毎年20万人もの子どもたちが行方不明になっていると言われる中国。(出典元)多くの親たちは子どもたちを必死に探すものの、残念ながらほとんどの子どもは見つからないままになっています。
問題の背景にあるのは、農村の貧困と社会保障制度の不備。農村には、貯蓄が少なく年金もわずかで、老後の生活を子どもに頼らざるを得ない人たちがいます。行方不明になる子どもの多くは、そうした貧しい農村の人たちに売られるために誘拐された子どもたちなのです。
親たちが努力しているにもかかわらず、なかなか見つからない子どもたち。その原因の一つとして指摘されているのが、情報が共有されていないこと。たくさんの子どもたちが失踪しているという事実を訴え、かつ行方不明になっている子どもたちの情報を発信する拠点がなかったのです。
少しでも多くの子どもたちを保護して助け出したい。そんな思いを抱く市民団体「Baobeihuijia」が打ち出したキャンペーンは、日本でも多くの人々が使うスマートフォンを用いたものでした。
約13億7000万人の人口を誇る中国(出典元)。今や、日本と同様にスマートフォンが多くの人々に受け入れられ、その普及率は74%にものぼります。(出典元)
「Baobeihuijia」が目をつけたのは、そんなスマートフォンのユーザーたちが自然と行う、ある習慣でした。それは外出先で、無料のWi-Fiが使えないか探すこと。
そこで「Baobeihuijia」は、街中で提供される無料Wi-Fiスポットを使う際、ログイン前に、行方不明になっている子どもたちの写真と特徴が表示される仕組みをつくりました。すると、無料Wi-Fiを使おうとしたすべての人が、行方不明になっている子どもたちについて知ることに。
画面に表示される子どもたちの情報がアクセスするたびに変わる工夫や、その情報をSNSなどでシェアできる仕組みも取り込んだことで情報は急速に拡散され、なんと4億人近い無料Wi-Fiの利用者が行方不明になった子どもたちの情報に触れることになったのです。
そして、SNSでのシェア数は3,750万回以上にのぼり、海外を含む230以上のメディアに取り上げられることに成功。多くの子どもたちが発見されるきっかけをつくることができました。
問題を根本的に解決するためには、農村の貧困を改善する必要がありますし、この仕組みだけで救われる子どもたちの数はまだまだ限られています。しかし、都市で生活する人に農村が抱える問題や子どもを奪われた親の悲しみが伝わることで、社会保障や子どもをめぐる状況が大きく変わる可能性があるのではないでしょうか。
日本でも無料Wi-Fiスポットが増えてきていますが、ログイン前の画面で表示されるのは利用規約やWi-Fiを提供するカフェの宣伝がほとんど。ひとりひとりが情報を拡散できる端末に表示される情報のプラットフォームとして、より社会的な使い方があるのかもしれませんね。
(翻訳アシスタント:スズキコウタ/「greenz global」編集部)