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福島から未来を担う人材を! 南相馬の自然エネ教育&仕事体験施設「南相馬ソーラー・アグリパーク」で発信している大切なこと

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特集「MORE DONGURI!MORE GREEN!」は、“環境に良い商品”の目印となる「どんぐりマーク」と「どんぐりポイント」を通じて、未来にきれいな地球を残そうと活動する人たちを紹介する、「どんぐり事業事務局」との共同企画です。

ソーラーパネル2016枚と2つの野菜の水耕栽培ドームを備えた「南相馬ソーラー・アグリパーク」は、一見すると、自然エネルギーを使った野菜工場。でも実はここ、太陽光発電やマイクロ水力発電を体感できる「職業体験パーク」なんです。

南相馬市内外の小中学校の先生が、次々と学校単位で子どもたちを連れてくる人気スポットで、ここを運営する一般社団法人「福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会」の事業は、どんぐりポイント(※)の寄付先にもなっています。(社団の名称が、2016年1月、「あすびと福島」に改まっています)

ここでは、どんぐりポイントが後押しする環境保全活動や社会貢献活動の一例として、寄付先である「南相馬ソーラー・アグリパーク」の活動をご紹介します。

青空が広がる気持ちの良いある日、代表理事の半谷栄寿(はんがい・えいじゅ)さんを訪ね、小学生の体験学習を見学してきました。

(※)2013年11月にスタートした「どんぐりポイント制度」(経済産業省の補助事業)に基づき、カーボン・オフセットされた(=CO2の排出量削減に貢献している)製品やサービスに付与されているポイント。地域のコミュニティ等で集めて、環境にやさしい商品と交換したり、環境保全活動に寄付したりできます。(詳しくはこちら
「合同会社ひびくー」のタンブラー、「アイガモファーム小野越」の米、「ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社」のスマートフォンXperia TMシリーズ、「ぴあ株式会社」の冬ぴあ首都圏版のどんぐりポイントが集められ、一般社団法人「福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会」へ寄付されました。

 
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日本を支える人材を福島から送り出す

福島県内には震災後5年を経過した今でも、家に帰れない人が約8万人もいます。風評被害もありますし、本当の意味での「復興」には、まだ何十年もかかるわけです。ですから、その復興を支える人材をあらゆる世代から生み出していく必要があります。

そう語る半谷さんは、実は南相馬出身。生まれ育った地域が避難区域となり、お母様も避難中です。しかも、東日本大震災の前年まで、半谷さんは東京で東京電力の役員を務めていました。
 
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一般社団法人「福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会」代表理事の半谷栄寿さん。南相馬ソーラー・アグリパークに敷き詰められた太陽電池パネルは2016枚。西暦を意識したそうです

東電の原発事故で大きな影響を受けた福島に戻り、人材育成に力を入れると同時に、自然エネルギーの利用拡大を図っている半谷さん。その志には、2つの原点があると語ります。

まず、故郷の南相馬に少しでも貢献したいのです。それから、やはり東電の役員でしたから、福島に対して大きな責任を感じています。一生を掛けて責任をとらなければと覚悟しています。

数十年先まで横たわる大きな課題を見据えて、環境貢献や食育をテーマとした職業体験の場を提供しながら、未来を担う人材を福島から生み出す。――これこそが、半谷さん率いる同パークの大きな目的というわけです。

楽しみながら“自然の力”を実感していく子どもたち

南相馬ソーラー・アグリパークが誕生したのは、2013年の春。熱い思いと大きな決意に支えられた半谷さんの人材育成プログラムは反響を呼び、今では社員研修など大人向けの事業分野が成長して法人収益の7割を占めるまでになりました。

寄付に100%頼るスタートアップの段階を終え、ソーシャル・ビジネスとして自立しつつありますが、まだ立ち上げて3年なので、完全ではありません。

そんな中で、2013年度から現在までのどんぐりポイントの寄付総額は約67万円。主に小・中学生の体験学習などに活用されているそうです。

太陽光発電の売電収益も、体験学習を経済的に支える手段です。しかし、まだ完全自立には至っていません。どんぐりポイントなど、ありがたい浄財のおかげで、子どもたちが学べます。本当にありがたいと思っています。

そう感謝を述べる半谷さん。県外を含む多くの大人たちがサポートするこのパークには、これまでに南相馬市の小学3年生から中学2年生までの2200人が訪れています。市立小中学校の全児童数は約3500人ですから、かなりの利用率です。

市指定の必須科目ではないものの、ここでの約2時間の体験学習が、「総合学習」の授業の一環と位置付けられています。最近では、近隣の相馬市、福島市、伊達市、郡山市などの学校に通う子どもたちも、ここを活用しているそうです。

この日は、約3km離れた南相馬市立原町第一小学校から、6年生全員(2クラス65人)がバスでやってきました。

まずは、教室内でパーク職員たちとご対面。パークでは、福島出身の正職員2人と県外企業からの出向職員2人が働いています。いずれも30代前後の若手です。半谷さんたちは、アイスブレイクとして、2本のペットボトルでつくった科学おもちゃを子どもたちに配りました。
 
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さかさまにしても流れ落ちない水。この道3年の半谷名人が手を添えてクイっと動かすと……

ほらね、さっきまで空気が下から水を支えていたんだよ。空気の力ってすごいね。あそこに見える野菜工場の白いドームの屋根も、中から空気が支えているんだよ。

半谷さんは、子どもたちに語りかけながら、体を動かす遊びを通して、目に見えない空気にも力があることを楽しく伝えていきます。
 
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内側からの空気圧が野菜工場ドームの屋根を支えています。手前のマシンはソーラーパネルと接続された充電スタンド

