\11/12オンライン開催/ネイバーフッドデザインを仕事にする 〜まちを楽しみ、助け合う、「暮らしのコミュニティ」をつくる〜

greenz people ロゴ

家族を犠牲にせず、言い訳にもせず、自分の人生を自分らしく歩んでいくために。よしおかゆうみ・杉本綾弓・河野奈保子が「家族実験室」を始めます!

「子どもはほしいけど、いまの世帯収入で、頼れる人も近くにいない環境で子育てするのは、正直不安」

「いまの日本の婚姻制度には疑問があるし、子育て願望もない。でも、ずっと一人で暮らしていくのは、寂しい」

「セックスレスの悩みって誰に相談すればいいの? 性の話って大事なことなのに、どうしてこんなに話しづらいんだろう」

「そもそも、家族ってなんだっけ。戸籍が一緒なら家族? 血がつながっていれば家族? それとも、自分が家族と思えば家族と言える?」

家族。それは多くの人にとって、最も身近な共同体の形です。でも、あまりにも近すぎて、改めて「自分にとって心地良い家族のあり方とは?」と考えたことがない人も多いのではないでしょうか。

時代背景がまるきり変わってしまったのに、無意識のうちに自分が育った家庭環境を再現しようとして苦しんでいたり。パートナーや子育てに関する課題を解決したいと思って誰かに相談しても、単なる愚痴大会になったり相手の家族観を押しつけられて辟易したり。何となく「仕方ないもの」と諦めていたり……。

でも、それってしんどくない? もっと安心して家族について話し合いたいし、自分にとって心地良いパートナーシップのあり方や家族の形を追求していきたくない?

……ということで、「グリーンズの学校」ではこの度、“家族”をテーマにしたクラスを開講することにしました。講師はよしおかゆうみさん、ファシリテーターは杉本綾弓さん、発起人は河野奈保子です。

それぞれのプロフィールを、詳しく紹介しましょう。

よしおかゆうみ

よしおかゆうみ

ファミリー心理カウンセラー。専門は発達心理学。20年間、東京都の幼児教育に携わる傍ら「自己表現と友達関係」「乳幼児期から青年期までの連続性と現代の自立」などの研究にも取り組む。後年、夫婦・親子関係における深刻な悩みを抱える家族が増え、子どもへの影響を目の当たりにしたため、カウンセリングを学び独立。これまで延べ2万組の多様な親子・カップルと関わる。プライベートでは、家庭の複雑な事情を背負ってきた子どもたちを里親として引き取り育ててきた。自宅を開放し、様々な年代・立場の人たちが互いに学び合い、楽しく過ごせるコミュニティや場づくりなどの社会貢献活動を行なっている。

杉本綾弓(すぎもと・あゆみ)

杉本綾弓(すぎもと・あゆみ)

株式会社meguri代表取締役社長。
16歳より小売業で採用・新店立上げ・店舗マネジメントを行う。その後IT業界に転職。オフライン・オンラインでのセールス経験を活かし、中小企業向けコンサルティングを中心とした事業展開で2014年独立。また、病・出産をきっかけに、サステナブルな働き方・手触り感のある暮らし方に価値を置くようになる。バツイチ、再婚、1児の母。

河野奈保子(こうの・なおこ)

河野奈保子(こうの・なおこ)

グリーンズの学校校長。あだ名はQ(キュー)。今年結婚したばかり。夫はフェミニンで優しい。結婚を機に、パートナーシップや出産・育児について考えるように。この授業の言い出しっぺ。

開講にあたって、3人による家族鼎談を収録しました。なぜこのクラスを開講することにしたのか、どんなクラスにしたいのか。3人が持つ課題やゴールとは? さぁ、鼎談スタートです!

そもそも家族って何だっけ?

