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人は人とつながることで思いもよらぬ価値が生まれるはず。コミュニティ運営について学び合う場「コミュニティの教室」をはじめます!

最近、「コミュニティ」という言葉を、さまざまな場面で耳にするようになりました。
ビジネスでも「コミュニティマーケティング」というワードが注目されていたり、ある大学では「コミュニティデザイン学科」が創設されたり、地域や会社でもよりよいコミュニティ運営を求められるようになっています。

ところで、「コミュニティ」とは本来どんな意味なのでしょうか。
「大辞泉」によると、「居住地域を同じくし、利害をともにする共同社会。町村・都市・地方など、生産・自治・風俗・習慣などで深い結びつきをもつ共同体」とあります。

しかし現在では、戦後の高度経済成長の時代を経て、かつてのような地域社会が維持されているところは着実に少なくなっています。哲学者の内山節さんの言葉を借りながら、現代社会を表すと「地域社会がただの住宅地になっていくと、コミュニティの崩壊が意識されるようになっていく。その結果、コミュニティについてもう一度考え直そうという意識が生まれている」という現在地なのかもしれません。

地縁の共同体に限らず、趣味や価値観にもとづくさまざまなコミュニティが生まれている昨今、コミュニティが生まれたり、広がったり、収縮しているとき、さまざまな段階で課題や難しさがあるものです。

そこで「グリーンズの学校」では新たに、コミュニティ運営について継続的に学ぶ「コミュニティの教室」というゼミ型クラスをはじめます。どんなクラスになるのか、企画・運営するグリーンズの鈴木菜央植原正太郎佐藤大智に話を聞きました。

「コミュニティの教室」とは?

正太郎 「グリーンズの学校」ではこれまでもエコなお家をつくるためのDIYを学ぶクラスや、ライター・編集者を志す人が文章の書き方を学ぶクラスなどを開催していますが、それらは基本的に全6回の授業で完結します。それに対して、今回はじめるゼミ型クラスは半年〜一年間通い続けて、継続的に学んでいくことが前提になります。

その第一弾となる「コミュニティの教室」では、30人の受講生と一緒に、コミュニティの育て方や共同体の設計について学び、学んだことを現場に持ち込んでどんどん実践していくクラスにできればと思っています。僕自身もプレイヤーの一人として、そういう学びの場がほしくてつくったというのが本音です(笑)

植原正太郎/グリーンズの会員制度「greenz people」の運営を担う。

大智 具体的には、第一線で活躍するゲストをお招きして話を聞く授業と、受講生同士でお互いの活動から学びあうオンライン勉強会を交互に行います。ゲストは概念・実践・事例の3つのジャンルに分けてお声掛けします。「概念」なら人類にとってのコミュニティの歴史について文化人類学者に学んだり、「実践」ではファシリテーターに場づくりの肝を学んだり、「事例」はすでにコミュニティづくりに取り組んでいるプレイヤーに試行錯誤の話を聞くなど、さまざまな視点から学んでいきます。

またオンライン勉強会では、受講生が取り組んでいるコミュニティにまつわる活動を教材にして、受講生同士が学び合えるようにできたらと思っています。

佐藤大智/「グリーンズの学校」やgreen drinksの運営に携わる。

正太郎 たとえばコワーキングスペースを運営している人が受講生にいたとします。その人は、働いている人たち同士で活発に交流が生まれるようなコミュニティになってほしいと思っているんだけど、なかなかうまくいかなくて悩んでいる。オンライン勉強会では、その悩みを教材にしてみんなでディスカッションする、といったイメージです。実践者だからこそたくさんの悩みや葛藤があるはずなので、それ自体が教材になると思うんです。

大智 ゲスト講義からのインプットと、オンライン勉強会でのアウトプットを繰り返すことで、より実践的に学べるし、受講生もいつもとはちがうジャンルの活動に接する機会にもなります。

正太郎 100のコミュニティがあれば、100のアプローチや仕組みがあると思っていて。「ここでうまくいけば、あそこでもうまくいく」というわけではないんですよね。だからこそ、それぞれが無限の教材になります。

コミュニティをつくり直す時代

ウェブマガジンgreenz.jpとして王道ともいえる「コミュニティ」というテーマに、なぜ今回、真正面から取り組むことにしたのでしょうか? その想いを伺いたいと思います。

菜央 前提として、人間はコミュニティなしには生きていけないよね。一人ではできないことをみんなでやって、知恵をつないで発達してきた。でも、ここ200年くらいは人類史上初めてコミュニティが弱まっている時代だと思う。だからこそ、いまコミュニティをつくり直す必要がある。

