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“食べものを自分でつくる暮らし”はじめてみませんか?福岡の農業機械メーカー発、家庭菜園生活を応援するSNS「菜園ナビ」

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夏が近づいてきましたね。この春に家庭菜園をはじめて、夏の収穫が楽しみという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

greenz.jpでは以前、家庭菜園の収穫で余った野菜を貧困層におすそわけするSNS「Ample Harvest」をご紹介しましたが、一方で「余るどころかうまく育てられない」という声もあるようです。特に夏場の雑草取りに参って挫折してしまう方も多いとか。

そこで今回ご紹介するのは、家庭菜園生活を応援するSNS「菜園ナビ」です。

「菜園ナビ」ってどんなサービス?

野菜の育て方を“学ぶ”。家庭菜園で野菜を“育てる”。菜園仲間と“つながりあう”。主にこれら3つの面で、「菜園ナビ」は家庭菜園生活を応援しています。初心者からベテランまでの約6,000人のユーザーが集まって、相談し合ったり励まし合ったりしながら盛り上がりをみせています。
 

「菜園ナビ」のタイムライン画面で“つながりあう”。※菜園日記投稿等の一部機能の利用には事前に会員登録が必要です。

「菜園ナビ」では野菜の育て方を“学ぶ”コンテンツも用意することで、初めて家庭菜園に挑戦する初心者もサポートしています。
 
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植え時の野菜をお知らせ。各野菜の育て方ガイドも充実。


コンポストやグリーンカーテンなどのつくりかたもイラストで解説。

そして“育てる”をサポートする記録画面。その日行った作業内容や、作物の成長を記録します。この記録を公開することで、コメントなどで他のユーザーとつながる仕組みになっています。
 

水やりする/した、などの予定と記録を管理できます。目安の作業スケジュールは自動登録され、アラート機能と合わせてサポートしてくれます。

だれがつくっているの?

この「菜園ナビ」を運営しているのは、福岡にある創業66年の老舗農業機械メーカー「株式会社オーレック」です。オーレック社は歯車一つから自社で加工製造し、メイドイン・フクオカの草刈機や耕運機を製造販売しています。

今回はオーレック社の「菜園ナビ」運営担当者の他、開発などに関わる方々に「菜園ナビ」への思いについて、お話を伺いました。
 

あぜを二面同時に草刈できるなどユニークな機械で農家さんの省力化をサポート。除草剤を使わない有機農業にも貢献。PHOTO: (C)株式会社オーレック


取材を行ったのは、福岡天神の渡辺通りにあるコミュニケーション・ライブラリー「BIZCOLI(ビズコリ)」です。


「菜園ナビ」を運営するオーレック社の竹内さんは九州大学農学部出身。同社開発部所属を経て、現在SNS事業責任者。

そもそもどうして農業機械メーカーが家庭菜園SNSを運営することになったのでしょうか?SNS事業責任者を務める竹内健司さんは、「生産者と消費者の交流を生み出すことも狙いのひとつ」といいます。

竹内さん オーレックでは農業に軸足を置いた新規事業をいくつか立ち上げていて、「菜園ナビ」はそのひとつなんです。家庭菜園者を増やし、農業への意識を高め、日本の農業を応援していく。そんなSNSを目指しています。

プロ農家さんもブログとなると構えてしまうかもしれませんが、「菜園ナビ」だと気軽にアップしやすいのか、画像付きで記事を投稿していただいています。閲覧する人全てが家庭菜園をしているのでリアクションも非常にいいからでしょうか。「菜園ナビ」の中では農家さんと家庭菜園をしている人がいい感じで交流していて嬉しいですね。

竹内さん自身は入社してから家庭菜園をはじめたそうです。「畑を耕したことがないのに耕運機を開発するのはおかしい」と思ってはじめた野菜づくりでしたが、なかなかうまくいかない菜園生活の“つまずき”を体験しました。

畑は近いのに足が向かない、続かない。「収穫まで楽しくサポートしてくれる仲間がいたらなあ」と考えていた時、「菜園ナビ」の開発担当となる出納正樹さんと出会いました。
 

「菜園ナビ」開発担当の出納さん。システム開発やデザイン制作をおこなう「株式会社はなと屋」の代表。

出納さん 私たち「はなと屋」はIT会社ですが、「ハコイチ」という手づくり品のマーケットも開いています。竹内さんとは以前から顔を知っている仲でしたが、その「ハコイチ」で偶然再会したんですよ。

福岡にUターンして「はなと屋」を開業し、地元福岡発でおもしろいことをしたいと思っていました。なので竹内さんから「家庭菜園SNSをつくりたい」と聞いてすぐ「できます」と答えました(笑)

開発のプロが仲間に加わり、分業でのサービスづくりがはじまりました。ほしい機能をユーザー目線で考える竹内さん。カタチにする出納さん。そしてサービスを開始すると、栽培に関する質問がユーザーからたくさん寄せられました。菜園生活に“つまずき”を感じている人は竹内さんの他にも大勢いたのです。

当初はそれらの質問に竹内さんが回答していましたが、ユーザーによりよいサービスを提供するためには、農業のプロの協力が必要。そこで竹内さんは営農指導のプロである山邉信利さんにアドバイザー役の相談を持ちかけます。
 

