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こんなまちに引っ越したい!「ゼロ・ウェイスト宣言」をして徹底的なごみの分別・リユース・リサイクルを目指したら、住民同士がつながり、暮らしやすいまちになった徳島県上勝町の話

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普通に暮らしているだけで毎日のように出るごみ。みなさんは、自分がどれくらいのごみを出しているのか、そして出したごみがどこへ行ってどのように処理されているか知っていますか?

「そりゃできるだけごみは減らしたほうがいいと思っているし、ある程度は努力もしている。でも、厳密に分別したり、自分の手を離れたあとのことを考えたりするのは、正直言って面倒くさい」。そんな風に思っている人も多いのではないでしょうか。

本当はちゃんと考えなくちゃいけない、と思えば思うほど、後ろめたさから目を瞑りたくなってしまうものですよね。

そんなごみ問題に真正面から向き合い、「2020年までにごみをゼロにします!」と宣言したのが徳島県上勝町です。しかも、その取り組みは「ごみ問題」という言葉が持つネガティブなイメージとは裏腹に、とても前向きでクリエイティブ。町民も楽しみながら参加していて、日本全国、いいえ世界から注目を集めています。

小さな田舎町が始めた、大きな挑戦。その軌跡と哲学を学ぶため、上勝町のごみ処理施設を訪問しました。

世界一の分別数を誇る町

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上勝町は、徳島阿波踊り空港から車を一時間半ほど走らせた場所にある人口1700人弱の小さな町です。200年前から変わらないのどかな棚田の風景が有名で、海外からの旅行者も珍しくありません。

美しい景色を楽しみながら県道をドライブしていると、「0」という赤い旗が印象的なプレハブが現れました。今回の目的地、「日比ヶ谷ごみステーション」です。
 
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施設の説明に入る前に、まずは上勝町の歴史を簡単におさらいしましょう。

昔は現在の施設周辺の谷間に大きな穴が開いていて、住民は穴にごみを放り投げて焼いていました。しかし、野焼きは法律で禁止となり、上勝町でも1998年に小規模焼却炉を設置します。これでちゃんと処理できる…と思ったのも束の間、ダイオキシンを規制する法律ができて基準が厳しくなり、せっかく建てた焼却炉はわずか2年で使えなくなりました。

新たに建設をするにしてもほかの自治体に処理をお願いするにしても、決して安くはないお金がかかります。また、上勝町は山に囲まれた水源地で、町民たちはもともと「上流にいる人間が山や川を汚してはいけない」「美しい自然を子どもや孫に残したい」という気持ちを持っていました。
 
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ごみを燃やすと水や空気が汚れ、まちの財政も逼迫します。焼却以外の方法はないのだろうか、と模索する内にたどり着いたのが、世界的に機運が高まっていた「ゼロ・ウェイスト」でした。燃やして埋めるごみ処理から、ごみの発生自体を減らす政策への転換を目指す考え方です。上勝町は2003年に、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表しました。
 
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では、具体的にはどうやってごみの発生を減らそうとしているのでしょうか。日比ヶ谷ごみステーションを運営する「NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー」理事長・坂野晶さんに聞きました。

上勝町の取り組みの特徴は大きく分けて3つあります。そのうちの1つが、町内にごみ収集車が走っていないこと。その代わり、町民はここ「日比ヶ谷ごみステーション」にごみを持ってくるんです。

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坂野晶さん

「わざわざごみを持ってこなくちゃいけないなんて面倒!」と思いましたか? でも、「月曜日は可燃ごみの日」といった決まりはなく、いつでもごみを持ち込むことができるのです。しかも、年末年始を除けば無休。よくごみを出し忘れてしまううっかりさんにとっては、逆にうれしい仕組みではないでしょうか。

ステーション内にはたくさんの分別箱が置かれています。分別の種類はなんと34! この分別数は今のところ世界最多です。

これが2つめの特徴です。たとえば缶ひとつとっても、アルミ缶、スチール缶、スプレー缶と非常に細かく分かれています。一つ一つ資源をリサイクルしてくれる業者を探して、それに対応させていった結果です。

公式では「34分別」と言っていますが、実際はごみステーションの中で60種類以上に分かれています。現在ちょうど分別品目を整理しているところだそう。
 
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分別箱の上には、品名とイラストが書かれた看板が掲示されています。たとえばアルミ缶のところには、「155円/kg」「アルミ缶→徳島 アルミ缶」という文字が。これは何を表しているのでしょうか?

