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「野村不動産」刈内一博さん、「TWDW」横石崇さんと、これからの働くを考える! green drinks Tokyo「“働き方”の現在地」[イベントレポート]

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横石崇さん(左)、刈内一博さん(右)

グリーンズが毎月開催している、アイデアとアイデアをつなげる飲み会「green drinks Tokyo(以下、gdTokyo)」。2月20日に開催されたgdTokyoのテーマは、「”働き方”の現在地」です。

フリーランスやノマドといった働き方、起業やスタートアップが注目される今、それと同時に、組織の中にいながらイキイキとやりたいことを行う“これからの時代の会社員”も増えています。

そんな人になるために、今の場所から一歩前に進むために、必要なこととは?

野村不動産という大手企業に属しながら「かやぶきの里プロジェクト」「新宿360°大学」などを立ち上げてきた刈内一博さん、2013年から始まった働くを考える祭典「Tokyo Work Design Week」(TWDW)のオーガナイザーを務める横石崇さんをゲストにお招きし、働き方の現在地を語っていただきました。
 
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司会はgreenz.jpプロデューサー 小野裕之さん

誰と一緒にいるかが、“視座”を決める

「このままでいいのかな…」

働き始めて数年が過ぎた頃、誰しも一度は、こんな問いを自らにするものなのかもしれません。2012年に次世代クリエイターを支援する会社「BENCH」を立ち上げた横石さんも、会社勤めをしていた頃には、働き方にモヤモヤしていた時期があったそうです。

そんなときに出逢った、キャリアを変えるきっかけとなった言葉があるといいます。それはマンガ『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の、「友達10人の平均年収が、自分の年収になる」というもの。

横石さん 実はこれって、年収の話じゃないんです。この言葉の本当のメッセージは、「働き方を変えようと思ったら、憧れている人たちの中に入っていくことが大事」だということ。

そこで当時、グリーンズの兼松くんなど僕が憧れている人に会いに行くということを始めました。「こういう人になりたいな」と思う人たちの働き方を見た経験が、僕自身の働き方を変えたきっかけになっていますね。

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会社を辞めた後に世界中を旅した経験も、独立の布石になっているそう。

横石 崇BENCH inc. / TWDW
BENCH inc.取締役。NHKなどで「若者がつくる未来」の象徴として取り上げられたTWDW代表。1978年生まれ。多摩美術大学卒業後、デジタル領域中心 のプロデュース業務を経て、2008年より国内初のクリエーティブエージェンシー「TUGBOAT」グループ会社にて取締役を歴任(~2011年)。
月間 1億ページビューを誇るWEBサービスの立ち上げ・運営に従事、テレビ局や新聞社、出版社などと連携したデジタルメディア・マネージメントを手掛ける。世界放浪を経て、2012年に日本にクリエイティブ・イノベーションを起こすべく、キャリアコンサルタントのパートナーと男女2名で株式会社ベンチを設立。 旅する勉強会「ラーニングキャラバン」主宰。

独立という道を選んだ横石さんに対し、新卒で入社した会社で今も働く刈内さん。会社の中でうまくいかないときでも、クラブイベントを主催したり野球チームを結成したりすることで、社外で「自分の居場所」をつくってきたと彼は話します。

「自分を押し上げて行くためには、普段誰と一緒にいるかがすごく大事」。それは世の中を観る高さ、すなわち“視座”を決めることになるのです。

刈内さん たとえば高校で超進学校に入った子は、その中で落ちこぼれても、そこそこ良い大学に受かったりする。なぜかというと、周りの友達がすごく勉強しているから。つまり、周りの友達と比べて自分が勉強を頑張った自覚がないだけで、そこそこ良い大学に受かる程度の勉強は無意識にしているのです。

その感覚に近いのですが、普段からどういった環境に身を置いているかが大切だと思います。僕を含めて人間は弱い生き物なので、気付かないうちに自分の及第点を周囲にアジャストしてしまう。

この及第点のことを、僕は「視座」と呼んでいます。だから、もし「こうなりたい」というものがあるのならば、まずは自分の視座を無意識に高めてくれる環境をつくることをお勧めします。

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刈内 一博(野村不動産 / 新宿360°大学
1978年生まれ、愛知県出身、筑波大学大学院修了、野村不動産(株)で分譲マンションの事業推進・商品開発部門を経て、現在は海外事業に従事。2014年より、オープンイノベーションのためのプラットフォーム「新宿360°大学」主宰。
『新世代トップランナーの戦いかた 僕たちはこうして仕事を面白くする』(NHK出版)共著。NHK Eテレ「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」論客出演。日経アーキテクチュア『次代の変革者100人』選出。
日本建築学会会誌『建築雑誌(2015年1月号)』論説文寄稿。「Tokyo Work Design Week 2014」登壇、その他講演多数。産民学官共同で都市と農村とのサスティナブルな相互扶助関係を探る『かやぶきの里プロジェクト』起案、グッドデザイン賞 3部門受賞+ベスト100選出。ポスト団塊ジュニア世代の暮らしと住まいを考える『PDJプロジェクト(PDJ-Lab)』主宰。その他、バックパッカーとして46ヶ国を放浪、クラブイベントのオーガナイザー、野球チームキャプテン他。

刈内さんが立ち上げた、企業に勤める人を対象としたオープンイノベーションのためのプラットフォーム「新宿360°大学」の魅力も、コンテンツというよりはコミュニティだといいます。

刈内さん 互いに視野を広げ、視座を高め、相談し合える仲間がいるということが、新宿360°大学の1番の魅力だと思います。

そうは言っても、今いる場所を飛び出して新しい環境に身を委ねるのは勇気のいるもの。そんな“コンフォートゾーン”を抜け出すためには、どうすればいいのでしょうか?

