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組織の中でも実現できる「働き方」のヒントを学ぶ、「THE WORK PARK 東京ラボ」 [イベントレポート] –

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みなさんは、自分がつくりたい「働き方」をきかれたら、どのような「働き方」を思い浮かべますか? また、その「働き方」のために、どのような仕組みがあるといいでしょうか?

そんなことを考え合うイベントが、11月23日の勤労感謝の日にグリーンズ主催で開かれました。テーマは「『働き方』のつくり方」。当日は、3名のゲストのトークを聞きながら、参加者みなで議論を繰り広げました。

組織の中でも実現できる「働き方」のヒントを

モデレーターは、greenz.jp副編集長の小野裕之さん。小野さんからは、最近の「働き方」ブームについて、「奇抜なことやスーパースターのような働き方をしている人が本やテレビでとりあげられがち」という話が。

実際には、僕も含めて何らかの組織やチームの中で働く人は「会社の文化や制約」のような規制があって、話題になっている「働き方」の話が、どこか縁遠い感じもするんじゃないかと思います。

ですから、今日は、あえて企業やチームに属して働き方を工夫してきた方々をお招きしました。話を聞いて、働き方を変える確かな一歩につなげていけたらと思います。

イベントは「聞く」と「話す」の2部構成。参加者は、ゲストのトークを聴いた後に小人数に分かれて話し合いました。また、このイベントは「レイブル応援プロジェクト大阪一丸」主催の「THE WORK PARKラボ」の一環で、学生から小・中・大規模の企業で働く社会人までの幅広い参加者から出された意見は、大阪府に届けられるそうです。

「働き方」の理想をみなで共有 〜大槻幸夫さん〜

最初のゲストは、サイボウズ株式会社に勤務する大槻幸夫さん。
学生時代から関わったソフトウェア会社と、その後、誘われて立ち上げた危機管理情報を提供する株式会社レスキューナウで成果をあげ、「大きな会社を経験したい」とサイボウズに転職しました。

今は、広報・広告・クリエイティブの3つの部門を担当する、ソーシャルコミニュケーションのマネージャー。自社サイト「サイボウズ式」の編集長です。

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大槻幸夫さん。「理想の働き方」などの考え方を共有するコミュニケーションを。

大槻さんからは、新しい「働き方」に対してのサイボウズのとりくみが紹介されました。

普通に広告・宣伝しても売れない時代になってきたので、「サイボウズがどういう働き方を理想としてツールをつくっているのか」という考え方やビジョンを共有する形のコミュニケーションを作りたいと思っています。

サイボウズ式は、「これからの働き方ってどうあるべきなんだろうか?」と皆さんと共有させていただく場として立ち上げました。

また、世の中の優れたチームを表彰する「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」も開催。

「日本って、チームワークが優れているという国民性があるよね。そこをみんなで伸ばしていこうよ」という気持ちを伝えたいということで主催しています。

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「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2013」。一般部門最優秀賞を授業した「2020年東京オリンピック・パラリンピック招致チーム」のメンバーとして滝川クリステルさんも表彰式に出席。

離職率の高まりを機に、理念の共有や人事制度の充実

サイボウズでは2005年頃、離職率が高まったため、人事制度を見直してきました。現在では、出産や育児など人生のイベントに合わせて働き方が選べ、社長自ら利用した育児休暇は最長6年間の取得が可能。「育“自分”制度」や「ウルトラワーク」などユニークな制度も目立ちます。

そして、離職者は激減しました。

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サイボウズでは「働き方」の制度が充実。「ウルトラワーク」もそのひとつ。

大槻さんは、「そもそも社員は多様であるにもかかわらず、これまでの会社は社員を同質化させ、個性の強みを引き出せていない」と言います。そして、その解決策となる「働き方の多様性」を実現するには、「制度、ツール、オフィス環境とともに基盤となる価値観も大切」とのこと。

サイボウズでは「チームワーク」という価値観が打ち出され、共感する人が会社に残ったのではないかと思います。この理念の共有が基盤にあるので働き方を自由にしても問題ないということです。

