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「かっこいい」を起点に、価値観のフリップを起こせ! オフグリッド・ソーラーのキッチンカー「みどり号」の冒険が始まります!

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わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクト。経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

“エネルギー問題に取り組もう”って言われると、なんだか壮大ですよね。震災以降、エネルギーについて考えることの大切さは、多くの人が感じていると思いますが、実際に行動を起こすとなると「いやぁ、そこまではちょっと」という人も多いのではないでしょうか。

だったら、エネルギーについて考えたり、アクションを起こしたりすることが“もっとかっこよく、もっと楽しい”ものだったらいいんじゃない?

そんなシンプルな発想から、今回、連載「わたしたちエネルギー」のパートナーでもあるGREEN POWERプロジェクトの一環としてみどり号の冒険プロジェクトが始まりました! みどり号はグリーンパワー(=自然エネルギー)のみで料理や飲料を提供できるキッチンカーです。

たとえば、何もない野っ原にふらっと出かけて、パソコンを取り出して仕事をする。電動ミルで豆を挽き、珈琲を淹れる。夕方になったらDJセットを取り出して、音楽を鳴らす。夜はライトを灯し、冷蔵庫からお酒を取り出し、料理をつくって、仲間とわいわい語り合う…。しかも、そこで使うエネルギーは、すべて自家発電のグリーンエネルギー!

そんなことができたら、そりゃあ最高に楽しいです。で、ひょっとしたらそんなことを実現させてしまうかも! というのが「みどり号の冒険」なのです。
 
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みどり号のベースとなる車はトヨタのデリボーイ。このデリボーイがみどり号に変貌を遂げます!

「みどり号の冒険」ってどんなプロジェクト?

みどり号は、屋根に搭載した3枚のソーラーパネルで発電し、車内で使用するすべての電力を賄うオフグリッド・ソーラー・キッチンカーです。車の中には調理場、冷蔵庫、シンク、ビールサーバーなどのキッチン設備を設置し、スピーカーやPAなどの音響設備も同時に収納します。

企画運営は、東京・表参道のCOMMUNE246青山のファーマーズマーケットなどを手がけていることで知られる「メディアサーフコミュニケーションズ株式会社」。キッチンカーの制作は、オンライン・モーター・マガジン『DRIVETHRU(ドライブスルー)』のディレクター・神保匠吾さんのクルーが、ソーラーシステムに関しては、藤野電力の鈴木俊太郎さんが担当します。

今年度はこのみどり号をCOMMUNE246に常設。週末には、青山ファーマーズマーケットにも出張し、発電している様子を来場者に見てもらい、グリーンエネルギーを身近に感じてもらう予定になっています。

さまざまなイベントも実施予定です。COMMUNE246では音楽、食、ワークショップなどのグリーンエネルギーにまつわる多様なコンテンツを体験できるエネルギーフェスを3月ごろに開催します。みどり号ではフードやドリンクの提供を行ない、発電した電力は当日の音響などにも利用していきます。

ファーマーズマーケットでは、食やグリーンパワーにまつわるワークショップを検討中だとか。さらに、車の機動力を生かして、各地に出かけるアクティビティも計画中です。

こうしたグリーンエネルギーの魅力を体現するみどり号の冒険は、特設ウェブサイトでも発信されます。冒険をウェブ上でみんなで共有してしまおうという試みなのです。
 
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「みどり号の冒険」website

自分たちが、常に実践者であること

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メディアサーフコミュニケーションズ株式会社の國崎泰司さん(左)と松井明洋さん(右)

メディアサーフは、食にまつわる事業を多数手がけていることもあって、以前からフードロスやゴミの問題については積極的に取り組んでいました。グリーンズでも紹介したことのある「Re-think Food Project」などもメディアサーフが手がけるプロジェクトです。

しかし、「みどり号の冒険」担当の松井明洋さんと國崎泰司さんによれば、今回のプロジェクトに関わるまで、エネルギーそのものについては、特に何か具体的な実践をしていたわけではなかったのだそう。

