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私たちの幸せは、人とのつながりの中にある。「KYOTO地球環境の殿堂」を受賞した、デヴィッド・スズキ博士の来日講演を完全レポート!

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わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクト。経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWERプロジェクトの一環で進めています。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

今年2月に世界的な環境学者デヴィッド・スズキ氏が来日しました。

娘であるセヴァン・カリス=スズキとともに、世界で地球環境の保全に著しい貢献をされた方々を顕彰する「KYOTO地球環境の殿堂」にて、第7回の殿堂入り者として選ばれ、その授賞式に参加のための来日です。そして2月13日に授賞式が行われ、授賞式後の2月14日に東京で来日講演イベントが行われました。

バレンタインデーの日に行われたスペシャルトーク。題して「Love Letter to the Earth 2016〜地球へのラブレター」です。愛の日であるバレンタインデーに「地球に愛を」と呼び掛けるこのイベントは、NGO法人ナマケモノ倶楽部の主催により実現しました。

今回はセヴァンさんはいらっしゃれませんでしたが、動画でメッセージをくださいました。セヴァンさんといえば、1992年の「リオデジャネイロ地球サミット」での伝説のスピーチが有名で、当時は少女でしたが、今は二児の母。まずは、そんなセヴァンさんから届いた、素敵な愛のメッセージを聴いてみましょう。

セヴァンさん 自然界において重要なのは”関係性”です。あちこちに生命のやりとりをみることができる。数えきれないほどの微生物が、お互いを食べたり食べられたり、お互いの生命を支えあい、守りあっています。これを自然界における”愛”といえるかもしれません。

セヴァンさんのメッセージは人間のエゴイスティックな愛を越えた、生命のつながりを”本当の愛”と呼ぼうと言う提案です。「文明は”関係性”のなかで進歩してきました。どう相手を愛し、敬い、調和を図るか、自然に学ぶことがたくさんある」とセヴァンさんはいいます。

バレンタインはひとつのきっかけにすぎませんが、それをきっかけに地球のことをもっと深く考えてみようと呼び掛けました。

地球にどんなラブレターを書こうかな?
私のいのちの源、そして私の幸せそのものである地球にむけて。
私の名前はセヴァン。あなたの子どものひとりです。

このメッセージをオープニングに「地球へのラブレター」のイベントはスタートしました。
 

バレンタインデーでもあったこの日、きれいな空気や水、安心な食べ物を手にできる「あたりまえ」を未来の世代に残していくために、行動を起こそう! セヴァンの父親であり、世界的な科学者、環境活動家であるデヴィッド・スズキ博士が明快な言葉で語ってくださいました。

昨年末の歴史的な「パリ協定」を経て、私たち市民は、企業は、自治体は、2030年に向けて、そして7世代先の子どもたちのために、何にチャレンジしていくのでしょうか? デヴィッドさんの記念トークをお届けします。
 
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デヴィッド・スズキ
1936年カナダ生まれ。科学者、デヴィッド・スズキ財団代表、ブリティッシュ・コロンビア大学名誉教授。カナダ国営放送・CBCの長寿番組「ネイチャー・オブ・シングズ」のパーソナリティとして30年以上活躍。近代の科学的合理主義の限界を早くから指摘し、カナダ先住民の英知に環境問題解決のヒントを見出すなど、それまで白人科学者たちによって語られてきた環境学に、初めてマイノリティの思想を取り入れた。

カナダ勲章最高位であるコンパニオン受勲をはじめ、多くの受賞歴をもつ。2004年にCBCが行った「最も偉大なカナダ人」では第5位(現存するカナダ人では第1位)に選ばれるなど、カナダ国民にとってはスーパーヒーロー的な存在。2009年にもうひとつのノーベル賞といわれるライト・ライブリフッド賞を受賞。1992年、リオ・デ・ジャネイロで開催された環境サミットで、当時12歳で歴史的なスピーチをしたセヴァン・スズキの父親としても知られる。日本語での著書に『きみは地球だ』(大月書店)、『グッド・ニュース』(ナチュラル・スピリット社)、『いのちの中にある地球』(NHK出版)など。DVDに『Force of Nature』。

