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料理の専門家がいないからできることって? フードユニット「Teshigoto(テシゴト)」の古平賢志さんに聞く「新しい文化をつくる、人のつなげ方」

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千葉県松戸市、松戸駅前を中心にアーティストやクリエイターとともに”クリエイティブなまちづくり”を行っているMAD Cityプロジェクト。「MAD “Life” Gallery」ではそんなMAD Cityで起こっているユニークな取り組みをご紹介します。(くわしくはこちら

MAD Cityプロジェクトでは、改装OK・原状回復なしの賃貸物件を貸し出す不動産事業や、入居者同士の交流を促すコミュニティづくり、コワーキングスペースの運営などを行っています。

連載「MAD “Life” Gallery」の前回の記事では、看板物件のMADマンション屋上で行われているSUNDAY BEER GARDENをご紹介しました。今回は、同イベントの主催者・古平賢志さんが代表を務める食ユニット「Teshigoto(テシゴト)」の活動をご紹介します。

「Teshigoto」はMAD Cityで生まれ、今では海外でも食のワークショップを行うなど、活動を広げています。代表・古平賢志さんと、MAD Cityプロジェクトを運営する「株式会社まちづクリエイティブ」寺井元一さんに、立ち上げの経緯や活動について伺いました。

“素人”だからこそできる食空間づくり

古平さんは飲食店でのサービスの仕事を経て、現在は食空間プロデューサーとして、飲食店のコンサルティングやケータリング、食のワークショップなどを行っています。

Teshigotoではその経験をいかし、手の込んだメニューが好評のケータリングや、味噌を始めとした食の手づくりワークショップなどをMAD Cityエリア内外で開催しています。
 
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味噌づくりワークショップのひとコマ。

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松戸東口中央公園で行われたアートイベント「アートパーク」ではかき氷を販売し、行列ができるほどの人気に。

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台湾でのおむすびづくりワークショップのひとコマ

さらに活動は国境を越え、台湾でワークショップを開催したことも。日本ならではの「おむすび」をつくるワークショップは現地で好評を博したそうです。

このように、様々な食のイベントを行っているTeshigotoですが、実は4名のメンバーに料理の専門家はいません。「それは弱みでもあるけれど、強みとも言える」と古平さんは言います。

古平さん 「料理を提供する人」と「お客さん」という構図ではなく、僕らも素人というスタンスで、参加者と一緒に一つひとつの場をつくっていきたいと思っています。

もちろん強制はしませんが、美味しいものや楽しい企画があれば人は自然と集まるし、つながりができると、「自分たちも何かできるんじゃないか」という参加意識や自発性が芽生えるのではないでしょうか。

味噌づくりワークショップのときなんて、味噌のつくり方は誰も知らなかったので、イベント当日にYouTubeで調べて、それをみんなでやってみたんですよ(笑)

寺井さん そういう感覚ってDIY的な感じがしますね。プロではないんだけど、ある程度その業界に触れているから、調べたら自分でもできそう、という感じ。

MAD Cityの物件の「いろどりマンション」でもリノベーションを自分でやっている住人がいます。その方は建築関係の仕事をしているけど、大工さんというわけではないのでYouTubeで調べながら作業をしているそうです。

たしかに、専門家のいないTeshigotoのワークショップの現場は、いい意味で“ゆるやか”です。

参加者のみなさんも完全に受身というよりは、みんなで協力しながら進めていこうという雰囲気があり、それが居心地のよさにつながっているのだと感じます。

そして、そこから生まれるのは、人と人のつながり。“素人”だからこそできる食空間づくりは、Teshigotoの最大の特徴と言えるでしょう。

本当にリラックスできる食空間を求めて

古平さんが飲食業界に入ったのは、学生時代に始めたアルバイトがきっかけでした。元々は単純にモテたいという動機からでしたが、徐々に飲食業の奥深さに気づいていったといいます。

古平さん お店で扱っている商材や、料理人の料理に対する思い、お酒一つひとつの背景にあるストーリーを知ったときに「これは深い世界だ」と思ったんです。

俺が今までただ酔うために飲んでいたお酒って実はこんなにすごいんだ、と。そこからひたすら料理について勉強して、それをお客さんに伝えてきました。

当時は料理人に、野菜の切り方ひとつ、なぜ塩をそこでふるのかとか、なぜそのタイミングでその手順を踏むのかなどを逐一聞いていました。また、仕入れや原価のことなども含め、わからないことは料理人に全て聞いていましたね。