どこへ行って何になるか、ですね。アルミ缶の場合は徳島市内で再度アルミ缶としてリサイクルされます。業者さんが1kgあたり155円で引き取ってくださるので、その分が町の収入になるんですね。

自分がちゃんと分別することで、町が少しだけ潤う。そう思うとやる気が出ますね!
 
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住民は家でも34分別しているわけではなく、ある程度分けておいたものをまとめてここへ持ってきて分別します。分別に迷ったときは作業員が相談に乗ってくれるので安心!

一方で、マイナス表示のものもあります。たとえば白トレイやプラマークがついている容器包装類は-0.47円/kg。こちら側がお金を払ってリサイクル処理をしてもらうんですね。しかもこれは綺麗なものだけ。

汚れが落ちないものは同じ資源にはリサイクルできないので、固形燃料として処理されます。価格は-40円。こうして目に見える形になっていると、「できるだけプラスチックは使わないようにしよう」「ちゃんと綺麗に洗って出そう」と思うでしょう?

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屋内は紙類の保管エリアになっていました。雑誌、新聞、折り込みチラシ、段ボール、お菓子の箱、トイレットペーパーの芯、牛乳パック…これらはきちんとまとめれば紙として生まれ変わる有価資源。「燃やすごみ」として捨てられてしまうのを避け、リサイクルを促進するために、上勝町では「雑紙ポイントキャンペーン」を行っています。

紙袋ひとつに雑紙をまとめてくると1ポイント、あるいは牛乳パックや紙カップなどのアイテム5つで1ポイントがつき、3ポイントでごみ袋、5ポイントでトイレットペーパーなど最大50ポイントまで各種商品と交換できるんです。

また、ポイントカードには番号が振ってあって、毎月抽選をしています。一等は5千円分の商品券。集まった雑紙が有価資源としてお金になった分、分別に協力してくれた町民に返そうという試みです。

分別をすることによって5千円が当たったら、「リサイクル最高!」と思ってしまいますね。これも、町民に楽しみながら参加してもらう工夫のひとつです。
 
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ここで坂野さんから、「一般的に、ごみ処理場というとどんなイメージがありますか?」と質問がありました。うーん、「臭い」「汚い」などでしょうか。でも、「日比ヶ谷ごみステーション」は嫌なにおいが全くしません。一体どうして?

それは、ここには生ごみが一切持ち込まれないから。生ごみは全て各家庭で処理され、堆肥化されていいます。これが上勝町のごみ処理の特徴の3つめです。

ごみ問題に取り組みはじめたとき、上勝町ではまず「どんなごみが、どれだけ出ているのか」を調べました。すると、ごみ全体の約3割が生ごみだということが判明したんです。そこで、各家庭で生ごみを堆肥化する処理機を購入してもらい、町がその費用を補助することにしました。

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これがそのひとつ、電動生ごみ処理機。細かく切った生ごみと木のチップを入れると、撹拌され土になって出てきます。臭いはほとんどせず虫も涌かないのでストレスがありません。「生ごみコンポストに挑戦したけど挫折してしまった」という方も、これなら続けられるのではないでしょうか。
 
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紙類の保管エリアの奥に進むと、リユース推進拠点「くるくるショップ」が現れました。ここは、町民が「自分は使わないけれど、まだ使えるもの」を持ち込む場所。家具、衣類、食器、本、おもちゃなどが整然とディスプレイされています。
 
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日本人形は海外から視察に来た方に人気だそう

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2階は衣類コーナー。子ども用、女性用、男性用に分かれています

持ち込みは町内のみですが、気に入ったものがあれば、町外の人でも無料で持ち帰ることができます。昨年度の持ち込みは約10トン、持ち帰りは約9トン。9割以上がリユースされたということですね。
 
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電気ポットを持ち帰ることにした坂野さん。品物の重さを測り、用紙に記入します。

みなさん、ごみステーションに来るついでにくるくるショップに立ち寄り、いらないものを持ち込んだり持って帰ったりしています。おもちゃや本も置いてあるから、子どもも「くるくるに行きたい」と言うんです。

上勝町に移住してきた方は、ここである程度の家具や生活用品を調達できるんだとか。お金を節約できてごみも減らせる、いい仕組みですね。
 
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上勝小学校の4年生は、授業の一環でくるくるショップの一部屋を2か月間運営することに挑戦します。家族のいらないものを集めて、自分たちでレイアウトを考えて、期間中にどれだけのものが持ち帰られたかを調査して。普段何気なく使っている場所の意義を改めて学ぶ機会になっていると思います。

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ここで一度外へ出て、隣にある平屋の建物へ移動しました。看板には「くるくる工房」という文字が描かれています。中に入ると、色鮮やかな雑貨がところ狭しと並んでいました。
 
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人気の鯉のぼりテディベア。「うちにある鯉のぼりでつくってほしい」とオーダーがくることもあるそう

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ペンケース800円〜と値段もお手頃!

