一人ひとりの暮らしから社会を変える仲間「greenz people」募集中!→

greenz people ロゴ

誰もが働くことに傷ついてしまう世の中だけど「心うごく仕事は、できる」。 若者に伴走して10年、ハローライフは何度でも肯定する。

この世の中で生きること、働くことは密接に関わっています。

会社員として、アルバイトとしてお金を稼ぐことから、地域や家族などのコミュニティで役割を持つことまで。働くかたちは千差万別ですが、多くの人は「働く」ことに多くの時間を費やして生きていきます。

ところが、「どうしてこんなにも?」と思うほどに、「働く」ことに多くの人が傷ついたり苦しんでいます。

たとえば、終わりの見えない就活。働きはじめてからは、上司・同僚との不調和や、多忙によると過労とストレス。仕事を辞めたくても、「この社会から居場所を失うかも?」とプレッシャーを感じ、がまんして働き続ける人もいます。

大阪のNPO法人HELLOlife(旧名:スマイルスタイル)は、こうした悩みや苦しみを抱える人に寄り添い、今のこの日本での「働くこと」に向き合い続けてきました。創業から10年目を迎えた「HELLOlife」のスタッフのみなさんに、彼らが伝え続けたい「働くことを肯定するメッセージ」をお話いただきました。

(*)記事では団体名を「HELLOlife」、施設・サービス名を「ハローライフ」と表記します。

人生とは「雨の中でダンスを学ぶこと」。
私たちは嵐の中でも絶景を見に行く

大阪のビジネス街のオアシス・靭公園のそばにある就業支援施設「ハローライフ」。2013年5月のオープン以来、就職や転職に悩んでいる若者には求人情報や就業支援プログラム、採用・経営に課題を抱える企業には求人広告記事の作成から組織開発支援まで、幅広いプログラムを提供してきました。

昨年末、創業10年目を迎えるにあたって、これまで親しまれてきた「スマイルスタイル」という法人名を「HELLOlife」に変更。「雨の中レインコートを着て踊る人」をヴィジュアル・アイデンティティ(VI)に選びました。

創業間もないころ、田川さんがふと手にしたカッティング・シートに書かれていた言葉。時を経てみなおしVIのコンセプトに選んだ

このVIは、アメリカの作家、そして起業家でもあるヴィヴィアン・グリーンの言葉、「人生とは、嵐が過ぎるのを待つことではない。雨の中でダンスすることを学ぶこと」からつくられたもの。このVIにこめられた思いを、創業メンバーのひとり、田川香絵さんにお話をうかがいました。

田川香絵(たがわ・かえ)さん。学生時代にスマイルスタイルの立ち上げに参加。公私ともに代表の塩山諒さんを支え、すべての事業のバックボーンを構築してきた、HELLOlifeの大黒柱的存在。

田川さん 「働くことはつらいことだ」という言説にあふれる世の中を“嵐”にたとえるなら、ハローライフに出会って自分の納得できる働き方を見つける人たちの姿は「雨の中でダンスすることを学ぶこと」という言葉にぴったりくると思ったんです。そして、私たち自身が歩んで来た道も。

HELLOlifeは、「若年無業者約61 万人、完全失業者約166 万人、非正規雇用者数約2036 万人、生活保護受給者数約212 万人(*)」という厳しい現実に向き合い、「一人でもしあわせに働く人を増やす」ための道を切り拓いてきました。
*総務省「就業構造基本調査(平成24年)」「労働力調査(基本集計、平成30年)」、厚生労働省「生活保護の被保護者調査(平成29 年9月)」より

田川さん HELLOlifeには、どんなに大きな壁にぶちあたっても「どうすれば乗り越えていけるか」を考え笑顔で突破していくスタッフがいます。そんなスタッフの姿勢、私たちが提供するサービスで若者たちが課題を解決する姿も「雨の中でダンスすること」。あるいは「嵐の中の絶景を見に行く」と言ってもいいかもしれません。

雨の中でダンスし、嵐の中の絶景を見に行こうとする――HELLOlifeのスタッフってどんな人たちなのでしょう? まずは「ハローライフ・スクール」を担当する、渡辺眞子さんにお話を伺ってみましょう。

人生のハンドルを自分の手で握ろう

渡辺さんは、就業支援プログラム「ハローライフスクール」のデイコースを担当。朝10時から午後5時まで、10日間のファシリテーションプログラムのなかで、「自分はどう生きていきたいのか。その生き方を実現する働き方とは?」を、参加者にじっくり考えてもらう場をつくっています。

渡辺眞子(わたなべ まこ)さん。静岡県立大学在学中から若者支援の現場に携わり、2015年にHELLOlifeに新卒入社。大阪・奈良での就業支援事業や「住宅つき就職支援プログラム“MODEL HOUSE”」の担当をしている

渡辺さん ハローライフスクールでは、これまでの人生を振り返りながら、大切にしている価値観や強みを見つけていきます。人生を歩むうえで基軸となる言葉、考え方や価値観を一人ひとりのなかで醸成し、自分が望む働き方を実現するには、どんな環境や会社がベストなのかを具体的に考えていき、求職活動につなげます。

