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観光地の土産物店と工芸メーカーを元気にし、私たちの旅を楽しくする中川政七商店の「日本市プロジェクト」(後編)

中川政七商店の新プロジェクト「日本市」
中川政七商店の新プロジェクト「日本市」

中川政七商店」は、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、伝統工芸の分野で初めてSPA(製造小売)業態を確立させ、工芸メーカーを対象に業界特化型コンサルティングや流通サポートを手がけるなど、わずか10年足らずの間に急速な変革を遂げてきました。

1716年の創業以来拠点としてきた奈良で、「日本市プロジェクト」という新しい取り組みを本格的にスタートさせています。

土産物店と地元の小規模工芸メーカーを元気にする「日本市プロジェクト」

ゆるキャラグッズに、古めかしい工芸品…。日本各地には、数々の素晴らしい伝統工芸があるはずなのに、観光地の土産物店に並ぶお土産物は、その地域ならではのオリジナリティにも、商品のバラエティにも乏しいのが現状です。その結果、旅行者にとってはすすんで買いたいと思える商品が少なく、地元の工芸メーカーや土産物店は疲弊するという、負のスパイラルに陥っています。

この課題を解決すべく立ち上げられたのが「日本市プロジェクト」。その狙いについて、中川さんはこう語っています。

食の分野では「地産地消」が当たり前になりつつあるのに、工芸では、まったくありません。そこで、中川政七商店が、土産もの店と地元の小規模工芸メーカーとの間に入ることによって、小さな需要と供給の循環を生み出す。将来的には、持続可能な事業を地域レベルで自立的に運営できるような状態にまでしたいと考えています。

日本市プロジェクトについて語る、中川淳さん
「中川政七商店」十三代目を継ぐ中川淳さん

具体的には、中川政七商店が、小規模工芸メーカーに対して、商品企画とデザインを提供し、さらに製造ロットの買取を保証。一方で、土産もの店には、消費者のニーズや嗜好に合った地元の工芸品をタイムリーに供給し、店舗運営のアドバイスも行います。

SPA(製造小売)業態を確立したノウハウや、工芸メーカーに対する業界特化型コンサルティングの実績など、中川政七商店がこれまで一つひとつ積み上げてきた成果があるからこそなし得る取り組みといえるでしょう。

奈良の様々な工芸に出会える「日本市 奈良三条店」

奈良市三条通りにある「日本市 奈良三条店」
奈良市三条通りにある「日本市 奈良三条店」

2013年、中川政七商店の地元・奈良に「日本市 奈良三条店」がオープンし、「日本市プロジェクト」が本格的に動き出しました。

奈良の特産品・蚊帳生地を使ったベストセラー商品の「花ふきん」や、靴下の国内シェア50%以上を占める奈良県から生まれた靴下ブランド「2&9」、奈良吉野の「嘉兵衛番茶」や「堀内農園」のドライフルーツなど、店内で扱う商品の6〜7割は、奈良県産。美術工芸品なども扱い、奈良のものづくりが総覧できる“ショーケース”のような空間です。

定番の観光スポットを巡るだけじゃなく、その地域ならではの面白いものを見つけたり、実際にものづくりの現場に行ってみたり、というのが、旅の醍醐味だと思うんです。「日本市」のショップは、そのきっかけが生まれるような場所になっていったらいいな、と。

「日本市 奈良三条店」では、奈良の食を気軽に楽しめるイベント「奈良市(ならいち)の日曜市」も定期的に開催。2014年2月23日に開催された日曜市では、奈良のコーヒーチェーン店「フジエダ珈琲」や地元で大人気のパン屋さん「MIA’S BREAD」など、地元の名店が集結。

中川さんがブランドマネージャーを務める奈良市のサッカークラブ「奈良クラブ」の所属選手らが餅つきを行うなど、観光客のみならず、地元の人々も一緒に、奈良の魅力に触れられる場となっています。
 
定期的開催されている「奈良市(ならいち)の日曜市」。日本市のブランドキャラクター「ふじこちゃん」も登場。 定期的開催されている「奈良市(ならいち)の日曜市」。日本市のブランドキャラクター「ふじこちゃん」も登場。

描かない未来はやってこない

SPA(製造小売)業態を確立し、自社ブランドを拡充させ、これらから得られたノウハウや仕組みを活かして、伝統工芸業界に特化したコンサルティング事業や流通サポートに進出。そして、これら一つひとつの積み重ねの先に、土産もの店と地元の小規模工芸メーカーをつなぎ、新たなビジネスモデルを創り出す「日本市プロジェクト」があります。

中川さんは、2002年に中川政七商店の経営を担いはじめてからの道のりを、次のように振り返ってくれました。

もちろん、入社した当時、今の状態までは描けてないですよ。そのときどきで、描ける絵の限界はあります。でも、そのポジションにいるから、見えること、やれることがあるわけだし、その範囲でベストのかたちを描かなきゃいけない。描かない未来は、やってこないですから。

すっと伸びた背筋が印象的だった中川淳さん。そばにある名刺入れは三代目なのだとか。
すっと伸びた背筋が印象的だった中川淳さん。そばにある名刺入れは三代目なのだとか。

「仕事が趣味」と笑顔で語る中川さん。

昔は、「信長の野望」みたいなシミュレーションゲームをやることもあったんですけど、いつからか、面白いと思えなくなって、やらなくなりました。リアルな世界のほうが、ずっと面白い!

“三代目”だという「遊 中川」の名刺入れや、鹿紋の入った筆ペンが、当たり前のように中川さんのそばにいつもあるように、中川さんにとっては、生きること、暮らすこと、はたらくことが、不可分なものとして自然と混じり合い、ご自身を、そして、中川政七商店を、かたちづくり、進化させ続けているのではないでしょうか。

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