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「beの肩書き」はどうすれば見つかるの? 『beの肩書き: 「人生の肩書き」は、プレゼントしよう』の立ち読みはこちら!〈vol.2〉

ユーダイモニアとヘドニア

第三章では、どうすればbeの肩書きがみつかるのか、その考え方や方法論をかいつまんでご紹介したいと思います。キーワードは「ユーダイモニア」と「リフレーミング」です。

「人生の肩書き」ともいえるbeの肩書きの種は、すでにあなたの中にあります。では、その手がかりとは何でしょうか? ここでヒントとなるのが「ユーダイモニア」という言葉です。

古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが提唱した概念であるユーダイモニアとは、「個人的な充実のある活動を行なっているときに感じられる一連の経験」を意味します。それは私たちが秘めている可能性を最大限に発揮しているときに感じられるものであり、「これが本当の私だ」という感覚を生み出す、とされています。

そんな個人的充足感としての幸福感=ユーダイモニアと対になるのが、快楽としての幸福感=ヘドニアです。

その違いを見極めるひとつのポイントは、能動的かどうか、です。ヘドニアは、確かに一時的に楽しく感じられるのですが、必ずしも自分の可能性を発揮する必要はなく、どちらかというと受け身のまま消費するだけだったりします。一方のユーダイモニアは、つねに自分の活動にどうつながるだろうか、という創造のための思考回路が働いています。

さらにもうひとつのポイントは、内発的かどうか、です。ヘドニアにおいては、自分で「好き」だと思い込んでいても、実は他者の欲望に影響を受けているにすぎなかった、ということもよくあります。一方、ユーダイモニアにおいては、流行に左右されることもなく、さまざまな事情でいったん優先順位が下がってしまったとしても、「機会があればもう一度再開したい」と求める感覚があり続けるのです。

ここで大事なのは、ヘドニア=悪ではないということです。何もしたくないくらい疲れているときは、ヘドニアに浸るのも悪くないでしょう。あるいは観戦するだけの単なる相撲ファンだった僕が、とある神社の相撲大会にまわしを締めて参加してしまったように、ヘドニアがユーダイモニアに転じることも大いにありえます。大切なのはヘドニアに依存しすぎず、ユーダイモニアを忘れないことなのです。

ヒントとしての「beの肩書きインタビュー」

PART.2には「beの肩書きインタビュー」というワークシートが登場しますが、そこにある5つの質問は、まさにユーダイモニアをめぐる問いかけになっています。


(1)自分では当たり前でも、二人以上から「すごいね」と言われたことは?
Q1は、あなた特有の「思考」や「行動」のパターンを引き出す質問です。自分では普通のことなのに、なぜかよく褒められる、という経験をしたことはありませんか? もしそうだとすれば、それはすでにあなたのdoを支えているbeの片鱗なのかもしれません。当たり前にできることほど、自分ではあまり価値がないように感じてしまいますが、それはきっとあなたらしさを形づくる大切な一部分なのです。

(2)こういう瞬間こそが幸せだなあ、と思うことは?
Q2は、あなたにとっての「幸福感」にまつわる質問です。「達成感」だったり「居心地のよさ」だったり、一口に「幸せ」といっても捉え方は千差万別ですが、なるべく具体的なシーンを思い出していただけたらと思います。もし難しく感じられたら、「こんな時間が続いたらいいな」と思うことでもかまいません。。全身に深い喜びが沸き起こるのはどんなときなのか、五感を頼りにゆっくり振り返ってみてください。

(3)時間が経つのも忘れてしまうくらい、情熱を持って取り組んでいることは?
Q3は、あなたにあふれている「情熱」についての質問です。何かに没頭している、いわゆるフロー状態にあるとき、私たちは時間があっという間に過ぎ去っていくのを経験しているはずです(逆に「早く終わってほしい」と時計をチラチラしてしまうときは、ワクワクしていないことの証左なのでしょう)。最近そんな没入感を味わったのは、いつのことでしょうか? もし思い当たることがないとすれば、あなたのbeはまさにそれを求めているのかもしれません。

(4)何かに感動したときに、思わずやってしまいそうなことは?
Q4は、あなたの得意な「表現方法」に光を当てる質問です。何かに感動して誰かとそれを分かち合いたいと思ったとき、あなたはどのような表現方法で伝えると思いますか? それは言葉や歌かもしれないし、写真やダンスかもしれません。そのごくごく自然なアウトプットの選択に、きっとその人のbeも一緒ににじみ出ているのだと思います。

(5)この人生で、やっておきたいなあ、と思うことは?
Q5は、あなたが果たすべきこととしての「使命/天命」をめぐる質問です。小文字のbeというよりは大文字のBEに関わるので、おそらく1日限りのワークでは見つからない大きな話だと思います。それでも、いつかそれを自覚することがあれば、あらゆる日頃のdoこそが使命/天命へと導くご縁であることを知り、毎日が感謝の気持ちでいっぱいになることもあるかもしれません。「ぜんぜん思い浮かばないなあ」という方も大丈夫。「座右の銘」ならぬ「座右の問い」としてたまに振り返り、そのときどきに変わる答えを味わってみてください。

リフレーミング

もうひとつのキーワードは「リフレーミング」です。例えば、目の前のコップに水が半分入っているとして、「半分しか入っていない」と思うか、「半分も入っている」と思うか、同じ出来事であっても受け取り方はずいぶん違います。そうした無意識下の解釈の枠組み(フレーム)に気づき、異なる捉え方を通じて新たな意味を構築することを心理学用語でリフレーミングといいます。

自分では「飽きっぽくてやだなあ」と思っていても、周りからは「好奇心が旺盛なんですね」と言われる、という具合に、ずっと気になっていた短所やコンプレックスが、実は長所でありチャーミングポイントでもあった、ということはよく起こります。そう考えると「はずかしがり屋」な人も実は、自分をよくしたいと願う、成長意欲がある人なのかもしれません。あるいは「消極的」な人は、その慎重さによってチームの窮地を救っているのかもしれないのです。

内閣府が2014年に発表した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によれば、日本人は他国と比べてネガティブな思考に陥りやすい傾向があるそうです。だからこそ自分のあり方をパラフレーズ(言い換え)してくれる他者の存在が不可欠であり、他者からの愛のあるフィードバックによってリフレーミングが起こりやすくなるのではないか、と考えています。

PART.2「『beの肩書き』ワークショップをやってみよう」では「ひとりで編」と「みんなで編」に分かれていますが、「みんなで編」をオススメする背景にはこうした理由もあるのです。

第一章でも触れましたが、20代の頃の僕は、「いつまでたってもプロになれない」というコンプレックスを抱えていました。しかし、信頼できる友人からの一言によって、中途半端であることを前向きに捉え直すことができ、「アマチュアのプロ」たる「勉強家」であろうと決意することができました。そんな人生を動かすような言葉のプレゼントが、beの肩書きワークを通じて全国でたくさん生まれたら、これ以上ない喜びです。

いかがでしょう。そろそろウズウズしてきましたか? いよいよPART.2から、実践編のスタートです!

『beの肩書き: 「人生の肩書き」は、プレゼントしよう』、p51-55より



PART.2のページはこんな感じ

いかがでしたか? 次回のテーマは「対話メソッドとしてのbeの肩書き」です。キャリア教育、組織開発、まちづくりという3つの応用編をご紹介します。どうぞお楽しみに! 本の詳細&ご購入はこちらからどうぞ◎