デイコースの参加者は、主に20代の求職者。就活に悩む大学生の姿もあれば、数年働いて退職した人、大学中退後はアルバイトをしていた人など、その経歴はさまざまですが、「働く」ことでつらい思いをした人も多いといいます。

渡辺さん 忙しすぎて精神的にきてしまったり、体調を崩したりして辞めた人。会社に求められたことができなくて自信を失くしてしまった人もいます。ハローライフのウェブサイトにたどり着いたときには、働くことに不安を感じ、肯定的に受けとめられなくなっている人も多くいらっしゃいます。

ハローライフスクールにて


ハローライフスクールは、「ひとりで戦わない仕事さがし」。最初は不安そうな参加者も、日を追うにつれて表情が明るくなり、グループワークでは生き生きと自分の望む生き方を語り合うように。他者を通しての自己内省によって、自分の姿や意志を客観視しやすくなり、自分の実現したい未来を理解することにもつながるのです。

プログラムを通して参加者同士が贈りあう「コメント」も、それぞれが次の一歩に進む原動力になっています。

渡辺さん 印象的なのは「みんなが私のことを強いと言ってくれたけど、全然そんなことないんです」と言う人が多いこと。たぶん、スクールで「どう生きて、どう働きたいか」が深まることでその人が本来持っているエネルギーが湧いてくるからから、周りのメンバーは「こういうところが強いですね」「尊敬します」というコメントをするんだろうなと思います。

最終日には「大学の卒業式では泣かないけど、このメンバーと離れるのは寂しい」と涙する人もいるのだそう。進路が決まってからも、「働く」を考えるOB・OGコミュニティが待っています。「どうやって生きていく?」と真剣に語り合った仲間とのつながりは、これからの人生を支える力です。

渡辺さん ハローライフスクールでは、「会社や誰かに自分のキャリアを委ねるのではなく、自分で人生のハンドルを握っていこう」とお伝えしています。ハローライフは人生のハンドルを握りはじめた人の相棒みたいな存在になれたらいいなと思います。

ハローライフスクールを卒業した人たちは、ハローライフで個別面談・サポートを得ながら就職活動を行うことになります。彼らが望む働き方、生き方を実現できる企業とのマッチングは、どのように行われているのでしょうか? 企業向けの採用・組織開発支援を担当し、これまで200社以上の中小企業の採用活動をサポートしてきた、組織戦略プランナーの藤吉航介さんにもお話を伺っていきましょう。

求職者の心に届くのは、社員自らが語るメッセージ

HELLOlifeが行う、企業向けの採用支援サービスの中心を担うのは、働く人の声をていねいに届けるレポート形式の求人記事(広告)です。ただ、記事を制作するのではなく、企業の悩みに寄り添い伴走するのが藤吉さんの仕事。ときには、採用に悩んでいる人事担当者に求職中の若者のリアルな声を聞いてもらう場を設定することから始めるときもあるそうです。

藤吉航介(ふじよし・こうすけ)さん。製薬会社、保育系NPOを経て2015年にHELLOlifeに入社。組織戦略プランナーとして、200社を超える中小企業の採用活動や組織変容に伴走する

今は、企業も選ばれる時代。しかし、自分たちの魅力の伝えかたがわからず、採用活動に課題を抱える中小企業も少なくありません。藤吉さんは「求人記事の制作プロセスで社内に目を向けていくと、力強いメッセージを発信できるようになる」と言います。

藤吉さん 求人記事はいわば企業からのラブレター。一緒に働くメンバーを求め、思い切って声をかけたのに世の若者から返事がないと、企業さんもけっこう傷ついています。それこそ、仕事を探す若者と同じくらいに。痛みは伴いますが、まずは伝わらない事実を受け入れることからはじまると思います。

企業の思いを伝えるには、“求職者目線”が不可欠。求職者が一番知りたいと思う「働く社員が自分の言葉で語る仕事や製品への熱い思い」をしっかり編み込んでいきます。

ハローライフの求人広告記事。「7〜8割が採用に至った」という実績があります


採用を行うよりも、まずは社内の状況を改善すべきだと判断したときは、組織開発を提案することも。

藤吉さん 企業にとって採用とは、入社した人が活躍し、組織の成長と企業価値が向上することがゴールです。「まずは、社内の若手スタッフの意見集約からはじめませんか?」とお話したり、ハローライフで若手社員向けの研修会を開かせてもらうケースもありますね。

ドリンク片手に気軽に話せる「ホンネで話せる夜の合説」で、求職活動中の若者の気持ちを肌で感じていただくことも

求人記事の制作を希望する会社に対して、「この会社の人たちはしあわせに働けているだろうか?」「採用を通して、どんな組織の未来をつくりたいのか?」まで踏み込んでいくのがHELLOlifeらしいところ。あくまでもストイックに「どの企業にも必ずある求職者に届けられる魅力」を探し、リアルな対象層に届くよう編集しています。

