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自分1人ではつくれない未来を、それでも見てみたい。「学習するコミュニティに夢を見て」

こんにちは、「学習するコミュニティに夢を見て」というタイトルで、greenz.jpに連載を持たせてもらえることになりました、信岡良亮といいます。なんとも光栄ですごく嬉しい!

まず第一回目はどんなことから書き始めようかと考え、いろんな妄想が膨らんでいたのですが、僕がやっていることを一度ちゃんとまとめて自己紹介することから始めることにしました。

僕は1982年に大阪で生まれまして、京都の同志社大学を卒業後、尊敬してた先輩が起業するときに「一緒にやらない?」と誘われて、初就職がまだ形のない会社というところからキャリアがスタートしました。

就職で初めて上京して一人暮らしも始まって。大学時代にいろんなことをしてきたつもりだったので、なんとかなるだろうと思っていたのですが、笑えるくらい自分が全然役に立たなくて・・・ そんなジレンマを感じつつも、東京で合計2年半ほどITベンチャーの社員としてホームページ制作の進行管理(かっこよく言うとWEBディレクター)という仕事で、はじめのキャリアができてきました。

そんな頃にちょうど『不都合な真実』が公開され、自分のワークスタイルを顧みると働きすぎていて。そのたタイミングで環境問題に興味を持つようになり、地球一つ分以上の資源を使っていては持続不可能だと気づきます。やがて、人類のテーマは成長ではなくなったという趣旨になるほどと思うようになり、「どう成長するか」を追求して考える働き方ができなくなってしまいました。

そんな時に「島まるごとを持続可能にしたい」「よそ者、若者、ばかもの大歓迎」という島根県の離島、隠岐諸島にある海士町(あまちょう)という島に出会い、3泊4日の下見旅行へ。「ここには面白い大人がたくさんいるなー」と感じまして、2007年12月に島へと移住し、島に持続可能な社会に向けて学ぶための大学がつくりたいという想いで、Iターン仲間3人で起業しました。

創業時の社名が「株式会社 巡の環(めぐりのわ)」で、いま社名変更して「株式会社 風と土と」という名前になりました。

その当時の人口2300人の島での起業冒険譚みたいなものをソトコトを発行している木楽舎さんという出版会社から本にまとめさせてもらったものが『僕たちは島で、未来を見ることにした』という本です。

島に移住した時のことをまとめてくれた記事はこちら

2007年に海士町へ移住して、大学をつくりたいと思ってみても、実際に何をどう学べる場所にできるだろう? というところから手探りでした。

なので、まずは都市の人に、「島の暮らしの面白さ」や「人口2300人の島だから見える社会とのわかりやすいつながりとその実感」を体感してもらえるような3泊4日のショートコースをつくってみたり、企業の方にも「人口が少ないからこそ、一人の行動が与える影響が大きい」というこの島ならではの学びを実感する場をコーディネートさせていただき、「海士五感塾」という企業の方の人材育成の場としても活用してもらっております

そして島に来てもらうだけだと、関係性を育むのが距離の関係でどうしても難しいと思い、会いに来てもらうだけでなくこちらからも行こうということで、1日だけ都市に海士町の文化を届けるという「AMAカフェ」を開いてみたりもしました。

こちらは今、島の関係人口を増やす「海士町第二町民戦略」として有志チームが集まり勝手に島の第二町民を増やす「島の大使館」という構想にバージョンアップしています。
 

そんな最中に3.11が起きて、こんな大変なことが起こったのだから、社会は自分たちの足元の暮らし方・生き方を見直して新しい時代が来るんじゃないかと思いました。しかしながら、時が過ぎて見ると小さく変わりつつも大勢には影響のないように僕には感じられて、あれほど大きな衝撃があっても人が変われないのだとすると、もう戦争みたいなものでもないと、社会って変わらないのだろうか? という寂しさに襲われて、鬱々とした日々を島で1人勝手に病んで過ごしてました。

「今の社会がなんだか違う」という感覚からでは人の行動まで変えれないとすると、どうやって「ほしい未来の社会ってこんな形じゃないだろうか?」というNoでなくてYesの提案を社会にどうやってつくっていけるのか。その仮説として「都市と地域の新しい関係性ってどんなものだろう?」というところから考え始めた様子を、『都市農村関係学』という本にまとめさせてもらいました。

そして、人口増加社会を前提にした都市と地域の関係性を卒業して、人口減少社会の新しい関係性がつくりたいと思い、地域側のモデルとしての島の魅力化に向けて動くチーム(島にある株式会社風と土と)と別に、都市側にも新しいチームをつくろうと思い、2014年5月に上京しました。

