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レジ袋はもういらない!捨てられる運命だったインドの民族衣装を、おしゃれバッグに蘇らせる「Sari Sak」

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©2014 Sari Sak

買い物する時の必需品として、日本ではすっかり定着した感のあるマイバッグ。みなさんは、普段どんなマイバッグを使っていますか?コンパクトに折りたためるタイプのものをカバンに忍ばせておいて、必要な時にサッと取り出して使っているという方も多いですよね。

そんな携帯用として、アメリカでじわじわと人気が広がっているのが「Sari Sak」のバッグです。

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©2014 Sari Sak

パッと目をひく、鮮やかでカラフルな彩りが印象的なこのバッグ。実は、インドの民族衣装サリーをリパーパス(repurpose)して生み出されたものなのです。リパーパスとは、本来とは別の目的で利用するために、物にいくらかの変化を加えること。素材の持ち味を生かしながら再度使用するため、環境にも優しい方法として注目を集めています。

他にも、ヨガマットがすっぽり入るバッグ。
 
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©2014 Sari Sak

ピクニックや野外イベントに持って行きたい、キルトマット。
 
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©2014 Sari Sak

ブレスレットやネックレス、ヘッドバンドとしても使えるアクセサリーまであります。
 
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©2014 Sari Sak

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©2014 Sari Sak

もちろん、これらの商品もサリーを100%リパーパスして作られたものばかりです。エコで、なおかつ魅力的な「Sari Sak」ブランドは、どのような経緯で生み出されたのでしょうか?

不要になったサリーに、新しい命を

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スティーブさん(左)と、婚約者であり共同創立者のヴァネッサさん。 ©2014 Sari Sak

「Sari Sak」の設立者Steve Howsonさん(スティーブ・ホーソン、以下スティーブさん)は、アメリカのミシガン州デトロイト出身で、NY在住。インドのマイソールに位置する「Jag Therapy」でボランティアをしながら治療法を勉強するなど、一年のほぼ半分をインドで過ごす生活を5年以上続けています。

「Jag Therapy」は、マイソール出身のJag医師が始めた非営利のクリニック。すぐに薬を処方するのではなく、病気を予防するための食習慣の改善や運動を促すことで、長期的な視点での健康維持に重点を置いています。エッセンシャルオイルやハーブを使ったマッサージや、ヨガなどを取り入れた画期的なセラピーを施しているのが特色です。
 
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Jag Therapy で親子を診察するJag医師。 ©2014 Sari Sak

ボランティア活動などを通じて、現地の村で数多くの友人ができる中、スティーブさんは古くて着られなくなった民族衣装、サリーの処理に困っているという女性に出会います。元々、環境破壊への危惧や、資源の再使用に強い関心を持っていたスティーブさんは、あるアイデアを考えつきます。

本来ならゴミ集積場に埋もれていたか、焼かれてしまう運命にあった古着のサリーを、レジ袋の代用品となるバッグに蘇らせるプロジェクトです。優れたインドの文化や伝統の素晴らしさを伝えながら、レジ袋の利用を減らし、環境保護の重要性を訴えていく。不要になったサリーを買い取り、製作を依頼することで、職が見つかりにくい村の人々に仕事も提供できると思いました。

2012年、スティーブさんは婚約者のVanessa Jonesさん(ヴァネッサ・ジョーンズ、以下ヴァネッサさん)さんと共に再びインドに渡り、「Sari Sak」プロジェクトを本格的に開始します。
 
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©2014 Sari Sak

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©2014 Sari Sak

結婚式でも採用。共感がつながるバッグ

インドの作り手たちによって製作された商品を、多くの人に知ってもらいたい。スティーブさんとヴァネッサさんは、アメリカのカリフォルニア州とテキサス州を旅しながら、関心を持ってくれそうな店舗を探しては飛び込みで営業しました。

また、ヨガや音楽、アートなどのイベント会場での販売や、スポンサー協力をするなど、積極的に人脈を開拓。アメリカで「Sari Sak」のミッションに共感するファンを増やしていきます。

