普段パソコンやスマートフォンの画面を眺めているとき、ついつい表情が固まっている方も多いかもしれません。
特に悲しいニュースや気分を害するコンテンツに出会ったときは、没入しすぎて気づいたら疲れてしまった、周りにいる家族や友人から距離を取られてしまったという体験談を持つのは、きっと私だけじゃないはず。
シリアスな表情を否定するわけではありません。
でもきっと、あなたの笑顔は、この世の潤滑剤。
表情をほぐして笑顔になるだけで、周りの人も自分もハッピーになれるはずなんです!
今回は、そんな思いでつくられた素敵なメディアアート作品をご紹介します。
2014年、当時ロンドンの美大生だった、David Hedberg(以下、デイビッドさん)は、とってもユニークなテレビをつくりました。その名も「Smile TV」。
白いレトロなブラウン管のテレビに映るのは、地上デジタル放送への移行により、あまり見られなくなった、テレビの「ザァーザァー」という電波障害の砂嵐。(アナログ放送の頃が、懐かしいですね。)
なぜ、こんな時代錯誤なテレビをつくったのでしょう。
実はこのテレビ、観ているひとが笑顔になった瞬間はきれいに映りますが、真顔に戻るとすぐに砂嵐の画面になってしまうという仕組みなんです!
ニッコリしなければ映らない面倒くささ。
観続けるために笑顔でいる自分を、周りは気色悪く思わないだろうかという心配。
「いや、こんなテレビ、普段使いが難しいでしょ!」というツッコミ、お待ちしています。
テレビ画面にはアニメやプロレス、映画『サウンド・オブ・ミュージック』などが流れています。「映像自体が特に面白いわけではないけれど、断続的に流れる映像によって、観ている人の想像力が掻き立てられる」というのが、デイビッドさんの狙いなのだとか。
昔はみんなの家にアンテナが付いていて、接触が悪いと自分で屋根に上って直していました。
今は良くも悪くも情報に恵まれた社会になり、ほしい情報を自分から取りに行くことも普通になりましたが、こんなときにこそ、ひとりひとりが心にアンテナを持って受信することが大切なのかもしれません。
と、デイビッドさんはこのSmile TVに隠された思いを語っています。
デイビッドさん
と、デイビッドさんはこの「Smile TV」に隠された思いを語っています。
「でも、無理やり人を笑顔にさせるのってちょっとどうなの?」なんて思う方もいるかもしれません。実はα波という、笑顔になると発生する脳波はストレスを軽減すると、科学的にも認められているのです。
このα波は、心で笑っていなくても、口角を上げてニッコリさせるだけで効果があるそう。「面白いから笑う」のではなく「疲れているときにこそ笑って、心を軽くする」というのもいいのかもしれませんね。
デイビッドさんが「Smile TV」を製作してから8年。私たちは、それまで以上のデジタル技術の革新を経験してきました。
iPhoneのロック解除は顔認証「Face ID」ができるようになり、やがて世界中で新型コロナウイルスのパンデミックが起こると、フェイスマスクをしているときでも使えるように。
ひとりひとりの顔がIDとなりパスワードとなるスマートフォンが浸透した今、この先、私たちの顔の形状でなく表情をも認識する技術の発展が続いていったら、どんな新しい道具が生まれるのでしょう。
もちろん、技術のために笑顔を使うなんて寂しすぎます。
煮詰まったり、集中しすぎたあとのちょっとした時間を笑顔で過ごす。それは、あなたの周りにとっても、あなた自身にとっても、心がほぐれ緊張が和らぐ、美しいひとときをもたらしてくれるはずです。
[via psfk,Davidshutter,scan,David,egao all retrieved November 2014]
[for AOR: designboom]
(Text: 吉岡遥菜)
(編集: スズキコウタ)