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行動基準は、地域に根ざす、環境保護を優先する、孫が自分の行動でどのような暮らしになるかを想像する。なぜ、バリ島の学校「Green School」に世界から子どもが殺到するのか?

夏祭り、キャンプ、テーマパーク。楽しそうな大人たちに囲まれていたら、自分もなんだかすごく楽しくなってきた。子どものころ、そういった経験はありましたか?

先生、保護者、上級生。近所のおじちゃん、おばちゃん、お客さん。食べ物をつくる人、提供する人、掃除をする人。ある一つの目標に向けて大人たちが楽しそうに頑張っているとき、その空間はキャンパスとなり、そこにいる人すべてが先生に。あなたはその瞬間、学びの魔法にかかっていたのかもしれません。

今回ご紹介するのは、バリ島の学校「Green School(以下、グリーンスクール)」。未来の地球環境や社会をより良くすることを目標に掲げ、環境問題に取り組む「グリーンリーダー」を世界へ輩出している学校です。

2008年に97人からスタートし、今では400人を超す幼稚園生から高校生までの子どもたちが「グリーンスクール」に通っています。そして、入学したい、関わりたいという一心でバリ島へやってくる生徒や教師、ボランティアの人たちが後を絶ちません。また、学校を一目見ようと一日で100人以上の人が見学にくることも。

「グリーンスクール」を創設したのは、バリ島に住むカナダ人のJohn and Cynthia Hardy(以下、ジョンさん・シンシアさん)夫妻。バリ島で約1,400人の従業員を抱える宝石ブランドを経営していたジョンさんは、ある日シンシアさんに連れ出され、映画『不都合な真実』をみます。

そしてジョンさんはある決心をします。

もし、あの映画の言うことが少しでも本当なら、子どもたちは私が送ったような素晴らしい人生を送ることができないかもしれない。そう思い、その場で私は決めました。子どもたちの可能性を広げるために自分ができることはなんだってしよう。この美しいバリに恩返しをしよう、と。

創設者のジョン・ハーディーさんとシンシアさん

ジョンさんは宝石ブランドを売却し、2年の歳月をかけて学校を設立。途中、リーマンショックや自然災害などで学校運営が危ぶまれたこともありましたが、地元の人たちの助けと世界から集まる支援者のおかげで学校は今年11年目を迎え、2020年にはニュージーランド校が開校する予定です。

グリーンスクール・ニュージーランド校のHP

グリーンスクールの掲げる3つの行動基準はいたってシンプル。「地域に根ざす」「環境保護を優先する」「孫が自分の行動でどのような暮らしになるかを想像する」。これらの行動基準は、校舎や教育環境、カリキュラムのベースとなっています。

校舎は、バリにたくさん生えている竹を使い、地元の大工さんによって建てられました。生徒の約20%は地元インドネシア人の奨学生。通学のためのお金は、基金や校内にあるリサイクルセンターの売り上げでまかなわれています。

地元の竹を使って建てられたグリーンスクールの校舎

電気は太陽光発電と渦を使った水力発電でつくられ、通学バスは校内でつくられたバイオ燃料で走っています。これは、浄化作用もあるヴォルテックス水力発電の様子。

給食は、地元の女性が、校内で育てられた有機栽培の野菜を使ってつくります。調理で使うのはガスではなく薪。そして、食べ物の廃棄物は、飼っている牛や豚にあげたり、コンポストで堆肥化したりします。

校内でつくられたオーガニックランチ

水で流さないコンポストトイレ

授業は、事前に出された課題についてのディスカッションやプレゼンテーションがメイン。毎年、何十個ものプロジェクトが生徒主導でスタートします。教師はもちろんのこと、地域の人や保護者やボランティア、そしてプロジェクトをサポートする専門家たち。そういったたくさんの大人が、生徒と関わりながらプロジェクトを進めていきます。

課題レポートを使ったディスカッション中心の授業

生徒が立ち上げ、州の新しい法律をつくるまでに広まったプロジェクト「Bye Bye Plastic bags」

保護者やゲストも交えてプレゼンテーションやコンサートが行われる金曜のアセンブリ

グリーンスクールを取材したCNBCレポートはこう報道しています。

グリーンスクールの子どもたちは、異例の環境や、多様な教科が大好きだ。しかし、学校が提供するものを楽しんでいるのは生徒だけではない。

さまざまな大人たちとつながることができるプラットフォームのような環境。そして、子どもたちの「やりたい」に、本気で付き合う大人たちの熱意ある姿。それこそ、最高のキャンパスと教科書なのではないでしょうか。

実は、私の6歳の息子が、この夏から「グリーンスクール」に通うことになりました。1年生からどんな授業があるのか、子どもも私もワクワクドキドキ。この学校で生まれるプロジェクト自体は小さなものかもしれませんが、それらが積もり積もって本当に地球を救うのでは、と私は密かに思っています。

この環境は、学校だけでなく、地域のコミュニティや子どものお稽古でもつくれるもの。この機会に、保育園や幼稚園の行事、PTA、地元のお祭りなどに参加して、子どもたちの「やりたい」を全力でサポートしてみませんか? きっと、子どもたちの光輝く目を一番間近で見ることができるはず。

[via greenschool HP, Inhabitat, YouTube]

(Text: 會田貴美子)