こんにちは、映画の配給などをしている「ユナイテッドピープル」の関根健次です。
東日本大震災に、原発なき社会を実現していくために、再生可能エネルギーへの転換が可能だと訴える『第4の革命』や『パワー・トゥ・ザ・ピープル ~グローバルからローカルへ~』を日本公開し、全国で上映運動を行っています。
震災からこの3年弱で、数えきれないぐらい日本全国で自分たちの手で電気を作る市民電力の動きが活発化していますが、ユナイテッドピープルが拠点を置いている福岡でも、そんな動きが盛んです。
今回は玄海原発から30キロ圏内の福岡県糸島市で開催したオフグリッドソーラーシステム組み立てワークショップについてレポートします。
太陽光エネルギーを暮らしに取り入れたい
普段は有機農業を近所で営んでいます。以前から太陽光パネルを作りたいと思っていたのですが、いい機会なので参加しました。
震災後に東京から移住してきて、これまでの暮らしを根本から見なおしています。エネルギーも関心があったので参加しました。
12月21日、朝はあられが降る悪天候のなか、「太陽光エネルギーを取り入れて、少しでも生活を変えたい」という想いで20名ほどがオフグリッドソーラー(太陽光パネル)組み立てワークショップに参加しました。
場所は、福岡県糸島市にボランティアの手で建設中のオーガニックカフェ「カフェワルツ糸島」。green drinks糸島の第1回目のイベントとして、カフェワルツ、そしてRISE UP KEYAとの共催での開催でした。
講師をつとめるのは、小崎悠太さん(通称テンダー)
講師は鹿児島在住で、ヨホホ研究所主宰で震災後に鹿児島電力を始めた現代のヒッピー、小崎悠太さん(通称テンダー)。日中はテンダーのワークショップをカフェワルツで行い、夜はRISE UP KEYAでテンダーを囲んで交流しました。
この記事を書いている筆者、関根健次(ユナイテッドピープル代表)とテンダーとは、ユナイテッドピープルの本社が横浜にあったとき以来の再会。テンダーは当時もどっぷりとヒッピーワールドに漬かっている変わり者でした。
ネイティブ・アメリカンのところに修行に行ったり、法螺貝の吹き方を会得し、ホラ吹き名人としても名を馳せていました。弊社イベントで、ホラを吹いてもらったり(本物の、あれです、音がなる)、お正月には餅つきダンスをしてもらったものです。そのテンダーがより一層、地に足の着いた人間へとレベルアップしていることを知り、講師を依頼したのです。
テンダーの暮らしぶりはヨホ研2.0ウェブサイトをぜひご覧頂きたいですが、年間の家賃1万円(50年住んでも50万円!)。水道、電気、ガスを契約せずに、あまりお金を使わずに豊かに暮らす生活の達人!ということで、参加者にはオフグリッドソーラーシステムを組み立てて持ち帰ってもらうことは当然のこと、テンダーの豊かな暮らしぶりもぜひ知ってほしいという気持ちで開催しました。
いよいよワークショップがスタート!
暮らしのなかで100Vが必要な生活家電は洗濯機と冷蔵庫ぐらい。照明に使うLEDは12V以下で使える。パソコンは16〜20V。携帯の充電は5V。言ってみれば原発で50万Vの電力を作りそこから5V取り出す。
各家庭に届けるには、送電ロスなどがある。それよりもソーラーパネルを屋根に載せて、送電ロスもなく、18V作って5V使う方が賢くない?というのが鹿児島電力テンダーモデルです。
今回の「鹿児島電力、テンダーオフグリッドソーラーモデル」セット内容はこちら。
テンダーさんがその時々で仕入れるため、時価となる
100Wモデルを基本に、PC、6WのLED照明ひとつ、携帯充電をまかなうオフグリッドシステム。電気は直流。直流12Vのまま使います。
メリットとしては
・交流にしないので、ロスがきわめて少ない
・交流にしないので、電磁波が出ない
・直流12Vでのシステムなので、電気工事技師の資格がいらない
・小さなシステムかつ、「何をやるのも電気思考」ではないため、従来のソーラーシステムへのシフトより、非常に安価
デメリットとしては
・売電できない
・交流大電力の機器を使いづらい
・12V用のアダプタを自作・用意する必要がある
組み立て中は、真剣そのもの。お子さんも興味津々
見学の人も、作業を手伝います
参加費は100Wモデル 43,000円(金額は時価により変動します)。パッケージ内容は、ソーラーパネル100W、チャージコントローラー10A、ディープサイクルバッテリー115Ah、複数連シガーソケット付きです。
慣れない作業の連続でしたが、テンダーの指導の元、ハンダ付けなどの作業を無事参加者全員がこなし、オフグリッドソーラーシステムを完成させました。
手を動かしているうちに、電気というエネルギーがどんどん自分ごとになっていく
電気が点灯!完成です!
小規模であれ、エネルギーの生産者になるということ
事前のレクチャーで、テンダーが「いつも使っている電気機器のワット数を気にかけてほしい」と強調していたことが印象的でした。そう言われてみれば、使っている電気機器のそれぞれの消費電力についてさほど意識したことがなく、なんとなくで済ませていた自分に気が付きました。
実際、これまで電気との付き合い方と言えば、使いたいだけ使い、後で請求書が来て、ようやくどれぐらい電力を使ったのかが分かるというもの。これではすべて自分の感覚任せで、湯水のように電気を使ってしまっていたと言えます。
もし、電気を使う度に、個々の電気機器の消費電力に意識を向けたなら、きっともっとスマートな電力消費の仕方に変わるのでしょうね。
電気をつくるだけでなく、どう使っていくか、活かし方の紹介も
テンダーのオフグリッドソーラーワークショップに参加し、取材してみてあらためて感じたことは、小規模であれエネルギーの生産者になることは、同時に消費の在り方にも目を向ける良いきっかけにもなるということでした。それは、農産物の生産者となった時に、無駄に食べ物を残したり、棄てたりはしないことと同じ。
これまでの際限ないエネルギー消費スタイルから、自分の作った一定のエネルギー生産枠内での「足るを知る」消費へのライフスタイルチェンジ。一定の制限を自分なりに作り、その枠の中で小さく美しい生活をする。このようなことが社会全体に広がることができるのなら、私たちの未来は持続可能なものになるのではないでしょうか。
今後、カフェワルツでは今回完成させたオフグリッドソーラーシステムを使って、映画『パワー・トゥ・ザ・ピープル ~グローバルからローカルへ~』のオフグリッドソーラー上映などを行い、そのようなライフタイルの提案をしていきます。
(Text:関根健次)