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みんながインパクトを与えられる時代を楽しもう。SVPインターナショナル理事長のランス・フォースさんインタビュー

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社会的な課題の解決に取り組む事業に対して、資金提供とパートナーによる経営支援を行うNPO「ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京」、通称SVP東京。

立ち上げ以来、社会課題の解決に取り組む革新的なソーシャルベンチャーに対し投資と協働を行ってきました。これまでの協働先にはカタリバフローレンスケアプロクロスフィールズe-Education Projectブラストビートハナラボリリムジカなど、そうそうたる顔ぶれが並んでいます。(現在、今年で10回目となる投資協働先の募集を行っています。

今回、ソーシャルベンチャー・パートナーズ・インターナショナル(Social Venture Partners International, SVPI)の代表理事であるランス・フォースさんが来日。来日に合わせて、東京・谷中の喫茶店「カヤバ珈琲」でランスさんにインタビューさせていただきました。

「お金」か「社会への還元か」を自分に問いかける

もともと起業家を輩出し続けていることでも知られるシリコンバレーで、バイオテクノロジーのベンチャー企業を起業し、CEOを務めていたランスさん。そんな彼は、2005年にソーシャルセクターへと足を踏み入れます。

当時、さらにベンチャー企業を立ち上げるのか、社会へと還元するための活動を始めるのかで、悩んでいたんです。お金を稼ぐことと、自分がエネルギーを感じる場所に居ること。自分にとってどちらがより重要なのかと。

前から社会のために何かしたいとは思っていましたが、それが自分の次のキャリアになるかはわからなかった。だからまず、実験をしてみようと思いました。

「お金」か「社会への還元か」。その時は、その答えがわからなかったというランスさんですが、それが彼にとっての大切な「問い」となりました。

その後ランスさんは6ヶ月の間、サバティカル休暇をとり、ソーシャルセクターを体験することから始めます。そのときに出会ったのが「ベンチャーフィランソロピー」という概念でした。

私自身ベンチャー企業の経営をし、出資を受けていたので、ベンチャーキャピタリストの役割もよく理解していました。彼らは単にお金を投資するだけではなく、役員として経営のアドバイスをし、投資家が持つスキルやネットワーク、時間までも投資してくれるんです。

営利企業ではベンチャーキャピタルのモデルがうまく機能する。それならソーシャルセクターでもうまく機能するかもしれない。そこでいろいろ調べているうちに、「SVPモデル」について書かれた記事を見つけ、コンタクトをとったのです。

SVPへの参加

1998年ころにスタートしていたSVP。その中でもランスさんが参加したのは「SV2(Silicon Valley Social Venture)」というアフィリエイト(加盟団体)でした。そこでランスさんは、SV2はシリコンバレーに存在していたソーシャルベンチャーの中でも、とくに可能性の高い組織を選んでいることを理解します。

支援先のトップ一人ひとりに直接会いに行ったんですが、みなさん素晴らしい方ばかりで、個人的にも協力したいと思うようになりました。

よいベンチャーキャピタリストとは投、資先の会社の役員として起業家と一緒に会社をつくっていく存在です。私は支援先の理事となることで、ベンチャーキャピタリストと同じ役割を担う存在になったのです。

あくまで体験だと思っていたにも関わらず、6ヶ月後にはSV2の理事になり、さらには支援先の2つの団体の理事になっていたというランスさん。ここから本格的にソーシャルセクターへと足を踏み入れます。

ちなみにランスさんが理事を務めた団体は、教員にトレーニングを行い離職率低下に取り組む団体「New Teacher Center」と子どもの識字率向上に取り組む「Reading Partner」の2つ。

これらの組織に対して、人材育成やビジネスモデルの改良、提供するプログラムの改良などをサポートしました。今ではどちらも教育分野においてアメリカで最大規模の組織になっています。
 
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New Teacher Center

スケールアウトすることへのこだわり

とはいえ「ただ支援をするだけでは不十分」とランスさん。大切なのは活動が社会にインパクトを与えること、そして活動の規模が拡大(スケールアウト)することだと続けます。

現在、フィランソロピーという言葉は「今あるプログラムに今あるお金を渡す」という意味合いが強すぎるように思います。良い意味でも悪い意味でも。たとえば「私は、困っている人を助けるためにお金を寄付します」といった行動がフィランソロピーと呼ばれたりするのですが、本来、この言葉が持つ意味はそれだけはありません。

コミュニティにおいて継続して成果を出し続けるために、次に必要となる一歩は何か、つくりたい未来の社会とはどんなものか。今だけでなく未来のことについても、十分に話し合わなければならないのです。

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掲げたビジョンを達成するために、いかに現状に変化をもたらすか、これこそ、わたしがこだわるところなのです。組織が成長して直接的なインパクトを出すだけでなく、メディアや政策の変化を通じて、間接的に社会にインパクトを出すことが必要。これらを合わせた、総体的(holistic)なインパクトを与えていくことが重要なのです。

ランスさんのこうしたこだわりやビジョン、そして何より彼の力量のおかげで、協働先NPOの活動がスケールしたといえそうですが、それでもランスさんは「SVPモデルがあったおかげでそれが達成できた」と考えています。