地道な活動が功を奏し、「Sari Sak」商品を取り扱うブティックやヨガスタジオなどの数は、現在アメリカ16州で約80軒にも上ります。特にバッグは買い物の時に使うだけでなく、ある結婚式で引出物を入れるバッグとして採用されるなど、環境に意識の高い人たちの間で話題に。認知度の高まりにつれて、オンラインショップでの売上も波に乗ってきています。
 
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©2014 Sari Sak

販売収益の一部は、「Jag Therapy」への寄付に。その総額は約2年間でおよそ3,000ドル(約30万9,030円)に上り、村で多くの人たちが無料で診療を受けることができています。更に、障がい者施設や刑務所などでヨガを導入したサポートを行う団体に、ヨガバッグを送って支援するなど慈善活動にも意欲的。社会貢献を常に忘れない姿勢も、「Sari Sak」の評価を高めている理由のひとつです。

出会いの連続から生まれた「Sari Sak」

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©2014 Sari Sak

現在、インドで「Sari Sak」の商品製作に携わっているのは12人。その一人ひとりは、スティーブさんが個人的にも良く知っている人たちばかりです。

ある人に出会い、その人がまた別の人を紹介してくれて・・・ということが続いて、素晴らしい作り手の方々に出会うことができました。私は、人生には偶然の出会いはない、と感じているんです。自分が経験してきた出会いの数々に、心から感謝しています。

作り手さんたちは、自分たちの作った商品の売上が、クリニックをサポートしていることをに誇りを持っています。特に女性の作り手さんたちのやりがいは、妻や母としての役目に留まらず、収入源を持つことで家計の支えになっていることです。働く機会を得て喜ぶ人たちの顔を見ると、とてもうれしい気持ちになりますね。

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©2014 Sari Sak

作り手の方々が住んでいる村は、人里離れた電気も頼りにならない地域。そのため、スティーブさんたちがアメリカにいる間は、コミュニケーションを取るのが難しくなると言います。それでも「Sari Sak」が着実に歩を進めていけるのは、スティーブさんとヴァネッサさんが現地で過ごしてきた時間や、コミュニティへの還元を通じて、信頼ある関係性がしっかり築き上げられている証なのでしょう。

商品に込められたメッセージ

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©2014 Sari Sak

アメリカで1人が出す無駄な消費量は、インドの11人分に相当するほど多いとか。しかし、インドもまた西欧文化の影響を受け、資源の浪費が急速に増加し問題になっています。

レジ袋は排水管を詰まらせて洪水を引き起こしたり、川を汚染して動植物などの生命体を破壊する原因にもなります。レジ袋自体の寿命は短いのに、分解されるには何年もの歳月が必要となるのです。「Sari Sak」を通じて、レジ袋は使わない、と言う人たちを増やしていきたいと思っています。

「Sari Sak」は、まだまだ未完成。人生と同じように大きな冒険の最中で、常にやるべきことや学びの発見があるんです。これからも、村の人たちや環境にもっと貢献できる方法を追求しながら、リユースやリパーパスのメッセージを更に広めていきたいですね。

インドで捨てられてるはずだった美しいサリーを、なんとか活用したい。その想いが、村の人々に雇用を生み出し、無料で治療を受けられる人が増え、レジ袋の削減にもつながる。「Sari Sak」は、好循環のプロセスそのものとも言えます。同時に、無駄使いで溢れた現代に警鐘を鳴らし、生活スタイルを改めるきっかけを与えてくれてもいるのです。

みなさんも、普段何気なく捨ててしまっている物を、一度見直してみてはいかがですか?思いがけない使い道が見つかるかもしれませんよ。

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©2014 Sari Sak
 
※ちなみに「Sari Sak」の商品は日本からもオンラインで購入可能ですが、アメリカからの送料は別途必要ですので、直接お問い合わせの上ご確認ください。
今のところ販売店はアメリカ国内のみですが、将来的には海外展開も視野に入れているとか。ワインバッグや、厚めのヨガマットにも対応できるバッグなど新商品も開発中とのことで、今後の展開も目が離せません。
「Sari Sak」商品をぜひ取り扱いたい、というショップやヨガスタジオなどの方は、ホームページからスティーブさんに連絡してみてはいかがでしょうか。