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「場づくり」とは人の可能性を引き出すこと。『場づくりという冒険』著者・藤本遼さんが提案する、一対一の関係性からはじまる拠りどころのデザイン。

イベントやワークショップ、シンポジウム、町内会、PTAなど。仕事でもプライベートでも、私たちは誰もが日常的に「場」に参加し、ときには「場」をつくる側に回ることもあるのではないでしょうか。

そして「場」に合わせて、司会、進行、オーガナイザー、ファシリテーターなどと呼ばれる役割があるところから、より良い「場」をつくることは、多くの人にとって関心のあることと伺い知れます。

今回「場づくり」についてお話をお伺いするのは、グリーンズ出版から2020年3月上旬に書籍『場づくりという冒険 いかしあうつながりを編み直す』を出版する、株式会社ここにあるの藤本遼さんです。

藤本さんは過去にgreenz.jpでもご紹介した通り、兵庫県尼崎市に軸足を置き、さまざまな「場」をつくる人。お寺の住職と一緒に開催する、お寺でカレーを食べるイベント「カリー寺」や障がいのある人もない人もみんなが楽しめるフェス「ミーツ・ザ・福祉」など、さまざまな人や場所を掛け合わせながら、「場」をつくってきました。

浄土真宗本願寺派の清光山・西正寺で2015年から年1回開催する「カリー寺」は、700名以上が来場する人気イベント。

2017年から年1回開催する「ミーツ・ザ・福祉」には、70店舗以上のブース出店やステージパフォーマンスを楽しみに、4000人を超える市民が訪れます。

藤本さんが企画するイベントはどれもポップで楽しげで、年齢も立場も関係なく遊べるフラットなものが多い印象です。誰もが自分らしく居られる場をつくる藤本さんは、どのようなことを考えて、一つの場をつくり上げているのでしょうか?

藤本遼(ふじもと・りょう)
株式会社ここにある代表取締役。「すべての人がわたしであることを楽しみ、まっとうしながら生きられる社会」を目指し、多様なプロジェクトを行う。「余白のデザイン」と「あわいの編集」がキーワード。

人を惹きつける「場づくり」のヒントは、お笑いにあった

藤本さんが事務所を置く「尼崎傾奇者(かぶきもの)集落」にて、お話を聴きました。

まちづくり分野や企業研修など、さまざまな場づくりに関わる藤本さんが、はじめて「場」を意識したのは小学5年生のとき。少年野球チームに所属していた頃の一場面だったと振り返ります。

藤本さん 元気に喋るタイプではなかったのですが、ある日はじめてノリツッコミをしたんです。そしたらすごいウケて、みんな楽しい雰囲気になりました。今思うとそれって「場」だなって。笑いは普通からちょっとずらした言葉を発したときに起こるもの。僕の場づくりは、笑いに端を発しているような気がしています。

冷めた子どもだったという藤本さんですが、この出来事をきっかけに人との関わりのおもしろさに気づき、チームメイトともフラットに遊べるようになったといいます。

小学生の頃の藤本さん。

その感覚を残したまま、藤本さんは中学・高校そして大学へ進学。しかし、自ら場を主催することはありませんでした。

転機となったのはNPOとの出会い。子どもの頃から生きづらさを抱えてきた藤本さんが見つけた、唯一、自分が自分のままで居られる場でした。

藤本さん たぶん同年代のコミュニティが苦手なんだと思うんです。学校や学部は興味関心で偏っちゃうし、サークルやゼミにも居場所を見つけることができなかった。まちには色々な人がいるから良かったのかな。

NPOのゴミ拾いに参加していたんですが、ゴミ拾いよりも、人と喋りに行くくらいのノリで加われるのが、いい感じやんと思って。いつしか自分でも尼崎でゴミ拾いを呼びかけて開催するようになりました。

生まれ育った尼崎で何かやりたい。人と自分らしい関係性を結びたい。その想いから、藤本さんは関西を中心に多様なイベントに顔を出し、おもしろい場・そうでない場の要素を自分なりに考え、取り込んでいきました。

そして、2013年ごろから自分自身で主催イベントを開催。のちに、地域団体や行政などとコラボレーションしながら、「カリー寺」や「ミーツ・ザ・福祉」などのイベントを企画するようになります。

「ミーツ・ザ・福祉」は障害のある人とない人が、企画からフェス当日まで一緒につくりあげています。

「場」はいつでも、どこでもつくれる

数々のイベントを運営してきた藤本さんですが、「あくまでも手段」と言い切ります。イベントを通して、どのようなことを実現したいと考えているのでしょうか?

