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寄付を喜ぶ子どもの笑顔で、確かな成果を実感できる。国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンの「チャイルド・スポンサーシップ」とは?

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チャイルド・スポンサーの中村さん。チャイルド・スポンサーになると、現地に行って、実際にチャイルドと会うこともできます。(c) World Vision

途上国への支援と聞くと、一時的に食料や医療品などの物資を届けるといったことをイメージされるかもしれません。

それらの活動も重要ですが、長期的な視野で「チャイルド・スポンサーシップ」というプログラムを行っているのが、今回ご紹介する「ワールド・ビジョン・ジャパン(以下WVJ)」です。

WVJは1960年代に日本でも支援活動をしていた実績を持つなど、世界でも有数の規模を持つ老舗のNGOとして知られています。

いったいどんな想いでWVJは始まったのか、チャイルド・スポンサーシップとは何なのか。支援事業部スポンサーシップ事業課の松岡拓也さんとマーケティング部チャイルド・スポンサーシップ課の百瀬景子さんにお話をうかがいました。
 
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支援事業部スポンサーシップ事業課の松岡拓也さん。チャイルド・スポンサーシップによる成果を心から喜びながら仕事に励んでいらっしゃることが伝わってきました。PHOTO:田中伸二 (Luz-p.o)

World Visionの支援の仕方

「World Vision(以下WV)」の始まりは、1950年のアメリカ。キリスト教宣教師のボブ・ピアス氏が、第二次世界大戦後混乱を極める中国で出会った一人の少女を支援し始めたのがきっかけでした。

意外に感じられるかもしれませんが、先ほどもお伝えしたとおり、当初は日本も支援される側だったそう。1960年代、両親を亡くした子どもたちが支援を受けていました。

その後、日本は経済的に発展を遂げ、晴れて支援する側になり、1987年にWVJとして事務所を設立。99年には特定非営利活動法人に、2002年には認定NPOとなりました。

現在、アルバイトを含む有給スタッフ79名が働き、寄付や政府・国際団体からの助成金などにより、年間およそ55億円もの支援をおこなっています。

そもそも途上国は、なぜ支援を必要としているのでしょうか。飢えや貧困など、何となくイメージを持っている人は多いかもしれませんが、まずは現状について松岡さんに聞いてみました。

松岡さん 世界では、下痢や肺炎といった、日本であれば防げる病気で、5歳未満の子どもが年間630万人ぐらい命を落としていると言われています。だいたい5秒間にひとりぐらいの割合となるので、あまりに悲惨ですよね。

ほかにも、1660万人の子どもがエイズで親を奪われ、30万人の子どもが兵士として戦場に駆り出され、6100万人の子どもたちが初等教育さえ受けられずにいるとも。

日本では想像もつかないようなことが、いまこの瞬間、世界では起きている。そういった状況に対して、WVが力を入れているのが、「開発援助」です。

松岡さん WVも始まった当初は、両親を亡くした子どもたちなどに直接、お金や物の形で支援していました。でも、しばらくしてそれだけでは長続きしないことに気づいたんです。

支援が終わった途端に、支援を受ける側の人たちは何もできなくなって困ってしまう。緊急支援が必要なこともありますが、長期的な視点に立てば、よく言われるように、「魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教えてあげる」ことも大事なんですよね。

WVがめざしているのは、現地の行政と協力して、食べ物となる作物や家畜を育てる方法を教えたり、学校を運営して教育を続けていける仕組みをつくること。そのコミュニティが支援なしでもやっていけるようになることを大切にしているのです。

個人で貢献できる「チャイルド・スポンサーシップ」

WVJは、2013年度には35カ国、142の事業をおこないました。その支援の中で、大きな比率を占めているのが、個人の方からの継続的な寄付が支える地域開発プログラムです。WVJではその仕組みを「チャイルド・スポンサーシップ」と呼んでいます。

これは、毎月4500円の寄付を継続しておこなうことで、子どもの健やかな成長を実現していくプログラム。
 
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チャイルド・スポンサーシップを通して、子どもとのつながりを感じていただくことができます。 (c) World Vision

参加すると紹介される子ども=“チャイルド”とは、一対一で手紙のやりとりができるほか、年に一度身長や体重などを記した成長報告や、年末年始の挨拶が届くので、実際に子どもの成長を感じ取ることができます。

百瀬さん 小さかった子どもがどんどん大きくなって、たとえばこんなお手伝いもできるようになったんだということがわかったりします。成績は普通、手紙を見て、絵や文字はなかなか上手くならないな…、とか思ったり(苦笑)

ちょっとした親のような気分を味わい、遠い国の、でも同じ地球で力強く生きている子どもとつながることができるチャイルド・スポンサーシップ。支援したお金がそのまま子どもに直接渡るわけではありません。

目指しているのは、地域が豊かになることで子どもがすくすく育つために望ましい環境を持続的に整えること。参加してくださるチャイルド・スポンサーの方には手応えを感じていただければと願っています。