料理のことを勉強しながら、カフェから和食店、フレンチ、コーヒーチェーン店の店長など幅広い分野を経験し、「日本人が本当にリラックスできる空間とはどういうものか」ということを模索していたといいます。

古平さん そのころ偶然入ったおでん屋さんで、熱燗飲みながらおでんを食べているとき、「これじゃないか」と気づいたんです。日本酒とおでんって最高の組み合わせですよね(笑)

やはり和食が一番リラックスできると思い、その後、日本酒が有名な和食店に勤め、店を任せてもらいました。

和食店に3年間勤めた古平さん。そのお店が閉店するときには常連さんから独立の話もあり、なんとなく独立を意識するようになったのだとか。

古平さん ただ、飲食業界の人に話を聞くと、ネックになるのはやはり店の家賃の高さ。そこで、店舗を構えない形で、いろんな場所に演出を施して飲食の空間をつくれないかと考え始めました。それがTeshigotoの構想につながりました。

MAD Cityに来たからには何かやりたかった

そんな想いを抱きながら、古平さんがMADマンションに入居したのは2012年末のこと。でも、古平さんが引っ越してきたのは友人がきっかけで、当初はまちづくりというよりも、「改装できる賃貸物件」という条件に魅かれて入居したそうです。

古平さん MADマンションの、自由に部屋をいじれて、かつ原状回復しなくていいというところに魅かれました。とはいっても大々的なDIYではなくて、棚をとりつけたり、壁や扉に絵を描いたぐらいなんですけど。

また、入居前日にMADマンションの入居者の人たちによるイベント「Black bakery White Life」が行われていて、自分もここに来るなら何かやりたいと思っていました。

入居後、まずは部屋を改装していった古平さん。壁にビスを打って雑貨を飾ったり、扉に絵を描いたりするだけでも部屋の個性はグッと高まりますね。
 
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古平さんの部屋

寺井さん 僕らが改装できる部屋を扱うのも、根本的には「自由にやりたい」という意識があったんですよ。

海外では、アーティストなどが廃墟を占拠する「スクワット」というカルチャーがあるんですが、それに近いことを日本でもやれないかと考えたんです。壁や柱に穴を空けてオッケーだと、けっこういろんな改装ができるんですよね。

お店のような古平さんの部屋には、MADマンションの住人が集まってごはん会が開かれるようになりました。

また、他の住人の方が、実家から送られてきた食材を「調理してほしい」と持ち込んでくることもあり、すっかり憩いの場に。そんなDIY空間で、飲食に想いのある入居者のみなさんと語り合ううちに、Teshigotoの構想が立ち上がっていったのです。
 
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住人のたまり場に

入居者自身、これまでも様々な企画を行ってきたMAD City(MADマンションでの企画についてはこちら古民家スタジオ 旧・原田米店での企画はこちら)。

そんな個人がやりたい企画を応援するまちの土壌とともに、まちづクリエイティブによるサポートがあったことも、Teshigotoがプロジェクトを行う後押しになったようです。

「美味しい食空間」を通じて、人がつながるきっかけをつくる

Teshigotoが出店するのは、MADマンションやまちのお祭り、公園など実に様々。古平さんには、食のプロジェクトを通じて実現したいことがあります。

古平さん 誰もが共通する「食」というテーマを通じて、あらゆる人がつながり、新しい価値や文化が生まれる。そんな空間や仕組みをつくっていきたいです。

それがさらには松戸ならではの面白いものとして認知されるようになって、経済的な価値を生み出したり、地域活性化や問題解決のきっかけになればうれしいですね。

そもそも食って、本来は人を幸せにするものだし、日本には飲食店が無数にあります。その一方で、日本では自殺者がすごく多いという矛盾がある。例えば、そうした問題に、Teshigotoを通じてアプローチしていきたいと思っています。

孤食が問題視されている現代において、人にとって欠かせない「食」を通じて人のつながりを生むTeshigotoの取り組み。様々な企画を通じて新たな人同士の出会いが生まれ、そこからまちがどのように変化していくのか、今後がとても楽しみです。
 
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good music and books coffee stand

そんなTeshigotoが今年、MAD Cityの物件のひとつ「古民家スタジオ 旧・原田米店」内に、「good music and books coffee stand」をオープン(今年2月までは毎週月曜11時〜19時のみ営業)!

美味しいコーヒーを楽しみながら店内の本を読むことができ、本は貸し出しもされています。MAD Cityに来る際は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。