河野(以下、Q) いままでgreenz.jpでは子どもや家族に関する記事をたくさん出してきましたが、私自身はそれに対して「いいな」と思いつつ実感を持てていなかったんです。でも、結婚してようやく、「家をつくるって何だろう」とか、「夫とお互いに心地良い関係でいつづけるにはどうしたらいいだろう」とか、「子育てってどうなのかな」とか考えはじめました。

そこで周囲を見渡すと、パートナーとの関係性が芳しくない人、その理由をちゃんと自覚できていない人もいることがわかってきて。家族のことってパーソナルな領域にあって、みんなひとりで模索しているんだな、と感じたんです。

自分の人生を自分のものとして歩んでいきたい、家族がいるからできないなんて言い訳したくない。でもだからと言って、家族を犠牲にしたくない。そのためにはどうしたらいいか、少しの勇気を出しながら、みんなで考えるようなクラスをつくろうと思いました。

それで、近い問題意識を持っていた綾弓ちゃんに声をかけて、私たちは当事者ではあるけど専門家ではないから、ゆうみさんに相談して。

綾弓さん 「そもそもパートナーって何だっけ、家族って何だっけ」というような問いは考えるとどんどん生まれてくるし、そこに明確な解はないと思います。最終的には解を自分でつくることになるんだろうけど、そのためには自分が抱えている問題の輪郭をもう少しはっきりとさせる必要がある。みんなでそういったことに取り組めるクラスにしたいですね。

いまの家族は内に閉じている

ゆうみさん 一昔前と比べると、家族の形ってだいぶ変わってきているよね。核家族で、共稼ぎだけど生活に余裕はなくて、全部自分たちだけで何とかしなくちゃいけなくなっている。

自分と家族のことだけで手一杯で、外とのつながりや関係性を持ちにくい。そうするとすごく息苦しいよね。家族だけだとやっぱりバランスが取りづらいし、歪みが出てしまう。まして、家族にまつわる話って、お金や性・ジェンダー、生育環境といった自分のアイデンティティやプライドと密接に関わっているものだから、外に相談しづらいのね。

そういう状況って子どもも息苦しいの。人間関係が狭くて、親からの期待を一新に背負って、やりたくもない習いごとに通ったり、家族の望む姿を汲み取って演じたり。一方で、家族からの愛情がほしくて苦しんでいる子もいる。その格差が見えにくいことが課題だと思っています。

Q 私が仕事で出会う人たちの中にも、家族の関係性に悩んでいる方はいらっしゃるんです。社会的に意義のある仕事をしているし、人に対してオープンでもあるけれど、家族のことで人知れず悩んでいることがふっと垣間見えることがあって。

いまお話を聞いて、それはお父さん・お母さん・子どもという三角関係の中でどうにかしようとするからなのかも、と思いました。逃げ場がないというか。私たちは無意識に「人に話してはいけないもの」と思い込んでいるのかもしれないですね。

ゆうみさん 私は家を開放していて子どもたちが自由に出入りできるようにしているけど、それを新興住宅地でできるかというと、やっぱり難しいと言われちゃいますね。「そもそも隣近所の人と挨拶したこともないし、怖い」って。

綾弓さん 環境は大きいですよね。私も品川のマンションに住んでいた頃はまさにそんな環境でした。でも、保育園が空いてなくて、荒川区は入りやすいという統計があったから引っ越してきたんです。

そうしたら一気に近隣の人たちの顔がわかるようになって。いま、うちの子、隣に住んでる80歳くらいのおじいちゃんちに「ちょっと行ってくるー」ってひとりでトコトコ出かけていくんですよ。それで私がおじいちゃんに「ありがとうございます」って挨拶に行くと、「いいよいいよ、家のことしてな」って言ってもらえるんです。

ゆうみさん 綾弓さんのように人を信頼して関係を築ける人はいいけど、それができないタイプの人もいるよね。その中で、DVや虐待が起きてしまうこともあります。中々見えにくい人たちとどうすればつながれるか、「自分たちさえ良ければいい」という意識を越えて、「うちの子も隣の子も可愛がろう」という社会にできるか。余裕のない経済状況や、怖い事件を伝えるニュースが溢れている中で、いかに自分や自分の家を社会に開いていけるのか。それが私の一番の関心ごとです。