その際に、都市側から都市と地域の新しい関係づくりに向けて、仲間づくりの第一歩として始めたのが自由大学での授業となった「コミュニティ・リレーション学」です。

さらに、大学での非常勤講師という立場で、都市と地域を結ぶためのプロジェクト学習の授業や、関係性を育むためのコミュニケーションの授業をさせてもらったり、オンライン大学での授業も担当させていただくことが出来ました。


市民大学や既存の大学の枠組みの中でやってみて思ったのは、なにより「時間が足りない」ということ。

新しい考え方を学ぶ時にはきっと、「(新しい価値観に)触れてみる」「実際にやってみる」「自分に馴染むかチェック」「馴染むようなら何回も習熟の時間をつくる」「コツを覚えて次の段階に進化させる」みたいな小学校の頃の漢字ノートのように、何度も繰り返して身に付ける時間をとる必要があります。

この知識のインプットと、実際に使ってみて馴染ませる、という学びにとっての車輪の両輪をちゃんと回せる仕組みがつくりたいと思うようになりました。

その結果、生まれた次の取り組みが「地域共創カレッジ」というものです。



地域共創カレッジのgreenz.jpのインタビュー
https://greenz.jp/2016/04/26/chiiki_kyousou_college/

「地域共創カレッジ」は5つの地域で活動されている起業家のみなさんと連携して、地域でそれぞれの方がどんな風に自身の活動を広げていったかを学びながら、その背景を支える考え方や関わり方を学ぶ場です。

講師として招いたのは、システム思考という観点から環境ジャーナリストの枝廣淳子さんに、自身と社会と仕事のつながりを捉え直すマイ・プロジェクトという観点から慶應義塾大学大学院特別招聘准教授の井上英之さんに、人と関わって共創するってどういうことだろう?という観点から「働き方研究家」の西村佳哲さん。自分自身が一番学びたい人をそれぞれ口説かせてもらって始まりました。

そしてこれらの経験を元に、次のような問いかけが湧いてきました。

どうすれば日本のあちこちで、より素敵な未来をつくるための社会実験がポコポコ生まれるようになるだろう?

そんな社会実験のための担い手が個別で頑張るのではなく、みんなで連動しながら「学習するコミュニティ(学び合うつながり)」になって、社会実験の品質とかインパクトがどんどん大きくなっていったり、より一人一人の特性にあった「欲しい未来づくりへの参加の仕方」に溢れている社会がつくれたら、もっとみんなが生きやすくなるんじゃないだろうか?

このような問いかけを自分に何度もしていく結果、生まれた企画が今回の「地域を旅して、仲間と共に新しい社会を共創していけるようになるための学びの場」という「さとのば大学」構想です。

さとのば大学構想のgreenz.jpのインタビュー
https://greenz.jp/2018/08/01/satono_daigaku/

このように自分の半生とこれまでのプロジェクトを振り返ってみた結果、ふたつの気持ちで揺れ動いているのだと思います。

ひとつ目は「どんなに頑張っても自分も社会も変わらないし変えられないので、諦めて楽になりたい自分」。もうひとつは、「それでも諦めてしまうと残りの人生をどう過ごしていいかわからないので、せめて諦めない方法を探すくらいの努力はしつづけたいという自分」との葛藤です。

このふたつの間を揺れ動きながら今感じていることは、

人は「自分も社会も変わらないし変えられない」と思った時に、未来に閉塞感を感じてしまうんじゃないかということ。自分も社会も、「ちょっとずつでも変えていける」と思えれば、日々の生活をハリを持って生きられるんじゃないかと思っています。

誰かから正解を教わるものとして「教育」があるとすると、僕はそこにあんまり惹かれなくて、そうではなくて「みんなで学ぶ」場がほしい。1万人力の馬力を持った英雄が現れて、世界を救ってくれるのを待つのではなくて、1万人の人と一人前ずつの力を持ち寄って一緒に未来をつくっていくためのノウハウ自体を一緒に開発したい。

1人で夢見る力を、3人で何か始めてみるためのアイデアにしてみて、それを10人の仲間で小さく実験してみたら、10人がそれぞれまた次の10人をチームにして100人で動けるプロジェクトに一緒に育てて。そうしてみんなに役割と出番がありながら、人と人が「いい仕事してくれてありがとう」とか「あなたがいたから最近元気です」というような言葉をお互いに掛け合っていくその繋がりが、さらに次の誰かにとって居心地のよい文化をつくっていく。

そういう螺旋的に人のよい特性が発揮しやすくなっていく世界を一緒に創ってくれる10番目とか105番目の人になってくれる人と出会うために、さとのば大学というプロジェクトがあるのだと思いますし、こうして連載を書かせていただいているのだと思います。

人をくじけさせるのも人だけど、人を勇気付けるのも人なのだなと、つくづく。

(写真提供: 自由大学)