寄付をすることで途上国支援に参加できる団体はたくさんありますが、WVJでは、自分ひとりとだけつながった子どもが、たとえば文字を書けるようになったことで教育が受けられていることや、身長が伸びていることで食料の供給が安定していることなど、その地域の発展を実感として感じ取ることができるのです。

ちなみに、世界には多くの途上国がありますが、どうやって支援する国を選んでいるのでしょうか。

松岡さん 支援の優先順位をつけるのはとても難しいことですから、最初に見るのは各種の指標です。初等教育の就学率、HIV感染率、5歳未満児死亡率などを見て、支援のニーズが高い国・地域を見つけ、他のさまざまな条件も考慮しながら決定します。

また、実際に支援している地域は、その国の中でも特に状況が悪いところです。

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ケニアに出張した際の松岡さん。支援先の小学校で生徒たちと教育の大切さを語ります。(c) World Vision

WVは、そういった地域で「開発援助」をおこなうほか、飢餓状態や紛争、自然災害で緊急事態にある人たちに対する「緊急人道支援」、貧困や紛争といった問題解決のために政府や市民社会に働きかける「アドボカシー」もおこなっています。

WVが「開発援助」を行う際に特に大切にしているのは、必ず村のリーダーや、県庁や郡の役所などと話し合いながら活動を進めていくこと。たとえば現地の行政計画で予算が足りず、サポートが必要なところをになうなどして、一方的に計画を進めることはしません。

WVには既に長く支援をおこなってきた歴史があるので、現地の行政にも信頼を持って受け入れられているのです。それでもときには、近隣に物資を配るようなNGOが活動している場合、なぜWVは物をくれないのかと思われてしまい、現場のスタッフが苦労することも。

けれども、現地の住民でもあるスタッフは、毎日コミュニティにいて、WVの支援の仕方を伝えていきます。すると現地の人びとも、長期的な視点にたてば、自分たちが力をつけて自分たちで必要なものを勝ち得ていかないといけないという意識に変わっていくのだといいます。

子どもの命を守る活動から仕事づくりまで

そんなWVがおこなっている「開発援助」の内容は多岐にわたります。まず、子どもたちの命を守るために病院が必要ですが、たとえ病院があっても全ての子どもが病院に通えるわけではありません。

WVが事業をおこなうのは、ときには日本で言う県レベルの地域のこともあり、僻地に住んでいれば病院に行くことさえできないこともあるのです。

松岡さん 病院に行けない子どものために、現地の住民から村落保健員と呼ばれる人びとを養成して、子どもたちがいるところに足を運んでもらって、基礎医療を提供できる体制を整えています。

保健衛生の観点などから大切になるのが水です。清潔な水があることは感染症の予防になるほか、子どもたちが水汲みといった仕事から解放され、教育の機会を得ることにもつながります。
 
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ルワンダで、完成した給水ポンプの前に並んだ子どもたち。給水ポンプは保護のため小屋の中にあります。(c) World Vision

そこでたとえば10km離れた川からパイプラインを引く工事を実施して、村の中心にタンクを設置、村人から水の使用料金を徴収したうえで、水を提供しているそうです。

貧しい生活の住民から、使用料を徴収することに少し違和感を感じましたが、ここにもきちんと意味がありました。

松岡さん 少額でも払ってもらえば、たくさんの人が使うので結構な額になりますよね。そのお金をウォーターキオスクという水の売店で働く人たちのお給料にして水道システムの管理をお願いしたり、修繕に使ったりしています。

百瀬さん 現地の人に、「自分たちのもの」という意識を持ってもらうために、地元の人たちが活動に参加することが大事だと考えています。また工事の際に日本の機具を使ったりしたら、将来何かあったとき困ります。なるべく現地の適正技術を活用するようにしています。

将来のこと、そして現地のことを、常に優先しては考えているWV。それは、子どもにとって大切な教育に関しても同じです。「校舎だけを造って終わり」ではなく、現地の教育省と話をつけて、必要な教師を派遣することを確約したうえで、建設に進む形をとります。
 
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収入向上活動の一環として縫製技術の習得をすすめ、ミシンを支援しました。(c) World Vision

大人に対しては、仕事づくりや農業指導が大切な支援です。それらもスキルだけでなく、販売ルートの開拓など、販売方法まで指導するそう。これらの多岐にわたる支援をおこない、そのコミュニティが自立できるまで、10~15年もの歳月がかかります。

5年ごとに計画を立て直し、保健衛生や教育の状況など、さまざまな調査をしながら変化を見て、そのコミュニティの自立が進んでいるかを確認しながら活動を進めていく。それだけの時間をかけて支援を行うからこそ、支援が終了した後でも住民たちの自立した生活は続いていくのです。

