グリーンズでは、「greenz people(寄付会員)」のみなさま限定で、年に2冊の本を出版しています。それが、未来のつくりかたがわかるブックレーベル「green Books」。
現在は、グリーンズの理事3人が、「グリーンズの学校」を展開する上で大切にしている考え方、メソッドなどをまとめた次号『学びの場のつくり方』を鋭意制作中です!
そこで今回は、編集学校からエコハウスDIY、コーヒー起業家クラスまで、グリーンズが行っている学びの場について、どう始まったのか、どんな思いをこめているのか、掘り下げて聞いてみたいと思います。
聞き手はgreenz people担当アシスタントの山本恵美がつとめます。
「コミュニティ&まちづくり学科」から始まった、グリーンズの学校
山本 グリーンズにはいろんな学びの場の種類がありますが、それってどうやってはじまったんですか?
小野 きっかけは東日本大震災ですね。最初のクラスは「コミュニティデザイン&まちづくり学科」というもので、渋谷で開催しました。
震災を経て、”自分ごと”としてプロジェクトを始める人が増えたからこそ、次のステップに悩んでいる人が多いという気付きもあって。
「できないことができるようになる」には、コーチングのような存在が必要ですが、僕たちはウェブマガジンを通じてきっかけを提供することしかできていなかった。だからこそ、グリーンズとして”背中を押す”ような場が求められていると思ったんです。
山本 どうして「コミュニティデザイン&まちづくり」だったんですか?
YOSH ちょうど山崎亮さんの『コミュニティデザイン』がすごく注目されていた頃だったので、僕自身、もっと知りたいと思ったということもありました。
山本 カリキュラムはどうやって考えたんですか?
YOSH 初めての経験だったので、さまざまな本を読んだり、学びの場に参加して、考えていきましたね。特に大事にしていたのは、『U理論』でした。
山本 U理論???
YOSH Uの字を描くように、段々と深まっていって、Uの底で自分の源(ソース)とつながる。そこで初めて見えてきた新しい兆しを土台に、また上にあがっていく。シンプルにいうとそういうことなんですが、グリーンズとして本質的な学びの場をつくりたいと思ったとき、とてもいいモチーフだと思ったんです。
山本 本質というと?
YOSH 知識をインプットするものや体験を伴うものなど、学びの場にもいろんな種類がありますよね。浅いものから深いものまで多様にあります。
で、グリーンズとしては、学びの場を通じて、何かを始めたくなったり、新しい目標が見えてくることが大事だと思っているので、より深いレベルでの気づきを大事にしたいと思っているんです。
U理論は仲間との対話を通じて、自分自身を掘り下げていくことになるので、その旅路はとても大変です。「どうしてここまで?」というくらい向き合う。そして、そのキツさを共有することで、仲間とのつながりも強くなる。
山本 なるほど、自分自身の気づきだけでなく、仲間とのつながりも大事だと。
YOSH 何かを始めるときに大切なのって、失敗を共有できる環境だと思うんです。初めてだからうまくいかないこともある。でも、その気付きが他の人にっても学びになる。そんなふうにオープンに共有できる関係になるには、心と心でつながった方が早いですよね。
山本 『U理論』などは最初から知っていたんですか?
YOSH ミラツクの西村勇哉さんやHome’s viの嘉村賢州さんなど、まわりの友人たちから教わったことばかりです。
実際に彼らがつくる場に参加し、幸運にもワークショップの流れをデザインする現場にふれたことで、手法だけでなく、ペースやスペースなど、場をつくるための”変数”をたくさん学びました。
過去のgreen school Tokyoでの様子
これだけはゆずれない! 場づくりのひみつって?
山本 いま、さまざまなクラスを展開していますが、「これだけはゆずれない!」ということはありますか?
YOSH ちょうどいま、それぞれの暗黙知を共有している最中なので、みんなに聞いてみたいね。
小野 僕は起業系のクラスが多いのですが、卒業した後もしっかり継続するには、”頼まれなくても自ら進んでやる仕事”みたいなものを見つけないと、ただの「ごっこ遊び」になっちゃうなと思っていて。
ストレスを発散するように、スクールのときに思いついても、本当の生き方はあまり変わっていないというのは絶対やりたくない。募集時に「ある程度本気で来てね」というメッセージも出しているので、しっかりと継続してできるようになることを大切にしています。
山本 なるほど。
小野 ただ、マイプロジェクトとかって、教えるものでもないと思っていて。H.O.Wの柿原さんやスローコーヒーの小澤さん、シネマアミーゴの長島さんなど、いろいろな人たちに講師として関わってもらっていますが、そういう先輩たちの現場に触れることも大切だと思いますね。
小野さんがファシリテーターを務めた「集う場クラス」での一コマ。
山本 菜央さんはいかがですか?
