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都会でもっと木を使うには? クリエイティブの対価の新しい形って?「WoodLuck」長谷川順一さんと「small design center」宇田川裕喜さんが一緒に考えた「LOCAL SUNDAY VOL.2」をレポート!

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ここ数年、日本の地方に注目が集まっています。革新的なプロジェクトが地方から生まれたり、著名人が移住して田舎暮らしの魅力を発信したり…そんな動きを見て、「自分も地域に関わりたいな」と考える人が増えてきている気がします。

でも、なかなか現地に行くことは難しかったり、きっかけがなかったりしますよね。そんな方におすすめしたいのが「LOCAL SUNDAY」。日曜日の朝、どこかの地域の食材でつくられた料理を食べながら、地域で活躍するプレーヤーたちと話をするイベントです。Google の展開する「イノベーション東北」とgreenz.jpが一緒に開催しています。

今回は9月27日に開かれた「LOCAL SUNDAY Vol.2」の様子をレポートします。ゲストは、陸前高田で木質バイオマスの地産地消に取り組む長谷川順一さんと、東京でスモールビジネスとクリエイターをつなぐシェアオフィス「small design center」を運営する宇田川裕喜さんです。

このおふたりが揃って話が面白くならないわけがない!…というわけでさっそく、学びに溢れた日曜の朝の様子を追体験していただきましょう。
 
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復興の過程で育まれた東北の知見と、地方創生のトップランナーたちが持つ知見を組み合わせたら…?

会場は、水天宮前にあるsmall design center。日曜の朝10時という時間設定にも関わらず、40名弱の人が集まりました。ちょっと眠そうな方もいましたが、用意されていた美味しいコーヒーを飲んで周囲の人と話をするうちに、段々目が覚めてきた様子です。

まずは、Google で防災・復興プロジェクトに取り組む松岡朝美さんから、「イノベーション東北」と「みんなで地域プロジェクト」について説明していただきました。
 
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こちらの記事で詳しく紹介していますが、「イノベーション東北」とは、Google が中心となり、震災を機に新しい挑戦に取り組もうとしている人と、それをサポートしたい人とをオンラインでつなぐマッチングプラットフォームです。

公式サイトには、プロジェクトのロゴを選ぶために投票に参加するという、誰でも気軽に参加できるものから、商品PRをプロボノでサポートするなどどっぷり関わるものまで、たくさんのプロジェクトが掲載され、参加者を募集しています。

中でも「みんなで地域プロジェクト」は、東北と、地域活性において先進的な取り組みをしている「地域」が実験的に連携する試みです。復興の過程で次々生まれている東北の知見、地方創生のフロントランナーたちが持つ知見。それらを提供し合うことで新しい化学反応が起きるのではないかという発想から始まりました。

そのひとつが、陸前高田と西粟倉のマッチングによって生まれた「WoodLuck」。地域循環型で持続可能なエネルギーのあり方を、みんなで集まり考えるイベントを開くというプロジェクトです。このプロジェクトはどうやって生まれ、何を目指しているのでしょう?

…と、ここからは、「WoodLuck」の主催者であるゲストの長谷川さんにバトンタッチして、詳しくお話してもらいましょう。

石油の代わりに木質バイオマスを使い、地域内で経済を循環させる

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長谷川順一(はせがわ・じゅんいち)
株式会社箱根山テラス代表取締役用務員。2008年に株式会社長谷川建設の代表取締役に就任。震災では社屋を流出したが、直後から道路啓開・仮設住宅の建設など復旧の最前線で奮闘。2012年にエネルギー事業部を設け、木質バイオマスの地産地消に着手する。2014年に宿泊・滞在施設「箱根山テラス」を開業。

長谷川さんは、岩手県陸前高田市にある長谷川建設の社長です。2014年9月11日、同市に“木と人を活かす宿泊滞在施設”箱根山テラスをオープンしました。これからシェアハウスと銭湯もつくる予定です。

この施設のこだわりは、木質バイオマスによる熱エネルギーを活用していること。給湯や暖房に、地域の木材を使っています。

長谷川さん 震災以降、持続可能な社会をつくるにはどうしたらいいのか、ずっと考えてきました。日本の森林面積は国土全体の64%。でも、それを充分に活かしているとは言いがたい状況にあります。

そこで陸前高田では、熱エネルギーで自立したまちづくりを目指そう、と勝手に決めました。市に相談したりもせず、勝手に(笑)

石油に頼った暮らしをしていると、お金は海外に出ていくばかり。でも、地域に豊富にある木を使えば、お金がまちの中で循環します。現在、林業不振から全国各地で放置林が目立っていますが、木の使い道が増えることで環境保全にもつながるというわけですね。
 
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同じように木質バイオマスを使った熱エネルギーに注目していたのが、西粟倉村で村落エナジー株式会社を立ち上げた井筒耕平さんです。

ふたりで話しあう中で、「地域の特性はそれぞれ違うから、その土地に合った形を探した方がいいよね」「メーカーやコンサルタントに任せるより、現場同士のつながりの中で模索したほうが楽しいし効率的だよね」と意見が一致したそう。

