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できない理由ばかり考えていたら、発明は生まれない。ナイジェリア発、廃品でつくられた水陸両用ジェットカー「Kenny Jet」

小さな頃に夢中になった自由研究。みなさんはどんな作品をつくったか覚えていますか?

少ないおこづかいや限られた環境の中、試行錯誤してできあがった時、何ともいえない達成感や自信が生まれた経験がある人もいるのではないでしょうか。

今日紹介したい事例は、9才の頃から大好きな発明に没頭し続けたKehinde Durojaiye(以下、ケニーさん)の発明品「Kenny Jet」。

誰にも教わることなく”独学”で生まれたこの発明は、なんと、陸と水上で走るジェットカー! 独学で水陸両用車をつくるだけでもすごいことですが、ケニーさんの発明が話題になっているのはもう一つの理由があります。

それは、”廃材”を再利用してつくられていることなのです!

この日は水の上を走る「Kenny Jet」

よく見るとボディ部分のあちこちにヒビのようなものがあり、後方部分のプロペラあたりには木材のようなものまで! これらはすべて廃材で、「Kenny Jet」に使われている主な材料は、捨てられていたプラスチック、木材、発泡スチロールが使われています。

実は、ケニーさんの作業場があるのはナイジェリアのラゴス沼に隣接するゴミ捨て場。人生のほとんどの時間を作業場での発明に費やしてきたというケニーさんは、これまでも廃材を活用してオリジナルの作品をつくってきたそうです。

ケニーさんの作業場があるゴミ捨て場

ケニーさんがこれまでにつくった試作品は4つ。最新モデルには、座席にオフィスチェア、ハンドルに三輪車のハンドルが再利用されています。エンジンなどの作動時には、運転席の中央に置かれたパソコンキーボードをタイピングすることで行うとのこと。

そのあまりの独創的な操作に、ケニーさん以外の方が「Kenny Jet」を運転できるのかは疑問が浮かぶところですが、キーボードとの互換性を成功させたあたりに、発明家としての確かな創造を感じてしまいますね。

タイピングしてエンジン作動を行うケニーさん

過去に「greenz.jp」で紹介したDIY事例の中でも廃材を利用するアイデアはあります。しかし、水陸両用車をつくるというのは、かなりぶっ飛んでいるがゆえ、正直疑ってしまうところ。実際にどのぐらいの走行ができるのでしょうか。

速度は陸路で時速120キロ、水上で6ノット(=時速11キロ)以上で走行が可能。さらに、ケニーさんが住むラゴスの町から、イバダンという町まで行った時は135キロの距離を走ったとのこと。135キロというと、東京都庁から富士山五合目と同じぐらいの距離にあたるので、驚きです!

町なかを走る「Kenny Jet」

地元でも有名な発明家になったケニーさんの夢のひとつは、ナイジェリア中で自分が発明した車を見かけることが普通の光景になること。

ケニーさんが住むラゴスの町では「TOYOTA」や「HYUNDAI」といった大手メーカーの車が主に走っているため、「Kenny Jet」の個性的な外見はとても人々の目をひきます。

ひとたび町で走り出せば「ケニージェット! 止まってくれ!」と多くの方に呼び止められて、すぐに人だかりができるそう。町での注目と話題を集めることにはすでに大成功しているようですね。

ケニーさんとの写真撮影会のようになることもしばしば

そんなケニーさんの発明に熱視線が注がれるのは、もう一つ理由があります。実はラゴスの町は慢性的な交通渋滞が問題となっていて、人々が期待しているのはさらなる発明。実はケニーさん、「Kenny Jet」を飛行可能なジェットカーに進化させるべく、実験に取り組んでいるのです。

世界に知ってほしい。陸、水上、空、そしておそらく潜水まで可能とする、そんな乗り物を持つことは可能だということを。それが私の最終的なゴールです。

現在はその第一歩としてオリジナルのドローン開発もすでに成功していて、あとは多少の資金が調達さえできれば、「Kenny Jet」が空を飛ぶのも可能なところまできてるんです。

とケニーさんは話します。

水陸両用ジェットカー「Kenny Jet」の発明者Kehinde Durojaiyeさん

その言葉の裏側には「思い描いたものは叶う」「不可能なことはない」といった、ゴミ捨て場から水陸両用ジェットカーをつくりあげたケニーさんだからこその、力強いメッセージが感じられます。

お金がない、経験がないからといったできない理由にフォーカスするのは簡単ですが、自分にあるものや、できる理由に目を向けてみると、自分ならではの発明は生まれるもの。

そんな懐かしくもある自由研究な日々に、また走り出してみませんか?

[via inhabitat,CNN,TRUE ACTIVIST,Pulse,NAIJ]

(Text: 加茂信志)
(編集: スズキコウタ)