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投票したら、ちぃとええことあるんよ。政治が身近になる対話の場を地道に続ける「せんきょCAMP尾道」

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この記事はグリーンズで発信したい思いがある方々からのご寄稿を、そのままの内容で掲載しています。寄稿にご興味のある方は、「採用について」をご覧ください。

統一地方選も後半戦の投票日まであと1日。誰に投票するか決めましたか?

「いったい、誰に投票すればいいかわからない」「そもそも、選挙で未来が変わる実感がない…」そんなふうに僕たちの生活からちょっと距離がある「選挙」ですが、そんな選挙をもっと身近にしようというムーブメントがあります。

今回、この記事で紹介するのは「せんきょCAMP尾道」。せんきょCAMPとは、誰にでも開催できる「政治が身近になる対話の場」。

せんきょCAMP宣言

せんきょCAMPは、多くの人にとって「他人ごと」になってしまっている政治や社会づくりを「自分ごと」にしていくためのオープンな対話の場です。

せんきょCAMPの目標は、みんなが「素敵!」と思える社会づくりに、みんなが参加して、そんな社会が「あたらしいあたりまえ」になることです。それを、私たちは「参加型民主主義」と読んでいます。

せんきょCAMPは全国の市民に呼びかけます。「あなたも、『対話の場』をつくろうよ!」と。カフェで、公園で、学校で、イベントで…どこでも、誰でも、どんなカタチでも、開催できます。

あなたも、友人知人、まわりの人たちを誘って、みんなが「素敵!」と思える社会づくりを、はじめてみませんか?

2012年12月23日 せんきょCAMP発起人一同(「せんきょCAMP」より転載)

2012年11月30日に初めてのせんきょCAMPである、せんきょCAMP渋谷が開催され、その後、「せんきょCAMP◯◯」と後ろに地名を付ける形で全国に広がっていき、確認できただけで150か所以上で開催されてきました。

そんな各地のせんきょCAMPの中でも、特に活発に活動しているのが、広島県尾道市で活動する「せんきょCAMP尾道」。

期日前投票すると飲食店で割引サービスなどが受けられる「VOTE割」や地元政治家を呼んでの対話の会などを行っていると言うのですが、誰が、どんなふうに活動しているんでしょうか?

せんきょCAMP言い出しっぺのひとりである鈴木菜央(greenz.jp編集長)と、せんきょCAMPメンバーの葛原信太郎(earth garden編集長)が尾道に一泊二日の弾丸取材に行ってきました。
 
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photo by 尾道 | Flickr – Photo Sharing!

さて、まずは尾道がどんなところか知っていますか?

岡山市と広島市のほぼ中間、瀬戸内海に面して、急勾配の坂、海沿いの工場地帯、ゆったりとした空気の流れる島々、レトロな商店街と見どころ豊富です。

古民家再生なども積極的で、そのクリエイティブな空気感に誘われて、他地域からの移住者が多いのも特徴です。
 
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駅近くの商店街の様子。アーケードが続きます。

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アーケードから横道にそれると、その先は海。こういった路地にもいいお店がいっぱい。

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ここが今回お話を聞かせていただいたゲストハウス「ヤドカーリ」

そんな尾道でせんきょCAMPの活動の中心になっている二人も、移住者でした。

一人は10年間尾道で「Chai Salon Dragon」というカフェ・バーを営み、昨年からカフェの横でゲストハウス「ヤドカーリ」を開業した村上博郁さんと、映画『スーパーローカルヒーロー』の監督で福山大学非常勤講師、田中トシノリさん。お二人は、どんなきっかけで「せんきょCAMP尾道」を始めたのでしょうか?

村上さん もう4年前ぐらい前かな。ウェブで偶然せんきょCAMP渋谷を見つけて。我々もなにかせんといけんなぁと思って。

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「Chai Salon Dragon」とゲストハウス「ヤドカーリ」の運営するほか、NPO法人「まちづくりプロジェクトiDId尾道」の代表理事もつとめる村上博郁さん

田中さん 僕らもそうですけど、あの時はみんなこのままじゃいけないとか、なにかしなきゃって思ってましたよね。なにか地元でできることはないかって、夜な夜な僕達の周りにいる人でカフェに集まって話していたんです。

2012年の衆院選の敗北感のあと。応援していた候補者が当選したかどうかとか、そんなことよりも、投票率が落ちたっていうのが、信じられなくて。虚無感の中、つぎに何をすればいいのかと考えているときに、偶然せんきょCAMPをウェブで見つけたんです。

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映画『スーパーローカルヒーロー』の監督で、福山大学非常勤講師、NPO法人「まちづくりプロジェクトiD尾道」の副代表理事である田中トシノリさん

村上さん 見つけて、翌日くらいにはとりあえず、せんきょCAMP尾道のステッカーを作って。

菜央 え!? 翌日!? すごい勢いですね。

田中さん まず積極的に取り組んだものは「VOTE割」ですね。尾道のいろんなお店に協力を呼びかけて、選挙に行った人や、店主と選挙の話をした人に割引サービスをするキャンペーンで、2013年の参議院議員選挙のときには約30店舗くらい、協力してくれました。

カフェが50円引きにしてくれたり、マッサージ店が1割引にしてくれたり、ラーメン屋さんが50円引きにしてくたり。

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尾道駅前のセレクトショップ「れいこう堂」に張られたステッカー

葛原 「投票したら、ちぃと ええことあるんよ」をキャッチコピーにした、かわいいフライヤーも作成したんですよね。裏面には、投票の参考にするための候補者の政策が表にまとめてありました。これはすごくいいですね。

田中さん せんきょCAMP尾道に関わってる人のお店や友達のお店にとにかく協力してもらって。まずは店舗を増やしました。

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葛原 その結果、30店舗くらいに増えたんですよね?

