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“アソシエーションデザイン”って何ですか? まちづクリエイティブ寺井元一さん×フクヘン小野裕之トークセッション「DIYsによるまちづくり」

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会場は松戸のFANCLUB

2014年、松戸でまちづくりに取り組む「MAD City」が4周年を迎えました。グリーンズでも「MAD Life Gallery」という連載を通じて、MAD City界隈のリアルな暮らしをお伝えするなど、その動向に注目しています。

そんなMAD Cityを展開するまちづクリエイティブの寺井元一さんたちは、最近ウェブマガジン「DOTPLACE」で「アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方」という連載を展開。”アソシエーションデザイン”という何やら気になる概念を提唱しています。

そもそも彼らの言う”アソシエーションデザイン”とは何なのか? コミュニティデザインと何が違うのか? そのあたりをもっと突っ込んで聞いてみたい。

ということで今回は、まちづクリエイティブから寺井元一さん、西本千尋さん、小田雄太さんの3人、DOTPLACEから後藤知佳さん、そしてグリーンズ副編集長の小野裕之が参加した4周年記念トークセッション「DIYsによるまちづくり」第二部の様子を、一部抜粋してお届けします。

MAD Cityはもう終わった?
“アソシエーションデザイン”という言葉と出会うまで

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(左)後藤さん(右)小野

小野 そもそもなんですが、どうして「アソシエーションデザイン」と言い始めたんですか?

寺井さん 最初に断っておくと、「アソシエーションデザイン」という言葉は、僕ら以外まだ誰も使ってないんです。

アソシエーションもデザインもよく聞く言葉ですが、この二つを組み合わせたのは僕らが初めて。だからこそ今まさに「それがどういう意味を持つのかか」ということを模索している感じで、「こういう意味ですよ」とまだ十分には説明できないところがある。

じゃあ、どうしてその言葉が出てきたのかというと、僕が去年の終わりくらいにすごく悩み始めたことがきっかけだったんです。

小野 というと?

寺井さん 僕は松戸でまちづくりというものをやってるんだけど、「これって何なんだろう」と考えるようになって。

というのも、僕の原動力は常に自分なんです。面白いとかワクワクすることをやりつづけたいという思いが強い。でも、ふと「MAD Cityがつまらない」と思うときがあったんですね(笑)

小野 物足りなくなった、ということでしょうか。

寺井さん うーん。よくわからないけれど、「このままじゃすげえつまんないことになるな」と思ったんですね。もう、全方面がつまんない。「MAD City 終わったな」って。

ちょっと前にみんなが「渋谷って楽しい!」って言っているときに、僕は「つまんないじゃん」って思って松戸に来たわけですが、楽しいときほど自信が持てなくなるんですよね。「俺だけ調子乗ってるんじゃないか」とか「流れに逆行してるんじゃないか」とか。

小野 天邪鬼なんですね。

寺井さん そうそう。でも、それを自分なりにきちんと確かめてみたら、やっぱり「渋谷つまんない」って確信を持てた。

小野 なるほど。今もそのときと近いものを感じていると。
 
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寺井さん

寺井さん 松戸駅前のエリアにMAD Cityという名前をつけて、空いている不動産を見つけては改装OKにして、紹介してきた。そうしたら仲間が集まってきて、楽しくなってきた。商店街や行政も含めて、地元の人たちと色々やっている。

本当にこの街は面白くて、松戸の人たちに会って、衝撃を受けたことがいろいろあるんです。例えば名物的な町会長がいらっしゃって、飲み会のときに「キャッチボールやろう」って言われて。松戸駅すぐのバス通の車道の真ん中で…「おい、やろう」と。

小野 いいですね。

寺井さん もうミスらないように必死なんですけど、「これ、大丈夫なんですか」って聞いたら、「なに言ってんだ、ここは元々オレたちの土地だったんだ」と。そのときに、「すごい」と思ったんですよね。

特に問題にもならない短い時間のできごとだったんですけれど、発想が自由というか、歴史や文化ってそういうものなのかもって。

小野 そこからつまらなくなってきたのはどうして?