空気の力で風車を回せば発電もできる。太陽の光にも発電する力がある。自然の力を可視化する遊びから徐々に自然エネルギーの話に入り、やにわに半谷さん、「今日は本物の仕事をやってもらうよ!」と言い渡して、子どもたちを教室の外に導きます。

半谷さんは、老舗の環境NPO「オフィス町内会」の事務局代表でもあります。キッザニア東京(KCJ GROUPの子ども向け職業・社会体験施設)にアクティビティを出展した経験もあり、その理念に影響を受けたとのこと。見たり聞いたりして学ぶことより、責任感がわく「仕事体験」を重視しています。

この日はちょうど、相馬農業高校の女子生徒さん2人も、インターンとして同パークに3日間通っていました。就職先など進路を真剣に考える時期の高校生のお姉さんたちに見守られて、小学6年生も頑張りました。
 
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同パークの発電所の他に、隣接する東北電気保安協会所有の太陽光発電所にもお邪魔して「巡視点検」を体験。「パネル表面に傷があると発電量が落ちるよ。傷が無いか点検しよう。裏の配線が切れたり外れたりしていないかも見てね」とスタッフが声を掛けます。
 
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パークに戻って、太陽の光と発電についての研究体験。パネルの角度と向きを変えられる特別な太陽電池パネルを使って、発電量をチェック。子どもたちは最も発電量が大きいのは「南東」と予想。果たして正解は?(すぐに実験して「南」と分かりました)
 
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パークの中で、マイクロ水力発電を体験。タービンを手で回してみて、水の威力を体感しました。

「間違えていいんだよ。考えることが大事。意見を言ってみて」と励まし続けるスタッフの明るさに勇気を得て、体験メニューの前半から、子どもたちの元気な声が響き始めました。きちんとワークシートに記入しながら班ごとに“仕事”をこなしました。
 
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刻々と変化する太陽光発電の「現在の発電量」を、じっと見つめる子どもたち。外で自然の力を実感してきた直後なので、みんな興味津々です。

教室に戻った子どもたちは、BEMS(事業所のエネルギーを見える化して管理するシステム)の画面を囲みます。

現在の発電量は約300キロワットで、一般家庭約100軒分を発電できています。今日はエアコンも要らないし、今は電気も消しているから、野菜工場と教室で使っているのを合わせても10キロワットだけだね。こんなふうに、晴れている昼間は、電力会社から全く電気を買っていない状態です。逆に、余った電気は電力会社に売っています。

仕事も勉強も終わって再び外へ。ご褒美は絶品「ソーラー・サンドイッチ」。電気自動車に充電した太陽光由来の電気で焼いたベーコンと、ドームで育てた野菜の組み合わせが、たまりません。
 
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自分の意見を発表できる大人になってほしい

半谷さんやスタッフたちは皆、すぐには子どもたちに答えを言いません。いつでも、まずは子どもたちが考えるのを待って、ニコニコしながら、「どう思う?」とたずねるのです。

ここでの教育プログラムでは、「考える」「発表する」「行動する」という3つの力を重視しています。いずれも、大人になってどの分野で働くにしても、絶対に必要な力です。中でも特に大事なのが、発表する力です。

自分の意見を述べることに躊躇しないでほしいんです。進んで発表できる力を子どもの時から身に付けて、復興を担うリーダーに育ってほしい。

半谷さんの話では、無邪気な低学年のうちは、自然な発言がポンポン出てくるそうです。しかし高学年あたりからシャイになり、周囲の目を気にするようになって黙ってしまいます。この日の6年生はよく発言しました。普段から学校の先生方がそのように教育しているのでしょう。

大人も一緒ですよね。発表のたびに躊躇したり、考えることを面倒だな、面白くないな、と感じたり、そんな意識でいたら、人生も充実しないでしょう。大船に乗れば安泰という時代もあったけれど、今はそうではありません。

もちろん子どもたちに反抗期はあっていいのですが、発表する楽しさ、考える楽しさを、ここで学んでくれたらと願っています。

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このパークでの人材育成は、「発言力」を含めた基本的な姿勢、つまり「意識付け」に力を入れているわけです。半谷さんの失敗も含めた人生経験をもとに、臨機応変に、スタッフの人間力を活用した運営をしています。

南相馬の中心部は原発から20キロメートル以上離れていて避難指示などがなかったので、市民7万人のうち5万人が戻っています。でも、放射線の心配から、帰ってきているのは高齢者の方が多いのです。数字の安全と気持ちの安心は全く違いますから。南相馬の高齢化率は、全国平均の25%だったのですが、今では35%に達しています。この結果、日本の社会課題を20年も先取りした課題先進地なんです。

だからこそ、「ここで学んだ人は、数十年後の日本社会に貢献できるはずです」と語る半谷さん。同パークには、東京や名古屋など都市圏の大企業の社員も研修にやってきます。半谷さんたちは、未来のための人材づくりに本気で取り組んでいます。

どんぐりポイントの寄付金が、子ども達の学習の後押しとなり、今回出会った小学生の中からも、社会起業家など、未来の福島、そして日本を支える逸材が現れるかもしれません。

生活者が集めたどんぐりポイントが、寄付という形でさらなる環境活動・社会貢献活動につながっていく。「どんぐりマーク」が全国でもっと広がっていくと良いですね。
 
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福島県内に数多く建設されている自然エネルギー拠点を表示した地図の上で

(撮影:服部希代野)

[sponsored by どんぐり事業事務局]