海に浮かぶデッキの上で、日光浴や友人とのおしゃべりを楽しむ人々。
みなさんは「公共スペース」と聞くと、何をイメージしますか?
公園や図書館、駅や広場。様々な人が行き交う開放的な場は、気分転換をするときや交流の場として、私たちの暮らしになくてはならないもの。
グリーンズでも、過去に公共スペースを活用したユニークなプロジェクトを数多く紹介してきましたが、その波はアジアとヨーロッパの文化が行き交うトルコにも押し寄せ、公共スペースを地域の人の目線で考え直しDIYする新しい動きが広がっているそう。
今回は、そんな新しい公共スペースをつくるトルコのデザインオフィス「iyi Ofis」のプロジェクトをご紹介します。
海に浮かぶ、くつろぎとつながりの場
まずご紹介するのは、こちら。トルコの都市Izmirで生まれた、海の上の公共スペースです。
海の上のデッキへは、海沿いの遊歩道から誰でも自由に行き来することができ、入れ替わり立ち替わり地域の人々がやってきては、日光浴や読書など、思い思いに海の上の時間を楽しんでいます。
海に浮かんだ公共スペース。人々で賑わっています。
デッキは、組み合わせて拡張することもできます。
この海に浮かぶ公共デッキをデザインした、「iyi Ofis」のSucuoğluさん(以下、スクオグルさん)とEnsariさん(以下、エンサリさん)は、現地の学生と共同で「どのように人々が公共スペースを使っているのか」を観察しながら、デザイン案を練っていったそう。
デッキの周辺には、他に娯楽施設はほとんどありませんが、海辺で思い思いに時間を過ごすことのできるデッキが設置されて以来、多くの人々が周辺にも詰めかけるようになったといいます。
一般からアイデアを募る、DIY Street Furniture Project
さらに「iyi Ofis」は複数のパートナー団体とともに、公共スペースに必要なデザインコンセプトを公募し、一般の人々がDIYするプロジェクト「DIY Street furniture project」を立ち上げました。
彼らは数多く応募されたデザインのなかから、リサイクル素材を使用していて、ボランティアが簡単にDIYできるアイデアを中心に採用してきたそう。これまでに採用されたアイデアの中には、マンホールを使った自転車ラックや、タイヤを使ったベンチなどがあります。
マンホールからつくられた自転車ラック。
タイヤからつくられたべンチ。(写真右側)
タイヤベンチ制作の様子。
そして制作過程はトルコ語と英語の字幕つきのショートビデオとして編集され、オンライン上で公開。世界中の人々と知識を共有することで、まちづくりを実践する人々を増やす役目も担っています。
スクオグルさんとエンサリさんが、このような地域目線の公共スペースづくりを始めた背景には、これまでのトルコの都市開発計画やデザインの多くが、政治家の選挙活動として利用され、政治的に決断されてきたという社会課題がありました。
そうした規模の大きいトップダウン式の開発は、地域コミュニティへのインプットがほとんどなく、都市の真ん中の最も可能性を秘めている土地を無駄にしてしまってきたのだそう。
従来の開発への反省から、2人は地域の人のニーズに沿っていて、ヒューマンスケール、そして、地域を良くする公共スペースをつくることをモットーとしています。
スクオグルさんとエンサリさんは言います。
わたしたちはトップダウン式の開発とは反対に、物事を小さい範囲で考えることが、地域の潜在力を活かすことができると信じています。
人が集い、新たな交流やインスピレーションが生まれる公共の場。
その場づくりを地域目線で捉え、地域に住む人々とともにつくっていくことが、これからの街のあり方なのかもしれません。
(Text: 藤田千絵)
[via citylab, arch.iyiofis.com]