左から宮﨑さん、須賀さん、小野(greenz.jp プロデューサー)
2016年4月11日、天神地区に新たな人材交流スペース「HOOD天神」が誕生しました。このスペースは、「西日本鉄道(以下、西鉄)」と「福岡移住計画」による共同プロジェクトです。
福岡の地場企業である西鉄と、人と人、人と企業を結びつけたり、さまざまなプロジェクトを生み出したりすることを得意とする「福岡移住計画」がどのように出会い、プロジェクトを進めていったのか。そして、これから「HOOD天神」を拠点に目指していくこととは?
「西鉄天神委員会」のメンバーであり、このプロジェクトを中心となって進めていった西鉄の宮﨑泰さん、「福岡移住計画」を運営するスマートデザインアソシエーションの須賀大介さんとともに、このプロジェクトがはじまるキッカケをつくったグリーンズの小野裕之が語り合いました。
平成7年西日本鉄道株式会社入社。バス部門を皮切りに、広報、ホテル事業などに従事。平成17年からの3年間は九州観光推進機構に派遣となり、まちづくりや観光人材育成に携わる。西鉄に戻り福岡オープントップバスの立ち上げやFUKUOKA 体験バス TICKETの企画を担当し、「バス事業(企業)がまちづくりにできること」を模索する日々。現在は福岡都市圏西部の5営業所を担当。西鉄天神委員会委員としては、現役メンバー最古参の7年目を迎えている。
茨城県出身。株式会社スマートデザインアソシエーション代表。26歳の時にWEBマーケティングの会社として同社を立ち上げる。大手企業含むWEBマーケティングコンサルティング、制作・運用を主業とする一方、地域資源を活用した加工品の販売、場づくりの事業を東京下北沢でスタート。地域と都市を結ぶ活動をスタートする。その後起業して10年目に、活動の拠点を福岡に移した。同時に、家族と共に福岡市に移住。自信の移住の体験も含めて、福岡移住者に向けた情報発信や、コミュニティの場を創出する『福岡移住計画』を立ち上げる。現在は、糸島の閉店したスーパーマーケットをリノベーションした『ライズアップケヤ』。糸島半島の入口福岡市今宿の、シェアオフィス『SALT』。株式会社西日本鉄道との共同事業による、コミュニティスペース『HOOD天神』など全国5拠点で、シェアスペース事業を展開。地域で人をつなぎ、コトが自然と生み出される場づくりに力を入れて活動している。今年9月に全国拠点を活動の場とする人や、あたらしい働き方を生み出そうとする人向けに+WANDER(プラスワンダー)をリリース、全国の古民家や遊休不動産を活用した場や拠点を一律3万円でワークスペースとして使えるようにした。
84年岡山県生まれ。中央大学総合政策学部卒業後は大手企業のウェブサイトなどを制作するベンチャー企業に就職。その後、greenz.jpに参画し、現在はNPOグリーンズの事業戦略づくり、企業や行政に向けた事業の開発や営業、オペレーションの責任者。また新規事業のインキュベーション等を担当。SIRI SIRI LLC. 共同代表。九州工業大学大学院非常勤講師(ストックデザイン&マネジメント)。
「HOOD天神」のコンセプトができるまで
小野 2014年より西鉄社内の横断プロジェクトとして天神の活性化を図る「西鉄天神委員会」とグリーンズの関わりが始まりました。それから、天神や福岡のソーシャルデザインの取り組みを発掘・発信する連載「マイプロジェクトSHOWCASE 福岡編」を展開するのと並行して、その年の11月に「西鉄天神委員会」のメンバーを対象にワークショップを開催しました。
あのとき、「西鉄天神委員会」にはテーマの異なる4つのチームがあった中で、宮﨑さんは、天神をもっと起業家を応援するまちにしようという「起業志向チーム」に所属されていましたよね。
そのワークショップでは、それまでに「マイプロジェクトSHOWCASE 福岡編」に登場していただいた、九州大学の田北先生、BINGO BONGO GROUPの宮野さん、建築家の井手さん、そして福岡移住計画の須賀さんといった、先進的なプレーヤーをお呼びして、一緒に天神の未来について考えましたが、「起業志向チーム」と須賀さんが出会ったとき、僕はなにか一歩前に進んだような手応えを感じました。
実際のところ、あのワークショップの後に、須賀さんとどのような話をされたのか、教えていただけますか?
