近年、世界各地でみられる異常気象のニュース。それをきっかけに環境への意識が高まっている人も多いのではないでしょうか? 一方、自然エネルギーや自給自足に憧れつつも、なかなか、これまでの生活様式を変えるのは難しいところですよね。
でも、そんな「これまでの生活」も、将来、保証されないのかもしれません。原因のひとつは、世界人口の急激な増加。WWFのレポートによると、現在70億人を越す人口は、2050年には96億人にまで達すると予測されています。それに伴い、消費の圧力が増え続ければ、2030年には、地球がもう1つ必要になるという指摘もあるのです。
今こそ地球の資源を過剰に消費するのでなく、持続可能なライフスタイルに移行するべき! 今回は、そんな思いで開発されているオランダの新しいコミュニティをご紹介します。その名も、「ReGen Village」。
「再生の村」という意味を持つこの村は、コミュニティ内で食料やエネルギーを自給し、生産と廃棄の完全な循環システムを整えた、世界初の村なのです!
デンマークの建設事務所「EFFEKT」と手を組みデザインされたこの村は、住宅や農場に加え、発電所、水資源管理などの施設から構成されています。様々なグリーンテクノロジーを取り入れ、持続可能な循環システムをつくり出したそうですが、いったいどのような仕組みなのでしょうか?
まず、住民が住むのは、自らエネルギーを生み出す「ポジティブエネルギー住宅」。ソーラーパネルとパッシブ冷暖房が完備された家は、寒さや雨風をしのぐためにガラスで覆われ、少ない電力で快適な温度が保つことが可能。家庭ゴミはコンポストされ、家畜や魚の餌となるアブの餌となり、コンポストできないゴミは、バイオガス工場で水やエネルギーに変えられます。
洗練された空間に、緑が溶け込んだ美しいデザインはとても住み心地がよさそう。ダイニングテーブルの横には家内菜園が広がります
住宅の近くには、垂直農業やアクアポニックスといった最先端農業のファームが立ち並び、オーガニック野菜を栽培。魚の養殖と水耕栽培をあわせたアクアポニックスは、普通の農業と比べ同じ土地面積で10倍の収穫があり、使用水量も10分の1で済むそう。環境への負担が少ないため、周辺の森や野原も、そのままの自然を維持できます。
住宅の近くで、まさに「スーパーローカル」な野菜を生み出す垂直農業
家畜の廃棄物が良い肥料になる庭では、野菜や果物、ナッツ類などを収穫でき、バラエティ豊かな食の供給を実現。家畜の肉も、住民にとって欠かせないタンパク源となります。
そしてコミュニティ内には、太陽光や、地熱、風力、バイオマスなどの発電所が設置され、オランダの極寒の気候にも対応できる電力を生み出せるのだとか。
住宅、農場、発電所など、全ての施設と自然がつながりあい、持続可能な循環システムをつくり出しています
さらに、住民の交流を促す街の食堂や、コミュニティーセンターも設置され、村の駐車場には、住民が使える電気自動車まで並んでいるそう! 建設完了後は「ReGen Villages」も運営をサポートしていくようです。
このように、廃棄物も全て有効な資源に変え、自然と調和した循環システムを実現した「Regen Village」。最初の村は、15550平方メートルの土地に、住宅100件が建設される予定。アムステルダム郊外のアルメレで、今夏に着工され、2017年の完成を目指しています。
でも、まだこれは、ほんのスタート。すでにヨーロッパ各地でも建設が予定されているほか、寒さの厳しいオランダで運営が成功すれば、世界規模の展開も構想しているといいます。
CEOのJames Ehrlich(以下、ジェームズさん)によると、一番の発達を見込んでいるのは、インドやアフリカなどの開発途上国だそう。
人口増加が著しい開発途上国では、ミドルクラスも増え、莫大な人口が暮らしの向上を求めて都市部へ移行しています。そんな中、これまでのような開発が進めば、地球は持ちません。
私たちは、オーガニック食料と再生可能エネルギーを生み出し、最小限の廃棄しか出さない「ReGen Village」を通して、これからの「開発」を再定義しているのです。
事実、世界人口の増加の約97パーセントが集中している開発途上国。(出典元) 地球に負担の少ない循環型社会の発達は、急務といえるでしょう。
人口増加は避けられませんが、どんなときもより良い選択肢は存在します。これからの世界に「ReGen Village」のようなコミュニティが広がれば、持続可能なだけでなく、住民にもポジティブな共同体意識が生まれそうですね。
[via ReGen Villages, EFFEKT, EcoWatch, FASTCOMPANY, ZFirst]
(Text: 日南美鹿)