一人ひとりの暮らしから社会を変える仲間「greenz people」募集中!→

greenz people ロゴ

オーガニックの食材をもっと身近に。食卓から世界を変えるグローサリーストア「FOOD&COMPANY」

s_0309_IMG_4577_HH
PHOTOGRAPHY BY HIDEAKI HAMADA

“オーガニック”には興味があるけど、ちょっと高そうだし、なかなか手が届かない…。そう思っている人は多いのではないでしょうか。

そんな人におすすめしたいグローサリーストア「FOOD&COMPANY」が今年3月、学芸大学駅近くにオープンしました。

本当にいいもの、おいしいものを届ける

店内は温かみがあって落ち着いた雰囲気。「ベビーカーも通れるように」と余裕のある広さでゆっくりと見ることができます。

野菜やフルーツ、肉、調味料、牛乳やお酒など、さまざまな食品が並び、中には簡単にぬか床を作れるキットや、海水を多く含んだ田んぼで栽培した貴重な「塩トマト」など一般のスーパーでは見かけないものも。

これから近所の人たちが何を求めているかを聞いて調整していく予定ですが、これらの商品は「F.L.O.S.S(フロス)」という基準のもと選ばれています。

IMG_3713

F.L.O.S.SとはFresh, Local, Organic, Seasonal, Sustainableの頭文字をとったもので、以下のガイドラインが設けられています。

Fresh 適地適作を大事にし、栽培方法、流通段階における厳密な品質・鮮度管理をされた食材。

Local 東京都近郊地域、もしくは日本国内で栽培、製造されたものであること。

Organic 生鮮野菜と果物においては、原則として無農薬、無化学肥料栽培による自然の摂理と土壌づくりを大切にした栽培方法であること。

Seasonal 栄養価が高く、環境にも負荷が少ない旬の食材を大切にすること。

Sustainable 農作物や動物を含む自然環境のこと、人の体のこと、そして文化や社会に対して配慮された食材であること。そして頭と心と体全体で、ちゃんと「おいしい」と感じてもらえる食材であること。
 
s_0309_IMG_4478_HH
PHOTOGRAPHY BY HIDEAKI HAMADA

おいしい食材を扱うだけでなく、ワクワクするような、野菜を生かすような見せ方も丁寧に考えています。新鮮な食材を食べてもらおうと、必要な量だけを購入できるようにバラ売りの野菜や卵もあります。

買おうと思っていなかった人にも手にとってもらえるように、わかりやすくて目に入るようなデザインにしています。これを使って料理したくなった、と思ってもらえたら嬉しいですね。

と話すのはスタッフの上野智枝子さん。フローリストの仕事をしている経験を活かして、店内にはあちこちに花や植物が飾ってあり、空間を明るくしています。

オーナーの谷田部摩耶さんが「お花は経済的に無理をしてでも飾りたいと初めから思っていました」と言うように、居心地の良い空間づくりにはこだわりを感じます。
 
s_0309_IMG_4285_HH
PHOTOGRAPHY BY HIDEAKI HAMADA

どんな思いをこめてFOOD&COMPANYをオープンしたのか、谷田部さんと、ともにオーナーを務める白冰(バイビン)さんに聞いてみました。

日常に価値をおいて大切にする

IMG_3730
スタッフのみなさん。左から谷田部さん、白さん、大石さん、小林さん、ティナさん、上野さん

谷田部さんと白さんがお店を開いたのは、「日々の生活から世界を変えるため」と言います。その一番の方法として選んだのが、グローサリーストアでした。

谷田部さん 経済の差で選択肢の数が変わってくるという社会のシステムに漠然と疑問を感じていて、大学院で国際開発の勉強をしたり、リベリアの女性支援を行なうNPOの活動に携わったりしていました。

そんな中で、援助をしてあげる・してもらうというトップダウン型の支援方法やチャリティにも違和感を抱き、そもそもの自分たちのあり方を変える方が、長期目線で見たときに社会は変わるんじゃないかな、と思うようになったんです。

一方、白さんは社会人になるまで社会問題に全く興味がありませんでした。

白さん 大学ではファッションの勉強をしていて、卒業後は大手アパレル企業に就職しましたが、自分のやりたいことがその会社で見いだせず、「やりがいを感じられる仕事をしたい」ともやもやしていました。

ちょうどそのとき転勤先の福岡で、九州大学がグラミン銀行と提携したので講演を聞きに行って、「自分もソーシャルビジネスをはじめたい!」と思ったんです。

こうしてソーシャルビジネスを立ち上げることを決めた二人でしたが、特定の社会問題を解決したいというテーマがなく、どんな手段や業界を選んだらいいか、ずっと悩んでいたそう。そこで、「まずは世の中のことを知ろう!」と、中国に一ヶ月、北欧に一ヶ月、そのあと東北などの日本国内へと、旅に出ることに。

谷田部さん 北欧では幸福度が高い理由を探ろうと、現地の人と話してみたんですが、日常を大事にしているという印象を受けましたね。例えば日本みたいにカラオケとかパチンコとかの娯楽施設は少ないけど、公園で本を読んだりみんなで食卓を囲んだり、仕事をしすぎないとか、時間の使い方に余裕があると感じました。

日本の地方を訪れた際も、同じように感じたと言います。

飲み屋で会った地元の人との会話とか、何気ないことにほっこりしましたね。そして、ソーシャルビジネスを始めるときに、私たちなりの幸せとか豊かさのあり方が、私たちの中ではっきりしていなければ提案することはできないと思い知らされました。