宮﨑さん あのときは、チームの中で「いろいろな人たちが集まる“場”をつくりたい」という思いがすごくありました。
西鉄のビル事業部が、このビルの空き階を使っていいよと言ってくれていたものの、僕たちにはノウハウもスキルも少ないので、どう運営していくのがいいのかわからなかったんです。
そんなときに須賀さんが、「いいんじゃないんですか、これ」と興味を示してくださったことで、僕たちもその気になっちゃって(笑)「これ、いけるんじゃないの?」と思ったのが、あのワークショップのときでした。
小野 「西鉄天神委員会」にはそもそも、天神にいろんな才能を集めてくるというビジョンがあります。そのひとつの方法論として、起業したいというモチベーションを持っている人に使ってもらえるような、コワーキングのアイデアがありましたよね。なぜ、場所をつくろうという話になったのでしょうか。
宮﨑さん 福岡のいろんな起業家のみなさん10名くらいにお話を聞いたところ、「リアルにつながる場所が要る」ということをよく言われました。
銀座の「LEAGUE」を見に行ったりもしましたが、福岡にはコワーキングスペースはあったものの、どちらかというと利用者それぞれが作業をする場所としての意味合いが強く、つながるということを明確に打ち出した場所はまだなかったんです。
須賀さん 実はあのワークショップの前後にも、いろんな議論がありましたよね。地域とつないでいきたい、女性起業家のための場所がほしいなど、「起業志向チーム」のメンバーそれぞれに「これをやりたい!」という強い思いがあって。
あのワークショップで感じたのは、その一つひとつがつながったら、とても強いものになるということ。みなさんが思っていることは、柔軟につながれるんじゃないかと、外から参加したからこそ感じられたことがあって、素直に「いいですね」となったんです。
宮﨑さん そうでしたね。メンバーそれぞれが、それぞれにやりたいものを持っていました。
最初、なかなか方向性がひとつにまとまらなかった時に、小野さんに「移住」でいきましょうと言ってもらって収束しかけていましたが、須賀さんから「移住はひとつの要素として、全部がゆるくつながればいいんじゃないの?」と言っていただいて、そういうやり方でもやれるんじゃないか、と感じました。同時に、場所の利用者も、起業家だけでなく、マイプロジェクトを仕掛ける人にまで範囲を広げていきました。
多様な人を集めようとあれこれ準備しているうちに、福岡市さんのスタートアップカフェができまして。今はそうでもないと思いますけど、最初の打出しは「IT系の人集まれ!」的なイメージが多かったので、だったら僕たちは、IT系以外の人たちも集まれる場所があってもいいよね、ということを意識し始めました。
「西鉄天神委員会」メンバーの宮﨑泰さん
小野 その思いが起点となって、プロジェクトは進み始めたのですが、スピード感は適切だったのでしょうか。須賀さんは福岡に移住してきたばかりで、地場大手企業と仕事をすることの難しさなどはありましたか?