寺井さん ひとつは「どんどん閉鎖的になっていくな」という臭いがしたんですよね。何もないところから始めたので、広げていくしかないし、常に「はじまり、はじまり」っていう感じだったんだけど、それがいつのまにか腐っていっている気がしてきた。

例えば、物件が満室になって入居者がほぼ決まってくると、閉塞感を感じるところもあって。特に何が起きるわけでもなくて、緩やかに人間関係が固定化していく。

新しいことを起こしづらかったり、余所者が入りづらい雰囲気を感じて、「それってMADじゃねえじゃん」と。それで「めちゃくちゃ悩んでるんだけど」と相談に乗ってもらうような形で、西本さんや小田くんに声をかけたんです。

小野 ふむふむ。

寺井さん 「まちづくりにおいてすごく大切」とされているコミュニティを、「つくっていこう」と思ってコミュニティをつくってみた。

でも、「あれっ、こんなのが俺のしたかったことなのか?」という問題に突き当たって。そのときに西本さんが「あなたが求めているのは、アソシエーションです」って言ってくれたんです。

コミュニティデザインとアソシエーションデザイン

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左から、寺井さん、西本さん、小田さん、後藤さん、小野

小田さん 僕と西本さんが取締役としてまちづクリエイティブに参加するとき、合宿をしたんです。そこで、改めてMAD Cityの数年間を振り返ってみて、「コミュニティデザインの限界を表すような新しい言葉が必要だ」と気付いたんですよ。

コミュニティの大切な要素である「守っていく」ということはとても大事ですが、それをしすぎると、新しいことが始められなくなる。

そこで「僕たちがやろうとしていること」や「こうなったら嫌だな」ということを整理して、喧々諤々議論した結果「アソシエーション」という言葉がでてきたんです。

小野 西本さんは何をもって、「それはアソシエーションだよ」って言ったのんですか?

西本さん なんというか、寺井さんって、すぐ不満足に陥るんですよ。志が高くて、自分のつくったものをすぐに壊したくなる。クリエイティビティってそういうものだし、それでいいんですけどね(笑)

だから「守り」とは違う、「自発性」とか「開かれた」とか「接続」とか、「高みに行ける創造力」みたいなものが大事やなと。

「アソシエーションデザインとは何か」という詳しい話はDOTPLACEの連載にゆずりますが、そういう意味が、アソシエーションという言葉に含まれていると思ったんです。

小田さん 付け加えると「アソシエーション」だけでなく、「デザイン」という言葉も大事なんです。明らかに僕たちも「コミュニティデザイン」や「ソーシャルデザイン」という言葉を意識しているわけです。

「アソシエーション」という言葉は、言葉としては平たいですが、社会学的には難しい意味合いを含んでいます。そこで「デザイン」という言葉を付け加えて、「ソーシャルデザイン」や「コミュニティデザイン」に興味を持っている人たちにも届くといいなあと。
 
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小野 今は三人のなかで、この言葉の中身をつくり込んでいく時期なんですね。でもそれって、そんなに「コミュニティ」という言葉では表現できないものなんですか?

寺井さん 言葉としては「コミュニティ」ってごく一般的に使われているけれど、たぶん僕らの世代って、コミュニティというものに本当にどっぷり触れた経験が薄いんじゃないかって思うんです。知っている気になっているけれど、知らない、みたいな。

僕らより年上で、地方に住んでいる人たちは知っているかもしれないけど、少なくとも僕の周りにいる人たちには実感がない。僕だって松戸でまちづくりを事業として進めてきて、やっとその強大な力に気付いた。

西本さん コミュニティというものを代表したり、操ったりしている人はいないにも関わらず、「コミュニティのことを悪く言ったら制裁を受けるから、めったなことは言えない」みたいな、そういう力もコミュニティにはあると思うんです。

小田さん 基本的に守りの姿勢に立てば、それは当然ですよね。一方で、僕たちが考えている「アソシエーション」は、いつ入っても、出てってもいいし、解散も自由。

常にそれは目的に向かって、いろんな人の関わりの中でつくれていく。そういう概念的なものが、大事なんじゃないかなと。
 
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寺井さん なんだろう。すごく言い方は変かもしれないけど、僕はコミュニティを破壊したいわけではないんです。

