私たちが生きていく上で、無くてはならない“食”。
しかし近年、豪雨や土砂崩れなどの度重なる自然災害によって、農作物の不足や価格高騰が続いています。実はこの問題、日本だけでなく世界中の社会課題となっていて、特にインドは壊滅的な状況。収入が安定せず借金のみがたまっていき、2015年には8000人以上の農民が経済的理由で自殺をしてしまう状況に。(出典元)
この危機的状況を解決するため、インドの企業「Kheyti」は従来の7倍もの収穫量を栽培できる温室栽培用のビニールハウス「Greenhouse-in-a-Box(以下、GIB)」の開発に着手しています。
”収穫量7倍”って、本当にそんな夢のような話が実現するの? 私自身、少し懐疑的に思ってしまいましたが、一般的なビニールハウスと比較して3つの工夫を施しているのだとか。
まず1つ目に、害虫の90%を攻撃する昆虫が住んでいること。
2つ目は、天井部分の日よけネットが二重になっていること。室温が5〜8℃下がり、暑い時で約46℃にもなる外気温から作物を守ることができるのだそう。
そして最後は、農地に張り巡らしたチューブから、土壌表面や根に直接水を与えていること。蒸発が減り、水の使用量を90%も削減できるんだとか!
とはいえ、このような工夫が施された「GIB」を導入するだけで、農家の収入が安定するとは思えません。それは「GIB」を開発した「Kheyti」も、もちろん意識しています。彼らは、農業設備を整えるだけでは不十分と考え、農家の技術面向上もサポート。定期的に農家を訪れ、効率的な農作、市場での最適な販売方法、また資金や資本の調達についてのレクチャーをしているのだとか!
「GIB」を製造するのにかかる費用は、実験段階で2000ドル(約20万円)で、頭金は400ドル(約4万円)。インドで400ドルとは、牛を3〜4頭買って酪農をはじめるのと同様の金額なのだそう。現在は15の農家がテストユーザーとして参加していますが、2025年までに、頭金を半分以下に抑えるなどして、100万人の農家に「GIB」を提供することを目標としています。
「Kheyti」の共同創業者である、Kaushik Kappagantulu(以下、カウシクさん)は、こう話します。
農家の方にビニールハウスを手渡しても、良い種と肥料を得ることができなかったり、正しい栽培方法を知らなければ、農作は失敗し彼らは貧困のサイクルに戻ります。
それに、彼らがビニールハウスを購入するための資金を調達できなければ、それを手に入れることさえもできませんから。
だからこそ、設備以外のサポートをすることが、インドにおける農業の根本的な問題解決には大事なんです。
設備を開発・提供するだけでなく、人に寄り添い、一緒に育んでいく。それが社会課題の解決につながる。カウシクさんの人に優しいビジネスモデルは、インドの農家を支援すること以外にも応用できるのではないでしょうか?
[via FASTCOMPANY, The NEWS minute, KHEYTI]
(Text: 棚元ひな子)
(編集: スズキコウタ)