須賀さん いろんなものをミックスしていけばいいじゃん! と思えた背景や根拠には、「RISE UP KEYA」の運営をしてきた経験が大きかったと思います。
「RISE UP KEYA」は、糸島シェアハウスも運営する畠山千春ちゃんにコミュニティマネージャーをしてもらっていたのですが、ITの人もいれば、ものづくりの人もいて。1年間やってみて、アウトドアウエディングをやったり、企業合宿があったり、通常はコワーキングでもあったり。1つに決めないことで起こる可能性を感じていました。
だから、「最初からカチッと決めずにやりましょう」ということを、最初に話させてもらって、それをコンセプトに組み立てていったんです。とはいえ、正直わかりづらいものでもあって、それによってどんな効果があるのかが見えにくいということが、議論の中でも起こりましたね。
「福岡移住計画」の運営を手がける須賀大介さん
宮﨑さん 僕は西鉄って本当の意味での大企業とは思っていなくて、地場大手企業ではあるかもしれませんが、いろんな意味で、やっぱり「地方のバス・鉄道会社」という感覚なんです。
オーナー企業ではありませんから、割り切った判断というのはなかなかしにくい組織です。それに、民間企業である以上、「直接的な効果は何なのか」ということはよく聞かれました。それを社内にどのように示し、通していくのかというのは、非常に難しかったですね。
といっても、結局、効果が何なのかについては、明確には伝わっていないかもしれません。数値目標などもざっくりとしたものしか示していないのですが、当社のプロジェクトとしては、とても珍しいケースだといえます。
須賀さん 東京時代には、そのことを示すことができなくて立ち消えてしまったプロジェクトをいくつも経験してきました。それを2年かけて実現できたのは、宮﨑さんマジックだと思いますよ。移住してきたばかりの僕たちを受け入れてくれて、実現させてくれたことは、凄くうれしかったです。
宮﨑さん ありがとうございます。でも、今回については、天神委員会事務局とビル事業部の皆さんに、本当に感謝しています。彼らの英断のおかげです。
もともと「西鉄天神委員会」は、直接的な利益を上げるための組織ではありません。天神が良いまちになるような活動をする組織として10数年前に誕生していまして、その当時から「自分の会社だけど、素晴らしいことやってるなー」と思っていました。
でも、最近は、様々な経済情勢などもあって、一つひとつのプロジェクトに、短期的で直接的な費用対効果を求められることが多くなったと感じていました。なので、このプロジェクトに了解をもらうために「西鉄天神委員会」のもともとの理念はこうでしたよね、ということを切々と話しましたね。
小野 社内調整の状況を外から見ていて、これまでの会社の仕組みとは規格外のことをしようとしたとき、その企画を何者として通していくのか。中盤からそこが変わっていって、工夫が必要なんだなと思いました。
宮﨑さん もちろん、経済的なリスクは最小限に抑えないといけないので、西鉄側の関係部署と須賀さん双方にリスクを取ってもらいました。それも本当に皆さんに感謝しています。
でも、最終的には見せ方云々ではなくて、「お前たちがそういうんだったら」とOKをいただきました。凄くありがたかったしうれしかったですね。「そんな突破の仕方をするのはお前だけだ」とも言われましたけど(笑)
企業と起業家ではなく、人と人としてつながる
小野 宮﨑さんのモチベーションの源泉はどこにあるんでしょう?
宮﨑さん 何でしょうね。ちょっと「天神」から離れますが、10年ほど前に「九州ツーリズム大学」に通って、まちづくりや地域活性化を学んだことをきっかけに、自分もそういうことをやってみたいし、やるべきだと思ったんです。
起業しようかなと思っていた時期もあったんですが、よくよく考えてみると、うちの会社は福岡の中でいろんな事業を手がけていて、うまい具合にソースを使えたら、この立ち位置のままでもいろんなことができるんじゃないかって思ったんです。
九州ツーリズム大学で学んだことと、「西鉄天神委員会」のそもそもの理念に対しても強い思いがあって。うちのような会社こそ、本当の意味でまちづくりをやるべきだという考えもあって、それが正しいと思っていることが、モチベーションになっているのかもしれませんね。しかも、今、西鉄グループの企業メッセージは「まちに、夢を描こう。」って言うんですよ。
小野 須賀さんは、このプロジェクトに2年間、関わってきた中で、西鉄のイメージに変化はありましたか?