藤本さん 自分が自分らしくいられる関係性をつくることが目的です。そのために、いろいろなテーマや切り口のイベントがあるだけで。自分らしくいられる関係性をつくるためには、地域の中に頼りあえる関係を複数つくることが大切なんじゃないかって。

そのことに、NPOとの出会いによって気づかされて。上下関係があるわけでもなく、血縁家族みたいに距離が近すぎることもない関係性。それを自分なりに表現してきたら、ここまできました。

イベントは「場」をつくる上で、取っ掛かりやすいものではある。しかし本来、「場」は「いつでもどこでもつくれる」と藤本さんはつづけます。

藤本さん 飲み会が「場」になっていないと思うことが多いんですよ。大人がわざわざ集まって2〜3時間を過ごすのに、「この話で終わるの?」みたいなことがもったいなくて。だから、できるだけ飲み会を「場」にすることは僕の役割だと思っています。

“飲み会ファシリテーション”って呼んでいるんですけどね。まず「場」を整えるすることが大事。僕は飲み会チェックインをしています。自分がどんな人か、最近何をしているのかを一人ずつ自己紹介をしてから、深掘りしていく。ある程度「場」をつくれたら僕はそっと引いて、自由に話す時間に移ります。

せっかく時間を使って、おもしろくない話をして終わるのが苦手なんで(笑) 飲み会の価値が最大化されるように動いています。

「場づくり」は、個と個の関係性からはじまっている

「場づくり」は、いつでもどこでもできる。その意識は、藤本さんの日常の中にも、垣間見ることができます。

たとえば、尼崎にある「蓬莱湯」と不定期で開催するイベント「おふろバー」も、藤本さんがお客さんとして出入りしていたことからはじまっています。

「おふろバー」は、番台前にあるフリースペースで、飲みながら交流するイベント。

藤本さん 何度も風呂に入りに行くうちに、女将と挨拶や日常会話をするようになり、一緒に何かできたらいいねってなって。

僕と女将の関係性も「場」なんです。会話の質が変わり、何かしようってところまで関係性が変わるには積み上げが必要だし、一定の時間がかかります。まず一対一の関係があって、そこから「場」が少しずつ広がっていき、ようやくイベントとしての「場」が成立するんです。

藤本さん もし僕が銭湯でイベントをしたいって魂胆丸出しで足を運んでいたら、それはきっと相手に伝わって、「おふろバー」は生まれなかったんじゃないですかね。

僕は明確な目的意識をもって人に会ったり、どこかに足を運んだりすることはありません。いつもフラットな状態でいます。

ただ、自分から喋りかけることは大切だと思っていて。自分のことを知ってもらいたいといつも思いながら、人と関わっています。お客さんでも友達でも家族でもない。よくわからない関係性の上に、僕の仕事や暮らしは成り立っているんですよ。

あなたはどんな人ですか?
いざというとき支え合える、ゆるくて強い関係性のつくり方

「場」は一対一の関係性を起点にありようを変えながら広がっていくもの。だから藤本さんは、まず話をすることを大切にしています。

新しく物事をはじめる時、新しい人と出会った時、藤本さんはかならず相手に関心を向けて、「あなたはどんな人ですか?」と問いを持ちながら、人生観や価値観を分かち合っています。

藤本さん プロジェクトをはじめる時は、全員と話す機会を設けて、幼い頃どんな暮らしをしていたのか、今どのようなことに課題を感じているのか、何をして生きていきたいのか、どんな死に方をしたいと思っているかなどを聞いていきます。

聞かないと、目の前の人が誰かもわからないし、僕が誰かもわかってもらえないという価値観を持っているんです。

僕にとって、相手が今やっていることや持っているスキルは二の次。価値観だったり物事の見方だったり、そういうことの目線合わせをまずやっています。

「カリー寺」の打ち上げの様子。カレー好きの人、お寺の檀家さん、大学生、NPO職員、会社員などさまざまな人が集まっています。

藤本さんは「場」をつくる側に立つことが多いため、「なんか賑やかにやっている」「たくさん人が集まってワイワイしている」という見方をされることがもあるそう。しかし、人に見えないところでは細やかなコミュニケーションをとりながら、プロジェクトを進行しています。