ただ、大槻さんは、「個人には、距離感の調整がスキルとして求められている」とも指摘。制度の充実を活用するためには、個人が自らの「働き方」を選択し、表明しあっていくことの大切さも実践の中でわかってきたそうです。

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ディスカッションには、大槻さんも参加。

トーク後は、参加者からの「チームワーク」というキーワードに共感する声が。自由な働き方を会社が奨励していくための仕組みや方法などを考え合うディスカッションも盛り上がりました。

会いたい人には会って理想のビジョンを話す 〜黒田哲二さん〜

 

2人目のゲストは、リトルトーキョーの影の立役者でもある黒田さん。森ビル株式会社で2年ほど前から虎ノ門ヒルズの開発に関わっています。

社会で生きていくためには理論を構築する「建築」・その根幹となる「哲学」・物事を進める「政治」の力が大事だという父の思いから「哲二」という名に。建築の道に進んだ黒田さんからは、携わってきた洗練されたデザインの建築プロジェクトの紹介のあと、社内外で続けてきた「面白い人と会う」というスタンスが、語られました。

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黒田哲二さん。「スーツ姿に眼鏡に七三分けの、“わかりやすいサラリーマン姿”で、忙しい人にも覚えてもらう(笑)」

黒田さんは東京大学を卒業後、隈研吾建築都市設計事務所に4年勤務。ひと通りの仕事を覚えたところで、「建物(ハード)」と「人(ソフト)」をつなぐコーポラティブハウスのコンセプトに共感して株式会社都市デザインシステムに転職しました。

「面白い人がいたら、会社の名前を使っていいから会いに行け」と社長に言われ、興味をもった人に積極的会うようになったそうです。また、働きかたに共感を抱き、愛読書にしてきた西村佳哲さんの『自分の仕事をつくる』という本に出会ったのもこの頃。やはり、興味深い働きかたをしている人に会いに行きインタビューをしていくスタイルの本です。

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黒田さんの愛読書。仕事で悩んだ人にあげるなどして、今手元にあるのは4冊目!

面白いなと思った人には「この人とこういう形を作ることができれば理想的」というイメージを持って、直接連絡し、実際に会います

リトルトーキョーの構想も、その形で進みました。

グリーンズのgreen drinksに毎回行くようにして「街や社会を変えていこうという人が集まる場が、働くだけのオフィス街にあると変わる」という直感を得て話をした。そこに、グリーンズのメンバーや日本仕事百科のナカムラケンタくんも反応して、一緒にやろうと思ったくれたのかな、と。

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窓の向こうは虎ノ門ヒルズの工事中。リトルトーキョーは、再開発地区の空き家を利用した場。

会社の方向性とあわせた形のストーリーを作る

黒田さんは、「周りに流されない」という意識をもったり、情報収集の時間を毎日30分確保するなど、会社の外にアンテナを張ったりすることも意識してきました。

一方で会社の中で企画を進めるための工夫についての質問には、「丁寧な説明と、会社の方向性にあわせてストーリーを作って話すことが大事」と返答。

例えば、森ビルは、東京を世界で一番の街にしようという大きなコンセプトを持っています。

だから、リトルトーキョーの話を進めるなら「僕とグリーンズのおのっちが仲いいから」ではダメで(笑)、「東京をよくするために虎ノ門を頑張らないといけない、虎ノ門を頑張るために人を集める、人を集めるためにグリーンズと一緒に何かする、場所をつくることが重要なんだ」とか、ですね。

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小野さんのインタビューで、話がいっそう広がり、興味深く。

大きな企業のなかにいるからこその動きがあります。黒田さんは、それを「重たいギアの自転車」の感覚に似ていると表現しました。

フットワークは重くはなっているけれど、ちゃんと踏んでいけばうまく回っていく感じですね。

自分プロジェクトと企業勤めの「2足わらじ」〜今村ひろゆきさん〜

最後のゲストは、greenz.jpで「週2日は会社員、週3日は社長!『まちづくり会社ドラマチック』の今村ひろゆきさんが選んだユニークな働き方とは?」などの記事でもご紹介してきた今村さんです。「2足わらじ」になったいきさつや成功の秘訣についてのトークがありました。