SVPに出会っていなければ、ソーシャルセクターにおけるよい組織を見つけるのに苦労していたでしょう。SVPモデルがあったおかげでさまざまな団体に関わることができ、関わるほどにたくさんの学びがありました。SVPがあることで、私は早いサイクルで学びを積み重ねることができたのです。

SVPをグローバルなネットワークへ

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SVPモデルは東京をはじめ、さまざまな都市で広がっています。もともとランスさんが描いていた「社会への還元」という点において、SVPモデルは「とてもパワフル」だとランスさんは強調します。だからこそ「SVPがグローバルに成長するための手助けがしたい」そう考えたランスさんは、2008年からSVPインターナショナルの理事となります。

当時SVPは、グローバル拡大に対するマーケティングをほとんどしておらず、北米を中心とした20都市のみのネットワークでした。連絡があればそれに対応するような状態で、こちらから働きかけてはいなかったのです。

その姿勢が変わったのは、今から3年ほど前のこと。SVPインターナショナルとしてグローバル展開の取り組みを始めてからは、SVPのプログラムのブラッシュアップに注力してきたそうです。

SVPを世界中のどこでも通用するモデルにするために、戦略的、そして能動的にグローバル拡大していくことに決めました。この数年間でほぼ倍の40都市になりました。将来的に世界中で200のアフィリエイトに広げていくことを目標にしています。

社会変革のために集合する「コレクティブインパクト」

ネットワークが広がり、世界中から知見が集まれば、その中から最適なものを選び出し、またネットワークで共有していく。多様なステークホルダーたちと連携し、広い範囲で社会の変革を加速させていくために、「コレクティブインパクト(Collective Impact)」と呼ばれるアプローチをSVPは目指しています。

地域に根ざして活動してきた団体がSVPの支援を受ける中で、SVPインターナショナルと接続し、SVPIを通じてより大きな集団として活動していく。参加しているメンバーが組織の内側だけでなく、外に向かって活動していくことが大切なのです。外側の組織、企業、人との接点こそ、地域社会により大きなインパクトを与えるために重要だと考えています。

SVPは個人の力だけでは困難なことを実現する力を持っています。何か社会に還元したいと考えている人たちが集まり、彼らのハブとなるのがSVPなのです。

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SVPのビジョンや役割は年々進化し、現在は以下の3つに集約されるそう。

①個々の投資・協働先の能力を高める
②パートナーが成長しチェンジメーカーとなることを支援する
③ソーシャルセクターを支えるコミュニティ自体を成長させる

ビジョンはより大きくなっています。特に3つめを成し得るために、SVPは鍵となるステークホルダーに働きかけ、つなげていく、アグリゲーターになることが求められています。

このコミュニティがあれば、20歳でも、40歳でも、60歳であっても、誰でも年齢に関係なく、社会変革の最前線に立つことができるのです。

一つ一つの団体にパートナーとして関ることもできますし、協働から学びを得て、より大きな視点で社会の変革に関わることも可能になる。かつてランスさん自身がそうであったように。

この分野はまだ大学でも十分に学べるところは存在しません。SVPに参加することで、実践しながら学ぶことができます。そこからの学びを重ねるほど、できることがさらに増えていく。この学びに限界はないのです。

最後に、日本で活動する人たちへのメッセージ

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SVPはソーシャルベンチャーの成長を支援するコミュニティ。そこには起業家と支援するパートナーのふたつの存在が必要です。まずは支援を受ける起業家に対して、メッセージをいただきました。

起業家には、まずパッションを求めています。本当の強い熱意をもって課題を解決しようとしている人を支援したいですね。次に、謙虚さを持っている人。それは課題の大きさを認識し自分一人で社会課題を全て解決できないと、認識していることです。

謙虚さを持って自分の役割を見定めることで、他社とパートナーシップを結び、課題の解決を加速させることができます。東京でお会いした起業家からもこうした資質を十分感じることができました。

最後に、SVPにパートナーとして参加したい人へも。

1. 参加するチャンスはあなたにもある
まだ、自分が社会にインパクトを与えられると思っていない人こそ、ぜひ参加してもらいたいと思います。私がかつてそうであったように、誰にとってもインパクトや変化を与えられるチャンスや機会があることを、まず知ってほしいですね。

2. 関わり方は様々、今すぐスタートできる
SVPのパートナーの3分の1は働きながら、それぞれにできる範囲で関わってもらっています。逆に団塊の世代のように、引退後、多くの時間を使える人もいます。その人が持っている時間やネットワークなどの中で、様々な関わり方がありますが、どのような形でもインパクトを与えられるのです。

3. みんながインパクトを与えられる時代に
これが最も重要なこと。テクノロジーの発達により、誰であってもインパクトを与えられることができるようになりました。20代の人と50代の人、それぞれ異なる、価値のある関わり方があります。これはとてもパワフルなことであり、だからこそ今がユニークな時代であるとも言えます。

インタビューの締めくくりには、「社会の課題解決に取り組むことは、ライフタイムジャーニー、人生をかけてする旅だよ」と笑ったランスさん。何か感じることがあれば、ぜひあなたにできることで関わってみませんか?

(取材場所協力:カヤバ珈琲