男らしさに女らしさ、○○ちゃんらしさ。「らしさ」から解放されたい

Q 「らしさ」からの脱却もひとつのテーマにしたいなと思ってます。いまはそれが足枷になっているのかなって。無意識のうちに、男性は家父長制度に、女性は母性に縛られている気がする。

綾弓さん 男らしさとか女らしさとか、○○ちゃんらしさとか。みんな、家庭でも学校でも仮面を少なからず被ってきた部分が誰しもあるんじゃないかな。

Q 小3のとき、父親が『アリーテ姫の冒険』(学陽書房)という本をくれたんですよ。誰かが幸せにしてくれるのを待っているんじゃなく、自分で創意工夫していくお姫様の話。ちっちゃいときからスカートが苦手で、「女子」じゃなくてもうちょっと中性的な立場でありたいなと思っていたんですが、父は私のそういうところ、わかってくれていたんだなぁと。

ジェンダー・アイデンティティにはグラデーションがあるとよく言われるけど、本当にそうだなと思います。自分もそうだし、夫にもいい意味で女性らしい柔らかい部分があるし。

ゆうみさん いいね。子どもの頃のそういうのって、ずっと影響するでしょう。

Q でも、そういう家庭で育ったからこそ、社会に出てギャップに混乱しました。

ゆうみさん 女性が家にいて男性が働いたほうが色々と効率が良かった時代があったけど、いまはそういう仕組みが崩れていて。でもまだ過渡期だから、制度や体制が昔のままの部分もあって。時代が変わる速度に制度やみんなの意識がついていけてなくて窮屈さを感じてる。じゃあ、自由になるためにできることは何だろうって、みんなが考える必要があると思う。

綾弓さん 私はアメリカのシリコンバレーでリーダーシッププログラムに参加したときに、自分自身が女らしさに縛られていたことに気づいたんです。言葉では、「分担をすべき」「平等に」とは言っていたものの、家事をちゃんとすることは「私がやるべきことだ」と潜在的・根底では思っていました。だから誰かに頼んだり、アウトソーシングすることに罪悪感があって、「自分ばかりが頑張っている」という気持ちになっていた。

でも研修中に、「あなたのビジョン・価値観は何か」ということを問われ続けて、私は誰かの価値観や世の中の常識ではなくて、自分の人生を自分でデザインしたいんだと強く思ったんです。だから、家のことは義務感ではやらない、やりたいときにやるという風に決めました。

ただ逆に、出産を経験して、家のことを女性がやるのは理に適っているとも感じました。子どもが小さいうちは外で仕事なんかできないし、家族のために家事をする自分も好きだと思った。でも、それもフェーズで変わってきて、子どもが大きくなってきたいまは、そろそろ家事を分担したいなと思っています。

ゆうみさん 女らしさ男らしさを全否定するとそれもおかしくなるからね。脳の違いだってあるし、ホルモンの影響だって受けるし、人生のフェーズによっても変わるから。

産後の妻を「精神的におかしくなった」と思う夫

綾弓さん 妊娠や出産を通して、こんなにホルモンバランスが激しくアップダウンするんだってびっくりしました。産後、退院して3日で母親に泣きついたんです。「泣き止んでくれない、もう限界、育てられない」って。

夫も、義理の母も手伝いに来てくれて、周囲はみんな優しくしてくれていたんですよ。でも、すごく思い詰めちゃって。自制心があるほうだと思っていたのに、感情をコントロールできなかったんですね。夫はそれが産後だからとは思わず、私のことを精神に異常があると思ったみたいです。最近ようやく「ホルモンバランスが崩れていたんだ」とお互い冷静に話せるようになりました。

ゆうみさん そういう情報を得られる場所がないからね。パパたちに本音を聞く会を開いたときに、ひとりが「実はうちの妻、精神病なんです」と話しはじめたの。

私は具体的な話を聞いて「あ、それは産後によくある症状」と思ったんだけど、ほかのパパたちも口々に「え、実はうちの妻も」なんて言うわけ。みんな奥さんに悪いから言わないだけで、かなりの割合の人が産後の妻を「精神的におかしくなった」と思うみたい。それを誰にも相談できない、だからホルモンのせいだということもわからない。