デヴィッド・スズキ「地球の愛の話からはじめたい」

日本のみなさん、こんにちは。私は日本に戻ってくるのが大好きなのですけれども、自分の遺伝子がどこからきたのか知ること、それから食べ物を楽しんだり、古い友だちに会ったり。そして新しい友だちに会うのも、すごく毎回楽しみです。

そして今日この日はバレンタインデーで、愛とロマンスの日なのですが、私たちは例えば結婚してパートナーがいたりということがあります。この日に、ここにいられることをとてもありがたく思っています。

私たちは、本当にいつも、とってもとっても大きな愛を忘れがちです。私たちにすべてを与えてくれるもの、幸福を与えてくれるもの、すべてを与えてくれるものに対する愛です。

今日私がここで話しているのは、セヴァンがビデオで言っていたように、母なる地球のことです。

そこで今日は、なぜか私たちが忘れがちな、その母なる地球の愛から話を始めたいと思います。

聖なる4つの要素

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人は”母なる地球”ときくと、ついつい、「あぁなんてロマンチックな響きなのだろう」「素敵な言い方」だなと思いがちなのです。しかし先住民の人たちが”母なる地球”という時は、別にロマンチックになっているわけでも、詩人になっているわけでもなく、比喩的でもなく、本当に”母なる地球”と言っているのです。

地球は私たちの産みの母親のように、バイオスフィア生物圏と呼ばれる、本当に空気と水と土でできている薄い層ですけれども、それが私たちを育み、私たち人間を人間たらしめています。

みなさんちょっと食べ物のことを考えてみてください。みなさんが日々口にする食べ物は、かつて生きていたものです。それが土の中、大地の中で育ってきます。私たちは植物や動物を口にして、バラバラにして、身体の中に取り込んでその分子が私たちの身体をつくります。

私たちの身体というのは、母なる大地が生み出したものからつくられているのです。そして私の身体をつくる細胞、それから組織というのは、水で成り立ちます。この水によって、私の口にした食べ物から化学物質・栄養が体中に、身体を巡って運ばれていきます。それがホルモンになったり様々な物質になって身体に運ばれていくのです。

こうしたエネルギーが私たちを動かし、育て、生殖することを可能にするのですけれども、そのエネルギーというのは元々太陽から来たものなのです。太陽の光を植物が光合成によってエネルギーにしたものが私たちを動かします。

身体に蓄えられたエネルギーが燃やします。燃やして分子にします。それがエネルギーとなって身体というブックマークフォルダ、 そしてアニマ(=生命の力)を巡って空気中に戻っていきます。

このエネルギーとなった分子なのですけれども、分子を燃やすときに酸素が必要なのです。酸素というのは、私たちを取り巻く空気から私たちが息をすることによって、身体に取り込まれます。こうした4つの要素が先住民たちに”聖なる4要素”と呼ばれているものです。

”聖なる4要素”とは、大気・水・大地・火、この4つです。そして私たちはこの地球に一緒に住む、例えば植物・動物・微生物たちを一緒に愛するべきだと思います。何故こうした仲間の生き物たちを愛さなければならないかというと、彼らがいるからこそ、さっき言った4つの聖なる要素、火・水・空気・大地というものが生まれてくるからなんですね。
 
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いのちとは

この地球上に植物が現れる前、大気圏に私たちが吸えるような空気というのは入っていませんでした。植物がこの地球上に誕生することによって、私たちは初めて空気を吸えるようになったのです。

植物は私たちに必要な酸素を生み出すだけではなくて、太陽から光合成によってエネルギーをとりこんで私たちに提供してくれます。雨が大地に染みこむと植物の根っこが大地にずーっと入っていくんですね。

そういう割れ目を通って雨が土に浸透していきます。そこで例えば菌類ですとか、バクテリアなどの活動によって水が綺麗にされて私たちが飲めるような水ができます。

先ほども言ったんですけど、命というものは私たちの食べ物そのものなんですけれども、そうした命があるからこそ土も生まれていきます。マッド・デーモンの主演の映画で日本語では『オデッセイ』という映画をご覧になったことがありますでしょうか。
 

