ペットボトル、お菓子の袋、掃除機のパーツ、衣装ケースなど、今や私たちの生活に必要不可欠なプラスチック。実は、処理するのが難しく、海にも多く流れ出てしまっていることが問題になっています。
エコバッグの使用や、バイオプラスチックの開発など、プラスチックごみ問題への意識は高まっている様子ですが、まだまだ充分な対策と改善はされていないのではないでしょうか。
実際、アメリカの研究者Jenna Jambeck博士の2015年2月の研究によると、毎年、約80億キロのプラスチックが海に捨てられていると言われています。これは、東京タワー2000本分の重さになるといいます。
そのプラスチックごみで苦しんでいるのが、海の生き物たち。人間が捨てたプラスチックを食べてしまって窒息死してしまったり、餓死する被害が多発しているといいます。
彼らを救うためにも、プラスチックのさらなる有効利用を進めたい。今回はそんな思いで始まった、膨大な量のプラスチックごみをアップサイクルし、道路の舗装を実現しようとしているプロジェクト、「PlasticRoad」をご紹介します。
「PlasticRoad」をつくる、5つのメリット
オランダの大手道路建設会社「KWS Infra」が研究を進め、実現を目指している「PlasticRoad」。環境にやさしいということに加えて、さまざまなメリットがあります。
まず最初のメリットは、土の上に直接設置できるということ。通常、アスファルトの道路をつくるときは、表層部分の下に、アスファルトの基層、砕石やセメントによる上層基盤、クラッシャンを用いた下層基盤、さらに路床を構築する必要があり、道路整備にはとても大きな時間と手間がかかります。
したがって、土の上に直接設置できる「PlasticRoad」は、プラスチックを用いた環境面でのメリットだけでなく、現場での工程を少なくし、時間短縮ができることができ道路工事による渋滞や迂回を減らすことにつながるのだとか。
土の上に直接設置された「PlasticRoad」
2つめのメリットは、この「PlasticRoad」は事前組み立て式ということ。工場で事前に道路をつくることができるので、たとえ一部の道路が欠損してしまっても容易に交換することができます。簡単に運べ、設置できることは、エネルギーや費用の節約にもなるのです。
「PlasticRoad」の3Dプリントのミニチュア。このようなパーツを並べて道路がつくられます。
3つめのメリット。それは、「PlasticRoad」の耐久性は50年とされていて、それは従来のアスファルト道路の3倍なのだとか。また、とても頑丈で-40℃から80℃くらいは容易に耐えられるそうです。
4つめのメリットは、道路の表面下を空洞にしスペースをつくることにより、上下水道のパイプやケーブルなどを設置できること。
そして5つめのメリットは、風土や場所に合わせて道路の性質を調整できるので、雨がよく降る地域では排水のいい性質にしたり、固さを変えることもできることです。
果たしてビジネスとして成立するのか?
このようにいろいろなメリットがある中で、「PlasticRoad」の最大の利点は、やはり環境にとても優しいということではないでしょうか。40年以上前から問題視されているにも関わらず、今日もプラスチックごみは世界中で増え続け、海に流出して生態系を脅かしています。
「KWS Infra」では、現在海に浮かんでいるプラスチックごみが、「PlasticRoad」の原材料としてふさわしいか、研究しているところだといいます。
「PlasticRoad」の研究は、まだまだ初期段階で、色々と試行錯誤を繰り返している最中。このプロジェクトの実験地区に選ばれているオランダのロッテルダムに行っても、まだ見ることはできませんが、ロッテルダム市議会は、世界で初めてプラスチックの道路がつくられる場所に選ばれて、心待ちにしている様子です。
「KWS Infra」のマネージャー、Alex van de Wall(以下、アレックスさん)はこう語っています。
「PlasticRoad」を実現するにはまだまだたくさんの課題があります。まずは、水に濡れたときの路面の滑りやすさや、安全性についての検証です。私たちはこのプロジェクトの技術的な課題は、ほぼ解くことができると考えています。
一方で課題に感じていることは、ビジネスとして成立するのかどうかわからないこと。私たちはこのプロジェクトを見分けてくれて、実現可能か確かめてくれるパートナーを探しているところなんです。
私たちが文明を発達させる代わりに犠牲にしてきた、地球環境。東京は、2020年のオリンピックに向けてあちこちで開発が進められていますが、道路整備のあり方を見直すべき時期に来ているのかもしれませんね。
[via psfk,theguardian,NRDC,OUR SEA, OUR LIFE]
(Text: 高木遥)