JAに34年勤務し、営農指導をしていた山邉さん。体験農園「久山ファーム」の運営や営農指導をおこなう「オルト久山」の代表。オルトはイタリア語で菜園の意味。

山邉さん アドバイザー役を持ちかけられた時には、向いている方向が一緒だと感じました。「消費者に農業を理解してもらう活動をしたい」と私はずっと思っていて、JA退職後に体験農園をはじめたんです。

「菜園ナビ」でも目的は共通しています。食べるものを自分でつくる体験をたくさんの人にして欲しい。私はそのお手伝いをしたい。農業の魅力を伝えるのが好きなんですね。

竹内さん 今は玄人のユーザーさんも沢山いて、ユーザー同士で質問や回答のやり取りが積極的に行われています。野菜を病気にもしないで育てきると、野菜づくりの大変さや苦労が“肌感覚”で分かるとおっしゃる方もいらっしゃいます。

家庭菜園を続けているユーザーさんの中では、面白さや美味しさにハマってしまって、もっと広い場所で色々と育てたくて体験農園に行ったり、市民農園を借りたりする流れも見られますよ。

「菜園ナビ」コミュニティは“オフライン”でも展開中

家庭菜園者同士、そして生産者と消費者がつながる「菜園ナビ」。オンライン上だけでなく、さらに“オフライン”でも交流が生まれているそうです。

竹内さん 例えば市民農園に頻繁に通っている人が、たまに通うだけの人に連絡をとる手段としても活用されています。

「あなたのとこのオクラ、もう収穫できるよ」「虫がついているけどどうする?とっていい?」というのはわざわざ電話するほどのことではないけど、SNSだと伝えやすかったりします。

あらかじめオンラインでつながっていて実際に対面すると、途中経過があるからより仲良くなれる。リアルにつながる機会が体験農園や市民農園という場にあるので両方のコミュニティが活性化するんです。


「久山ファーム」で体験農園をはじめる「菜園ナビ」ユーザーも。継続しやすい通園30分圏内の人たちでリアルなコミュニティがつくられています。


竹内さんオススメの八女茶畑の景色。

竹内さん 次のステップとしては、「菜園ナビ」での地域観光を考えています。この春にユーザーさんを招待して地元の八女観光をしたところ、大変好評だったのでサービスに組み込めたらいいなと。

その八女観光では、私の地元オススメの観光コースを案内しました。梨農園で受粉体験をして、茶畑の景色を見て、お酢屋さんに行って、最後は抹茶アイスを食べながら種の交換会。食が好きな「菜園ナビ」ユーザーの皆さんに、食の視点で八女を楽しんで頂く企画です。

私のように地元をオススメしたいユーザーさんと、ローカルな食観光を楽しみたいユーザーさんは、きっと全国各地にいらっしゃいます。そうした人をつなげる機能を今、準備中です。

どうやってつくっているの?


かつて九州で生産規模が最大級だったというラムネ工場。改装してオフィスとして活用しています。


「菜園ナビ」デザイン担当の若杉さん。窓際やベランダでの菜園生活を楽しんでいます。

「菜園ナビ」を開発する「はなと屋」のオフィスは福岡市東区の箱崎エリアにあります。ラムネ工場を改装したというオフィスで、「菜園ナビ」はつくられています。「はなと屋」には「菜園ナビ」をつくる人が出納さんの他にもいます。デザイナーの若杉大輔さんもその一人です。

若杉さん ウェブサイトのデザインでは、家庭菜園初心者の目線で“わかりやすく伝える”ことを特に意識しています。特にサイト内の言葉づかいが大切ですね。例えば菜園用語で「定植」というのが登場しますが、出納さんも私も初心者なので「定植します」と言われても分かりません。そこで「苗の植付け(定植)をします」と補足をしたりしているんですよ。


竹内さんが定期的に「はなと屋」を訪問して開発ミーティングが開かれます。

出納さん 機能面でもあれこれ提案をしています。例えば作業記録の項目に「水やり」を追加したのは、私が家庭菜園をはじめて一番テンションが高い時期に、水やりをやっているのに「菜園ナビ」でアクションできる作業項目が無くて悔しかったのがきっかけでした。

種を植えて芽が出るまでの間に初心者が黙々とやっている水やりも、作業項目にすれば記録にも残るし他のユーザーにも伝わります。

竹内さん 水やりは当たり前すぎて気がついていなかったんですよね。慣れてくるとやはり「水やり」を登録しなくなってくるのですが、最初のモチベーション継続に貢献しているようです。

大きな機能を追加する際などには、山邉さんにもアドバイスを頂いています。将来的にはさらに多くのプロ農家さんにも使って頂いてコミュニティを大きくしたいと考えているので、プロ農家の目線で実用性をチェックして頂いているんです。


「はなと屋」前にもいろいろ植えられています。

つくりたいけど続かない。そんな人たちを応援することからはじまった「菜園ナビ」。農業の魅力を伝えたいプロ農家や、地方発のWEBサービスを育てたいIT企業との出会いで、このSNSは生まれました。

消費するだけ、食べるだけ、の暮らしに“自分でつくる”を取り入れてみると、食の味わいが深くなる。「菜園ナビ」をつくっている人たちはそう考えています。「菜園ナビ」と一緒に、“つくる暮らし”。あなたもはじめてみませんか?