ご覧になった方は知っていると思うんですけど、映画の中で主役のマッド・デーモンは火星に取り残されて、次の救出を待つまで火星に4年間待たなければいけませんでした。彼はジャガイモの種芋を持っていたんですけど、どうやって火星で食物を得ることができたのでしょうか。

火星には、砂、岩、それからほこりがあったんですけど、土壌というものがありませんでした。命が土をつくるんですけど、こうした命をつくるためにマッド・デーモンは映画の中で、穴を掘ってそこにうんちをして、そこにはじめてジャガイモを植えることで収穫をすることができるんです。

このバレンタインデーの日に、私たちの仲間の生き物たちに本当に愛と感謝を伝えたいと思います。何故なら、植物、動物、その他の小さい小さい生き物たちがいなければ、私たちはここに存在することすらできないからです。

その他にも生き物たちを愛する理由があります。それは、彼らが私たちの親類だからなんです。私たちのペットである犬、猫、それから昆虫とか鷲と鮭とかヒマラヤスギとかにんじんとか、全部そうした生き物は私たちと何千もの遺伝子が同じなんです。

美しい空気・飲める水・食べ物

こうした生き物たちと私たちは何億年もの昔、共通の祖先から生まれてきました。だから彼らは本当に私たちの家族であり、親戚なんですね。彼らが偉大な愛で私たちに命をくれました。美しい空気・飲める水・食べ物となることで、私たちを生かしてくれています。

ですのでお願いですから、ほかの生き物たちを親戚だと思って見てください。そうしないと彼らをただの資源と思ったり、害虫だと思ったり、迷惑な生き物だと思ったり、「ああ、蚊がいるなあ」と思ったりしてしまいます。でも、彼らを親戚だと思って愛と敬意を持って接すればそんなふうには見えません。

ですので、もし私たちが自分たちの親戚である生き物たちを愛し、敬意を持って接しないのであれば、そして聖なる4要素のことを考えないのであれば、私たちは結局セヴァンが言うように有害な物質を大気中に流したり、水に流したり、ほかの生き物たちが生きている生息環境を壊して街を建てたり、ダムを建てたり農耕作地に変換していってしまいます。

もちろんそうしたものが必要ないとはいいません。エネルギーも必要ですし、農耕作地も必要なんです。ただ、私たちが自分たちの親戚に敬意を払う、愛することをちゃんと意識していれば、もっと両方ともうまくいくやり方を見いだせると思います。なのでバレンタインデーだけではなく、本当に毎日髪の毛の中を流れていく風を感じてそこに喜びを感じてほしいと思います。

そして顔に雨を感じてそれに感謝してください。水がどのように巡って命を与えてくれているかということを。今日はバレンタインデーで、本当はとっても寒いと聞いているのに、今日はとっても暖かいです。もちろん太陽の暖かさを感じて喜ぶのもいいんですけど、それと同時になんでこんなに寒いはずなのにあたたかいのだろう? 何かがおかしいんじゃないかということに気づいてほしい。

そしてもちろん私たちの親戚である命を頂いていいんですけど、食事ということによって家族や仲間と一緒にまたつながりを再確認し、身体がどんどん健康になっていくということを意識して感謝をしたいと思います。

3つの関係性

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私は個人的には宗教を信じていないんですけど、教皇フランシスコが最近発表した回勅『ラウダート・シ』というものがあるんですけど、その文章は本当にすばらしいものです。是非みなさんに読んで頂きたい。この文章を読むと、こう言っています。

例えば、社会正義とか貧困問題とか環境問題は、すべてバラバラなものではありません。すべて私たちがお互いにどのような関係を築いているか、この世の生きているものとどのような関係を築いているのか。すべてひとつの異なる側面だと言っています。

そこでさらに言っているのは、私たちはこれまでずっと人間同士の関係、または人間と神の関係性についてのみ集中してきたのですけれども、自分たちと自然との関係性を置き去りにしてきてしまった。でもそうではなくて、その3つの関係性をより良いものにして取り戻していくことが大事であると言っています。