刈内さん 僕自身はロジックとして理解するようにしています。「今の自分はビビっている。コンフォートゾーンを飛び出せていないな」、と。そうやって頭でわかっていると、「じゃあ飛び出そう」と、理性で恐怖心をコントロールすることができると思います。

出逢いだけでは意味がない?まずはアクションを

視座を高めるためには、コンフォートゾーンを飛び出すこと。

しかし、このようなイベントに参加して、出逢った人と名刺交換するだけではまったく意味がない、とも刈内さんは話します。「出逢いはただのきっかけで、出逢った後のアクションが大事だからです」。

「一番早い方法は、一緒に何かをすること」と刈内さんは続けます。

「自分の視座を高めてくれる人と出逢ったら、名刺交換で終わらずに、その人と一緒に何かをしてみると良いと思います。仕事につながらなくても、ただの飲み会を開くでも構わない」。たとえ小さなことでも一緒にアクションを起こすことで、視座を高める環境づくりが始まるのです。

刈内さん 自分より視座の高い人も環境に依存していると考えると、その人の周りにも、やはり魅力的な人、視座を高めてくれる人が多いことになります。そのため、その人と一緒に何かをすることで、その周りのコミュニティまでも自分の環境に取り込むことができる。

だから、まずは一緒に何かをすることをお勧めしています。そんなことを繰り返し2〜3年続けたら、まったく違う人生になると思います。

刈内さんにとってのアクションが「一緒に何かをすること」なのに対し、横石さんのアクションは「旗を立てること」。TWDWを始めようと思ったとき、最初にやったことはロゴマークをつくることでした。

横石さん TWDWのロゴマークをつくっていろんな人にアイデアを話していたら、『ワーク・シフト』の著書リンダ・グラットンの担当編集者さんから連絡をいただいて、「横石さんたち、ユニークなことをしているからリンダと会ってみませんか?」って言われたんですよ。旗を立てただけでもそういうチャンスが転がり込むものなんだ、と驚きましたね。

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今年で3度目のTWDW。今年も勤労感謝の日前後に開催されます。

「死」を考える、「楽しいかどうか」を考える

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会社勤めの刈内さんにも、会社を立ち上げた横石さんにも、共通しているのはイキイキと働いていること。組織にいても独立をしても、“働く”ということに変わりはないのです。

ではそんなおふたりの、より良く働くための日々の心構えは何なのでしょうか。刈内さんは「死」を、横石さんは「楽しいかどうか」を考えるといいます。

刈内さん 僕の周りで活躍している同世代の方の共通点は、「死に対する距離が近い」ことです。

たとえば、病気で死にかけたとか、子供の頃にいじめられて何度も自殺をしようとしたことがある、といった原体験を持つ人が多いと思います。スティーブ・ジョブズもスタンフォード大学の講演で、最後は死について話していますよね。

あの話にはとても共感していて、人は自分の死が近いものだと感じると、今、コンフォートゾーンを飛び出す勇気が生まれてくる。あるいは、いつか死ぬときに後悔したくないと考えるだけでも、現在の行動に変化が生まれると思います。

僕自身は死にかけた原体験を持っていないので、毎日、意識的に自分が死ぬときのことを考えるようにしています。とても前向きに。つまり、「今日は僕の人生をどういうふうに使おうかな」ということを日々考えています。

横石さん 仕事って楽しいものであるのと同時に辛かったり、ストレスを感じたりするものだと思います。

僕は会社勤めをしているときには不満が大きかったのですが、独立してからは不満の代わりに不安が大きくなった。そういった仕事と切っては切れない不満や不安を、どう自分の中で解釈して楽しむかが大事だと思っています。

この間、登山家の栗城史多さんと話したら、彼が山を登るか降りるかを決めるたったひとつの指標は「自分が楽しいか、楽しくないか」なんだそうです。それは仕事にも通じるなと僕は思っていて、そのときどきの「楽しいかどうか」を大事にしています。

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最後に、「おふたりにとっての仕事とは?」との質問に答えていただきました。

横石さん 「誰かに何かをしてあげたいという気持ち」です。

仕事というのは誰かがいるから成り立つもので、その人の願い・祈り・希望、そういったものに対して「自分が何かできるなら」という気持ちからすべてが始まっていると思います。「何かをしてあげたい」という想いは、どんな仕事をするときも忘れないようにしています。

刈内さん 「人生の価値を残すための手段」かな。人は誰しも死ぬじゃないですか。

何千年と続いてきた歴史のなかで、僕の命なんて一瞬の瞬き程度だと思います。その瞬きでできることを考えたときに、僕は仕事を通して次の世代、あるいは未来に対して、自分が今を生きた価値を残せたら嬉しいです。

働くとは、誰かのために自分の価値を発揮すること。刈内さんや横石さんのようなマインドを持って働くことができれば、組織にいても独立をしても、自分らしい働き方ができるのかもしれません。
 
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春らしい色とりどりのフードは「TORi」さん。

次回のgdTokyoは、3月12日(木)開催。テーマは「マイプロジェクトの現在地」です。

グリーンズがこれまで紹介してきた“自分ごと”から始まるソーシャルデザイン「マイプロジェクト」(通称マイプロ)の今を読み解くためのトークイベント。ゲストには「東京シャボン玉倶楽部」の杉本有紀さんと平野美奈さん、「TOWN KITCHEN」の北池智一郎さんをお招きします。

マイプロを始めたいという方やすでに始めているという方、グリーンズが以前から伝えてきたソーシャルデザインのこれからを知りたい方など、ぜひ参加してみてください。