2013カンヌ受賞作の連載、今回はフィリピンからの事例をご紹介します。
フィリピンの公立小学校では、生徒は毎日22冊もの教科書を背負って学校に行かなくてはいけません。これは、学校まで長い距離を歩いて通わないといけない生徒たちにとっては大きな負担になってしまいます。授業が始まるまでに疲れ果ててしまうだけでなく、背骨のゆがみを招いてしまうことも。
学校まで長い距離を歩かなければいけない、発展途上国の生徒たち。彼らを重い教科書から解放する手段として、iPadのようなタブレット端末や電子書籍リーダーが注目されています。
ところが、タブレット端末や電子書籍リーダーの値段は高く、どんなに低価格のものでも、家族が稼ぐ一ヶ月ぶんの収入でも届かないという家庭も少なくありません。
一方そんな生活でも古いタイプの携帯電話は普及しており、人々はそれを主にテキストメッセージのやりとりで使っています。生徒たちの苦痛を和らげ、学習環境を整えるためにと通信会社が考え出したのが、「Smart TXTBKS」です。
「Smart TXTBKS」の仕組みをご紹介しましょう。膨大な教科書の内容を、最大160文字のテキストメッセージに変換。それをSIMカードに組み込み、携帯電話の受信メッセージとして読めるようにしているのです。
携帯電話に表示されるテキスト画面
通信会社は、志ある教科書の出版社や著者と協力し、それを実現。使われなくなった携帯電話に教科書のデータを組み込み、電子リーダーとしてよみがえらせました。この仕組みは一部の学校で導入されることになり、生徒たちの通学カバンの重さは半分に。そして、出席率も向上しました。
「Smart TXTBKS」はフィリピン中の学校や生徒の家族、そして教育機関から注目を集め、対象とする教科書が広がり、さらに多くの生徒たちに使われるよう要望が高まっているそうです。
スマートフォンへの買い替えが進むことで、使われなくなった携帯電話は世界中にたくさんあると思います。まだまだ、ポジティブによみがえらせるアイデアはあるかもしれませんね。
カンヌライオンズ受賞作の連載は続きます!引き続きお楽しみに。
(翻訳協力:モリジュンヤ)