世界中の先住民の人たちは、自分たちと母なる地球との関係性を忘れていません。なのになぜ私たちは忘れてしまったのでしょうか? 今から500年前の大航海時代に始まって新大陸を発見してどんどん植民地化していくわけですけれども、その中で南アメリカ、北アメリカ、オーストラリア、アフリカなどが支配されてきました。

彼らが新大陸にやってきたのは新しいチャンスであったりとか、豊かさであったりとか、金、特に価値のあるものを求めてやってくるのです。ですので彼らが新大陸にやってきて先住民たちに出会ったとき、彼らは先住民の生き方に学ぶことはしませんでした。代わりに先住民を殺し、排斥し、もしくは自分たちと同化させようとしたのです。

こうした新しい人々が新大陸に来たとき、結局子どもたちを連れて行くわけですけれども、こうした子どもたちにはおじいちゃん、おばあちゃん、いわゆる長老と呼ばれる存在がいませんでした。ですので、新しく生活することになった土地に対する根っこというものが育てられなかったのです。それは今でも続いています。

デヴィッド・スズキのルーツとは

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私の祖父母たちは1902年から1906年の間に日本を離れました。彼らが日本を離れた理由というのは、彼らが貧しく教育を受けていなかったからです。彼らが日本を離れた時代というのはSkypeも、インターネットも、電話もありませんでした。ですので、彼らは2度と祖国の土地を踏むことはないという覚悟をもって出たのです。

彼らはカナダに降り立ったのですけれども、英語を学ぶことはありませんでした。そして私の両親が生まれるのですけれども、私自身は自分のおじいちゃん、おばあちゃんと会話をすることはありませんでした。

彼らは英語を話すことができなかったし、私は日本語を話すことができなかったからです。私たちが自分が誰であるのか、どこに所属しているのかを学ぶのは、おじいちゃんやおばあちゃんといった長老と呼ばれる人たちからなのです。

私の母は1911年に生まれ、私の父は1909年に生まれました。私の両親はカナダで生まれ育ったのですが、彼らにとっての長老とかおじいちゃんやおばあちゃんといった人たちは、カナダにはいませんでした。私の両親が私の祖父母から学んだことは、よく働いて、お金を稼いで、豊かな土地を買いなさいということだったと言います。

彼らにとって土地というのは、ただ単にお金を稼ぐ資源でした。例えば、木が生えていれば木を切って、それを売ってお金にする。魚がいれば魚を釣って、それを売ってお金にする。土地があればそこで食料を育てて売ってお金にする。

もしそこから重要な鉱物資源がとれるのであれば、穴を掘ってそれを取り出してお金にする。彼らにとって土地というのは、換金手段であって、聖なるものではもはやなくなっていました。

これが大航海時代に世界に広まっていった植民地支配者たちと一緒だったのですけれども、彼らにはルーツという根っこというものがなかったのです。彼らにとって土地というのはあくまでも資源であり、機会、チャンスだったのですけれども、私の身体には日本にもカナダにもルーツがありませんでした。

この100年間におきた変化とは

これまでの過去1万年、人類のほとんどは農民として暮らしていました。こうした農民の人たちは植物を固定して、窒素を栄養に変えるということを知っていました。そして、冬に降る雪は夏に大地の水分になってくれることも、昆虫は花粉を運ぶのに必要だということも知っていたんです。農民の人たちは、気候、天気の大切さ、私たちが地球の一部だと言うことを知っていました。

ただこの100年間の間に本当に大きな変化が起こりました。私たちがこの地球上でどのように暮らすかについての大きな変化です。

例えばインドとか中国とかで顕著なのですけれども、田舎で農業に従事する人々はどんどん都市に移り住んでいます。大きな都市というのは人工的につくられた環境です。そこでは私にとって自然は大切である、私たちが自然に生かされていると言うことを感じることはできません。

私の友人がトロントの高層マンションに住んでいるのですけれども、そこはエアコンが効いていて、エレベーターで地下まで行きます。それでエアコンが効いた車に乗って職場に行きます。職場のビルの地下から、またエアコンの効いた部屋に行って、そのビルというのは地下道を通じて他のショッピングセンターにつながっています。