松戸にはそもそも宿場町だったという歴史があって、そういうものがMAD Cityを支えている。それを壊さないということはとても大切で。でも、関われば関わるほど、僕が「この部分は違う」って思ったときに、本音を言えないし、言わせてもらえない。

誰もがやってみたくても、やっちゃいけないことだったら、それはやれない。でも、どうしてそれをやっちゃいけないのかは、コミュニティは明かしてくれない。まちづくりをしていて、そういう力を随所で感じるんですね。

小野 タブーのようなものですね。

寺井さん しかも、それが実際、いろんな人を支えているのも事実なんです。「松戸宿? なにそれ知らない」という人が増えたら、文化というものも焼け野原になってしまうし、まちはタワーマンションだらけになる。

とはいえ、そういうタブーとかがなくなったとして、本当に新しいものが生まれるかはわからない。そんなジレンマの中で、何か面白いことを始めていくには、コミュニティじゃない新しい何かを見つけないといけないと。

そのときに「アソシエーションやん!」って盛り上がったわけです。

小野 目から鱗だったと。

寺井さん もう「コミュニティはすばらしい。コミュニティをつくろう!」ってみんな言ってるじゃないですか。

だから「コミュニティじゃないものがある」ということを、正直、思ってもみなかった。もう「コミュニティか、ひとりぼっちか」と思っていたので(笑)

でも、「アソシエーション、アソシエーションと言うなら、もっと自分たちが詳しくならなくちゃ」と、どんどん古い文献をあたっていきました。いろいろインプットしてみて、今は「人を自由にするのは、アソシエーションだ!」というざっくりした認識を持っています。

現在進行形のアソシエーションデザイン

小田さん まだ答えは見えていないけど、「アソシエーションデザイン つづく世界のつくりかた」という連載をさせてもらっていることで、僕らは「アソシエーションデザイン」といことについて、考え続けることができています。

僕たちだって、この言葉をしっかり使うためには、結構迷ったりしています。「アソシエーション」なんて畏れ多い言葉に、さらに「デザイン」という曖昧な言葉をつけて、「アソシエーションデザイン」とか言っている。でも、その中にある可能性を、世の中に出していきたいと思っていて。

やっぱり寺井さんが「コミュニティ」と向き合って行き詰まったことは大切な経験だし、最初はその反動が強かったですね。「コミュニティデザインぶっつぶす」みたいな時期もありました(笑)

寺井さん 最初は「コミュニティデザインに騙された!」「もうまじふざけんなよ、やばかったー、危なかったわー」「もうだめだコミュニティだめだあ」みたいな、泣きの入った時期があって(笑)

「このまま”コミュニティデザイン病”が増えたらヤバいぞ」というのを、ぶっちゃけね。思っている時期があったということですね。

小田さん でも段々と見えてきたのは、それは対立軸ではないってことです。あくまで構造的な関係であって、そんなことを言葉にしていきたいと思っています。
 
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会場はぎっしり!実際のトークはまだまだ長時間続きました

後藤さん 本当にこの連載は試行錯誤の渦中にありますよね。いちばん最初の回の初稿と、いま掲載されている内容を比べてみると、まったくの別物と言ってもいいくらいです(笑)

初稿はもう、ラップのような、「コミュニティデザインぶっつぶす感」みたいなものにあふれていて。私はそういう細かい事情を知らないで読んでいたから、「これはこれで対比がわかりやすいですね」と反応をお返ししたんですが。

結果として、ほとんど最初から最後まで書きなおされた原稿があがってきましたが、この後もどんどん変わっていくんじゃないかなと思っています。

寺井さん まあ、掘り下げて突っ込んでいくと概念的な話になっちゃうので、思想と現場のバランスを取っていきたいですね。

小野 そういう意味では連載に加えて、MAD Cityでこれからどんなことが実際に行われていくのか、それも大事な要素ということですね。

寺井さん そうですね。すぐにどうこう、という話ではないからもしれませんが、楽しみにしてほしいなと思います。

(対談とりあえずここまで)

 
まだまだこのあとも白熱の議論が続いたトークイベントですが、あまりにお腹いっぱいなので本日はここまで。「アソシエーションデザインがちょっと気になってきた!」という方はぜひ、「アソシエーションデザイン つづく世界のつくりかた」で続きをお楽しみください!