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“参加型プロジェクトデザイン”の秘訣とは?GAKU-MCさんと横尾俊成さんが語る「クラウドファンディングのいかし方」

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インターネットの発達とともに、人の持つ可能性が広がっています。人の声援を形に変えるプラットフォームである、クラウドファンディングサイトも新たに生まれ、浸透してきた可能性のひとつ。

今回、互いに様々な活動を行いながら、クラウドファンディングを活用しているアーティストのGAKU-MCさんとNPO法人「グリーンバード」代表の横尾俊成さんが、これからのプロジェクトデザインの方法について対談しました。

自分にできることを考える

横尾 GAKU-MCさんは3年前の東日本大震災から「アカリトライブ」という音楽イベントを続けていますよね。こうした活動を始めたきっかけは何だったんですか?

GAKU-MC 東北の震災が起きた後、「ap bank fund for Japan」のメンバーとして宮城県石巻市でボランティア活動に参加したのがきっかけですね。なんの専門性も持たない自分が行ってもいいのかって、悩んだりもしたんですけど。

横尾 悩んだ結果、参加することにしたんですよね。行くことを決めた理由は、なんだったんですか?

GAKU-MC ひとつは娘がいたことかな。今はまだ小さいんだけど、何年かして大きくなったときに、「2011年に起きた震災ってどんな様子だったの?」って聞かれたときに、自分の目で見たものを、自分の言葉で語れるようでありたいな、と思って。あとは神戸の震災のときに感じたことが理由かな。
 
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横尾 神戸の震災のときにはどんなことを感じたんですか?

GAKU-MC あの頃は最初のヒット曲が出たころ。当時は、ボランティアなんて素人が行くものじゃないという風潮が強くて。でもしばらくして、ボランティアで現地に参加した人がどれだけ現場の力になったか」という話を聞いてさ。自分も行っていたら、もっとできることがあったのに、と反省して。

横尾 ボランティアに行くのって、実は難しく考えなくてもいいのかもしれないですね。グリーンバードでも震災後にボランティアに行ったんですが、僕たちの場合は、仙台のグリーンバードチームが被災して、「仲間が被災しているから助けにいかないと」と思って、物資を運んだのがきっかけでした。

GAKU-MCさんがボランティアに参加したときは、アーティストとして参加したんですか?それとも1人の個人として?

GAKU-MC 1人の人間として参加していましたね。歌うわけでもなく、テントに寝泊まりして泥かきして。アーティストとして何ができるのか、と考えはじめたのは春が過ぎて夏に差し掛かるころかな。
 
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「現地の人達にも何か息抜きが必要」と考えたボランティアチームが、「元気祭り」というイベントを開催してくれたんですが、そこで唄ったのが最初の音楽的支援でした。当日は雨が降って大変だったんだけど、歌を聴いて泣いている人もいたりして。「来てくれてありがとう」って言ってもらえたんですよね。それで元気をもらえました。

横尾 手助けしたい、元気づけたいと思って行っているのに、逆にこちらが元気をもらって帰ってきちゃうんですよね。

GAKU-MC そうそう。元気をもらえているから活動を続けられていると思う。それがなかったら活動を続けられないから。

キャンドルと音楽ライブで「やる気」を後押し

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横尾 最初のライブを開催して、「アカリトライブ」の活動につながっていくんですね。「アカリトライブ」ではキャンドルを灯して、そのアカリでライブを行っていますが、キャンドルを使うようになった理由はなんだったんでしょうか?