彼が私に言ったことは、「ここでは何週間も外に出なくていいんだよ」ということでした。

農業から離れることによって私たち人間は、自然とのつながりっていうものを忘れてしまいました。ですので、大都市にいるとついつい一番大切なことは仕事にありつくこと、仕事にありついてお金を稼いで必要なものを買うことだと考えてしまいがちです。

私の両親というのは1930年の大恐慌の最中に結婚しました。彼らが結婚して生きた時代というのは非常に大変だったので、
「明日のために貯金をしなさい」
「みんなとシェアしなさい」
「欲張りになっちゃいけないよ」
「友人を助けなさい」
そしたらいつか助けてもらうことができるから、自分たちの身の丈を超えた暮らしをしてはいけないということを教わりました。

そしてさらに言ったのが、生活に必要なものを買うために一生懸命働きなさいということ。ただ単にお金がたくさんあるからといって、あなたが他の人より偉いということを意味するわけではないのよ、と教わりました。

ただ、今日の経済というのは、人々に必要なものを買うのではなくて、ほしいものを買う、買わせることによって成り立っています。私たちに必要なものと私たちのほしいものというのは全然違うものです。私たちのほしいものというのは、消費です。消費欲というものには制限がありません。限りがないんです。

自然から学ぶこと

みなさんの住んでいる日本の社会をみてみてください。私たちは、すごくおみやげを大事にします。でも、おみやげというのは本当に必要なものなのでしょうか。おみやげを渡して私たちはお互いにほしいものをあげるんですけど、私たちが日々使うものというのはすべて自然からきています。

私たちが口にするもの、それから洋服、テレビ、コンピューターなどそのすべてのものが母なる大地、母なる地球からきています。私たちがそれらのものを使い終えた後にどうするでしょうか。それをゴミとして母なる地球に返します。でも地球上で他の生き物でこんなことをする生き物はありません。自然界からものをとって利用してゴミとして捨てるなんていうのは人間だけなんです。

私たちは自然から学ばなければいけません。それは、”バイオミミクリー”と呼ばれていますけども、自然の仕組みから学ぶものです。

ゾウが歩き回って大地にうんちをします。けっこうな量のうんちをするんですけど、うんちがきたとたん、虫とか菌類とか小さな生き物が寄ってきて、わあ、おいしい! ランチだ! と言います。でも人間のうんちをするとそれを水とうんちと分けて、本当はいい肥料になるのにそういうことはしません。そこが問題の始まりです。

でも自然界は違います。例えば大きな木が倒れるとそこには虫が寄ってきて、鳥が寄ってきて、ほ乳類が家をつくったりします。

倒れた木の中には生きている木の中よりも多くの生物が生きているんです。自然界では、こうして倒れた木も、命を育む木という倒木と呼んでいます。そうした倒木たちは自らの子どもたちさえ、小さな木たちさえ育てることができます。何百年もの間、命を与え続けるのです。
 
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大きな危機に瀕した世界

私たちはみなさんもご存知のように、大きな危機に瀕しています。それは、気候変動という危機です。でも、自然から学ぶことによって解決策を見いだすことができます。森林の上を飛行機で飛んでいると、すべての木が天に向かってそびえ立っているのがみえます。

全部の木が太陽光を求めて、美しい、綺麗で再生可能なエネルギーをほしがっているんですね。振り返って東京の上を飛んでみると、下になにがみえるでしょうか。コンクリートの建物、人々、車、道路。本当に多くのエネルギーが消費されているんですけども、私たちの上には、タダで綺麗なエネルギーが降り注いでいるんです。すごくもったいないと思いませんか?