藤吉さん 社員一人ひとりが自分の仕事の意味や目標を見つけられる組織環境をつくっていくことは、しあわせに働き続けられる人を増やすことにつながります。組織の痛みや苦悩、葛藤に寄り添いながら、つくりたい未来に一緒に踏み出していけるような関係を、HELLOlifeと企業、求職者とともに築いていけたらいいなと思います。

以前、藤吉さんはある企業の方に「ハローライフに来たら、いい未来が描ける気がする」と言われたことがあるそうです。求職者にとっても、企業にとっても、ハローライフはそんな場所であってほしいと、藤吉さんもまた願っています。

しあわせに働く人を一人でも増やせるなら
そこに人生を捧げて死んでいってもいい

2017年から、HELLOlifeは新しく2つのプロジェクトに取り組んでいます。

ひとつは、住宅つき就業就職支援プロジェクト「MODEL HOUSE」。非正規雇用で収入が安定せず、自立した生活を送ることが難しい若者に公営住宅の空室を提供。行政や国の複数のセクションが団結し、日本財団からの支援を受け3年の構想を経て実現。公営住宅を活用した就業支援は全国初の試みです。国の支援メニュー等も活用しながら、就職・住宅・コミュニティの3点で支えていくプロジェクトです。現在、8名の若者が参加しています。

住宅つき就業就職支援プロジェクト「MODEL HOUSE」

もうひとつは、大阪府が運営する総合就業支援施設「OSAKAしごとフィールド」での取り組みです。一般財団法人大阪労働協会と共同企業体をつくり、多くの人が利用する既存の求職者支援施策の価値拡充を目指しています。

年齢や性別、障がいの有無に関わらずすべての求職者が就業支援を受けられる、「OSAKAしごとフィールド」。「全国で一番信頼される行政サービス」を目指しています

田川さん HELLOlifeは、わたしたちの暮らしの中に潜む「働く」ということにまつわるさまざまな問題を事業を通じて解決し、その解決手段をシステムとして社会に構築することをめざす組織です。

自分たちがつくったものをいずれは公共サービスの価値拡充に役立てていきたい。そうなると、全国に展開することも夢ではないかもしれない。だからこそ「MODEL HOUSE」は民間の空き物件ではなく、全国どこにでもある公営住宅から始めたかったんです。

HELLOlifeの新しい法人サイトに刻まれているタグライン「Create the NEW PUBLIC」には、「解決手段をシステムとして社会に構築することをめざす組織」であることが明示されている

HELLOlifeが目指すのは、課題解決を可能にする社会システムの構築。なぜなら、雇用問題は、次世代の子どもたちの貧困。さらには国の納税額や社会保障費にも影響し、社会全体に貧困の連鎖を生み出すからです。

「しあわせに働く人を増やす」ということは、単なる幸福度の話ではありません。貧困の連鎖を断ち、豊かな社会を生み出す最初の一歩に、どうしても必要なことなのです。

田川さん この問題って、もしかしたら何十年経っても解決していないかもしれないと思うんです。それなら、自分が生きている短い期間だけでも、しあわせに働く人を一人でも多く輩出できるなら、そこに人生を捧げて死んでいってもいい。代表の塩山もきっとそう思ってるんじゃないかな。

「この仕事に人生を捧げて死んでいってもいい」。すごく重たい言葉を、田川さんがさらっと口にしたので、思わず「なぜ、そこまで思えるのですか?」と聞き返してしまいました。

田川さん 私には、困っている誰かの役に立ちたいというすごくシンプルな欲求があります。その欲求を満たすために、そして自分のすべてを一番生かせる最適な場所がHELLOlifeなんです。だから、「若者のため」と思ったことは一度もありません。すべて「自分のため」であって、自分の欲求を満たす仕事だから、一生懸命になれるだけ。だから、これからもずっとブレることはないと思います。

取材に伺った日は雨。「まるで神様の粋なはからいですね」と田川さん

「心うごく仕事は、できる」

今、ハローライフのウェブサイトには、きっぱりと短い言葉が腰を据えています。「心うごく仕事」とは、田川さんが言うように「自分のため」だと思ってやれる仕事。自分自身が満たされたり、喜びを感じられる仕事だと思います。

どんな“嵐の中“でも、ずぶぬれになっても「心うごく仕事は、できる」と笑って肯定する、ハローライフとの出会いから「心うごく仕事」を見つけていく人が、増えてほしいと心から願います。

もし、大切な友人や家族が、「働く」ことに悩んだり、苦しんでいたら、「大阪のハローライフを訪ねてみたら?」と勧めると思います。もちろん、この記事を読んでくれたみなさんにも。ぜひ一度、ハローライフのウェブサイトをのぞいてみてください。

– INFORMATION –

HELLOlife2019年度 新卒採用&中途採用について
現在、HELLOlifeでは、2019年度の新卒採用&中途採用を行っています。4月26日(木)には、新卒・中途リクルート説明会も開催。田川さん、渡辺さん、藤吉さんと一緒に「心うごく仕事」をしたい!と直感したなら、ぜひHELLOlifeにアクセスしてみてください。
https://co.hellolife.jp/recruit/