greenz.jpの連載「暮らしの変人」をともにつくりませんか→

greenz people ロゴ

オランダの公園をランタンのように青くきらめかす『PET Pavilion』。その建築素材に使われた、私たちに身近なゴミって?

汚い。
臭い。
できれば視界から遠ざけたい。
私たちは、どうしてもゴミに対してそんな負のイメージを持ってしまいがちかもしれません。しかし、ゴミは私たちの生活から生まれるもの。それゆえ、世界各国でゴミを減らそうという取り組みが行われていることは、多くのみなさんがご存知かと思います。

そんな中、オランダでは、そんなゴミを素材にしたアート作品がつくられ、多くの人びとを魅了しています。タイトルは『PET Pavilion』。さっそく、一体どんな作品なのか見ていきましょう!

写真奥の建物が『PET Pavilion』

『PET Pavilion』が特に人々の視線を奪うのは、夜。まるでランタンのように、ゴミでつくられた外壁が青くきらめきます。

美しいのは外壁だけでなく、建物内に設置されているバーの内装も! デートにも最適な大人の雰囲気を演出しています。

右側にあるのがプラスチックゴミからつくられた壁

どんなゴミが、このきれいな色ときらめきを演出しているのだろうと気になりますよね? その答えは、なんと4万本以上の使用済みペットボトル!

色を白と青に選別し組み合わせ、透明な板の間に積み重ねているのです。そこに、蛍光ライトを当てれば透き通った青に、暖色ライトを当てればオレンジがかった色に輝くという仕掛け。

他にも、板と板をつなぎ合わせるクギ代わりに、ペットボトルの首部分を使用していたり、ボディーウォッシュの使用済み容器も内壁として活用しています。

クギ代わりに使用しているペットボトルの首部分

中央部分に透けて見えるピンク色のものが、ボディーウォッシュ容器を挟み込んだ内壁

近くで見ると、カラフルな壁の正体を確認できます

夜の風景が印象的な『PET Pavilion』ですが、昼にも活用されており、建物内でトークイベントやギャラリーを開催し、ゴミ問題やリサイクル、持続可能性について考え、学ぶ機会を提供。コミュニティスペースとしても機能しています。

トークイベントに参加する地域の子どもたち

今回の作品を制作したのは、建築会社「Project.DWG」とアートコラボレーションチーム「LOOS.FM」。彼らは、ゴミをそのまま使用した建築物をつくることで、ふたつの問題を伝えることを試みています。

ひとつは、プラスチックゴミのリサイクル問題。オランダでは、プラスチックゴミをリサイクルする際、アジアへゴミを運び、再びオランダに送り返す必要があるので、環境負荷がかなり大きいのだそう。
もうひとつは、持続可能でない現代建築の問題。省エネに特化した環境にやさしい建物は、多くの材料を使用するだけでなく、新しいモデルに順次買い替えなければならない状態をつくっているといいます。

このような問題を人びとに知ってもらうため、『PET Pavilion』では、その構造にも工夫を施しています。

作品を”一時的で分解可能”な建物にすることで、日々変化する社会を表現しました。永遠というものはなくて、すべて変わりゆく。プラスチックのリサイクル問題や現代建築の問題も、変わっていくといいな。

デザインチームのフィリップさん(左)、ミヒールさん(右)

普段の生活では、一度捨てたら忘れ去られるゴミたち。しかしこのアート作品は、いくつものプラスチックごみが積み重なっている姿を見せることで、実際は私たちが多くのゴミを生み出していることを気づかせます。

1人当たり年間約360㎏ものゴミを出していると言われる、日本。(出典元)私たちも、この機会に「そのゴミは、本当に捨ててしまって良いのか?」「何かに役立つことはないのだろうか?」と考えてみるから始めるといいかもしれません。

[via Inhabitat, Project.DWG, Archdaily, LOOS.FM]

(Text: 棚元ひな子)
(編集: スズキコウタ)