私たちには原発も化石燃料もいりません。考えてみてください。もし、私たちの都市が森林のようだったら。別に、今のような見かけじゃなくてもいいです。例えば、道やコンクリートの壁に全部ソーラーパネルがくっついていたとしたら、私たちは本当にたくさんのエネルギーを得ることができるんです。

3日前のことなんですけど、フランスから科学者による報告書が発表されたんですけど、新しい素材を開発しまして、これが太陽光を利用できる素材なんですけど、これを道路の上に1000キロも上に引いて太陽光を利用できる道路をつくるというものでした。

報告書によるとこの素材で覆われた道路が1000キロあれば、5億の家庭に電力エネルギーを供給できます。日本に走る道路の長さが、一体どのくらいあるか想像してみてください。それが今言った素材で全部覆われたとしたら、私たちには原発も化石燃料も必要ないですよね。私たちは自分たちの母なる地球に対して、大きな問題を抱えていると思います。
 
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セヴァンがビデオで言っていたように、私たちは母なる地球をきちんと扱っていないと思います。私たちは自分たちの産みの母親をそんなふうに扱うでしょうか。みなさんがこの地球を愛と敬意を持って接するようになったら、大きな変化が起こってくると思います。私たちは違うやり方を発見できると思います。

ここでみなさんにお願いしたいのは、 母なる地球を愛と敬意を持って扱うようにしてください。 そこから癒しが始まると思います。ありがとうございます。
 
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会場からの質問〜「もったいない」について

デヴィッド・スズキさんの講演は、そのひとつひとつの言葉のすべてが、自然との対話のなかからうまれた深い知恵からやってくるものでした。会場では参加者からの手があがり、質疑応答がおこなわれました。

会場からの質問 日本では「もったいない」というコンセプトがあるんですが、今の生活というのは「もったいない」からかけ離れた生活スタイルになってしまっている。日本人としてどのような生活をしたらいいのかというアドバイスをください。

デヴィッド 今おっしゃったのは、日本だけではなく世界中の問題だと思います。今、世界の経済というのは消費主義に基づいています。

特にひどいのが、使い捨て文化ということですね。完璧なシステムだとは思うんですけど、ちょっと使って捨ててまた新しいものを買って捨てて。この「使い捨て」という言葉を子どもが聞くと耳を塞ぐくらいに悪い言葉にしてしまった方がいいのではないか。そう思うくらい、使い捨てのライフスタイルを変えることが必要だと思います。

私からの簡単な提案になります。例えば今見せたこのハンカチのような袋ですが、このようなものを持ち歩いていれば、レジ袋はもらわなくてすみますし、ハンカチを持ち歩いて鼻をかんだらポケットにいれておくんですけど、ちり紙を使う代わりにハンカチを使うとか、今日はホテルに忘れましたが、万年筆を使う。万年筆はインクさえ変えればずっと使えるので、こういうのも、塵も積もれば山となりますので、いかがでしょうか。

ここでみなさんにお伝えしたいのは、自然とバランスをとって暮らすというのは、何も石器時代に戻って穴の中で暮らして食べ物をとってとかそういうことではないんです。

ただ、ちょっと立ち止まって、私たちにとって幸せって何だろう、子どもたちにどんな世界を残したいんだろうということを考えて、じゃあどうしたらいいんだろうか。モノを買うのか、それとも大切な人と時間を過ごすのか、ということを考えることだと思うんです。

今日まちを歩いていて凄く思ったんですが、本当に多くの人が他の人を見るのではなくて、スマートフォンの画面をじっと見ていたんです。でも、私たちが幸せや喜びを感じるのは人とのつながりの中にあるんです。
 
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(トークここまで)

自然との対話のなかでの学び

デヴィッド・スズキさんは、人類のメンターのひとりとして、その深い洞察に多くの人が耳をかたむけるに値する人だと感じました。自然学者として地球の環境や生態系に関して多くの科学的知識をもっているのみならず、そこからひとりひとりのハートにむけて、こころの奥底にとどくメッセージをもっているのです。

わたしたちのマインドセットに訴えかけ、価値観のシフトを指し示す言葉をあたえてくれました。そして環境活動家として、行動やアクションに落としていくことの重要さ、わたしたちのアクションはまずはライフスタイルや消費行動であることを丁寧につたえてくれたのでした。

明日公開の第2部では、具体的なアクションにかかわる日本NGOの人たちとデヴィッドさんのトークセッションをご紹介します。お楽しみに!

(写真提供: ナマケモノ倶楽部 / 350.org Japan)
(取材協力: ナマケモノ倶楽部)