Chinook Bookポートランド2014年度版。冊子かアプリから選べます。 ©2013 Celilo Group Media. All rights reserved.
みなさんはクーポンマガジンを使用したことはありますか?品物を安く購入できたり、新しいお店を見つけたりと便利なので、毎回必ず手に取ってチェックする、という方もいるかもしれません。
アメリカではこのクーポンビジネスが盛んですが、最近とくに注目を集めているのが、環境に優しい商品だけが掲載されている「Chinook Book」です。2000年にポートランドで発売開始され、現在ではシアトル、ミネアポリス、サンフランシスコ、デンバーを含む5都市で、それぞれ年1回発行されています。
昨年度に換金されたクーポンは、5都市版を合計すると約91万8000枚、経済効果は約1970万ドル(約19億5030万円)にも上ります。消費者と店舗をつなぐ重要な役割を担っているこのクーポンブック。一体どんな内容なのでしょうか。
2012年度報告書より。Chinook Bookがもたらした経済効果が、イラストでわかりやすく表示されています。 ©2013 Celilo Group Media. All rights reserved.
クーポンブックで地元のお店が元気に
「Chinook Book」に掲載される基準は、サステナブルな商品かどうかです。パッケージにUSDA(アメリカ農務省)オーガニック認証や、グリーンシールなどの第三者機関によるマークは表示されているか。ファッションや雑貨店なら、リサイクル素材やフェアトレード商品の取扱い、クリーニング店は環境を汚染しない洗剤使用の有無…。業種毎に項目が細かく設定され、基準をクリアした商品やサービスだけが集められているのが特徴です。
ちなみにポートランド2013年度版は、500種類以上のクーポンが詰まったボリューム満点の一冊。ページをめくると、レストランでの飲食代20%OFF、自転車店の修理代半額をはじめ、カフェ、書店、ガーデニング、ベビー用品、ヨガ教室、アウトドアなど、あらゆるジャンルが網羅。そのほとんどがローカルビジネスであることから、地元経済を活性化する一翼も担っているのがわかります。
2012年度報告書より、業種別の経済効果。 ©2013 Celilo Group Media. All rights reserved.
商業と環境を結ぶ「Chinook」
出版元の「Celilo Group Media」代表取締役、Nik Blosserさんに、創刊の経緯について伺いました。
環境に配慮した商品を取り扱うローカルビジネスは、当時まだあまり知られていませんでした。そうした中小企業の認知度を高めるために、マーケティング基盤を作ることを目的として始めました。
「Chinook」には、2つの名前の由来があります。一つは、1800年後期にアメリカ先住民と開拓者同士がコミュニケーションに使用していた貿易用語、チヌーク語(Chinook)。二つ目が、アメリカ北西部に生息するチヌック鮭(Chinook Salmon=キングサーモン)です。この商業と環境の両方が連想できる組み合わせが、とても気に入っています。ChinookとBookで、韻を踏んでもいますしね。
「Chinook Book」で素晴らしい商品を発見できたよ、と言ってもらえる時が非常にうれしい、というNikさん。消費者と地元企業、また環境にも貢献できていることを誇りに思っている、とも教えてくれました。
また2010年からは、スマートフォンからダウンロードできるアプリ版が登場。クーポンを持ち歩く必要がなく、カテゴリーや店名、位置情報からの検索が可能です。紙資源の使用量も大幅に削減でき、さらなる環境負荷削減が期待されています。
http://vimeo.com/60190885
操作は簡単。クーポンをクリックして、動画を店舗側に表示するだけです。 ©2013 Celilo Group Media. All rights reserved.
好循環を生むサイクル
コミュニティへは、委託販売というユニークな方法で貢献しています。学校やNPOが資金集め活動で「Chinook Book」の冊子やアプリを販売すると、売上の最大半額を受け取ることができるのです。この方法で、2012年度は544のファンドレイジングイベントで34万ドル(約3366万円)が、地域の学校やNPOに寄付されました。
地元のお店へ、コミュニティへ、そして環境へ。1枚のクーポンから良いサイクルが循環していく様子は、鮭が生まれた川へと戻る母川回帰を彷彿とさせます。クーポンを使ってお得に買い物をする。そのシンプルな行動を通して、消費者が社会に好影響を与えられると実感できるのも、「Chinook Book」の人気の理由かもしれません。
みなさんも、地元のお店に足を運んでみませんか?
(Text:デラベキア牧枝)