菜央 僕のいまの挑戦は、自分の暮らしとかベースになるところをつくりかえていくことなんです。ソーシャルデザインをしよう、というよりも、結果的にソーシャルデザインになっていくんじゃないかという仮説を持っています。
最近、大きな影響を受けたのがソーヤー海くんで、チェックイン(始まりの時間)をする前に、まず”自分とつながる時間”をつくるんですよね。
山本 それはどんなものですか?
菜央 いま自分がどんなことを感じていて、どんなことを望んでるのか。今どんな状況にいるのか。そんな自分の感情と対話する時間を持つ。
そうやって自分に共感できると、心から聞いて、心から話すようになる。そこに価値をおいてますね。普段だと、会社員なら会社の立場でものを言うことに慣れすぎているので、自分の心がどういう状態にあるのかとかは、意外と忘れがちだと思うんです。
ソーヤー海くんとの「アーバンパーマカルチャークラス」
山本 確かに。
菜央 もうひとつ、学びが多かったのは「せんきょCAMP」をやったことですね。
せんきょCAMPは、社会づくりとか政治参加があまりにも遠いものになってしまっているので、市民が自分でつくれる対話の場の枠組みのこと。そういう枠組みを誰でもどこでも開くことができるように、オープンソース型にしています。
で、そこで気付いたのは、政治や社会をどうしたいのか、を話す前に、自分の望みをちゃんと見つめなおす方がいいんだろうなということ。そうして初めて「いや社会はこうだから」と意見を押し付けるのではなく、自分の共感をもってそれを聞くことができる。たとえ意見が違っても、その姿勢があることが大事だと思うんです。
YOSH 震災直後と比較しても、ここ数年で時代の変化も感じますよね。だからこそ毎年のように、内容も変化していくとは思います。例えば、今はどのクラスも6回でやっているけど、もっと短かったり、もっと長くてもいい。
山本 6回には何か意味があるんですか?
YOSH 初回をオリエンテーション、最終回を発表とすると、本当にUの字を歩むには6回くらいがちょうどいいんですよね。あとはあまり長いと出席率が下がってしまう、ということもありました。
小野 メディアのマネタイズという視点でいうと、スクール自体の安定的な運営も大事なんですよね。余裕をもって募集できれば、いい授業をつくることに集中もできます。
何よりスクールの一番の価値って、卒業生がつながり続けることなんです。卒業までブレイクスルーがなくても、そこで学んだ仲間や他のクラスの人と関係性をもつことで、数年後に新しい動きがはじまることもある。
だからこそ、コツコツ続けることが大切で、そのために今は全6回というフォーマットにしています。
グリーンズのこれからの学びの場
編集学校第4期の受講生たちと
山本 最後に、「これからこう変わっていきたい!」というところがあれば、教えてください。
YOSH 編集学校はずっとやり続けたいなと思っています。「人文系のスキルを秘めた編集やライターという職能にはすごい力がある!」ということを伝え続けていきたいですね。
また、世代も広げて行きたくて、小学生向けのクラスも、いつか実現できたらと思っています。
菜央 僕は、引き続きもっと深めていきたいですね。社会が幸せになるには、個人が幸せでなければいけない。そして個人の幸せをつくるために大切なことが「つながるくらし」をつくることだ、と。
いろんな才能を持っていて、いろんな可能性をもっている人がいるからその才能をつなげていくとか、地元の海、山、町、人とかの資源をつなげて循環するくらしをデザインすることが、社会をつくることにひろがっていくようなありかたを模索中です。
あたらしい日々のあたらしい日常から、あたらしい社会をつくれると思うから、それができたら最高だな、と。
山本 今後がさらに楽しみですね。ありがとうございました!
というわけで、グリーンズの場づくりのひみつ対談、いかがでしたでしょうか。
場づくりについての考え方、ヒントがぎゅーっと詰まった対談の続きは、greenz people(寄付会員)だけに届く限定本 green Books vol.5「学びの場のつくりかた」でお楽しみください!8月下旬にお届けする予定です。
メンバーの対談だけではなく、グリーンズが学びの場のつくるうえで大きな影響をうけたフューチャーセッションズ 野村恭彦さん、ミラツク 西村勇哉さん、共生革命家 ソーヤー海さんへのインタビューも収録予定です。どうぞお楽しみに!
(Text: 山本恵美)