします。昭和50年代に到来した「離島ブーム」の頃には多くの観光客が訪れました。

島の人は観光客にも、とても親切でフレンドリー。道を歩いているとサトウキビがもらえたり、すれ違う学生もみんな元気に挨拶をしてくれたりします。

トークンエコノミーの実証実験が行われていたり、ライドシェアサービスがあったり、県道の電柱を地中に埋める「無電柱化」にも着手していたりと、全国の離島の中でも先進的な取り組みが行われているのも面白いところです。

与論島に通うことになったきっかけ

私が初めて与論島を訪れたのは、沖縄に移住してからのこと。島のカフェで朝食を食べていると、そこにいたおじちゃん(以下おじぃ)が私に声をかけてくれました。島の生まれだというおじぃは、島のことをたくさん教えてくれたのですが、その中でひとつ、気になるポイントがありました。

それは、「自分が持っている農園を生かして、島のファンを増やしたい。手伝ってほしい」というお話。まさに私が求めていた「地方との関わり方」を見つけた気がして、その場でおじぃと「月に1度、沖縄から与論島に通う」という約束をしました。

それ以降、月に1度、1泊2日で島に通い、おじぃのお手伝いをしています。沖縄から与論島までの船代は往復3500円。所要時間は2時間半ほど。月に1度通うのに、時間的にも費用的にも、それほど負担はありません。関係人口は「都会と地方」という文脈で語られることがほとんどですが、私の場合は「地方都市から田舎」というアプローチです。

農園の草刈りなどといったおじぃの簡単なお手伝いをしつつ、綺麗な海を見ながらのんびり過ごす時間を作ったりもして、月に1度の非日常を体験しています。私はこうした自分の取り組みを「島活」と名付けて、ブログやSNSで発信しています。
ちなみに島活という名前は瀬戸内海に浮かぶ島、家島で行われている「週末島活」からお借りしています。家島では、週末だけ、カフェを経営することなども出来ます。

おじぃの目標

おじぃの農園にはバナナやマンゴー、パパイヤなど南国の果物が育っている他、エキゾチックな観葉植物やヤギもいます。ただ、きちんと整備はされておらず雑草などが荒れ放題の状態です。ここを整備して観光の人が見学できるような場所にしたいというのがおじぃの目標です。

いわば、島活のお手伝いというのは、おじぃの夢を一緒に叶える仲間づくりであるともいえます。この農園では、島内外の色んな人を巻き込んで整備を進め、最終的には関わった人が農園をガイドするような仕組みを目指しています。そのため、情報発信を通じて興味を持ってもらい、「島活をしてみたい」という人が出てくればいいなと思っています。

目指しているのは、お手伝いを進める過程で農園やおじぃのファンになった人が、新しく来た人を巻き込んでいくような「観光客が(ファン)が観光客(新規)をガイドする」仕組みづくりです。

ファン同士が繋がっていく場所づくり

何かしらの形である地域と関わるきっかけがあると、その地域に愛着が湧いてくるものです。例えばテレビでその地域が紹介されていたりすると「おっ!」と見入ってしまったり。「第二の故郷」と呼ぶのがふさわしいかもしれません。

『そこがどれだけ素敵な地域で、どんな人が暮らしているのかを知ってもらいたい。』その想いが「観光客が観光客をガイドする」という仕組みに繋がっていきます。普段何気なく見ている日常の景色も、他の地域の人からしたら「非日常的」で、驚きや発見の連続かもしれません。

自らの経験と外から目線で、観光客に共感を呼ぶような伝え方をすることが出来ることが移住者やファンの強みです。口コミによる宣伝効果も期待できます。

また、地域のファンが、地元の人よりもその地域のことを知っているというのもよくある話です。例えば好きなアーティストがいたとすると、音楽だけでなく、その人のバックグラウンドやメディアの出演情報など、情報を細かく調べるものです。それと同じ感覚で自分が好きな地域だからこそ、ファンは自分から積極的に地域のことを調べています。

地域の外のコミュニティ

観光客が観光客をガイドすることで「観光客同士が繋がる」ことも考えられます。そこから、地域の外で「ファンクラブ」や「オンラインサロン」のようなコミュニティが広がる可能性もあります。

実際に、高知県にある人口20人の鵜来島には「鵜来島を勝手に応援する会」という、地域の外のコミュニティがあります。小笠原諸島は島の盆踊りを都心で行うというクラウドファンディングを実施し、島民がほとんどいない「島のファンで行う島の祭り」というプロジェクトを成功させています。コミュニティのコンセプトを体現した場所に人は集まります。

私は沖縄から与論島に通って島活をしていますが、これまでに数回、私以外にも沖縄に住んでいる人を募集して与論島で島活をしてもらったことがあります。島活をした人たちと会うと、与論島の話で盛り上がり、大体いつも「次いつ行く?」というような流れになります。そうした場に知り合いを誰かが連れてきたり、次に島へ行く時に、各々が友達を誘ったりすることが、「観光客が観光客をガイドする仕組み」の基礎です。

終わりに

地域と関わるきっかけや関わり方を見つけるには、まずどこかに旅をしてみて、そこにいる面白そうな人と仲良くなるところから。そして何回かその人のところに通ってみる。ぜひ「島活」のやり方を参考に、皆さんも旅のその先にある「活動」する方法を模索してみてください。その過程を発信していると、きっと仲間も生まれるはずです。もちろん、与論島でも仲間を募集しています。

誰もがどこかの地域のファンで、自分の好きな地域を自慢しあえる社会って、何だか楽しそうじゃないですか。

Jovislander
1994年、埼玉生まれ。大学で観光まちづくりを学び、卒業後は東京の旅行会社に就職。海外旅行を扱う部署に配属されるも、「国内の観光に携わりたい」という想いから半年で退職。現在は沖縄の観光に携わっている。
根っからの(国内)旅行好きで、これまでに47都道府県と50以上の有人島に上陸。
好きな場所は小笠原諸島・父島。旅の様子はブログで発信している。
この記事はグリーンズで発信したい思いがある方々からのご寄稿を、そのままの内容で掲載しています。寄稿にご興味のある方は、こちらをご覧ください。