藤本さん 僕は一対一の関係に興味があって、どう深めていくかを考えています。だから、個別でたくさん会っているんです。SNSでメッセージのやりとりも、たくさんしている。自分が良いと思える関係性をつくりたい気持ちがベースにあるから好きでやっているんですが、結構見えないところでは泥臭くやっています。

自分が暮らすまちの中に家族的な関わりを複数つくりたい。その思いから、藤本さんは何をはじめるにしても、まずは一対一の対話の場を設けてきました。これこそ、藤本さんがつくる「場」に多くの人が関わり、自分が自分らしく居られると感じる所以なのでしょう。

藤本さん プロジェクトをする前にお互いのことを知り合うから、力を出しあえるんじゃないでしょうか。自分のことを知ってもらっているから信頼できるとか、この話ができたからあの人と一緒に居られるとかってあると思うんですよね。それが疲れた時やしんどくなった時につなぎ止めてくれる、支えてくれるゆるくて強い関係性を生むのだと思います。

可能性を引き出す、拠りどころのデザイン

「プロジェクトを広げるためにどう関わりのグラデーションをつくるか」、「どう声かけをしたらモチベーションアップしてもらえるのか」など、「場をつくるためのノウハウはいろいろある」と藤本さんは話します。しかし、それらは一対一の関係性があってこそ成り立つもの。もっと言うと、「人間をどういう存在として捉えているか」が重要だとつづけます。

藤本さん 場をつくるって、小手先のノウハウじゃないし、やり方じゃないんですよ。

根本には、人間観みたいなものがいるんです。人間をどう捉えていているのか。そこなんですよね。人間を可能性の溢れる存在だと思っているのか、そうではないのかによっても、つくる場は変わってきます。

僕はね、人間は本来すごい可能性を持って生まれてきているし、何でもできるし、何にでもなれると信じているんです。それは回り回って、きっと自分自身の可能性を信じることでもあると思う。そういうあり方が、僕がつくる「場」に滲み出ているんだと思います。

藤本さんはどんなことを感じながら、「場づくり」をしているんだろう?そんな問いからはじまったインタビューの時間もそろそろおしまい。最後に、藤本さんにとって、場をつくるってどういうことなのかをお伺いしました。

藤本さん 場をつくるとは、拠りどころのデザインをするということ。頼りあえる関係性を編んで、他者の中にある表現したいタネや、その人が本来持っている可能性をどう開いてくかということに向き合うことです。

「人間ってなんだ」、「価値ってなんだ」と本質的な問いを自分に投げつづけることができないと、到達できないものだと思っています。

自分の可能性を信じながら生きられた方がいいし、生まれてきたことを喜び合いながら生きていける方がいいなって思うから。僕と相手の一対一の関係からははじまって、相手と誰か、誰かと誰かって、自分が自分らしく居られる関係性が連鎖していって、世界がちょっとずつ変わっていくといいですね。

藤本さんの考える良い関係性が、尼崎で広がっているのが伝わってきますね。

インタビューの時間をもつ前は、「豊富な経験や知識に裏付けされた場づくりのノウハウが出てくるのだろうか」と想像してました。しかし、藤本さんから語られたのは、人間としてのあり方や存在などの根源的な問い。どこに足を運び、誰と会い、何を話し、何を食べて、何を見ているのか。暮らしの中で積み重なった価値観や考えが、藤本さんを形成し藤本さんがつくる「場」として表現されていました。

藤本さん自身が抱えてきた悲しみや痛み、弱さを見つめけつづけた先に、今の藤本さんのつくる「場」があるのだとしたら。きっと私たち一人ひとりにも、自分自身にしかつくれない「場」があるはず。
自分が自分らしく居られる関係性づくりは、今”ここにある”自分を見つめるところからはじまっています。

(撮影: 西島本元(インタビュー画像)、水本光(トップ画像))

– INFORMATION –

『場づくりという冒険』

3月上旬、グリーンズ出版から藤本遼さん著『場づくりという冒険 いかしあうつながりを編み直す』が発売されます。
全国のさまざまな場づくりの実践者を藤本さんが訪ね歩きインタビューした内容や、場づくりについて詳細に書かれた本になっています。

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