鈴木菜央/greenz.jp編集長。千葉県いすみ市でパーマカルチャーを学ぶ「Dojo」も運営する。

正太郎 多くの人がモノやコトにある程度満足しているいま、足りないのは心の豊かさだと思っています。では、その“心の豊かさ”はどこにあるかというと「人間関係」にあるんです。

TEDで「人生を幸せにするのは何か」というスピーチがあるのですが、そこで紹介されている研究が最高に面白いんです。ハーバード大学が700人以上の男性を対象に、彼らが亡くなるまで75年間、毎年インタビューをつづけるという研究です。裕福な家庭で育った男性と、貧困地域で育った男性の2つのグループにわけているというのもポイントです。毎年のインタビューを通じて何が人間の幸福に起因しているのかを調べたところ、一番大きな要素は、どれだけお金を持っているか、とか、どこに住んでいるかではなくて「いい人間関係」だという研究結果が出ているんです。最も幸せに過ごした人は、家族や友だちに恵まれていたり、頼れるコミュニティに属していたりする人たちだったんです。

ロバート・ウォールディンガーによるTEDxBeaconStreetスピーチより。

大智 この研究、面白いですよね。でも、人間が幸せになるためにとても大切な「人間関係」をどうやって築けるのか、ということは、意外とわからないことが多いという。

正太郎 そうなのよね。余談だけど、ここ1〜2年くらい、僕の同世代の友人から「村をつくりたい」という声をよく聞きます。それはバーチャルな「村」ではなくて、どこかの土地に根を張った実態のある「村」のことを言ってます。仲間といい人間関係を築きながら、幸せに暮らしていくためにコミュニティをつくりたいということなのだと思います。

大智 僕もよく「村つくりたい」って言ってます(笑) 自分の暮らしを変えるために国、社会を大きく変えることは難しいけど、仲間と村を自治することは未来への可能性がある気がして。もともと僕の実家は福島の田舎で、小学校の同級生は8人、全校生徒が40人くらいの、まさに村でした。でも、田舎的な村には限界を感じていて。近所の人たちには見守ってもらっている感じがあるけど、見張られている感じもあって、それはそれで生きにくいなと。

正太郎 人口が増えつづける都市でも、地縁の残る田舎でも、コミュニティのあり方には限界がきていて、その真ん中を模索し、コミュニティをつくり直しているのが今の時代なのかもしれないね。

人は、人とつながり、貢献することで、価値を発揮できる

菜央 ぼくが暮らしているいすみ(※)では今130人くらいが参加して「米(まい)」という地域通貨をやっているんだけど、いろんな利益があるんだよね。

この前は「うちにフランス人が3週間くらい泊まりに来てるんだけど、誰かどこかに連れていってくれない?」と呼びかけた人がいたんだけど、みんなであちこち連れて行ったり、地元の中学校に呼んでフランスの話をしてもらったり、という出来事があったよ。

2年前には、台風で梨農家さんの梨が木から落ちてしまったとき、みんなで取りに行って、そのあと町中のお店で梨を使った料理が出たり、駅前で「フリー梨」を配って義援金を集めたり。地域通貨を通じて、おもしろいことがたくさん起きている。
※菜央さんが暮らす千葉県いすみ市

右上から時計回りに、地域通貨シミュレーションゲームの様子、テレビがない人が地域通貨で録画を依頼、イベント出展の手伝いを地域通貨で募集、台風で落ちたなしをみんなで取りに行ったときと新聞に掲載された様子、参加費の一部を地域通貨で払えるコンサートの様子。

正太郎 その地域通貨はどんな仕組みなんですか?

菜央 仕組みは簡単で、困っていることをFacebookグループに投稿して、それに返事をして、お礼に地域通貨を渡す…という流れ。

あとリストをつくっていて、名前と住んでいる地区、自分にできること、みんなにしてほしいことを書いて、それをウェブ上に掲載していて。それを見ると「このエリアにはこんな人が住んでいるだな」と可視化されてすごく便利だし、安心。たとえばDIYの道具を自分ひとりで揃えなくても、なんでも借りれる。困ったときに頼れる人がわかっている。

地域通貨をはじめるとき、みんな「私なんて何もできない」って言うんだけど、別の人から見ると意外な価値がたくさんある。例えば、僕にとってはパソコンできるなんて当たり前に感じちゃうけど、ラーメン屋のおばちゃんにタブレットの使い方を15分教えただけで、おばちゃんの人生がバーンと開けて超絶感謝されたり(笑)

旅行に行くことになったとき、すごく困ったのが、にわとりの世話。「毎朝6時に来てもらうなんて、できないよ…」と思っていたけど、いろんな人が来て、家族でにわとりと遊んでくれた。僕にとっては日常も、みんなにとっては最高の体験。だから、「できないこと」や「弱さ」は誰かの可能性を開くチャンス。新しい経験のチャンス。みんなそれぞれ不完全だから、多様な人同士が助け合うことがすばらしい。