そこで、「まずは各現場で火をおこして美味しい料理をつくり、みんなで木質バイオマスを使った地域のエネルギーについて考えよう!」と“木質バイオマスとおいしいごはんの集い”「WoodLuck」の企画が生まれました。

長谷川さん 発端は、震災後に仮説商店街に薪ストーブを持って行って、炊き出しをしたこと。野生の本能なのかな、人って火のそばに集まるんですよね。面白いなと思って火を囲むイベントを開いたら、100人来たんですよ。ど田舎に、若い人が100人。これはすごいぞ、と。

少数精鋭のメンバーで細部まで計画を立てて実行していくのではなく、みんなで一緒に語り合い、そこから生まれるアイデアやつながりからプロジェクトを発展させていく。それが本来のまちづくりの形なのかもしれませんね。

そんな姿勢が面白がられたのでしょうか、長谷川さんは先日、陸前高田市の職員から、「まちづくり再建計画の中でバイオマスを使ったまちづくりを推進したい。話を聞かせてほしい」と声をかけられたそうです。
 
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長谷川さん 俺にとっては、涙が出るほど嬉しかった大事件で。勝手に決めて取り組んでいたことが評価されたんだから。

個人的に、バイオマス利用における行政主導のまちづくりは難しいと思うんですよ。民間が半歩前に出て、行政と共に車の両輪の様に進めることが良い形だと思う。陸前高田では、それが実現できるかもしれない、と希望を感じました。

自分の地域の未来を、熱く、でも笑いを交えて語る長谷川さん。「きっと、関わったら面白いんだろうな」と思わせてくれます。興味を持ったみなさん、ぜひ箱根山テラスに遊びに行ってくださいね。

地域とクリエイターをつなぐシェアオフィス

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宇田川裕喜(うだがわ・ゆうき)
株式会社バウム代表取締役/クリエイティブディレクター。PR会社勤務を経て、2011年に「場生む」ことで社会課題を解決していくクリエイティブ会社バウムを創業。主な仕事に「SuMiKa小屋フェス」「丸の内朝大学」「世田谷ヤネルギー」「Pop Up Portland 2015」など。2014年、「small design center」オープン。

もうひとりのゲスト・宇田川さんは、“「場生む」ことで社会課題を解決していくクリエイティブ会社”株式会社バウムを運営しています。

バウムのモットーは、クリエイティブの力で社会を変えていくこと。自分たちがほしいと思えないもの・好きになれない企業の仕事を受けることはないといいます。

そんなバウムが運営するシェアオフィス「small design center」は、もちろんただのシェアオフィスではありません。宇田川さんはそのコンセプトを、最近注目を集めているオレゴン州ポートランドを例に紹介してくれました。
 
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宇田川さん ポートランドは、まちの隅々にまでデザインが浸透しているんです。スモールビジネスも多い元気なまちですが、みんなビジネスを始めるときにデザインを大切にしています。

デザイナーも、都会の大きな仕事を受ける一方で、まちの小さな仕事を引き受ける。そうすることで、自分が暮らすまちが目に見えて変わっていくでしょう。デザインでまちに貢献しようという意識があるんですね。

デザインと小さなビジネスの距離が非常に近いのが、ポートランドの特徴なんです。

日本でも、そんな関係性をつくれないだろうか。その発想がsmall design centerにつながりました。

宇田川さん 規格外の野菜を使って加工品をつくるなど、新しい挑戦をしようとしている農家さんと話していると、最後につまずくのがデザインなんですね。誰に頼んでいいかわからない、どんな風に頼めばいいのかわからない。

そこで、クリエイターが集まるシェアオフィスをつくって、地方の人が気軽に相談を持ち込める場として運営しようと思いました。

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右は既存のパッケージ、左はバウムが手がけた鹿肉のパッケージ。「同じ値段だったら左のほうが買いたくありませんか?」と宇田川さん。こうして比較すると、デザインの大切さがわかります。

たとえば新しく開発したジャムのパッケージをデザインしてくれる人を探している農家さんは、「small design center」に入居するクリエイターのポートフォリオを見て、「この人にお願いしたい」と依頼することができます。

また、より広い範囲から選びたい場合は、バウムに記事を書いてもらい、small design centerに入居していないクリエイターからの応募を募ることも可能です。「イノベーション東北」と考え方や仕組みが似ていますね。
 
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宇田川さん これまでに数件のマッチングを行ってきました。たとえば福島の果樹園のロゴマークをつくる案件。これは、対価の払い方が桃の木一本なんです。「えっ?」と思うかもしれないけど、永久に桃が送られてくるなら、最終的にはかなりお得になりますよね。

仕事の対価って、何も現金だけじゃなくてもいいと思うんです。農家さんの仕事は機械が壊れたり台風の被害を受けたりとリスクが高く、常にお金を用意しておかないといけません。それゆえにデザインにお金をかけることに心理的負担を感じる人が多く、現金ではなく現物で対価を払えないか、となるんですね。

「small design center」では、お互いが気持ち良く納得できる、面白い対価のあり方を考えていけたら、と思っています。

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small design centerでロゴを募集した桃農家さん

何とも柔軟でユニークな「small design center」。地方のスモールビジネスに関わりたいクリエイターのみなさん、センスの良いクリエイターを探すスモールビジネス従事者のみなさん、まずはお問い合わせしてみてはいかがでしょう?

