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気候変動へのアクションの一歩は、自分の感情と向き合うこと。映画『気候戦士~クライメート・ウォーリアーズ~』カール・ A・フェヒナー監督インタビュー

“温暖化”なんてヌルい表現では語れないような被害をもたらしている、気候変動。人類の文明を脅かす問題に国を超えて取り組んでいくため、2015年のCOP21(第21 回気候変動枠組条約締約国会議)で「パリ協定」が採択されました。

先進国、途上国が足並みを揃え、世界が一丸となって気候変動に立ち向かう。そんな動きに急ブレーキをかける人物がいます。それは、アメリカ合衆国大統領、ドナルド・トランプ。

©fechnerMEDIA

大統領選の公約として、オバマ前大統領が調印したパリ協定からの離脱を掲げていたトランプ氏は、2017年に大統領に就任すると、公約通り離脱を宣言。手続きを経て離脱が完了するのは2020年11月4日。次の大統領選の翌日というタイミングです。

CO2排出量が世界2位のアメリカがパリ協定から離脱することは、気候変動対策の大きな後退を意味します。さらにトランプ大統領は、低炭素時代の訪れとともに斜陽産業となりつつあった石炭産業を推し進めるなど、時代に逆行した行動を重ねています。

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そんな、人類を過去に引き戻そうとするような流れに抗う人々がいます。米国政府機関を訴えて、脱炭素を主張するアーノルド・シュワルツェネッガー元カリフォルニア州知事、7歳の頃から気候変動の危機を叫び続ける17歳のヒップホップ・アーティスト、再生可能エネルギーのビジネスにチャレンジする元難民、気候変動を面白おかしく伝える科学者ユーチューバーなど…、さまざまな人々がそれぞれのやり方で気候変動を止める戦いを続けています。

ヒップホップで気候変動アクションを呼びかける先住民アーティスト、シューテスカット・マルティネス ©fechnerMEDIA

元イラン難民で、再エネビジネスを展開するVispiron社の社長、アミール・ロガニ ©fechnerMEDIA

映画『気候戦士~クライメート・ウォーリアーズ~』は、そんな人類の存亡を賭けてアクションし続ける人々を描くドキュメンタリー映画。『第四の革命』から、エネルギー問題をテーマとした映画に取り組んでいるカール・A・フェヒナー監督による最新作です。

一人から生まれ、つながりで育つ「気候戦士」たち

実はフェヒナー監督自身も、気候戦士の一人。保守的な家庭で育った彼は大学を卒業すると軍隊に所属します。やがて娘の誕生とともに平和と環境への思いを強くし、ジャーナリストに転身。ドキュメンタリーを通して持続可能な世界をつくるために映画を生み出しています。

カール・ A・フェヒナー監督 ©fechnerMEDIA

11月の頭に、私は台風19号の被害を受けた栃木県に災害ボランティアとして向かい、水害を受けたお宅の片付けをお手伝いしました。そのときに、現地の方から「少し前まで、こんなところで水害が起こるなんて想像もしていなかった」というお話を聞きました。よく報道で「千年に一度の豪雨」という表現を見聞きします。そうした災害が頻発しているということは、もはや、これまで考えられなかったような大きな変化が、地球環境に起こっているということなのでしょう。

すっかり変わってしまった地球環境で生きる同じ人類は、気候をめぐる意識で分断されているように感じます。

化石燃料を掘り出し、燃やし続けることで築いてきた過去の利権にしがみつく一握りの人々。
それに対し、持続可能なエネルギーを推進し、今、そして未来に生きる命のためにつながり、戦うさまざまな人々。

そのぶつかり合いを描く映画『気候戦士』は、観る者に、現状を苦しみの中で受け入れるべきか、変えていく動きを生み出すかの選択を迫ります。

重度の喘息を抱えながら、気候変動や汚染改善を訴える活動をする学生、カイラ・ペック ©fechnerMEDIA

映画に登場する一人ひとりの気候戦士は、確かに超人です。しかし、私たちと同じ、一人の人間でもあります。一人の人間の勇気と粘り強い行動から始まり、多くの人を巻き込むムーブメントになっていったのです。

