greenz.jp読者のみなさんはきっと旅好きな方が多いのではないでしょうか。
私もそう。時間ができるとすぐカメラを持って、遠くへ出かけたくなってしまいます。でも、そのわりに海外旅行は億劫で、もう10年以上も日本から出ていません。海外はフライトだけでも疲れるし、お金もかかります。観光地めぐりにも興味がなく、“世界の絶景”は石川直樹さんやヨシダナギさんの写真集を観るだけで十分、と思っていました。
ところが、そんな私に海外旅行どころか、世界の最果てまで旅する楽しさを教えてくれたのが、『別世界旅行 –地球を遊び尽くす旅へ-』(日本経済新聞出版社編)。
この本を編集したのは、北極や南極など極地の専門ガイドとして活躍する伊知地亮さん。かつて旅行代理店に勤めていた頃、ツアーで訪れた南極に魅了された伊知地さん。今では毎年一年の数か月をエクスペディション・スタッフ(※)として船上で過ごします。
※極地を知り尽くしたエキスパート。クルーズ船でのガイドやレクチャーをはじめ、強化ゴム製小型ボート「ゾディアックボート」の操縦も行う。
そんな極地を知り尽くしたガイドは、こんな言葉で私たちを別世界旅行へ誘い出します。
自然は過酷な環境になればなるほど美しくなる。そう感じてしまう旅先が極地といわれる世界の最果て。大自然に囲まれて、大自然を味わい尽くす、都会の生活で鈍化した動物としての五感を取り戻す。野生動物の生き抜く力強さから、命の尊さと大切さを教わる旅に出よう。
TRIP:13 チリ アタカマ砂漠 砂漠で優雅なピクニックを
南極の太古の氷で嗜むオンザロック。チリの砂漠に佇む古代遺跡の中、まるで月面にいるかのような優雅なピクニック。限られた人しか足を踏み入れることができないアフリカのオアシスで、ゾウを保護しながら、観光客を受け入れるアブキャンプなど。極地と呼ばれる人類が介在しない自然が残る土地を中心に、本書ではガイドが厳選した22の旅先を紹介しています。
大自然に囲まれて、ありのままの自分に戻り、本来の地球の姿を満喫する。すると帰る頃には、心身ともにリフレッシュしている自分に驚く―――。学生時代のバックパック旅行ではない、大人になった今だからこそ、味わうことができる時間や贅沢。
この本は、まるでガイドがその土地を一緒に歩きながら、読者に旅先を案内しているかのように描かれています。現地に到着した瞬間の高揚感から、眼前に現れる圧倒的な自然への驚き、洗練されたホテルのヴィラを吹き抜ける風の心地良さ。一行一行が大自然への憧れと興奮で満たされ、読み進めるうちに心がリラックスしていくのを感じるほど。
そして、旅の終わりはこんなふうに締めくくられます。
思い出を胸に帰る頃には、地球への深い愛情が芽生えているだろう。人間の触った跡のない地球がどれほど美しいのかを気づかされた人は、改めてこの地球の大切さ、自然環境を守ることが人間に課せられた使命だと感じるに違いない。そうであれば、野生の動物たちの世界にちょっとだけお邪魔したことも許されるのではないだろうか。
さあ、次の休暇は大切な人とどこに行きますか?
– INFORMATION –
日本経済新聞出版社 編
編集協力:伊知地 亮
定価:本体1,500円 +税
A5判 ソフトカバー 288 ページ オールカラー
ISBN:978-4-532-16947-3
発売日:2016年7月
http://www.nikkeibook.com/book_detail/16947/