大智 藤野(※)の地域通貨「よろづ屋」のお話を伺ったとき「やってほしいことを伝えることも地域通貨が循環するという貢献になる」という言葉を聞いて、とても印象に残っています。ほかの誰かが貢献できる機会を提供してくれている、と。みんなを頼りすぎて通帳の残高がマイナスになってもいいのが、普通の経済と違っておもしろいなと思いました。
※神奈川県の旧藤野町、現相模原市緑区

藤野の地域通貨「よろづ屋」についてはこちらの記事を。

正太郎 人間って、たったひとりだと価値を十分に発揮できないけど、人と人がつながることで、なにかが交換されて思いもよらぬ価値が生まれるんだと思います。藤野やいすみの地域通貨が、わかりやすく実証してくれていると思います。

大智 僕は「gifter & gifter」というFacebookグループを実験的に運営しています。100人くらいが参加しているのですが、誰かが持っているモノやスキルをギフトしたり、交換したりすることが目的です。実際は「◯◯が余っているけど誰かいりませんか?」とか「◯◯を持っている人いませんか?」とか、モノのマッチングが多いですね。でも、モノのマッチングがこのグループの一番の狙いではなく、モノを介してコミュニケーションが発生したり、人のつながりがたくさん生まれています。でも、グループが活性化し続ける状態を維持するのは難しいななと課題も感じています。

菜央 人間は貢献したい生き物なんだろうね。贈りものをするとか差し出すことで、自分も心地よさを感じるんだと思う。

正太郎 僕の場合は、東京の武蔵小山でご近所コミュニティのようなことが3年ほど続いています。僕がたまたま武蔵小山に引越したら、家の近くに友だちがいて、そのまた友だちも近くに住んでいたりして。気づいたら誰も友だちのいなかった街に30人くらい友だちができたんです。

当初は、たまに集まっては居酒屋を開拓する飲み会サークルみたいな感じだったんだけど、ある日風邪をひいて自宅で寝込んでる友だちがいたので、ポカリと風邪薬を渡しに行くという出来事がありました。その時は自然なことだったんだけど、あとから振り返って「これって画期的なことだ」と思いました。都会の一人暮らしだと風邪をひいても看病してくれる人が近くにいないことも多いけど、近所に友だちがいれば助け合える。これはなかなか心強いなと。

それ以来、風邪をひいたときにはおかゆを届け合う関係をつくることをミッションに「MKN(武蔵小山ネットワーク)」というグループ名を名乗って、いろんな実験を繰り返しながら、コミュニティのあり方を勉強してきました。学べば学ぶほど、奥が深くなるのが「コミュニティ」だと思うようになりました。

「MKN」では畑を借りて”農業部”も発足。

最後に、今回の「コミュニティの教室で学んでみたいこと」を3人に聞いてみました。

大智 みんなが能動的にやりたいことをやりながら、周りにもいい影響を及ぼして、どんどんいい状態になっていくにはどうしたらいいんだろうという問いをずっと持っていて、それについて考えを深めたいと思っています。あと、誰かが手をかけすぎずにみんなの自発的な動きが持続することって難しいなといろんな活動のなかで経験しているのですが、今回このクラスの中でメンバーと実践しながら学んでいきたいと思っています。

正太郎 限られた仲間で”濃い”コミュニティをつくることはそんなに難しいことではないと思っているのですが、そこに多様性があったり、新陳代謝があったり、外にも開いている状況をつくることってすごい難しいと思っています。何の問題もない「理想のコミュニティ」ってのは幻想かもしれませんが、いろんなパターンのコミュニティのあり方から学びたいと思っています!

菜央 僕は、ひとまず「どうやってはじめたらいいのか」を知りたいんじゃないかと思うね。僕自身がそうだったから。とにかく最初の一歩が一番勇気がいるし、むずかしそうに見えるから。そんなはじめ方を、いろんな角度でなんども練習できると、あちこちにコミュニティが育って、最高に楽しいんじゃないかな。あ、このクラスがきっかけでできたコミュニティ同士は、お互いに訪ねていけたら最高だね。わくわくするね!

(鼎談ここまで)

コミュニティ運営には、明確な答えやマニュアルはありません。でも、ほかの事例や客観的な視点から気づきを得ることは大きな収穫になると思います。今まさにコミュニティ運営に悩んでいる人、これからコミュニティを広げていく人など、グリーンズと一緒に学んでみませんか?

– INFORMATION –

「コミュニティの教室」は2019年1月から6月開催の第2期メンバーを募集中です。(オンライン参加可能)

詳細はこちらからご確認ください。

http://school.greenz.jp/class/community2/