『気候戦士』は、そのドラマを、心が動くだけでなく、すぐに行動を起こしたくなるようなライブ感で届けるようなドキュメンタリー映画となっています。観るというより、体験するという感じがしっくりくるようなこの映画に、ぜひ多くの人に足を運んでいただきたいと思います。

感じること、決断すること、そして、行動すること

映画公開に合わせて来日しているフェヒナー監督にインタビューさせていただくことができました。来日して初めてのインタビューということでしたが、移動の疲れも見せることなく、監督はフレンドリーに話してくださいました。

まずお聞きしたのは、映画『気候戦士』を撮ろうと思った動機について。

フェヒナー監督 再生可能エネルギーをテーマにした初監督作品『第四の革命』は、29カ国に翻訳され、38カ国で上映されました。『第四の革命』には大きな反響があり、あちこちから「人々が行動を起こすきっかけになるような映画をつくってほしい」という声が寄せられたんです。私自身も、市民が力強い行動を起こす必要を感じていたので、人々をエンパワーメントする映画をつくりたいと思いました。

行動は、一人ひとりの決断から生まれます。映画でも少し触れていますが、私の生まれ育ったドイツでも、過去に市民の行動が社会を動かした成功例があります。かつて、ドイツ国内の米軍基地に核ミサイルが保管される事態が起きました。12分でロシアに到達すると言われた非常に強力な核ミサイルです。そんな核ミサイルがドイツ国内に保管されることに対して、何万人もの人々が非暴力で反対運動を繰り広げました。その結果INFが折れ、核ミサイルの保管は撤回されたのです。

このような、暴力を伴わない体を張った行動というのは、一人ひとりの決断から始まっています。そうした個人の決断を、もうひと押ししたい。そんな思いで『気候戦士』を撮りました。

今起きているエネルギーをめぐる問題は深刻です。今すでに命を失っている人がいる。どうにか解決しないと、次世代の生存も脅かされるという危機感を持っています。

映画では、化石燃料の利権にしがみつく人たちと、気候変動を止めようとする人たちの対立が描かれています。対立ではない解決策に道はあるのでしょうか。

フェヒナー監督 先ほど、決断が行動につながると言いましたが、様々な可能性の中から選ぶというのも、行動の一つです。

たとえば私は、自然素材でできた77センチもの断熱を施したパッシブハウスに住んでいます。ソーラーパネルで毎日9000kwの電力を生産していますが、生活で必要なのは3000kwなので、余った分は売電しています。いわば、分散型エネルギー社会を実践しているかたちです。こうした選択から、既存のエネルギー体制を変えていくということもできます。

しかし、ライフスタイルを変えるだけでは限界があります。政治体制や法律を動かさなければ、社会に大きな変化は生まれません。

2019年9月20日に行われた気候変動に対する大規模なデモには、世界で760万人もの人が参加したと言われています。「Fridays for Future」ということで、金曜日に学校や仕事を休んで人びとが声を上げたのです。この日も世界の480箇所で私の作品が上映されたそうで、人々との心に訴える映画をつくることはやはり重要だと考えています。

日本人は政治から距離を起きがちで、デモにも抵抗がある人が少なくありません。

フェヒナー監督 ご存知のように、私はドイツ人です。父は第二次世界大戦時の軍人で、子どもの頃からの教えは「ルールに従え」でした。お上の言うことに従うのが当たり前だと私も思っていて、軍隊に入りました。そんな私でも変わりますし、ドイツの社会も変わりました。

社会を変えるために必要なのは、「参加を促すこと」です。一緒にやろうとやさしく誘うか、ショックを与えて奮い立たせるか。日本人にふさわしい社会活動への参加のかたちがあると思います。