「くるくる工房」は、古い布や着物、鯉のぼりなどの素材をリメイクして販売している場所です。

上勝町では4月に約800匹の鯉のぼりが空を泳ぐ「彩恋こい鯉まつり」というイベントを開いているんですが、破れるなどして使えなくなった鯉のぼりを捨てるのはもったいないと、地元のおばあちゃんたちが鯉のぼりのリメイク雑貨をつくりはじめたんです。それがきっかけで、この工房ができました。

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ミシンやさをり織り機もあり、町内の高齢者はほとんど無料で利用できます(2時間以上400円)。つくった商品の売上の約9割がつくり手に渡る仕組み。

「くるくる工房」は「介護予防活動センターひだまり」に内設されていますが、自分でつくったものが人気商品になったら、おばあちゃんおじいちゃんも元気になりそうですね。自分のまちにこんな場所があったらいいなと思いませんか?
 
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坂野さんが着ているレインコートも鯉のぼりのリメイク! とってもキュートです

カリスマ性のあるリーダーが引っ張るのではなく、町民1人ひとりが想いを持って取り組む

さて、施設内は一通り案内していただきましたが、新たな疑問もいくつか浮かんできました。まず、ゼロ・ウェイストの考え方はどんな風に町民の間に浸透していったのでしょう。誰かキーパーソンがいたのでしょうか。

ひとりは東ひとみさんですね。上勝町役場の職員で、「子どもたちに自然を残したい」という想いから精力的にごみ問題に取り組み、ゼロ・ウェイストを推進していました。先進事例を学ぶために自費でドイツへ行ってしまうような行動力のある方で、周囲からよく「公務員らしくない」と言われていました。

ただ、最初から町民全員に諸手を挙げて受け入れられたわけではなく、反発もあったと聞いています。でも、上勝町では「あるものを活かす」という考え方を持って町のために活動している方々がたくさんいたし、地域で尊敬されていたおばあちゃんが「孫のためにやりましょう」と言ってくれるなどして、少しずつ広まっていったようです。

町民の意見を吸い上げ、参加を促すため、2005年にNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーを設立。行政に代わって一般廃棄物中間処理業務を請け負うことになりました。NPO法人が委託を受けてごみ処理をしているのは、全国的にも珍しいケースです。
 
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坂野さんは昨年からゼロ・ウェイストアカデミーの理事長を務めていますが、生まれは上勝町ではありません。どんなご縁があって上勝町へやってきたのでしょうか。

子どもの頃から鳥が好きで、カカポという絶滅危惧種のオウムを知ったことで、自然保護に興味を抱くようになりました。大学で専攻したのは環境政策です。そこで同期だったのが、東ひとみさんの娘で、現在上勝町で「cafe polestar」を運営している東輝実です。

大学の夏休みに遊びにきて、上勝町は人の層が厚い町だなと思いました。カリスマ性のあるリーダーが声を挙げて活動を始めたけれど、その人がいなくなると活動も萎んでしまう。そんな社会運動の現場はよくありますが、上勝町は違いました。それぞれに想いを持って活動している人が違う持ち場にいて、取り組んでいる。そこに感銘を受けて、何度も通うようになりました。

当時から東輝実さんと「一緒に上勝町で何かできたらいいね」と話していたという坂野さん。大学を卒業して海外のNGOや国際物流企業で働いた後、「一度は上勝町に腰を据えて活動したい」と上勝町へ移住しました。

上勝町のゼロ・ウェイスト運動を牽引してきた方々は亡くなったり引退したりして表舞台から姿を消しつつあります。でも、想いはちゃんと次の世代に受け継がれているようです。

リサイクル率が77%を超えた上勝町が次に目指すのは…?