田中さん そうですね。動いているメンバー自身がお店をやっていたり。何も言わずに貼ってくれる店なんかも多かったですね。

あとは、参加店舗から「投票したことがわかる証明書がほしい」という声もあって、スタッフ数名で尾道市選挙管理委員会を訪問して証明書発行のお願いをした結果、発行できることにもなりました。

1回目は10店舗くらいだったけど、最終的には30店舗くらいになりましたね。

村上さん でも、途中でいつのまにかお店を増やすことが目標になっちゃって。「それって意味ある?」って思って、今年は減らしたんですよ。もうちょっと厳密にやりたいと思って。

マスターと喋って、ちゃんと趣旨を理解してもらえる範囲にしたほうがいいんじゃないかって。対話しないと意味ないんじゃないですか、だから忙しいお店はだめだろうとか(笑)

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VOTE割りに参加したセレクトショップ「monolom」。看板かわいいですね。

田中さん ちょっと方向性を見失ってしまったんですよね。

投票に行く人が増えるのはもちろん大事なんですけど、もっと大事なのは、選挙や政治に興味のないとか不信感があるとか、そういう人たちと、まず選挙ってなんだろうなって話ができることのほうが大事なんじゃないかなって。

だから、もともと投票に行っていた人にとってラッキーなだけじゃ意味が無いですよね。せんきょCAMPって対話って言葉を大事にするでしょう? そんな観点で見てみたら数は減りました。

他にも、今度は、候補者の座談会もやってみたんですね。せんきょCAMP渋谷でもやっていたと思うですけど。でも、これはこれで結構難しくて。

どうしても中立性を保とうとするんですよね。そうすると全候補者を呼ばなきゃとか、やることが大きすぎてしまって、中心メンバーが疲れてしまったんです。これから何をしていこうかというのは、ちょっと考えないといけませんね。

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村上さん 何回も、何回も本質に立ち返らないとだめなんですよね。一朝一夕でなにか変わるものではないわけだから。がっと進んだり、戻ってみたり。

菜央 なるほど、目的と手段が入れ替わってしまうというのは、よくある話ですよね。活動を広げていこういこうとする時の落とし穴かもしれません。でも、終わることなく活動が続いている事が何よりも希望を感じるところですね。

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村上さん 活動が終わるっていうことはないですよね。だって、資金だってかからないし、ウェブ上で発信はし続けられるし、その都度共感してくれる人が集まってくれればいいし。

田中さん だから、せんきょCAMPのウェブが理念をしっかりと出してくれているのはありがたいですね。

ぼくもこの間改めて見なおしてみて、納得することも多くて。選挙や政治に興味が無い人がちょっと興味を持ってもらえるような対話の場を作っていって、それを当たり前にしていくことが大事だろうと思っています。

投票に行く・行かないということの手前のところで何かやっていかねばなぁと。

(話は次第に取材からブレストへ。そして、尾道の街づくりの話までに及ぶのですが、それはまた次の記事をお待ちください。)

今回の取材、実は僕達せんきょCAMPの言い出しっぺである鈴木菜央さんや僕(葛原晋太郎)にとっても、リスタートのための取材でした。

動きが停滞していた(というか、むしろ全く動いていなかった)私達自身が「せんきょCAMP」の役割みたいなものをもう一度考えなおそうと、今打ち合わせを重ねているところです。

どんな活動を広げていくのが楽しそうか、ワクワクしながら政治のことを考えていけるのか、僕達の発信するものもアップデートしながら、せんきょCAMPを進めていきたいと思っています。

旅の最後、鈴木菜央さんがこう言っていたのが印象的でした。

菜央 投票に行くのはもちろんだけど、きっと、選挙期間中にやるだけが「せんきょCAMP」じゃないと思うんですよ。だって、政治も選挙も僕らの生活とつながっていて、僕らの生活は毎日つづているんだから。

今回の統一地方選に投票に行くのはもちろんですが、選挙が終わったあとにこそ、何ができるか一緒に考えてみませんか?

(Text: 葛原信太郎)
 
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葛原信太郎
「道に迷うことがあったらアジアを旅をしなさい」という教師の一言に影響を受け、貧困問題を学ぶために明治学院大学に入学。在学中は、東南アジアでボランティア活動をしたり、NPO法人の副理事長をつとめる。卒業後、一般企業に就職したり、独立して、雑貨屋を開業したり。今はearth gardenで、野外フェスの企画・運営やフリーペーパーやウェブの編集などを行う。