こんにちは。グリーンズの正太郎です。greenz.jpの寄付会員制度「greenz people」では最近、会員メンバー(ピープル)の「オフ会」が盛り上がっています! 当初は数人が集まる飲み会からスタートした集いの場でしたが、それだけでは満足できないのが「greenz people」のみなさん。
今回ご紹介するオフ会では、green drinks がキックオフした名古屋で、”町家再生の現在地”を探るべく、「信長の台所」として栄えた愛知県津島市を会員のみなさんと一緒にまち歩きをしました!
津島市は、名古屋市から電車で30分。にもかかわらず、戦後の高度成長期に産業を誘致できなかったなどの理由から、Wikipediaに「陸の孤島状態」と書かれてしまう都市なんです。実際、津島駅をおりてみると、昭和の匂いを感じさせる「いわゆる地方都市」という雰囲気を感じました。
でも実は今、この津島市では、昔の繁栄にも負けずとも劣らないプロジェクトや産業が少しづつ広がっています。
そこで今回は、たくさんの町家が残るこの津島の街を再生すべく立ち上がった「津島ツムギマチ・プロジェクト」代表の小林慶介さんにご案内いただくことに。
東京からやってきた僕を含むグリーンズスタッフ、前日に開催した「green drinks Nagoya」の参加者のみなさんも交え、昔ながらの街並みや、文化遺産、織物工場から、新しく津島で動き出している地域復興プロジェクトの現場である「ルミエール実験住宅」を巡りました。
愛知県津島市出身。3年前に地元・津島市に帰省した際に商店街の寂れた光景を目の当たりにし、街の活気を取り戻したいと「津島ツムギマチ・プロジェクト」を始める。空き家物件を活用した軒先マーケットや町歩きイベントなど、東京と津島市を行き来しながら地元を盛り上げる活動を行っています。
町の歴史を歩きながら感じ取る
集合は津島駅にて。
駅前の商店街通りや民家を抜けると、趣のある建物に遭遇します。日本に3,000以上ある津島神社の総本社を中心に栄えた街並みの跡が数多く残っているのです。
津島市には名古屋につながる街道があり、その街道沿いにはものすごくたくさんの町屋が並びます。そんな町屋について小林さんから豆知識。
小林さん 町家は、とにかく奥行きが深いですね。昔は間口の大きさで税金が決まっていたので、どの家も間口が狭く、奥行きが長い構造になっているんです。
小林さんのお話を聞きながら通りを少し入って行くと、昭和初期は旧津島信用金庫として使われていた「観光交流センター」に到着しました。
館内には毎年夏に行われる「天王祭」という行事に使われる提灯を中心に展示されている資料スペースもあります。
駅からたった15分歩くだけでこんなに多くの街の歴史に触れることができ、遠足メンバーはまるで小学生が社会見学に来たかのように、目をキョロキョロとしていました。
お祭りの文化へ触れた後は、建築の文化へ。
約300年前に建てられた町屋建築が大切に保存されている重要文化財「堀田家住宅」で、昔の建物だけでなく当時の暮らしも見学できました。
古くからの産業と、そこで働く町の人と。
さて、津島市の歴史を歩きながらたどり着いたのは、ご夫婦で60年以上経営されているという毛織物工場の「伊藤織物」さんです。
建物の中に入ると、立派な機械がズラリ。
織機を動かすと、シャトルと呼ばれる糸の付いた筒が、勢いよく右から左、左から右へと流れていき、布が織られていきます。ガシャン、ガシャンと激しい音を鳴らしながら動く機械に、全員「おおーー!」と大興奮!
津島市を含めたこの愛知県西部エリアは、毛織物の大産業地帯。この工場でも、海外の有名ブランドの布をつくっているそうです。しかし、近年の海外製品の台頭により、国内の織物産業は衰退が進んでいるといいます。そんな状況について、奥さんは少し寂しそうに語ってくださいました。
伊藤さん(奥さん) この織機は、台数がだんだん減るばかり。後継者もいなければ、部品をつくるメーカーもない。だから、機械が壊れたら私が直すのよ。
今回、工場を見学できる機会をつくって頂いたことで、初めて関心をもった毛織物のことでも広く知ることができました。このように外から来る人たちを受け入れていくことは、産業を続けていく上でとっても大切なことなのでしょうね。
終始物腰の柔らかく穏やかなご夫妻でしたが、最後にご主人が話した「もっと、僕たちも、こういう産業があることを後世に伝えたい」という一言に、私は胸がぐっと熱くなりました。
町の中にある「新しい動き」を覗く
さてさて、これまで巡ってきた場所を見ると、津島市は昔からの歴史と産業の衰退を抱えている印象なのですが、少しずつ新しい動きが水面下で始まっていることを、町歩きしながら目の当たりにしました。
一つ目は、大通りを一本入った裏手にある長屋。ここは、元々は毛織物工場で働いていた女工さんたちが暮らしていたそうです。
そんな長屋ですが、現在は「ルミエール実験住宅」という名前で呼ばれ、新しい長屋のつかい方を試行錯誤する”実験住宅”として機能しているそう。
実験住宅では、ボロボロだった長屋を、建築の知識のあるオーナーと、生活芸術家の石渡さんが住み込みでリノベーションをしていました。
もともと東京出身の石渡さんは、南アフリカを旅した時に、現地の人が自分の家をつくるという光景に心を打たれ、この津島の長屋に出会い、半年ほどかけて家をつくったそう。
町にヨソモノが入ってきて、新しいものが生み出されている「ルミエール実験住宅」ですが、新しい取り組みはこれだけではありません。
次に僕たちが伺ったのは「一般社団法人 津島まちや・まちなみ再生機構」です。
この機構は、津島市の町家を維持したり適切に管理することを目的にした組織。市の職員や建築士がこの場所に常駐することで、町家で困ったことのかけこみ寺となっているそうです。
特徴的なのは、会員の半分が建築の専門知識を持っているメンバーで構成されているということ。専門家が集まることで、単純な景観だけでなく、建築物としての視点からも街並みを残し続けられる取り組みだと感じました。
「一般社団法人 津島まちや・まちなみ再生機構」が以前に開催したイベントの一つが、「町屋の取り壊し会」。雨漏りなど、状態の悪い町家をただとり壊すだけではなく、建築を専攻する大学生と一緒に、普段見ることのできない町家の構造を見たり触れたりしながらじっくり壊していく体験ができるものだったそう。
普段は意識もしていない町。
しかし、そんな町の過去と未来を、半日のまち歩きで見渡せたことは、とても印象深かったです。ただ衰退しているだけじゃない。「視点を変えるだけで、町の宝物はそこに変わらずあるんだ」と気づきました。
これって、わざわざ知らない町に行かなくても、今、自分の住んでいる町にも言えることではないでしょうか?
まちを歩き、人に出会い、コミュニティを深めるヒントを探す「greenz people遠足」はまだまだ続きます! もしかしたら、次はみなさんのまちで、開催されるかも!?
※ 最後にこの場を借りまして、津島市まち歩きで立ち寄らせていただいた場所、お話くださったみなさまに厚く御礼申し上げます。
(Text:Eiko Maekawa)