綾弓さん 最近は回復してきましたが、うちはそこからちょっと、夫婦関係に距離ができてしまったように思いますね。

ゆうみさん 「妻が怒鳴りちらしていたときの表情や声が忘れられない」という男性は多いですね。深い傷になってしまって、そこからセックスレスになったり。

Q 私も子どもを産んだら夫を罵倒するのかな……。

ゆうみさん 巣を守るツバメのようなもので、出産や子育てには、オキシトシンの働きが大きいと言われているよね。ただ、ホルモンも一人ひとり違いがあるから、全くそうならない人もいる。でも、「もしかしたらそうなるかもしれない」と知っておくだけで、お互いに対処できるでしょう。

Q 私はPMS(月経前症候群)が重いんですけど、最近それを夫にカレンダーを使いながら説明しました。「この時期機嫌が悪くなるのはお月様の影響です」って。そういうことも含めて何でも我慢しちゃう癖があって、いままで男性とのおつきあいがうまくいかなかったんですよね。でも夫と暮らすようになって、「この人には言っても大丈夫だな」ってわかってきて。

ゆうみさん 体は一人ひとり違うから、自分のことを把握して、パートナーに伝えてお互いにとって良い形を探ることが大事だね。ただ、産後に関してひとつ確実に言えるのは「寝不足は最強の敵」ということ。昔は大家族だったから面倒を見てくれる人がたくさんいて、タスクが分散されたんだよね。それでお母さんが寝不足にならなかった。眠らないと、人って回復できないから。

綾弓さん 産後の寝不足は本当に苦しいです!! それまでの寝不足とはレベルが違いましたね……。自分以外の誰かの事情によってずっと眠れない、3時間に一度必ず起きないといけないというのは人を狂わせますね。眠いけどごはんもつくらなくちゃいけない、洗濯物は溜まっている、赤ちゃんがいるから部屋を清潔に保ちたい、でもできない。そんなイライラがエンドレスに続くんです。

ゆうみさん お母さんの寝不足解消運動をしないとね。

綾弓さん アウトソーシングしようと思っても、高いんですよ。2時間で7,000円位かかって、それを床上げまでの28日間利用できますかっていうと、余裕がなければ難しい。そういうことも含めて考えて、私は最終的に下町という結論に達したんです。色んな人が助けてくれる環境で暮らすしかないって。

あたたかい家でお母さんが帰りを待ってる。
日本人の心に染み込んだ情緒

ゆうみさん でも、「女性は家で子どもを育てて家事をして……」っていうイメージって根強いって思わない? 「いまの時代、共働きなんだから育児も家事もふたりでやるのが当たり前だよね」なんて言っていた男性が、いざ子どもが生まれると「あれれ? 言ってたことと違わない?」という言動をしたり。

綾弓さん そういうのを見ると「いやいやいや…」と思っちゃいますね……。本人は充分やっているつもりだったりするんですけど、全体感を把握していないんですよね。「タスクを全部洗い出してみて、一割しかやってないでしょう?」と詰めたくなってしまいます。

ゆうみさん 仕事ならできることが、家庭になるとできないんだよね。感情が先に来るから。でも、家庭が一番の原点だから、そこでうまく舵取りできれば、いまの社会にふさわしいリーダーシップを発揮できるようになるはず。

ただ、頭ではそうわかっているのに、先進的でリベラルな考え方を持っているのに、そこを乗り越えられない人が多い。

これって何なんだろうと思って、日本の映画をたくさん観たの。すごく象徴的だなと思ったのが、『ALWAYS 三丁目の夕日』と小津安二郎の『秋刀魚の味』。この2本を観て、原因は日本人の集合的無意識に刷り込まれた情緒にあると思った。

家に帰ると肉じゃがの匂いが漂ってきて、お母さんが「おかえり、寒かったでしょ」と頬を包んでくれる、そんな情緒的な心地良さ、何ともいえない安心感が染み込んでいるんだよね。私たち日本人には。

Q 海外にはない?

