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ご近所の”あの人”が先生に!地域と子どもが一緒に成長する”小中高大社一貫”の学び場「マチナカデミアすみだ」

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この記事は、「グリーンズ編集学校」の卒業生が作成した卒業作品です。編集学校は、グリーンズ的な記事の書き方を身につけたい、編集者・ライターとして次のステージに進みたいという方向けに、不定期で開催しています。

皆さんは「地域の人たちが集まる場所」というと、どんなところを想像しますか?

近くの公園、いつものカフェ、大衆居酒屋、町の図書館…いろんな地域の人達が集まる場所はあっても、そこでは意外と交流する機会は少ないかもしれません。

子どもたちの学びの場づくりを通じて、地域の人たちがつながるきっかけをつくっているのが、墨田区で活動する「マチナカデミアすみだ」です。マチナカデミアすみだでは、行政、企業、団体という組織や世代を超えて体験しながら学び、学びながら体験する、ユニークな講座を展開しています。

今回は広報の竹内亮裕さんに、多世代で学び合うポイントについてお話を伺いました。
 
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竹内亮裕さん

小学生とご年配の方が同じテーブルに

2013年に始まったマチナカデミアすみだは、地域の小、中、高、大、社(社会人)一貫の市民学校です。

テーマはズバリ、”生きる力を一緒に学び合う場所”。非行少年の更生を担当していた元警察官だったり、整理整頓を教えてくれる片付けが得意なサラリーマンだったり、先生も遠くの有名人ではなく、この町に関心がある”ご近所のあの人”が主役です。
 
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授業も子どもからお年寄りまで、多世代の人たちをつながるために、さまざまな工夫がなされています。そのひとつが「みんながわかる共通項をつくる!」ということ。

たとえば、ある授業では、「ドラえもんはロボットなのか生き物か答えよ」という問いで討論しました。「勿論ロボット!!」という人もいれば、「でもドラえもんってのび太とご飯食べてるし…いきもの?」という人も。さまざまな意見が出たのも、ドラえもんのことをみんなが知っているからでした。

このように特別な自己紹介をしなくても、「一緒に面白く考えられるお題があることで、話しやすい雰囲気になるんです」と竹内さん。

この授業のもうひとつの狙いは、「既にある答え」を一回疑ってみることなんです。生きる力というのは、何より「自分自身で答えを見つけていく力」。そのために世代が違う人の意見を聞くことはとても大切だと思っています。

他にも授業が面白いものになっているか、先生とブラッシュアップしたり、「おもてなし×英語」などユニークなかけ算をしながら、地域の人たちが関心を持ってくれる授業をつくるように心がけています。

子ども達がどんな授業だったら来てくれるか。親世代にどうアプローチしていくのか、まだまだ模索中ではあります。大切なのは本質的にみんなで学べるものであること。それが多世代でつながるためのポイントだと思います。

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町を舞台に「学ぶ時々育む。」

マチナカデミアすみだが特に大切にしているのは、子どもにとって、学校の先生以外の大人たちと接する機会をつくること。そこで親子で参加できるワークショップも多く展開しています。

「もっと社会と子どもとの関わりを」とよく言いますが、その並べて考えること自体に違和感があるんです。

例えば”社会人”という言葉。それって仕事に就いている人をイメージする人が多いと思うんですが、考えてみれば社会で生きている人はみんな社会人だと思うんです。だから子どもだって社会人だし、社会の中に子どもがいるべきだと思います。

そして、町の先生たちも単に教えるというよりも、相互に教え合う人として存在しています。講師の人からの質問を受けて子どもたちが「私はこう思う」と話し始めて、いつのまにか”町の先生”が聞き役になることもある。それもマチナカデミアが目指す、地域と共に育つ”共育”モデルなんです。

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教育の分野に加えて、地域の課題を解決するという2本柱で活動するマチナカデミアすみだですが、この2つはとても密接に関わっているようです。

課題解決といっても、行政が提供するインフラやハードの部分ではなく、ソフトの部分に取り組んでいます。それは最終的に”人”に行き着くんですよね。

町を好きになるかどうかは、その町の人を好きになれるかどうかがで決まります。だからこそ、町の人同士がお互いのいい部分を共有し、子どもが地域のお年寄りに声をかけたり、子ども同士でも、少し年下の子を気にかけたり、多世代で学び合いながら、地域が豊かになっていくといいですね。

誰でも何かを教える存在になれる

マチナカデミアが生み出している「町の先生」。先生になるには、特別なスキルは必要なく「誰でも何かを教える存在になれる」と竹内さんは続けます。

子どもと関わる、町と関わるといっても、大きく捉えないでほしいんです。”先生”って言葉も固いし、”教育”って聞くとすごく重く聞こえる。だから私たちは”共育”と呼んでいます。

自分の体験や考えを伝えたり、シェアするだけで、実は誰かにとって学びになる。参加している町の先生たちも、「講師をすることが自分の学びになっている」と話してくれていて、それがうれしいんです。

みなさんも昔やっていたことや自分の体験したことを人に話してみませんか?そんなところから始まるまちづくりがあるかもしれません。

(Text: 伊集院一徹)