WVが去っても持続可能な地域をつくる。それこそが、彼らの哲学なのですね。

大きな課題へ立ち向かうモチベーションの源泉

そんな長期目線のプロジェクトとなると、すぐに目に見える大きな成果が出るわけではないでしょう。

それでも、WVJの職員のモチベーションとなっているのは、ひとつは現地から届く子どもたちの声、そしてもうひとつは、日本で支援しているチャイルド・スポンサーの姿なのだそう。

出張での経験を支援者の方などに話す、「ワールド・ビジョン・カフェ」という報告会が全国でおこなわれています。そこで松岡さんはいろいろな支援者の方に出会うそうです。
 
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ワールド・ビジョン・カフェの様子。スポンサーの方やWVJの活動に関心のある方が集います。(c) World Vision

たとえば、北海道での報告会でのこと。そこで出会った70代ぐらいの大学教授の方が、寒い中、2時間もかけて歩いて会場までいらしたことがありました。その理由を松岡さんが訊ねると、「交通費を使わずに、浮いたお金を貯めて寄付しているんです」という答えが。

自分自身の快適さや便利さを手放して子どもたちを支える。そんな支援者の姿が、松岡さんの仕事への情熱を支えています。

一方の百瀬さんも、WVJに関わり続けることで、「日々現地がよくなっていく状況が作り出されていくこと」に手応えを感じています。

百瀬さん コンゴ民主共和国のある子どもたちが3食ご飯を食べられるようになったとか、ケニアのあの子どもたちが学校に通えるようになったとか。

私は現地に行くことはあまりありませんが、毎年届く報告書を見るたびに、昔に比べて改善されてる状況を見ると、努力が実を結んでいるんだと実感できます。

そうすると、もっと活動を進めて、どの子どもたちも与えられた豊かないのちを生きてほしいなという思いが自然に強められているんだと思います。

松岡さん WVの創始者であるボブ・ピアス氏は、「すべての人々に“何もかも”はできなくとも、誰かに“何か”はできる」という言葉を残しています。15年かかったとしても、活動していけば実になるということを、WVは経験として理解しているので、やり続けていける気がしますね。

今すぐわたしたちにできること

わたしたちにも今すぐできることのひとつが、先ほどもご紹介したチャイルド・スポンサーシップです。

寄付というお金の支援はもちろん、ほかの誰でもない“あなた”を支えるスポンサーになるということは、その子どもにとって精神的な支えにもなっているそうです。
 
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日本のスポンサーからの手紙を喜ぶエクアドルのチャイルド。(c)World Vision

百瀬さん 厳しい環境にいる子どもにとって、応援してくれる人がいるのは励みになるんです。

たとえば、子どもを学校に行かせるよりは農業を手伝わせていたお母さんも、チャイルド・スポンサーシップが始まると、応援してくれている人たちがいるから、自分も頑張っていこう、子どもを学校に行かせてみようという励ましになっているように感じます。

これまで活動を続けてきた結果、ケニア、タンザニア、ラオス、インド、エルサルバドルなどさまざまな国で、かつてチャイルドだった子どもたちが大人になり、WVのスタッフとして働いているという話も。

その他、教師、医師、さまざまなカタチで、社会に活躍する人材になっています。「チャイルドとして支援を受けていなかったら、今の自分もいなかった」そんな声が多く届いているようです。
 
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子どもの頃、チャイルドだったポール・オットーさん。今は、スーダンで水・衛生技師としてWVで働いています。(c) World Vision

子どもの頃に、スポンサーから受け取った支援や手紙が、その子に大きな影響を及ぼし、いつか大きく花開く。そんな成長を待つ時間も、支援する側にとっても大きな楽しみなのかもしれません。

チャイルド・スポンサーからの支援は、支援される側によって形を変え、さらに大きな力になる。それを松岡さんは、「ペイ・フォワードですよね」と表現します。

松岡さん スポンサーとの交流や支援を受けて、今度はチャイルドが、家族、友だち、地域に対して、良い影響を与えていってほしい。

そして、日本に住む私たちにとっても、チャイルドと関わりを持つことが、家庭でも、社会においても、何かをするときの原動力になればいいと思います。

こう聞くと、チャイルド・スポンサーシップという支援方法そのものが、チャイルドのためだけのものではない気さえしてきます。

百瀬さん チャイルドからの手紙を読んで、むしろ自分が励まされているとおっしゃるスポンサーの方も多いんです。自分も人のために、社会や世界で貢献できるんだという実感と意志が持てるようになる。

チャイルド・スポンサーシップは、現場のニーズと、日本の人たちがつながり、いのちの豊かさを体験することのできるプログラムなのだと思います。

一時的にお金や物資を送って満足するのではなく、継続的に関心を寄せ、支援し、見守り続ける先に、貧しかったコミュニティがだんだん自立していく姿があります。それは支援する側にとっても、ワクワクするような光景に違いありません。

みなさんもぜひ、チャイルド・スポンサーシップに参加してみませんか?

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