新しい価値をつくる人がいなくなったら、社会は進まない。「未来思考の商品開発」を支えてきた最上元樹さんに聞く、困りごとと知識を結ぶ場のつくり方。

新しい価値をつくる人がいなくなったら、社会は進まないと思います。私が大切なのは、イノベーターであり、生産者であり、新しい価値をつくる人だと思います。例え、物やサービスがたくさんあっても、それでも更に新しい価値をつくり続けたほうがいいと思っています。

そもそも、物があふれる時代に、商品開発を行う必要性があるんでしょうか?
「未来思考の商品開発」をテーマとするこの記事を担当することが決まったとき、必ず聞こうと思った質問です。

イノベーション・ファシリテーターの本音」連載4回目にご登場いただくのは、株式会社フューチャーセッションズ イノベーション・プロデューサーの最上元樹さん

最上元樹(もがみ・げんき)さん。企業や行政、NPOに向けたイノベーション・コンサルティングを行う株式会社フューチャーセッションズに所属。

最上さんは大学卒業後、プリンター用ラベルシールメーカーとして有名なエーワン株式会社に入社し、営業、商品開発、マーケティングに従事しました。エーワン株式会社が3Mジャパングループにグループ入りして、文具オフィス事業部のマーケティングマネージャーに就任します。

その後、3Mジャパングループを退職して、最上さんはフューチャーセッションズに入社しました。当時のフューチャーセッションズは商品開発に関わるフューチャーセッションプロジェクトが増えていたタイミング。最上さんには市場開拓や商品開発などの経験があったため、「未来思考の商品開発」にまつわるフューチャーセッションプロジェクトを数多く担当しました。

今回のインタビューが終わる頃、そんな最上さんに冒頭の質問を投げかけました。

前職でも、さまざまな商品開発をしてきました。確かに、どうしてこれだけ物があふれた時代に更に新しい物をつくるのかという意見はあります。でも私は「物があふれていると新しい価値の物をつくってはいけないのか?」と考えています。

本当に、物があふれる時代でも、商品開発によって新しい価値をつくる必要はあるのでしょうか? その答えを「未来思考の商品開発」におけるファシリテーションから学びます。

ファシリテーターの役割

最上さんはまず、「セッションにおいて、ファシリテーターは、問いかけでプロセスを支援する」と言います。どういう意味でしょう?

私にとってのファシリテーションは、フューチャーセッションの参加者が何らかの答えを出していくプロセスを問いかけで支援することです。

ファシリテーターは、「1+1=」といった問いかけを出す立場で、「2」という答えを出すわけではありません。「2」を考えるのは参加者になります。そのため、ファシリテーターは参加者が解きたくなる問いかけを出すことが重要になります。

そして、参加者一人ひとりでは考えることが難しい複雑な問題について、多様な参加者自身が力を合わせて答えを出していけるように、問いかけを工夫することで、順を追って考えるためのプロセスを支援しています。

商品開発のフューチャーセッションプロジェクトのファシリテーションを任されても、「つくれ、つくれ」と煽るどころか、「つくりませんか?」と促すこともないようです。じゃあ支援ってどうやるんですか?

新しい考えが創発されたときに人は面白さを感じるはずです。ファシリテーターとして、それをデザインしたいと思っています。

フューチャーセッションでは、「安心・安全」な場をつくることで、多様な参加者が「お互いの知識を話し合える環境」を生み出しています。環境を整えた上で、さまざまな問いかけを投げかけることによって、自然にアイデア出しができるように全体を整えていきます。

「安心・安全」を生む支援のために、最上さんは、「フューチャーセッションの入り方」に気をつけているそうです。

「仮説」を立てて初日に臨む

事前準備について、僕の職業(ライター)に合わせて、「もしも『未来のICレコーダーを考えるプロジェクト(仮)』だったら」という設定で教えてくれました。

図解しながら教えてくれました

私はよく20〜30人が参加するフューチャーセッションプロジェクトを担当していますが、仮説を立てるために、その20〜30人をセグメントに分けて、属性別に人の考えをイメージしていきます。

テーマが「未来のICレコーダー」であれば、まず新井さんのようにICレコーダーを使っているライターが参加しているでしょう。あるいはICレコーダーの製造者も参加しますよね。またはICレコーダーにかかわらずガジェット好きな人が参加している可能性もあります。

そういう人たちが大切にしていることや、意識していることに「仮説」を立てます。

可能であれば、フューチャーセッションの参加者に事前アンケートを取り、どんな人たちが集まっているのかを把握しておくそう。最上さんは、参加者に対する仮説を整理しておくこともあるらしいですが、仮説をどうやって具体化していくのか、もう少し詳しく聞いていきます。

参加者の困りごとと知識を結ぶ

たとえば、ガジェット好きな人は、ICレコーダーという機器に対して録音という範囲を超えた観点を持っているかもしれません。小型化だったり、音質性能だったり。一方でライターなら録音が1対1なのか複数人対複数人なのか、あるいは大事なのは指向性なのか携帯性なのか、保存形式はWAVがいいのかMP3がいいのか気にしていそうです。

ガジェット好きならICレコーダー全般に詳しいかもしれないから、ICレコーダーがどんな変遷をたどってきたのか調べますし、一方で、ライターならICレコーダーをどう扱っているのか、今後はどう扱っていきたいと思っているのか「背景」を調べておく必要もあります。

参加者が気になっていることを洗い出した後にやることはなんですか?

