僕たちが毎日当たり前のように使う電気も、世界には使えない人々がたくさんいます。アフリカなどの途上国では、15億もの人々が電気なしの生活を送っているのです。
そのような地域では、人々は明かりを得るために灯油を燃やしていますが、これは体に環境にも経済的にも悪影響。これらの灯油を燃やすことで、年間2億4000トンのCO2が排出し、7億8000万人の女性や子供が1日に2箱のタバコを吸うのとと同量の煙を吸い込んでしまいます。また灯油代は、途上国に暮らす家庭の収入の10〜20%を占めると言われています(cf.Indiegogo)。
これらの問題を解決するために、イギリスのデザインファーム「Therefore」で働く2人のデザイナー Martin Riddiford(以下 マーティンさん)と Jim Reeves(以下 ジムさん)が目をつけたのは、”重力“でした。
第1回目の [green power funding] では、重力という新たなグリーンエネルギーで途上国に明かりを届けるライト「Gravity Light」を紹介します!
Gravity Light の使い方は、砂や石といった重りを袋に入れて、ただぶら下げるだけ。重力によって重りがゆっくりと下がることで、装置のなかのギアが回転し電気が発生します。これにより1回に30分間の明かりを何度でも、CO2の排出なしに点けることができるのです。
また太陽光や風力と違って、発電が天候や時間帯に左右されないのも大きなメリット。必要なときにすぐにライトをつけることが可能なのです。
人の力をバッテリーに貯めるのではなく、(重力の)ポテンシャルエネルギーとして貯めて使うことができたら…というアイデアを最初はただ漠然と持っていたんです。
と開発のきっかけを語るのは、マーティンさん。着想から4年の歳月を経て、ついにそのアイデアはGravity Lightという形で現実のものとなりました。
マーティンさん
ソーラーパネルの問題点は、その高いコスト。アフリカなどの途上国では、もっと安価な方法で明かりを灯すことが大切なんだと思いました。
マーティンさんはさらに、Gravity Lightの存在意義をそう説明します。
ライトの値段は、1つ$5(約500円)以下。本来なら灯油に使っていたお金のことを考えれば、Gravity Lightへの投資は3ヶ月あれば元をとることができるそうです。
Gravity Light
米クラウドファンディングサイト「Indiegogo」を使った資金調達の結果、$399,590(約4000万円)、実に目標金額($55,000)の7倍以上のお金が集まりました。その資金をもとに、これからライトの生産と普及を行います。
その最初のステップは、実際に途上国の人々に使ってもらうこと。そこでGravity Lightのテストに協力してくれる地域を募ったところ、アフリカ・アジア・中南米など27カ国以上の地域が参加することになりました。
立候補した地域
途上国に住む、電気を必要とするたくさんの人にこのGravity Lightを使ってもらいたい。そしてそれぞれの土地で、ライトがどう機能したかのフィードバックをもらいたいんだ。
と意気込むのはジムさん。
5月にこれらのテストに参加する地域が決まり、この夏からテスト期間が始まります。Gravity Lightが途上国の人々の生活をどう変えていくのか、これからの結果が楽しみですね!
ジムさん
当たり前すぎて、普段はあることにすら気が付かない重力。その重力を使うというアイデアは、課題を自ら見つけ、前例にとらわれずに自由な発想で解決するデザイナーという立場だったからこそ、思いつくことができたことなのかもしれません。
問題の解決策を考えるときに、僕たちはついつい遠くに目をやって新しい何かを求めてしまいがちですが、ヒントはすぐ足元に転がっていることもあるのかもしれませんね。
[Text: 宮本裕人]
(via Indiegogo, the guardian, deciwatt.org, Bloomberg.com, Gravity Light)