國崎さん もちろん興味はありました。でも何か実践してきたわけではないし、専門用語が出てくるともう全然わかりません。そんなレベルの僕らがいいと思ったものを通じて、グリーンエネルギーがどういうものかを見せていきたい、と思いました。

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ソーラーパネルの取り付け方法について試行錯誤するドライブスルーの神保匠吾さん(中央)と、実際に車のカスタムを手がけるFAST LANEの竹内さん(右)

メディアサーフの考え方の大きな柱のひとつが「自分たちが“DO-ERS(ドゥーアズ)”であること」です。DO-ERSとは、今、世界中で浸透しはじめている概念で、自分たちでなんでもやってしまう人たち(DOする人たち)のことを指す造語です。

松井さん たとえばファーマーズマーケットのチームだったら、運営だけじゃなくて実際に農家さんのところに行って畑を耕すのを手伝ったり。何かのガイドブックをつくるとなったら、世界がどういう状況になっているのかを必ずスタッフが現地まで何度も足を運んで、実際に見に行ったりする。そうやって自分たちが“常に実践者であるということ”を大事にしています。

それでは、彼らと同じように、エネルギーに興味はあるけれども実践まではしていない人たちに、どうしたらグリーンエネルギーに興味をもってもらい、DO-ERSになってもらえるのでしょうか。それを考えた結果、誕生したのが「みどり号」でした。

國崎さん キッチンカーはいろいろなところに行けるのがいいなと思いました。僕らは状況をつくるのが得意だし、それをやりたい。ひとつの場所で何かをするよりも、いろいろな場所でいろいろな状況をつくっていきたいんです。

それと、たとえばファーマーズマーケットに出店しているキッチンカーの方々が、ソーラーを導入するきっかけにもなったらすごく面白いと思いました。

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青山ファーマーズマーケット。ここにみどり号も登場します! ©MEDIA SURF COMMUNICATIONS INC.

一見重要に見えない部分がじつは重要

ちなみに、単なるキッチンカーではなく、音響セットも設置してしまうのがメディアサーフ流。それは「人に何かを伝える時には、プラスαの部分が重要だ」と考えているからだそう。

國崎さん 単純に、おいしいものをひとりで食べるより、みんなと一緒に食べるほうがおいしいし、そこに必要なのは音楽でしょ、という発想です。一見重要に見えない部分がじつは重要で、それがないと伝わらないんじゃないかなと思っています。

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國崎泰司さん

國崎さん こう言うと、めちゃくちゃバカっぽい言い方になっちゃうんですけど、僕らはめちゃくちゃかっこいいプロジェクトにしたいんです(笑)

そうしないと、広がりがないんですよね。だって、意識が高い人たちはもう実践してるし、そういう人たちに伝えるなら、僕らよりグリーンズがやったほうがいいでしょ。

そうじゃなくて、僕らができるのは、関心があったとしても実践までいかない人たちに伝えること。ファッションも好きだし音楽も好きだし食べることも好きっていう人たちに、どれだけグリーンエネルギーがかっこいいと思って、興味をもってもらえるか。

そうしたら、それがきっかけで何かエネルギーについての実践をする人が出てくるかもしれないですよね。なぜなら“かっこいい”から。

エネルギーは、社会課題と密接に結びついているため、とかくミッション的になりがちです。そこであえて、かっこよさを突き詰めることで、より広い層に、訴えかけようというのです。
 
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グリーンズではお馴染み、藤野電力の鈴木俊太郎さん

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ソーラーパネルをポップアップ式にするため、穴の位置を調整する必要が出てきました。ドリルでコツコツ地道な作業です

國崎さん “かっこいい”ってすごく抽象的な言葉です。でも音楽をたとえるときって、かっこいいっていうじゃないですか。ファッションをたとえるときもかっこいいって言う。

