みなさんは、”汚染されてしまった土地”と聞くと、なんだかその場所に近寄りがたくなってしまいませんか?
オランダのアムステルダムには、長年の石油の流出や化学薬品によってすっかり汚染されてしまった、ある造船所がありました。その汚染の度合いは、手を打とうとした政府もギブアップしてしまったほど。
そんな造船所を救おうと名乗りをあげたのが、オランダのデザイン会社「Space&Matter」の創設者の一人、Sascha Glasl(以下、サッシャさん)です。
今回は、サッシャさんのアイデアから生まれた「De Ceuvel」という村をご紹介いたします。
区画内におさめられたハウスボード
造船所を救うためにサッシャさんが目を付けたのは、ハウスボート。彼は、古くなったり、壊れてしまったハウスボートを16隻集め、クレーンを使って区画内におさめて村をつくったのです。
当初は、アーティストのためだけの村でしたが、だんだんと受け入れる層が広がっていき、今では人々に愛されるレストランやショップ、ラウンジ、会社のオフィスが集まっています。
多くの人々があつまるDe Ceuvel。
しかし、ただハウスボートを入れても、汚染されてしまった土地ということは変わりません。
そこでサッシャさんは、持続可能な場所づくりのためにベルギーのゲント大学と協力し、蛇のように曲がりくねった遊歩道の下に、汚染をろ過する役割がある薮や竹を植えることにしました。
村内には、自然もいっぱいです。
サッシャさんがここの場所を借りてオーガナイズする期間は、たった10年間。とはいえ、この持続可能な環境づくりは何十年も先を見据えたもので、土壌の汚染を植物が取り除くには最低でも30年はかかるそう。サッシャさんは、この取り組みを今後政府に担ってほしいと望んでいます。
都市に今必要なものは、イノベーションのアイデアを実現するための場だと思います。私は、ソーシャルコミュニティをつくるよりも、いろいろな実験に挑戦できる遊び場をつくり続けていきたいですね。
と話す、サッシャさん。De Ceuvelをモデルケースに、ほかの都市での展開も視野に入れているのだとか。
憧れのハウスボートを使うことで、近寄りがたい場所を行ってみたい場所にする。これからの都市には、そんなリデザインも必要なのではないでしょうか。
[via INHABITAT,Space&Matter,FAST COMPANY,DE CEUVEL]
(Text:中山智晶)