たとえば、ライターならICレコーダーを使っているときの困りごとやニーズを吐き出したくて参加してくれているかもしれません。でもそのニーズはライターが見たことのない既製品で解決できる可能性もあります。

だからライターが知る必要のある情報が、製造者やガジェット好きの口から出てくるようにする方法を考えます。

一方で、フューチャーセッションを行うときは、対話の流れやテンポにも気をつけているそうです。

「間合いを見ることは一番楽しいし、緊張する」

たとえば、問いかけを選定する際に、「考える範囲が広い言葉を使った問いかけ」を使うか、「考える範囲が狭い言葉を使った問いかけ」を使うか。更に、対話の時間を「2分」にするか、「3分」にするか。このような細かい点も考慮しながら、対話全体を設計しています。

細かく考慮すると、判断を要する観点も増えるはず。どんな基準でジャッジしますか?

アウトプットを出すことが前提ですが、一つひとつの問いかけについては、自分だったら考えやすいか、考えにくいか意識した上で、参加者にとって問いかけの内容や時間配分などが心地良いかどうかを見ています。

フューチャーセッションの序盤は、事前に設計した対話設計をもとに、参加者の間合いを見ることが楽しいです。特に時間配分には気を使いますし、もしも設計と大幅に異なる状況になってきたら超慌てます。

人の話をストーリーと情報量に分けて観察

超慌てる状況にはなりたくありません。そんな状況を避けるために、気をつけることは?

参加者には、情報量は少ないけど面白いストーリーを話される方や、情報量は多いけどシンプルなストーリーを話される方がいます。

フューチャーセッションの序盤では、関係性構築を目的とした対話が重要なので、ストーリーを話しやすい問いかけを投げかけて、じっくりと対話できるように整えます。

関係性が整ったところで、本論に必要な情報を参加者全体で集めていきますが、その際はシンプルで情報量を多く話していただけるような問いかけを投げかけます。

本論に必要な情報はアウトプットを創出する上で重要なため、対話をしている参加者の話し方やワークシートに描かれた内容を見ながら、創発のために必要な情報が集まっているか確認しています。

確認は、フューチャーセッションの様子を眺めたり、対話の内容を可視化させるためのワークシートを使って分析したりするようです。

最上さんが使用するワークシート

「未来思考の商品開発」の注意点

実際にフューチャーセッションをはじめるときは、どんな内容から対話を進めますか?

「未来思考の商品開発」は、今まで自分たちが経験してきた延長線上にある成り行きの未来ではなく、不確実だけど起こりうる未来へ向けて、アイデアを創出するための対話をしていくことが多いです。

その起こりうる未来へ向けたアイデア創出は「未来の仮定をつくる」ことからはじめます。

起こりうる未来を仮定した上で、その未来に対してどう備えていくか、または、その未来をどう実現していくか、を考えます。これをフューチャーセッションでは、「バックキャスティング」と呼んでおり、仮定した未来から現在を振り返ってアイデアを考えていくようにします。

つまり、「ほしい未来をつくる」ために、今から準備できることを考えます。

参加者全員で考えるので、未来は一人ではなく全員の思いや視点が入った仮定として完成します。そういう半網羅的な未来を前提に考えるから、それぞれが知っている現在の視野の外側に機会が生まれやすいんですね。

仮説好きの最上さんにも、もう開発しなくていいんじゃないかなと思う商品はあります。でも、未来に向かって物をつくる人を決して否定しません。それには、とある理由があります。

商品開発の未来に何がある?

その理由とは、最上さんの信じることでした。

新しい価値をつくる人がいなくなったら、社会は進まないと思います。私が大切なのは、イノベーターであり、生産者であり、新しい価値をつくる人だと思います。たとえ、物やサービスがたくさんあっても、それでも更に新しい価値をつくり続けたほうがいいと思っています。

最上さんは、物をつくった先に残る商品開発の価値を見つめます。

ファシリテーションやコーチングでは物事を長期的に見ています。商品開発は、社会起点で物事を捉えたり、求められる価値を形にしたりと、色々な体験ができます。その体験を通じて、参加者が行動や意識の変容を起こし、それが自組織だけでなく子どもたちや社会に還元されると信じています。これからも、そんな場づくりや問いかけをデザインしていきたいです。

物があふれる時代の商品開発は、このようなフューチャーセッションにおけるファシリテーションと対話から新しい価値を得ていくのかもしれません。みなさんも、これからのものづくりを明るくするために、自社の商品開発で未来思考を取り入れてみませんか?

– INFORMATION –

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2018年1月19日 10:00~12:30 https://www.ourfutures.net/sessions/2742
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