日常にいかに価値をおいて大切にできるか。旅を経て、それが継続的な幸せにつながると思うようになったんです。

そんな“日常”に一番根ざしたビジネスの形を考え、最も身近な日常としてたどりついたのが「食」でした。

自分たちの生活を変えることで、世界を変えていく

s_0309_IMG_4376_HH
PHOTOGRAPHY BY HIDEAKI HAMADA

食に関する仕事は二人とも携わったことはありませんでしたが、「やってみたいと思ったし、小売の経験があったので、なんとかできそうだと思いました」と白さん。

白さん 誰でも毎日食べるし、スーパーやコンビニにも行く。毎日食べるものから生活を見直し、習慣を変えることで消費行動が変わり、生活全体が変わるきっかけになると思うんです。

「途上国へ何かをしてあげる」というようなことではなく、自分たちの生活を見なおすことで、ゆくゆくは世界を変えていきたいですね。

一店舗で終わらせるのではなく、単に店舗を拡大したいわけでもなく、コンセプトを広めていきたい、と二人は語ります。そしてこのコンセプトと二人の思いに、仲間が集まってきました。

その一人、FOOD&COMPANYでブランディングやワークショップの企画などを担当しているティナさんは、友人の紹介で二人と会うことに。

ティナさん 最初は「八百屋をやりたいカップルがいる」って紹介されたんだけど(笑)、会ってみたら考えていることや方向性が似ていて、何か一緒にやろうってなりました。

私は大学院でデザイン思考をベースとしたコミュニティづくりを勉強してきて、そういう仕事をしたいと思っていたから、今それが実現できていて嬉しいです。

ティナさんが企画しているワークショップは、一ヶ月に二度、FLOSSのガイドラインを軸として、もっと生活に取り入れてもらえるような提案をしています。

4月は最初の頭文字になっている「Fresh」がテーマ。第1回はスペシャリティーコーヒーのエキスパートである「ONIBUS COFFEE」の坂尾篤史さんをホストとして迎え、新鮮なコーヒーと古くなったコーヒーの違いについて学ぶ予定です。

また月に一度はコンセプトに共感するシェフを呼んで、お店の食材を使ったポップアップレストランも開かれます。どちらも参加者は10人限定。

ティナさん 少ない人数で質の高い会話ができるようにしたいと思って、定員は10人に決めました。落ち着いた空間で、近所の人たちをつなげる場にしたいです。

s_0309_IMG_4411_HH
PHOTOGRAPHY BY HIDEAKI HAMADA

こちらのコミュニティスペースにあるテーブルは、木工作家の高山英樹さんにオーダーメイドで作ってもらったのだそう。

ティナさん 高山さんにFOOD&COMPANYの話をしたら、コンセプトを気に入ってくれてテーブルを作ってくれることになったんです。

角があるものよりも、みんなで囲めて、温かい、丸みのあるテーブルをイメージしていたことを伝えて、あとは彼に任せました。直々に納品に来てくれたときは感動しましたね。

その人なりのきっかけをつくる

s_0309_IMG_4465_HH
PHOTOGRAPHY BY HIDEAKI HAMADA

「大量生産ではない食を求めているニーズもあって、タイミングがよかった」という谷田部さん。「F.L.O.S.S」というキーワードも谷田部さんが雑誌で偶然見つけて、「わかりやすいし食材の選定基準に使えないか」と採用したのだとか。

谷田部さん いろいろ伝えたいことはあるけど、押し付けがましくなくて、シンプルで、楽しく伝わる言葉を探していたんです。みんなに提案したら、お店の運営の仕方とか商品の提案の仕方とか全部それでやっていこうとなりました。

「きっかけをつくるグローサリーストア」というコピーにもあるように、その人なりのきっかけを提案したいと言います。

谷田部さん “買い物”は、毎日しなければいけないタスクの一つという捉え方をされることが多いけれど、この食材を使って誰かのために作ってあげようかなって思ってもらったり、普段料理しない人がしてみたり、丁寧な時間を過ごすきっかけになればと思っています。

レジでの会話もその一つ。

スタッフが商品を袋に詰めるから、その間に自然と会話が生まれます。今朝も近所のおばあちゃんが来て、「ココナッツオイルを愛用しているけどあまり売っているお店がなくて、ここで見つけられてよかったわ〜」ってとても喜んでくれて。

そういう温かい言葉を毎日のようにいただいていて、求められていることとか、応援してもらっているのをすごく感じるし、それで頑張ろうって思えます。

s_0309_IMG_4390_HH
PHOTOGRAPHY BY HIDEAKI HAMADA

実際にお店を訪れてみると、レジ以外でも店内では店員さんとお客さんが会話する場面がとても多く見られました。他にもお客さん同士も話しやすい空間であったり、植物や陳列などで見た目も飾っていたり、居心地を良くするための工夫があちこちに施されていて、スタッフみんなのこだわりが伝わります。

「やっとお店がオープンしたところだけど、これからが始まりです。ここから世界にインパクトを与えていけるように頑張ります」と白さん。

そんな夢がたっぷり詰まったFOOD&COMPANYにぜひ、立ち寄ってみませんか?きっとあなたにとっての新しい“きっかけ“が見つかると思います。

FOOD&COMPANY

〒152-0004 東京都目黒区鷹番3-14-15
OPEN 10:00 – 21:00(不定休)
http://www.foodandcompany.co.jp