そういう意味で「エネルギーについて実践することがかっこいい」ってなればいいんじゃないかなと。あとはもっとライトに「エネルギーについて語れたらかっこいい」でもいいかも(笑)

少し前まで、政治の話をするのってダサかったですよね。でも最近は、政治の話ができない男なんてダサい、みたいになってる。エネルギーもそういう感じになるんじゃないのかなっていう気がします。だって、大事だもん、エネルギーって。

かつて、メディアサーフがファーマーズマーケットを立ち上げたとき、野外で野菜を買うなんてことは、かっこいいことでもなんでもなく、特に若い人たちは見向きもしなかったそうです。しかし時代は変わり、むしろ今はファーマーズマーケットで野菜を買うのは“普通”のことになり、スタイルとして定着しました。

國崎さん それって完全に価値をフリップ(転換)させたっていうことだと思います。グリーンエネルギーにも同じことが言えると思うんです。

人々の価値観をいい方向にフリップさせる

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松井明洋さん

メディアサーフがやりたいのは、まさにこの価値観をひっくり返してしまうこと。そのことに「ここ数年で気づいた」と松井さん。

松井さん メディアサーフって雑誌もつくるし、イベントもやるし、クライアントワークもやるし、みんなで世界中しょっちゅう行く。すごくいろいろなことをやるから「何をやっているかよくわからない」ってよく言われます。常に混沌としてる。

でも、その混沌を愛する美学みたいなものがメディアサーフにはある。で、混沌とした中にひとつの光が見えるときがあって、結果的にその光の先に価値観の変化があったりするんだよね。たとえば、ファーマーズマーケットが人々のライフスタイルを少し良い方向に変えたり、とか。

そういった、混沌としてる状況を貫くものってなんだろうって考えたときに、僕らがやりたいことっていうのは、東京中で人々の価値観をいい方向に少しずつフリップ(転換)させていくことなんだっていうことに気づきました。

そのために大切な要素のひとつが“かっこよさ”。しかしそれは、ひとりよがりなかっこよさではありません。多くの人を巻き込み、つながるための手段です。

東京の人たちとグリーンエネルギーをブリッジしたい

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たとえば、みどり号の関連プロジェクトとして始めるのは、2017年2月ごろ開講予定の自由大学のエネルギー講座です。ここでも、従来のエネルギー系講座とはまったく違うゲストを呼び、多くの人にエネルギーに興味をもってもらえるユニークな内容を考えているそうです。

そして、受講生の中で興味のある人には、おなじく2017年3月に開催する予定のエネルギーフェスの運営チームなどにも加わってもらい、一緒にイベントを盛り上げていきたいと考えているそう。

松井さん 小さくてもいいから、コミュニティみたいなものをつくっていきたいんですよね。

メディアサーフがやっているプロジェクトは全部そうなんです。自分ひとりじゃ何もできないかもしれないし、実現できないかもしれないけど、いろいろな人が集まって話していたら化学反応が起きる可能性がある。だからコミュニティを形成するっていう点において、自由大学の講座は外せなかった。

コミュニティをつくり、そこからつながりを広げていく。化学反応は結びついてこそ起きるのです。

松井さん 東京の人たちとグリーンエネルギー、あるいはそこを切り口にした新しい社会のあり方、世界が向かうべき方向をブリッジ(橋渡し)したい。そのブリッジの媒介となるのが、みどり号や自由大学でやる講座です。

「もちろん、意識が高くてしっかり活動されている方々ともつながりたいけれども…」と彼らは続けます。

國崎さん でも、もともと興味がある人たちに対して、興味レベルの低かった僕らが語れることはないんですよ(笑) むしろ教えてくださいっていう。

でも、そんな彼らだからこそ伝えられることがある。フラットな立場にいるからこそ、橋渡しをすることも実現しやすいのです。

なんとなく、知らないと語ってはいけないような気がするエネルギーの話。でも、彼らが用意した場であれば、とても気楽に、まるで音楽の話をするように、エネルギーのことも話すことができそうです。
 