ゆうみさん 海外も昔はそうだったと思うけれど。お母さんの手料理とか、田舎のおばあちゃんちで食卓に大皿料理が並んでいて……みたいなものに感じる甘酸っぱさは日本人特有の原風景だと思う。大学とかでの研究ではなくて私の個人的な感覚の話になってしまうけど。うちの夫もね、「おふくろのカニコロッケだけは覚えてよ」なんて言ってたから。

綾弓さん わかる気がします。夫も「無理に家のことをしなくていいよ、仕事していていいよ」と言ってくれるけど、やっぱりお母さんの安心感を求められている気がして。

ゆうみさん 私自身もこの2本の映画を観て「いいなぁ、この時代」と思ったし、心に深く染み込んだ感覚だから、否定したり乗り越えたりしなくちゃいけないものでもないと思う。でもじゃあ自分がそのお母さんになれるかと言ったら、なれないよね。その時代にはそういったお母さんのあり方が可能だった社会的背景や環境があったからできたわけで、いまの時代では無理。昭和的な家族観への郷愁を否定はできないけど、いまの社会状況とは違うことを認識しないといけない。

1977年に放映された『岸辺のアルバム』というドラマ、ふたりは知らないよね? 多摩川の堤防が決壊して、幸せだと思っていた家族の秘密が全部露になるという、すごく象徴的なドラマ。このあたりの時代から理想的な核家族の崩壊は始まっていて、形だけ取り繕ってきちゃったんだなぁって思う。

私はいまの結婚制度はもっと多様になっても良いと思っているけど、上の世代はそう感じてなくて、若い世代はすごく窮屈に感じている人が多い。一方で、若い子でも親の幻想をそのまま引き継いでいる子もいる。女子大生を相手にワークショップをすると、「なれるなら専業主婦になりたい」という子は多いから。

Q カタログ化されている生活様式って、価値観に影響を与えますよね。写真とか映像とか、視覚に訴えてくるものは特に。若い世代はインスタグラムの世界観や「丁寧な暮らし」ブームで可視化された生活様式に憧れたり、影響を受けているのかもしれませんね。

ゆうみさん 現代人の家族観のルーツには『ALWAYS 三丁目の夕日』や『秋刀魚の味』で描かれているものがあって、でももっと歴史を遡ると自由恋愛で家族の形はもっと違っていて。国民全体がそこのジレンマに陥っているんだなぁって思う。

綾弓さん 自分の原風景と、現代の社会状況の認知が必要ですね。その上で、かつての原風景に無意識のうちに囚われていたと気づいたならそうじゃない人生を選べるし、やっぱり原風景を再現したいと思ったなら、「いまの時代だと厳しい」と認識した上で努力すればいいし。

本当にほしいと思う家族の形を考えてデザインする「実験室」

Q いろんな人に来てほしいですね、このクラス。パートナーシップや子育て、介護に悩んでいる人はもちろん、独身者にも。家族のいる女性の参加が多いかもしれないけど、性別問わず、自分たちのつくりたい、大事にしたい家族のあり方を追求したい人に来てほしい。

ゆうみさん 「結婚や出産の各フェーズではこんな問題が起こりがちだよ」「グラデーションはあるけど、男女でこんな差があるよ」といった知識も踏まえながら、個々にあった形を模索していけるといいね。

綾弓さん 「自分はどう生きたいんだろう?」「どんな家族のあり方がいいだろう?」と考えて、ライフデザイン、ファミリーデザインをしていく。でも、そうすると人はパーフェクトを求めがちになるから、うまくいかないときに「そういう日もあるよ」と言ってくれる人とつながれる場にしたいな。

