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持続可能な社会など幻想だ。映像作品で地球環境の「今」を問う「第2回グリーンイメージ国際環境映画祭」

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『Last Call―科学者たちの警告』より。過去、多くの言語で出版された『成長の限界』

今から43年前、1972年にローマ・クラブが著した『成長の限界』という本をご存じでしょうか?

このまま人類が成長を続けると、地球資源の有限性から成長は限界に達し、人口は減少に転じるということを警告した本です。

当時は、彼らの予測は否定され、強い批判を受けましたが、その懸念は今や厳然たるものとして、わたしたちの目の前につきつけられています。

有限な地球の中でわれわれはどのように生きていけばいいのか、今となっては多くの人がそのことを日々考えているわけですが、それを映像という切り口からやろうという「第2回 グリーンイメージ国際環境映像祭」が今年も開催されます。
 
グリーンイメージ国際環境映像祭

この映像祭は、世界の優れた環境映像を紹介し、映像制作者との意見交換を行う場として始まりました。

今回は、27の国と地域から121作品の応募があり、11作品が上映作品に選ばれました。その11作品に特別プログラムを加えた映像祭が、3月27日から29日にかけて開催されます。

そこで、上映される作品を紹介しようと思うのですが、冒頭で『成長の限界』の話を出したのは、上映作品の一つが『成長の限界』の著者たちの現在に迫った『Last Call―科学者たちの警告』(イタリア・ノルウェー/2013/監督:Enrico CERASUOLO)だからです。
 
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『Last Call―科学者たちの警告』より

複雑なシステムは経験や直感で予測できない

この作品は、この40年を振り返り、わたしたちがいかに愚かだったのかを思い知らされる、息苦しいほどに痛烈な作品なのです。

映画は、本が出版された当時の話から始まります。ローマ・クラブという任意の団体がMITと協力し、当時まだ開発されたばかりだったシステムダイナミクスの手法を用いて、地球の未来をシミュレートし、それを本にまとめます。

その予測は、このまま人口が増加し、成長を続けたら100年以内に地球は限界を超え、人口と工業力の減少という破滅的結果が発生するというものでした。しかし、経済学者も含めた多くの人たちはそれを理解しようとせず、著者たちの「世界はすぐに対策に乗り出すはず」という期待は完全に裏切られます。

ここで一つ印象的だったのは「複雑なシステムは経験や直感で予測できない」という言葉です。人は物事を経験や直感で予測し、それに従って行動します。

しかし、地球という複雑なシステムの場合、その経験や直感はあてにならないのです。しかし、人々は経験や直感に従って行動するので、彼らの懸念は受け入れられず、そうすると政治家もわざわざ人気のない意見を取り入れようとはしません。だから彼らの理性的な意見は受け入れられないのです。

挫折を経験した彼らは、本を著した後「それぞれが実行に移す」という形でそれぞれの道を進みます。持続可能な共同体の研究や、個人レベルで何ができるのかを追求したり、新聞にコラムを描いたりと様々な形で持続可能な社会を彼らは目指したのです。

そして40年がたった時、著者の1人は「もはや持続可能などというのは幻想だ」という衝撃的な事実を話すのです。
 
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『Last Call―科学者たちの警告』より

「持続可能=サステナブル」というのは、40年前の段階で人口や資源の利用を抑制することで、一定のレベルを維持する事ができるような社会が可能だという予測に基づく話でした。

しかし、その持続可能だったレベルを既に我々は超えてしまったのです。したがってわたしたちは、サステナブルなどという幻想は捨て、人類のサバイバルのために、レジリエンス=回復力を手に入れなければならないというのです。

そのためにわたしたちは何ができるのか、そんな問いをこの作品は観る者に突きつけます。
 

『Last Call―科学者たちの警告』の予告編

人と自然との関わりを問う

この作品の他にも、グリーンズでも既に紹介したダムネーション』などを含め全13作品が上映されます。

プログラムを見て印象的なのは、人と自然、特に動物との関わりについて描いた作品が多く見られるということです。

シリーズ2作が連続して上映される『福島 生きものの記録』は、原発事故後の福島に取り残された家畜やペット、野生動物の姿を描いた作品。住人が避難し無人となった地域での、放射性物質が動植物に与える影響を調査した映像記録です。
 
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『福島 生きものの記録 シリーズ 1―被曝』(日本 / 2013 / 監督:岩崎 雅典)より

オフ・ザ・ビートゥン・トラック』はEU加盟で生活が激変したルーマニアのトランシルヴァニア地方の羊飼いたちを描いた作品。

描かれるのは、ドイツの工場に出稼ぎに出て羊飼いをするより大金を稼ぐ女たちと、昔ながらの羊飼いの生活がいいと言う男たち、そして「羊はうんざり」と言う若い世代。

“羊飼い”という人間と動物との関係を基調にした生活がグローバル化の影響を受けてどう変化していくのか、それを見ることはわたしたちの生活を足元から見直すことにつながるような気がしました。
 
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『オフ・ザ・ビートゥン・トラック』(ルーマニア・アイルランド/2011/監督:Dieter AUNER)より

そして、特別プログラムの「映像で伝える森を活かす古くて新しい技術・馬搬」は、現在ドキュメンタリー映画を制作中の「馬搬(ばはん)」をテーマにしたシンポジウム。

「馬搬」とは、林道のない道から馬を使って木材を運び出す技術で、現在、日本では1ヶ所でしか行われていません。この馬搬を通して、人間と動物と地球環境と産業の関係を見つめなおそうというのです。
 
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特別プログラム「映像で伝える森を活かす古くて新しい技術・馬搬」より

限界を超えて成長する人類の活動の影響が及ぶ地球の複雑なシステムには、もちろん動物や植物も含まれます。『Last Call』の中でもシードバンクについて言及されているように、生態系をどのように維持していくのかも、我々がレジリエンスを得るために考えなければならないことの一つです。

いきなり化石燃料を使わないようにすることは不可能ですし、人口を抑制すると言っても容易ありません。

林道を整備するのをやめて馬搬を復活させるというような、「自分たちにできる」小さな取り組みを続けていくことこそが人類のサバイバルには重要であり、この映像祭はそのような取り組みをしている人々の活動を記録し、応援するものなのです。

上映される映像を見て、否応なしにグローバル化が進む世界の中で、自分にできることとは何なのか、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
 

– INFORMATION –

 
第2回グリーンイメージ国際環境映像祭
【日程】
2015年3月27日(金)12:30 – 21:30
2015年3月28日(土)10:45 – 18:45
2015年3月29日(日)11:00 – 16:30

【会場】
日比谷図書文化館コンベンションホール
(東京都千代田区日比谷公園1-4 地下1階)
http://hibiyal.jp/hibiya/access.html

【参加】
協力費1日1500円 中学生以下無料・事前予約不要

【問い合わせ】
グリーンイメージ国際環境映像祭実行委員会 Tel: 03-6451-2411

【主催】
グリーンイメージ国際環境映像祭実行委員会
http://green-image.jp/filmfestival/