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今村ひろゆきさん。「週3〜5日は社長、週2日は社員という日々」   

今村さんは、大学卒業後に富士通に入社。2年後に株式会社北山創造研究所、その後、株式会社Energy Labo(エナジーラボ)に移りました。

週3〜5日は合同会社であるまちづくり会社ドラマチックの代表社員(社長)として、そして2日間はエナジーラボの社員として働いています。

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時間とともにマイプロジェクトの割合を徐々に大きくしていくイメージ。

エナジーラボの仕事に魅力を感じながらも独立したいと考えたのは、「自分でやりたい仕事を自分で決めて実行したい性格だった」からとのこと。

小・中・高・大とリーダーの立場にいて、人の下につくと力が発揮できないタイプだって、大企業に入って気づいたんですよね。頭が止まって動き方がわからなくなってしまう(笑)。自分で仕事を作って、人におろしていくという形が自分にあっているようです。

週2日の勤務になったエナジーラボでの仕事を成り立たせる秘訣は、やるべきことはやるようにすること。お客さんからの電話やメールにはいつでも対応し、また、社長にはこまめに報告、部下への応対も細やかにするなどの配慮もしています。

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最近では、エナジーラボでは、趣味も含めた各自のプロジェクトを奨励する傾向にもなってきたそうです。また、ドラマチックとのコラボ企画も出始めているとのこと。今村さんは、「今後もこうしてなんらかの仕事上の関係を続けることが、お互いのためになる」と考えています。

企業勤めしている人たちには、小さい企業とのつなぎ役になるのも楽しいと伝えたいそうです。

コラボすれば、企業は先進性を得られるし、つなぎ役の人は刺激やネットワーク、小さな企業は仕事を得られて三者にとって良いですよね。

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週7日の仕事をすることもある今村さんに、小野さんが「いつ休んでいるんですか?なんでそんなに働けるんですか(笑)」と尋ねると、休まないといけませんね、と笑いながら、「まだ、まちづくりという仕事が発展途上だから形にしないと」と返答。

確かに、ドラマチックは、都市の隙間を間借りする「Ma Ga Ri」プロジェクトや、ビル一棟を共同アトリエにする「インストールの途中だビル」、そして、2014年2月には創る人を後押しするシェアアトリエ「reboot」のオープンを控えるなど、手がけるプロジェクトひとつひとつがユニークです。

会場からは、これを手がける今村さんの豊富なアイデアの源泉を問う質問も出ました。

3.4年前にモヤモヤしたことがあって調べまくって書き出したアイデアが今の糧になっているんです。また、今後もインプットする時期がくると思います。そして、3.4年後の仕事でアウトプットするんじゃないでしょうか。

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2012年4月に誕生した「インストールの途中だビル」

他のゲストもそうですが、軽やかにキャリアの成功を重ねているように見えても、陰では地道に様々な課題を解決して前進されているのだとも思わされました。


「『働き方』の作り方」をディスカッション

この日の、ディスカッションで出された課題は2つです。

「あなたが“つくりたい”働き方は?」
「その働き方を実現するために必要な仕組みは?」

参加者は、各回それぞれ真剣にゲストの話を聞き入り、想いのこもった意見を述べあっていました。

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「働き方」については、「副業OK」「地元で働く」「好きな人と働く」「面白い仕事をする」といった自分の想いを大切にする視点のキーワードが。

また、実現のためには「多様性を認める」「ゆるいつながりで働く」「業界内ロールモデルをつくる」「ジェネレーションギャッップをなくす」「話をきいて大丈夫と言ってくれる高齢者とのコミュニティをつくる」などの、意識を変える視点からの言葉が出ました。

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ゲストのお話はどれも示唆に富み、すべておつたえできないのが残念です。また、参加者の出したキーワードひとつひとつに、いまの日本の「働き方」のリアルな現状と、ここからつくられる「働き方」の未来が表れているようでした。