須賀さん 移住したばかりの頃、「マイプロジェクトSHOWCASE 福岡編」でも記事になっている「からくりもの」の岡本さんが勝手に開発したアプリ(西鉄バスの運行状況を表示するもの)を西鉄が採用して公式アプリになったというニュースを見て、凄い会社だなって思ったんですね。
普通、勝手にそんなことしたら、企業に怒られますよね。とはいえ、このプロジェクトが始まったときは、最後までたどり着けないかもしれないと思っていたんです。けれど、途中から宮﨑さんが同じチームのメンバーとして、マラソンの伴走のような感じで走り続けてくれたことが、凄いなって思って。
企業人と起業家という枠を超え、人と人とのつながりで事業を進めていく宮﨑さん(左)と須賀さん(右)
須賀さん 僕は移住者で、「RISE UP KEYA」も含めてインディーズっぽい活動をしていて。独自で小さくて、インパクトのあることをしようと突っ張っていたようなところもありました。実際「福岡の西の方で、よくわからないことをやっている」と言われたこともありましたし。
だから、「HOOD天神」が実現したことで、福岡のことがさらに好きになったし、西鉄と組んで、まちづくりに参加させてもらえたことは、移住者としてまちに愛着を持つきっかけになったという実感があります。
小野 「西鉄天神委員会」の「起業志向チーム」は、「天神を起業家を応援するまちへ」という、いわば仮説、キーワード優先でリサーチして、このプロジェクトを立ち上げたわけですが、当時と今では「起業家」に対する印象は変わりましたか?
宮﨑さん 個人的には、印象も付き合い方も変わっていません。
「起業志向チーム」に入る前から、ベンチャーでやっている人たちとの付き合いはありました。しかも、福岡というまち、なかでも天神は、人のつながりでいろんなことが動いていくんです。企業の人間であろうと、起業家だろうと。だから、見方や接し方は変わりませんね。
まちの規模がちょうどいいので、すぐにいろんな人とつながれるんですよね。また、福岡は業界の枠をするりと超えるようなところもあって。ITはITだけといった集まり方はあまりしないんじゃないかなぁ。そういうところは強いと思います。
「身近な存在だけどきらりとひかるものを持っている場所になりたい」という願いを込め「HOOD天神」と名付けられた
小野 「起業志向チーム」として始まったものの、今はコンセプトが「移住」寄りに変化しました。対外的に「起業」ということはあまり言わず、「移住者」「まち」がキーワードとなり、プロジェクトを立ち上げる人たちの“場”にしたいというように変わっています。その変化は自然なものでしたか?
宮﨑さん そこは自然でしたね。須賀さんたちにつくっていただいた「HOOD天神」のリーフレットに書かれているコピー「つながる、はじめる、つくりだす」という言葉は、まさに僕らがやりたいと思っていたこと。
移住に限らず、出張で福岡に来る人、進学で福岡に暮らす学生、そういう人たちが混ざり合ってつながることは、僕らのチームでもともと考えていたことだったので、それが起業家や移住者だったとしても、何の違和感もありません。
小野 須賀さんはいかがですか?
須賀さん 「HOOD天神」のコンセプトに「移住」という言葉はあったものの、オープンして4ヶ月経った今では「移住」でもなくなってきているんですね。「移住」という言葉を使うことで、自分たちから線を引いてしまうことがあることに僕たちも気づいてきました。
「移住」という選択肢は全国的に当たり前になってきている中で、エリアの中でまちを面白くしていこう! とするために集まるのは、移住者とか地元の人とかという区別はなく、思いのある人なんですよね。
宮﨑さん 行政が移住にお金を出す時代は、近い将来終わるはずです。次は定住の時代。そのときに、福岡市内や天神が魅力あるまちになっておくためのきっかけの場所になればいいなと思っています。
天神を、「あそこに行けば面白いことやってる」と思われるようなまちにすることが、「西鉄天神委員会」のミッションであり、「HOOD天神」はそのコアになることができればいいのではないでしょうか。
これからの「HOOD天神」がめざすもの
小野 宮﨑さんがおっしゃった、そのミッションを実現するための今後のコンテンツは何でしょう?