これまで広島と長崎に原爆を落とされたり、福島で原発が爆発したりといったショッキングな出来事がありながら、乗り越えてきたのが日本人です。お互いを尊重し、平和で穏やかな人たちだと感じます。経済発展や社会の安定のために再生可能エネルギーを増やしていく、ビジネスから変えていく、という変わり方も日本人には合っていると思います。

映画にはたくさんの気候戦士が登場しますが、彼らに共通するところはありますか。

フェヒナー監督 はい、共通点はあります。そのヒントは、私自身の転身にもあります。私がジャーナリストとして活動を始めたのは1990年代、湾岸戦争の頃でした。当時は見ているだけで心が痛むような戦争被害者の悲惨な映像を撮ることで仕事を得ていました。

ところがある時から、その代わりに新しいビジョンや平和的なアイデアにフォーカスを当てようと方向性を変えたのです。それは私のキャリアの中で最も良い決断でした。大きな、ポジティブなビジョンを持つことで、力がみなぎるような活動ができるようになったのです。

映画のために取材した気候戦士たちにも、そうしたパッションを感じました。みなさん、可能性をしっかりと見据え、確信を持って行動していました。もう一つの共通点は、知識と経験が豊富で、マスコミの言うことを鵜呑みにしていないところです。

将来に責任を感じ、希望を抱いて、一生をかけて活動に専念する人たち。何よりもハッピーで、怒りとかフラストレーションをあまり感じない人が多かったのも印象的でした。

greenz.jp読者のみなさんに、気候変動に対する行動の一歩としてオススメしたいことは?

フェヒナー監督 何度も決断することが行動につながると言っていますが、決断の前に、まず自分の感情と向き合ってみることが大切なのではないでしょうか。自分の心に湧き上がってくる感情をごまかさない、蓋をしないことです。自分が何を感じているのかわかれば、何を決断するべきなのかハッキリすると思うんですよね。

今年は日本を大型台風が何度も襲ってきて、まさに気候変動が起きていると実感された方が多いと思います。この現実を目の当たりにして、どうにかなるだろうと楽観的に考えるのではなく、人類最大の脅威であると認めなければいけないと思います。

一方で、greenz.jpから感じられるような優しさ、ハーモニーも大切にしていただきたいです。映画の終わりにワシントンでのデモが出てきますが、あの現場には、たくさんの人びとがハッピーに、楽しく参加していました。そうした集まりに参加してみると、高揚感を感じながら家に帰ることができますよ。そんな感情を、ぜひgreenz.jp読者のみなさんにも体験してほしいと思います。

フェヒナー監督と関根健次さん

最後に本映画の配給会社・ユナイテッドピープル代表の関根健次さんにコメントをいただいたのでご紹介します。

関根さん 9月に行われたグローバル気候マーチでは、全世界で760万人が気候変動対策求めるためにマーチに参加したといいます。気候変動の危機的な状況に、世界中で人々が立ち上がっているのです。

映画『気候戦士』は、最前線で気候変動を阻止するために活動するグレタ・トゥーンベリさんのような若者のみならず、起業家、発明家や政治家など多様な人々の姿が知れることが魅力です。そして、私たち一人ひとりに、気候行動を促す映画です。

(撮影: 丸原孝紀)
(通訳: 塚本仁希)

– INFORMATION –

映画『気候戦士~クライメート・ウォーリアーズ~』は、2019年11月29日(金)から、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー!

監督:カール-A・フェヒナー
共同監督:ニコライ・ニーマン
制作:フェヒナー・メディア
配給:ユナイテッドピープル
2018年/ドイツ/86分
http://unitedpeople.jp/climate/

– ACTION –
COP25直前(12月2日開催)の金曜日、11月29日には、日本各地でも「気候マーチ」が行なわれます。COP25に参加する各国のリーダーに私たちの声を届けるために、参加してみませんか。
https://ja.globalclimatestrike.net/

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