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skypeでの打ち合わせ中に書いたというソーラーシステムの設計図案

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この日の作業は鈴木俊太郎さんのご自宅で行ないました。ソーラーシステムについてわからないことや内外装の際に気をつけることなどを改めて確認します

「みどり号の冒険」は、エネルギーの未来に対する挑戦

こうなると、3月に開催予定のエネルギーフェスがどんな内容になるのか、とても気になります。

松井さん もう超かっこいいDJとか入れてやりたいよね!

國崎さん やりたい!

松井さん とにかく超かっこいいやつ(笑)。グリーンエネルギーを使ってなんとか頑張って形にしました、じゃなくて、そこでは超ヤバいことがいろいろ起こってて、結果、蓋を開けてみたらそれがグリーンエネルギーの力で賄われていた、っていうのを見せたいですね。エネルギーの未来に対する挑戦だね。

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みどり号が常設される予定のCOMMUNE246。12月8日のgreen power drinks Tokyoもここで開催! ©MEDIA SURF COMMUNICATIONS INC.

「かっこいい、かっこいいって言いすぎて,俺らバカっぽいですかね」と不安そうな松井さんと國崎さん(笑) でもおふたりはこうして、あえて自分たちがかっこいいと思うことをめいっぱい楽しんで実践しているのだそう。なぜなら、それ(かっこいい)を入り口にたくさんの人たちにリーチできると考えているから。

松井さん ぼくらが楽しんで、「これマジでかっこいいからさ」って本気でそう思っていることを、ぼくらの周りにいる人たちも同じように楽しんでくれたら、いいなと思う。

で、そういう人たちが今度は言葉でいろいろな人たちに伝えていってくれたらいいんじゃないのかな。

“楽しい”や“かっこいい”から社会問題が解決できたら、それこそ最高に楽しいはず。本来的には、きっかけはなんでもいいのかもしれません。松井さんは「あとからエネルギーについて考えるようになるのも全然あり」だと話します。
 
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みどり号のロゴは、なんと電気うなぎにイナズマ! 1度見たら忘れられないインパクトです。このロゴを使ったTシャツなどのグッズも制作予定です

松井さん かっこいいからって電気うなぎのロゴのTシャツ買って、着て、まちを歩く。で、気づいたらグリーンエネルギーとかグリーンパワーのコンテクスト(文脈)の上に乗ってるんだっていう、そういう参加の仕方もあると思ってて。

最終的に「新しいエネルギーを考えることって自分たちの未来について考えることと同等だよね」っていう価値観のフリップが起きた時に、ぼくらのいちばん大きな目的は達成される。それが、かっこよくて楽しい状況の中から自然に生まれていったら最高だと思う。

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半日かけて、無事ソーラーパネルがポップアップするように。システムのスペックは12V100Wのソーラーパネル×3枚、蓄電容量は、2Vのバッテリー×6個で12V300Ah。インバーターは正弦波2000W、コントローラーは18A容量で、充電制御がしやすいMPPTチャージコントローラーを採用している

エネルギーの未来を変えたいならば、たくさんの人が共感し、動きやすくなる仕組みが大切です。それってなんなんだろうと考えてきた人はきっとたくさんいるはずですが、それがじつは“かっこよさ”だったり“楽しさ”だったというのは、とてもシンプルだけれども真実なのかもしれない、と思いました。

じつは、この取材をした時点では、みどり号は制作に着手したばかり。私もまだ、完成したみどり号を見ていません。お披露目は12月8日にCOMMUNE246で開催されるgreen power drinks Tokyoです。入場無料のイベントなので、いち早くみどり号を見たい方はぜひ会場に!

12月8日に始まるみどり号の冒険。そして、エネルギーについて語ることが当たり前になるその日まで、きっと、冒険は続きます。

(写真: 袴田和彦)