宮﨑さん 「西鉄天神委員会」では、4年前から「天神屋台手帳」というものを制作していまして、今年はちょっと制作が止まってしまっているのですが、この屋台手帳で培ったコンテンツをを使った「屋台のいろは」のようなイベントをしてみるのも面白いと思っていますし、西鉄グループの事業に関連した「いまさら聞けない西鉄バスのこと」みたいなイベントもいいと思います。
また、福岡で暮らす各県出身者が集まる「県人会」みたいなこともやってみたいですね。
須賀さん 最初は「天神」に人を集めようというところから始まっていますが、6月に開催した「OK Project(大分 熊本 スモールビジネス支援プロジェクト)」のこともそうですが、すでに天神というエリアを超え始めています。この場所で、様々な地域のことがミックスされていくことは面白いですよね。
宮﨑さん 天神には西鉄グループのさまざまな資産が集中していますが、一方で自前の交通ネットワークを持っているので、天神は人が動く拠点でもあります。だからこそ、県内、九州内の各地とつながるような動きが出てきますし、「HOOD天神」は、その情報発信の場となることができるのではないでしょうか。
九州のいろんな地域に福岡の人を貸切バスで連れていくというツアーをずっとやっていて、2009年に「NPO法人九州地域交流推進協議会」を設立した内田くんという知り合いがいるのですが、そういった動きの拠点になってくれたらいいな、というのは最初の頃から思っているんですね。
それが、気づいたら西鉄の観光バスだったというように、西鉄グループの事業と自然な形でリンクできることがあればいいなと。「HOOD天神」の入居者である「ストリートアカデミー」さんが開催するさまざまな教室でつくったものが、西鉄グループの商業施設で購入できるようになるといったこともいいかもしれません。
須賀さん 僕は、まちの中で実験的にやったこと、始めたことのスキルをここで伝えていけたらいいと思っています。グリーンズとの連携で展開する予定の「グリーンズの学校」も含めて、一方的に話を聞くだけでなく、学んだり、気づき合ったり、西鉄グループの商業施設で商品化されていったりといった、具体的なアクションが生み出されていく近未来を想像すると、すごく興奮しますよね。
宮﨑さん 社内にも新規事業に取り組む部署はあるものの、それは規模が大きなものが対象であって、須賀さんが言われるような小商いのようなものも含めた裾野の広い取り組みは、うちの会社単体ではなかなかできるものではありません。
だからこそ、いろんな既存の枠組みを超え、個人個人や小さなチーム同士がつながり、プロジェクトが生まれていって、きちんとカタチになっていくことが大切です。
スタートアップとか、コンテストとかでお金を出して終わりではなく、人と人とのつながりがきちんとできて、いいものが生まれたら、たとえば「西鉄ストアに卸しましょう」といった話になるのがいちばんいいなと思いますね。
誰かがサービスを開発して、それを西鉄グループの住宅部門やホテル部門が使ったり。最初からうちの事業として立ち上げるのではなく、ある程度カタチになってくれば、いつでも(話を)受けますよ、という体制をつくっていきたいとは思っています。
小野 そこまでの話って、具体的にできていなかったと思いますが、ふたりの話がけっこう擦り合っているのが面白いですね。
宮﨑さん メッセンジャーで、かなりやりとりしていますもんね。
須賀さん いえいえ。いつも宮﨑さんが、暖かく見守りながら、前に進めていこうと伴走したり、力づけてくれたりしています。オープンして4ヶ月たちましたが、いろんな実験をしながら、ここまできました。
宮﨑さん 社内にもHOOD天神でどんなことをしているのか、興味を持っている人も多いので、毎月提出してもらっている月次報告書を見てもらうことで、きちんと伝えていこうと思います。