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ゼロ・ウェイスト運動が始まって10数年、上勝町のリサイクル率は77%に達しました。リサイクルできていない残りの23%は、鼻をかんだティッシュや紙オムツなど、どうしても焼却・埋め立て処分をせざるを得ないものです。ちなみに、日本の自治体の平均リサイクル率は20%以下。比べると上勝町のリサイクル率がどれだけ高いかわかりますね。

リサイクルをすることでごみの処理費は圧倒的に削減されており、すべて焼却していた場合の3分の1まで抑えられています。この取り組みを続ける意義があるといえる大きな理由ですね。

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上勝町では素材ごとにちゃんと分解してリサイクルしています

金銭面以外のメリットも見過ごせません。「日比ヶ谷ごみステーション」は町内で一番人が集まり、コミュニケーションが生まれる場になっています。坂野さんは「町民全員というわけではないですが」と断った上で、「日常的に34分別をしていることで、ものを買うときの視点も変わる」と話してくれました。

たとえばコンビニでは最近はプラスチック容器のコーヒーが人気ですが、あれは飲み終わったらストローを洗い、上の蓋を外して中のアルミの蓋も剥がし、カップを洗って乾かして…とものすごく手間がかかるんです。

しかもプラスチックはリサイクルにお金がかかります。でも、缶ならそのまま洗えばいいし、アルミ缶なら1kgあたり155円で買い取ってもらえます。それなら缶コーヒー買いますよね。

「環境のため」だけではなく「自分が分別しやすいため」に、リサイクルしやすいものを選ぶようにもなるんです。

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町内でできることには一通り取り組んできた上勝町が次に見据えているのは、上勝町外の企業や自治体と連携してゼロ・ウェイストを広めること。たとえばそのひとつが、メーカーとの連携です。容器包装が少なくリサイクルしやすいゼロ・ウェイスト商品を開発しようと考えているそう。

また、ゼロ・ウェイスト認証をつくり、町内の飲食店や宿泊施設などの取り組みを可視化する構想も。観光に来るだけでゼロ・ウェイストの取り組みを知り、真似できるように、という狙いです。

「上勝町が上手くいっているのは人口が少ない田舎町だからだ、うちの町では無理だ」と思う方もいるかもしれません。確かに、環境も歴史も人口規模も全く異なる自治体が上勝町と同じことをするのは現実的に考えて難しいと思います。

全く同じことをする必要はありません。福岡県大木町、熊本県水俣市といった自治体もゼロ・ウェイスト宣言をしていますが、それぞれ違ったやり方を取っています。

日本国内ではこの2つは比較的小規模な自治体ですが、世界的に見ると大都市でゼロ・ウェイストを採用しているケースが多いんですね。

世界で最初にゼロ・ウェイスト宣言をしたのはオーストラリアの首都キャンベラですし、昨年はNYが「2030年までに市から排出されるごみを90%削減すると発表しました。田舎だからできる、都市だからできない、ということはないと思います。

自分の町の強みや弱みを見据えて、適したやり方を模索する。そういった姿勢が大事なのでしょうね。
 
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最後に、坂野さんにgreenz.jpの読者のみなさんへのメッセージをお願いしました。

自分が何をどれだけ消費しているか、自分が出したごみがどこに行ってどうなっているかをまずは知ってほしいです。

たとえばそれはまだ使える資源なのにそのまま燃やされて埋め立てられていたり、海外の知らない地域に押し付けられていたりします。もし自分の住んでいる自治体がリサイクルをしていないのであれば、「ちゃんとリサイクルしようよ」と働きかけるのも住民1人ひとりの責任だと思います。

上勝町の分別表を見ながら分別してみるのも面白いですよ。細かい分別をやってみると分別できないものも見えてきて、「これってどうやったら無くせるかな」という発想が生まれるんです。

買い方を工夫すれば無くせるごみもありますから。自分の暮らしを自分できちんと把握するという意味でもおすすめです。楽しみながら取り組んでもらえるとうれしいです。

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ゼロ・ウェイストには、「ごみをゼロにする」というだけでなく、「無駄や浪費をなくす」という意味も含まれています。

自分が出すごみについて考えることは、自分の暮らしを振り返り、ちゃんとコントロールするということ。みなさんも、身近なところ、できるところからゼロ・ウェイストを目指してみませんか?

(写真: 板東宏昭)

– INFORMATION –

 
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ゼロ・ウェイストアカデミーでは2016年4月現在、プロジェクトマネージャーを募集しています。ご興味のある方は坂野さん(sakano@zwa.jp)まで連絡を。(条件等は過去の求人を参照してください)