コワーキングスペースをオフグリッドにするという夢に向けて、まずは10席分のフリースペースをソーラー電力で賄うというプロジェクトをファンドレイジングでスタートさせた「みどり荘」。
前回の記事でお伝えした通り、プロジェクトの実現に向けて現在出資者を募集中ですが、ファンドレイジングで得た資金で実現しようとしていることは具体的に何なのか、ファンドレイジングに向けてソーラーやエネルギーについて学ぶ中で見えてきたものとは何か、そして今回のプロジェクトの先にある「ソーラーデスクのパッケージ化」とはどのようなものなのでしょうか。
今回もみどり荘を運営する小柴美保さんと、みどり荘メンバーで企画協力として関わるNKDFの清田直博さんに聞きました。
まずはアンペアやワットのことを学ぶ勉強会から
小柴美保さんと清田直博さん
小柴 そもそも、東京電力の請求書とか見てもアンペアとかワットとかよくわからないですよね。まずはそれをみんなで勉強しようというのもあります。ファンドで集まったお金で実際にソーラーシステムを組むワークショップを出資者の方たちとやろうと思っているんですけど、それだけじゃなくて、電気の仕組みとか、もっと他のオルタナティブなエネルギーについてとか、色々と勉強会もやりたいです。
清田 勉強会にはぜひ来てほしいですね。今は簡単に色々な情報にアクセスできるけど、血となり肉とするにはやっぱり体を使わないと身につかないと思うんですよ。自戒を込めてですけど、FacebookとかTwitterで東電の電気使いながら「節電しようぜ」っていってても説得力がないし、それなら一緒にアクションを起こそうぜと思うわけです。だから実際にその場所に足を運んで、直接話を聞いて、それがアクションのきっかけになったらいいなと。
小柴 勉強会以外には、完成披露パーティーで再生可能エネルギーをテーマにした映画『パワートゥーザピープル』を上映する予定です。
働き方の可能性を広げていく
小柴 これをやったからといって冬の電力不足(冬にブレイカーが落ちてしまうというみどり荘が抱える問題。前回の記事を参照ください)が解消するとは限らないわけです。コーヒーメーカーが意外と電気を使うとかそういう問題を何とかしないといけないですね。
清田 冬は外が寒いんだから冷蔵庫止めちゃって外にクーラーボックス置くとか、プロパンガスにしてガスでお湯を沸かすとか。プロパンガスはオフグリッドなのでいいかもしれないですね。震災の時にも被災した人たちがプロパンガスのおかげで暖がとれたりしたということもあるし、災害時のバックアップにもなるし、用途によってエネルギーを使い分けるというのは重要なんじゃないでしょうか。
小柴 そして大きなビジョンとして、今まで以上に自由に働ける環境を作っていく、ということを持っています。みどり荘を実験場にして新しいエネルギーの可能性、働き方の可能性が開けてきたらいいなあと。
清田 そう、マッド・サイエンティストに来てほしいんですよ。ちょっと突飛な発想が実は素晴らしい発明だったとしても、アイデアだけで分かってもらうのは難しいし、実現するかどうかわからないんじゃ説得力を持てないですよね。だったら実際に作ってみせるのが一番早い。今回のプロジェクトもオフィスをソーラーにするっていうのを実際にやってみたいんです。
電気使用量のモニター(モックバージョン)と東京電力の請求書を見比べる
ソーラーオフィスのパッケージ化
清田 今回のプロジェクトは働いている人がちょうど10人くらいの小さな事務所には参考になるんじゃないかと思うんです。だから、ある意味実験としていろいろデータを取って、ゆくゆくはスモールオフィスやシェアオフィス向けに、ノウハウをパッケージ化できたらとも思っています。
小柴 みんなが太陽光で働けたら素敵なことなので、今回の「ソーラーデスク」をパッケージ化して、ノウハウを提供していく。最初はみどり荘がプラットフォームになってオフィスのソーラー化を目指している人たちとつながって、ブラッシュアップしていって、最終的にはそれ自体がみどり荘を離れてひとり歩きしていくくらいになってほしいです。
そのためにはやっぱりまず、ここで実際にやってみて、それが今どうなっているのかというレポートを継続的に出して、協力者を見つけていくことも大事なことだと思ってます。
清田 こういうことってなかなか一人じゃできないじゃないですか。だからまずはみどり荘でやってみるので、一緒にやりましょうっていうスタンスで。それでそのやってみた結果をみんなで共有して、実際に何ができるのかを考えていきたいですね。
藤野電力さんも色々なところでワークショップをやってノウハウを提供しているわけですけど、藤野と都心では環境が違ってくるからノウハウも変わってくると思うんです。だからその場所にあった具体的なノウハウの一つの形をここで作っていこうと思っています。
小柴 みどり荘とは別に、仙台の荒浜で「ハート・クエイク」というプロジェクトをやっているんですが、それもうまくオフグリッドしていけたらいいなとも話しています。
清田 今、仙台に拠点を作ってるんですけど、そこは被災地でもあるし、また環境が全然変わってくると思うので、そこで何ができるのかをまた考えて行きたい。それでまたひとつの形ができれば、応用の可能性もどんどん広がっていくんじゃないでしょうか。
小柴 今回のプロジェクトはまず「自分たちのため」にやることですが、それによって実現しようとしているのは、同じようなことをやりたい人たちを集めて、みんなでできることやっていこうよということで、そのためにまず私たちがやるから力を貸してください、ということなんです。原発云々の話しとは別ではありますが、オルタナティブを考え実際に動くということも必要だと思っています。
そして、もっと自由に働くことのできる環境を作っていく、これが私たちの大きなビジョンでもあります。
みどり荘が描く夢のオフィス(イラスト:Shinpei Onishi)
今回のプロジェクトは「自分たちのため」ではあるけれど、それを同時に実験と位置づけ、その結果を共有し、より多くの人達がオルタナティブなエネルギーを手にできる可能性を探っていくという目標を掲げるみどり荘。このプロジェクトに出資するということはそんなオルタナティブな社会を目指すコミュニティに参加することなんだという気がしました。
情報がものすごいスピードで飛び交う現代社会ですが、私たちの生活の変化のスピードはそれと比べると非常ゆっくりとしています。それでも着実に「実行」を重ねていくことで自分たちが望む社会を目指していく、そんな思いが2人からは感じられました。
そして、「ソーラーデスク」をパッケージ化するという将来の計画は、オフィスにとどまらずさまざまなエネルギー源をソーラーへと転換していく可能性にもつながっていくのではないかとも思いました。
実際に「オフィスをオフグリッドしたいけど無理かなー」と思っている方は、みどり荘が代わりにその実験をしてくれるということなので、ちょっと出資してみて、その結果を参考にしてみてはいかがでしょうか。そしてエネルギーについて「こんなこと考えてるんだけど実践の場がない!」というマッド(ではなくてももちろんいいですが)サイエンティストの方がいましたらぜひみどり荘までご連絡ください。