小野 僕たちもこのプロジェクトに加わってきた中で、個人的には2年ぐらい、多いときには月に1、2回は福岡にきていましたし、グリーンズとしても代表的なお仕事をさせていただいた実感があります。
宮﨑さん 「西鉄天神委員会」にグリーンズに来ていただいて、ソーシャルデザインという言葉を会社の中に落としてくれたことは、本当にありがたかったと思っています。
僕自身もその時点で、ソーシャルデザインとまちづくりでは、なにが違うのかということに興味があったので。
「西鉄天神委員会」は、西鉄グループ内のいろんな事業部や会社からメンバーが集まっています。それぞれの事業のことについてはもちろんプロエッショナルですが、自分たちの世界のちょっと外側にある知らないことを認識させてくださったことは大きいと思っています。
僕らが同じことを一から上司に話してもバックグラウンドや実績がないので、すぐにはわかってもらえないと思うんですよね。グリーンズはその実践者であり、すでに三菱地所さんや大阪ガスさんとの連携実績を持たれていることは、大きかったですね。
小野 グリーンズの仕事の中でも出会いの場をつくることは多いのですが、表面的に体裁を整えるだけでなく、まさに友人関係を育む感じで人が出会っていくと、新しい仕掛けが自然発生的に生み出されていくということを、経験から感じています。
大変ではありますが、その場の話だけで終わってしまうのはもったいないですし、人間的な付き合いと商売的な付き合いが混ざっていくことに、個人的にもすごく興味を持っています。
宮﨑さん 「混ざる」ということについては、福岡の場合は、間違いなく飲み会がポイントですね。ちょっとでもいいので、お酒が入ると、本音や自分の考えを話す雰囲気になります。
飲めない人も普通に飲み会に来ますし、そのような文化は強いんじゃないかと思いますね。いつも顔は怒っているけれど、お酒が入るだけで和らぐ人もいますし。
だから、グリーンズが東京で開催して全国に広げている「green drinks」のようなイベントは、福岡に絶対合うと思いますね。
小野 飲まない人でもノミニケーションなんですね。福岡の場合は、ビジネスのときの話ぶりと、飲み会のときの話ぶりが変わるなということがわりとあります。
あとは、お仕事つながりで飲み会に誘われる率No.1のまちです。ある人から、「夕方の打合せに飲み会がセットじゃないのが信じられない」と言われたことがあります(笑)
宮﨑さん 「HOOD天神」は、周辺に飲み屋もいっぱいありますし、中洲も近い。ここに、このような場があって、真面目な話をした後に、そこから外に出ていく流れができるといいなとも思いますね。「天神」でお金を落としてもらうと、「経済効果があるでしょ」って言えますし。
小野 なるほど。おふたりとも、今日はありがとうございました。
私は個人的に、福岡の女性ラグビーファンを増やす活動に携わっているのですが、この対談の直後、「HOOD天神」で女性向けの「ラグビールール勉強会」を開催させていただきました。
ビルの貸会議室では無機質ですし、カフェなどを貸し切れるほどの人数が集まるわけでもなく。ありそうでなかった“場”の誕生は、福岡で何かを“はじめよう”としている人にとって、新しい一歩を踏み出せるチャンスとなるのではないでしょうか。
– INFORMATION –
HOOD天神を利用するには……
ワークシェアとコミュニティシェアの2つのシェアの方法があり、有料会員(15,000円(税別)/月)は、平日の日中(10:00〜19:00)、コワーキングスペースとして、自由に使うことができます。19:00以降は会社帰りの方も含めたコミュニティシェアの時間。19:00〜22:00はイベントやスクールなどを開催し、一般の方(無料会員)も事前登録さえすれば、自由に参加することができます。イベントを開催したい方も募集中! 気軽にご相談ください。