GAKU-MC キャンドルをテーマにした歌「take it slow」がラジオで流れたときに、キャンドルメーカーに勤務していたアツい青年がその歌を耳にして。彼から「キャンドルを使って何かできないか」と連絡をもらったんです。

キャンドルにメッセージを書いてもらって、被災地に届ける。言葉の配達のようなことができたらいいんじゃないか、と考えて開催したツアーが「アカリトライブ」の前身でした。

横尾 「アカリトライブ」って、観客が頑張って寄付している感じではないのが良いですよね。みんなライブを楽しんでいるんだけど、ちゃんと応援につながっている。きっとGAKU-MCさんの想いで作られている場だからなんだろうな、と思っています。
 
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GAKU-MC 「アカリトライブ」は、アコースティックギターとラップ、そしてキャンドルの灯りがとてもマッチしてる。キャンドルを前にすると、人はとても素直な気持ちになることができる。何かをやりたいと思っていた人が、キャンドルの灯りで素直な気持ちになって、音楽でそのやりたいという気持ちを後押しする、アカリトライブはそういうことをしていきたい。

横尾 そうなると「東北支援」というテーマじゃなくてもアカリトライブは開催できますね。

GAKU-MC そう!だからこれはライフワークになるな、と思っていて。今後も色々な形で開催していきたい。

参加してもらいながらライブを作る

横尾 前回の「アカリトライブ」は日本を飛び出して、ジープ島で開催したんですよね。そして、次はセドナで。

GAKU-MC そう!ミクロネシアのジープ島での開催。行くのは大変だし、電気もネットもないし、しかも船着場もないような場所。だから荷物を運ぶのも参加者の人に手伝ってもらったりした(笑)

横尾 一緒に行って、一緒に準備して開催したんですね(笑)
 
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GAKU-MC もちろん大変だったんだけど、満月が舞台照明になって、キャンドルの灯りに包まれながらギターの演奏と歌声を聴くという体験は本当によかった。それでまた世界の秘境のような場所で歌いたいと思って、次はセドナで。

プロジェクトにも色々な参加の仕方がある

横尾 セドナでの「アカリトライブ」はクラウドファンディングサイトの「GREEN FUNDING」でお金を集めているんですよね。

GAKU-MC 世界の色々な場所で「アカリトライブ」を開催するためには、多くの人に応援してもらうことが不可欠。クラウドファンディングの良いところは、お金を出すことが活動自体を支援することにもつながるからだと思っています。
 

横尾 リターン品にはセドナに一緒に行く、というのもあるんですよね。

GAKU-MC はい。支援してもらいたいというのはもちろんなんだけど、一緒にライブを作ってくれるメンバーを探しているというのもあって。

横尾 GAKU-MCさんのライブはただ聴いているだけじゃなくて、ワークショップみたいに隣の人と話す必要があって、参加型で作られてるんですよね。それが受け身ではなく、ライブをつくるという上流の部分から関われるようになっている。

GAKU-MC ただライブに来て聴くだけじゃなくて、色々な参加の仕方があると思う。今回のセドナのツアーだって、当日の参加はできなくても、クラウドファンディングで支援してくれたらツアーの実現をサポートしたことにつながる。

横尾 じつは今グリーンバードでも、green fundingで支援を募っているんです。私達のプロジェクトは、ゴミ拾いが楽しくなるようなプロダクトのアイデアを形にするための費用を集めるというもの。

これまでグリーンバードの活動は、直接ゴミ拾いに参加することでしか、関わることはできませんでした。このクラウドファンディングのプロジェクトは、新しい参加の仕方を提供してくれています。
 
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GAKU-MC プロジェクトを継続してファンがついていれば、きっとそのファンの人たちはプロジェクトを応援してくれる。だから、これまでの活動が試されているってことにもなるんだよね。これはかなりのプレッシャーだけど(笑)

横尾 いろんな参加の仕方を用意していって、プロジェクトに関わってくれる人を増やしていきたいですね。

(インタビューここまで)

 
予め用意されたものを一方的に提供するのではなく、プロジェクトの途中から参加してもらい、ともに作り上げていく。お二人ともそんな新しい挑戦のために、クラウドファンディングを活用しているようです。

運営側と参加側の垣根は徐々に下がってきている今、プロジェクトに参加してもらうにはどんな方法があるのか。プロジェクトオーナーはそれを考えるのがプロジェクトを進める上で大切なことなのではないでしょうか。