「都会で木を使った暮らしをするには、どうしたらいい?」「クリエイティブの対価の面白い形を一緒に考えよう!」——2グループに分かれてディスカッション

さて、これが講演会なら宴もたけなわ、といったところですが、「ゲストの話を聞いて、はい解散」ではなく、その後のほうが長いのが「LOCAL SUNDAY」の面白いところ。

まずは近くに座っている参加者同士で数人のグループをつくって自己紹介しあい、「なぜ参加したのか」「ゲストの話を聞いて、どんなことを感じたか」「ゲストのお題に対して、自分だったら何ができるか。何をしたいか」を話し合います。
 
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そうそう、“お題”を説明していませんでしたね。今回は、プレゼン終了後に長谷川さん、宇田川さんから、「参加者のみなさんと一緒に考えたいお題」を出してもらいました。

長谷川さんのお題 都会で木を使った暮らしをするには、どうしたらいい?
宇田川さんのお題 クリエイティブの対価の面白い形を一緒に考えよう!

午後は2グループに分かれてこのお題を掘り下げるのですが、いきなり大人数に向けて話をするのはちょっとハードルが高いもの。それでその前に、少人数で話をして考えをまとめる時間を設けているのです。どのグループでも話が弾み、緊張が解けた様子でした。
 
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30分ほど話したら、お待ちかね! のランチタイム。ホヤの炊き込みごはん、サンマ、エゾシカ肉のカレーという贅沢メニューです。会場のあちこちから「美味しい!」の声が聴こえてきました。
 
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カメラを向けると即座に変顔をつくってくれた、ひょうきんな長谷川さん。

ランチの後は、グループセッション。2グループに分かれ、それぞれ長谷川さん、宇田川さんを囲んで輪になりました。一人ひとり自分の考えを発表し、みんなでディスカッションします。
 
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「木のある暮らしをしている人にインタビューする」「体験施設をつくる」「東京でWoodLuckを開く」「東京オリンピックの聖火を薪で起こす」とさまざまな提案が出された長谷川さんグループ。

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宇田川さんグループでは、「その土地で過ごす時間や体験を対価にする」「レベニューシェアに切り替える」「標準価格表があればお金以外のものへの換算が容易になるのでは?」といった議論が交わされていました。

でも、きっとお互いのグループでどんな話が出たのか気になるはず。ということで、最後にひとつの輪になって、それぞれどんな話が出たのか、長谷川さん、宇田川さんから紹介してもらいました。
 
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長谷川さん いろんな意見が出ましたが、大きく分けると3つあるのかなと思います。ひとつは、子どもや赤ちゃんに対する取り組み。木製品のおもちゃをつくる、贈るといった意見が出ました。木には、お母さんが「子どもに触れさせたい」と本能的に思う優しさやぬくもりがあるんですよね。

ふたつめは、木を使う暮らしの情報発信。方法は色々あるし、もっと発信していかないといけないと思いました。みっつめは、身近なところで木を使うこと。そこから発展して、23区内でたき火をしよう、と盛り上がりました。

宇田川さん こちらでは、意外と「ものを対価にする」という意見はあまり出なくて、多かったのは「地域の飲み会に参加できる」「第二の故郷を得る」といった体験を対価にするという提案や、クリエイターの成果が評価され表に出る場を用意するといった提案。また、レベニューシェアのように新しい分配の形もひとつの手なんじゃないか、という意見も出ました。

どれも面白いので、色々な形を試していきたいなと思いました。クリエイティブな人ってシャイな人が多くて、意外と前に出たがらなかったり、社交的じゃなかったりするんですよね。コミュニケーションを大事にする農家さんとは正反対。そこをうまくディレクションして解決できるといいのかな、と。

両グループとも、建設的な議論ができたようですね。参加者のみなさんには、提案を書いた紙の裏に連絡先を書いてもらい、ゲストのおふたりに渡してもらいました。ここでの出会いから、新しい何かが生まれるといいですね!
 
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最後にみんなで記念撮影をして、濃密な3時間が終了しました。刺激的な話を聞いて、意見交換して、同じような立場の友人ができて、地方のおいしい食材を使った料理を食べて…。それなのにまだ13時過ぎなのだから驚きます。

仲良くなった参加者同士で遊びに行くも良し、どこかの集まりに顔を出すも良し、今日気になったことを深堀するため本屋や図書館に行くも良し。ダラダラしがちな日曜の朝を有意義に使うことで、午後も楽しい時間を過ごせるのではないでしょうか。

現在イノベーション東北上では、また新たな地域のチャレンジも立ち上がっています。今後またLOCAL SUNDAYが開催された時には、ぜひ遊びにきてくださいね。

(写真:関ひとみ)