ゆうみさん 地域のつながりも大事だけど、同じ問題意識を共有している人とのつながりも持てるといいよね。「これが課題だけどできていない」があったら、次のクラスまでに何かやってみる。「子どもを1日預けあってみましょう」みたいな実験があってもいいかもね。家族実験室という感じかな。

綾弓さん 実験って面白い! 住む地域や国を変えるだけで問題が解決してしまうかもしれませんよね。東京で息苦しさを感じていた人が、関西や沖縄に行ったらその土地柄に合っていて解放されたり。暮らす場所も暮らし方も、自分が何を望んでいるかが認知できれば選択できる。選択して、「違ったな」と思ったらまた別の形を考えたらいいし。PDCAを回して理想に近づいていく。

——独身者がこのクラスに参加するメリットって何でしょう?

綾弓さん たとえば、これからパートナーや子どもを持ちたいと考えているなら、その予行演習ができると思います。

私は出産後、家族だけで閉じた世界にいると精神的に本当に苦しいと思ったから、打開策のひとつとしてインターンの子に子どもを見てもらいながら仕事を再開したんです。

私自身はもちろん助かったけど、子どもを見てくれた子も「子育てしながら働くイメージができた」と言ってくれました。また、その子は後に星野リゾートに就職したんですが、お客様は家族連れも多いから、子どもの扱いがわかっていてよかったって。同期はみんなわからなかったそうです。それくらいいまの若い子の周りに子どもがいないということですよね。

ゆうみさん 自分の家族について悩んでいる人はもちろん、社会に対して自分や自分の家を開いていきたいという人にも来てほしいな。できる範囲でいいの、一ヶ月に一度だけとかでも。安心して弱音を吐ける場所がひとつあるだけで、自分を大切に想ってくれる人がひとりいるだけで、子どもは前に進めるから。そのひとりがたくさんいることが大事なの。

綾弓さん マネジメントをしていても、複数の居場所のないまま大人になってしまった子はすぐにわかります。信じているものが1つだから、すごく危うくて、少し指摘しただけで潰れてしまう。だからまずは会社を居場所に、安全圏にしないといけない。

ゆうみさん すばらしいね。そこまで考えてマネジメントできる経営者っていないよ。

綾弓さん でも、会社を何でも受け止める場所にしてしまうと、甘えが出てしまって本人も成長していけないというジレンマも感じます。だから、社会の中に助け合える場所がたくさんあるといいなって。私自身、子育て中に助け合えるコミュニティが必要だと痛感したから、このクラスもそういう場所にできたら。

ゆうみさん ふたつめ、みっつめの家族のような。

綾弓さん お父さんがいて、お母さんがいて、子どもがいて、という状態を家族と呼ぶのではなくて、自分でデザインしたものを家族と呼んでいいと思うんです。あらゆる既存の枠、ステレオタイプな家族像やジェンダー的な役割を超えて、自分が本当にほしい家族の形を考えてデザインしていく。そんな実験の場にしたいですね。

(鼎談ここまで)

3人の発言を読んで、どんな感想を持ちましたか? 「そうそう、まさにそう!」と激しく頷きながら読んでいた人もいれば、「いまいち共感できないな」と首を傾げている人もいることでしょう。もし、この3人と家族について語り合いたい、自分らしい家族のあり方をデザインしたいと思ったなら、ぜひ家族実験室へ。みんなで一緒に、新しい家族の形を追求しましょう。

– INFORMATION –

自分も相手も「ちょうどよい」これからの家族のあり方をつくりませんか?
「ファミリーデザインクラス」参加者募集中

今回のクラスは「私・僕・私たちにとっての“家族”とはこういうことだ(そしてそれは変化していい)」をつくるクラスです。女、男、お母さん、お父さん、子どもがいるから、いないから「こうあるべき」ではなくて、肩書ではなく「だから年齢・結婚、子どもの有無、性別関係なく、どんな方でも参加していただきたいと考えています。みなさんにお会いできるのを楽しみにしています。
詳しくはこちらをぜひご覧ください!
http://school.greenz.jp/class/family-design2018/