あなたは日常的にふらっと立ち寄れる広場がありますか?街にある広場は人々の交差点のようなもの。そこでは他人でも友達でもない距離の人々に出会い、一人ひとり自由にのびやかに振る舞うことができますよね。
しかしロンドン北部の郊外にある小さな街、Cricklewoodは歴史的な趣のある街ですが、市民ホールや公共図書館、さらにはベンチにいたるまで、全くといっていいほど街の人々が集うことができるパブリックスペースがないのが悩みでした。
そこで、都市デザイン会社のSpacemakersが街の助成金をうけてはじめたのが「Town Square on Wheels」というプロジェクトです。
彼らが用意したのは時計台のようなデザインがかわいい、小さな小屋。なんと、この小屋は自転車と合体していて、街中を移動します。
小屋のなかにはベンチやテーブル、パラソルなどが用意されていて、それらを広げればどこでも即席で人々が集まる空間をつくることができるのです。
この小屋が姿を表すのは、ホームセンターの横にある誰も踏み入れない芝生や、ビンゴ・ホールの脇の普段は人通りの少ない道路、屋上駐車場など。新しいパブリックスペースを一からつくるのではなく、これまで使われていなかったスペースをパブリックスペースとして生まれ変わらせるのがこのプロジェクトの面白いところです。
9月の間中、Town Squareは街のさまざまな場所をまわります。さまざまな場所でワ-クショップやショーなどのイベントを開催し、広場がなかった街で、たくさんの人が集まれる仕掛けをつくっていったのです。
例えば、デザイン会社のStudio Hatoは、このTown Squareのための立て札を、町の人々と一緒につくるDIYワークショップを行いました。立て札作りを通して、自分たちがこのスペースのルールの作り手であることに気がつき、実際にこのスペースとの関わり方を考える機会を生み出すことが狙いです。
プロジェクトの最終的な目標は「街にどんなスペースがほしい?」といった会話が人々の間に繰り広げられること。プロジェクト自体は9月でいったん終了するのですが、これをきっかけに、人々のパブリックスペースへの意識や関心が長く息づくといいですね。
greenz.jpでも、これまで移動式レストランや移動式図書館、移動式農園といった事例を紹介してきましたが、移動する広場というのは新しい発想ですね。
ないものを一から生み出すのではなく、今あるものを利用して足りない部分を他から持ってくるという考え方はまだまだ応用がききそうです。みなさんも、街を歩きながら、ここに何があればさらに居心地がよくなるか想像してみませんか?
ちょっとした意識を持つことで、普段見落としていた、さりげないスペースも広がりをもって見えるかもしれません。
(Text:北條みくる)
[via inhabitat]