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日本アルプスにこだまする声!郷土愛を育む、 ウルトラスマツモトの「子どもゴール裏応援体験」

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自分の住んでいる街に、家族ぐるみで愛するスポーツチームはありますか?もしそんなチームがあれば、郷土に誇りと強い愛着を持ちつづけられるのではないでしょうか。

たとえば、長野県の松本市には「松本山雅」というプロサッカークラブがあります。近年、Jリーグに昇格し、Jリーグのなかでも屈指のサポーターを持つクラブとして注目されています。その「松本山雅」サポーターの中心的存在、「ウルトラスマツモト」の活動は、地域と連携し郷土愛を育むユニークな取り組みを継続しています。今回は、その中でも2012年におこなわれた「子どもゴール裏応援体験」を紹介します。

子どもたちは、街の未来。チームが絆を強くする。

サッカーの応援には、たいてい「コールリーダー」という役割の人がいます。試合中に何千人というサポーターの応援を仕切る人、と言えばわかりやすいかもしれません。チームによってさまざまですが、太鼓などの楽器をたたいたり、メガホンで応援のきっかけを出したりします。

コールリーダーの合図に合わせて、たくさんの人が一斉に拍手や、チャントと呼ばれる選手の歌を歌う様は圧巻で、スタジアムの熱をつくりだします。

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このコールリーダーやリズム楽器を子どもたちに体験してもらい、サッカーの魅力を身近に感じてもらい、クラブと地域に誇りと愛着を持ってもらおうという活動が「子どもゴール裏応援体験」です。

今回のこの企画は、松本山雅のホームタウンのひとつである塩尻市の塩尻青年会議所(JC)より、松本山雅の応援を通じて子どもたちが参加できるような企画を一緒に出来ないか?と言う依頼からはじまりました。

以前より、私たちウルトラスマツモトでは子どもたちを対象として「松本山雅、そして応援をもっと身近に感じてもらえる」ような企画は検討していました。

しかし子どもさんが参加される企画ということで、安全性の問題を考え躊躇していたのですが、塩尻青年会議所、そして参加される親御さんたちの理解の上に「これなら実施できそうだ」ということになり、3か月ほどの準備期間をかけて企画しました。

と事務局の上原さんは言います。

イベントが実施されたのは松本山雅のホームスタジアム「アルウィン」での対栃木戦。選手のウォーミングアップが始まる前の時間を利用して行われました。子どもたっちを1チーム10人編成の4組にわけ、1チーム9分間の応援体験を設けました。通称「ゴール裏」と呼ばれるゴールの真後ろあたり、もっとも熱いサポーターが集結する場所に「小さなコールリーダー」たちが登場しました。

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少し照れながらも男の子がメガホンで「マーツモト・ヤマガ!」と叫ぶと1000人近いサポーターが一斉に続きます。太鼓役の子どももリズムよく強く音を鳴らします。少しづつ一体感のでてくるスタンド。チームカラーの緑のユニフォームが揺れ動き、スタジアムから見える日本アルプスの山肌にこだまします。

最初は遠慮がちな子どももいましたが、自分の順番を終えた子どもたちは自分でも出来るんだという自信というか笑顔が見られました。中には「もっとやりたい」と言っている子どもたちもいました。それを見守る大人たちもニコニコと微笑ましかったですね。

「次回はウチの子も参加させたい」「すごく親しみを感じた」などの感想をいただきました。また企画をサポートしてくれたメンバーからは、段々と慣れてきて大きな声を出せるようになったり、強く楽器を叩けるようになる様子を見てサポーターを始めたころの気持ちを思い出せたなど、こちらも良い刺激をもらいました。

地域交流学習で、児童と一緒に「ダンマクづくり」

この企画の報告をウルトラスマツモトのブログで紹介したところ、松本市立山形小学校PTAから地域交流学習の一環として、「ダンマクづくり」を一緒に、というお話につながっていきました。そして昨年の10月27日、山形小学校にておよそ20人の児童と一緒にダンマクづくりが行われました!(ダンマクというのは選手の名前やチームを鼓舞する言葉を入れた幕で、試合のときにスタジアムに張り出されるものです)

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ダンマクは二つ作りました。ひとつは「松本山雅」の試合で掲出できるもの。もう一つは、山形小学校の学校行事などで使用出来る学校のスローガンを入れたダンマクを作成しました。

また、今年の2月23日にはアルウィンを管理するTOYBOXから依頼をいただき、「新加入選手ダンマク作り」と子どもを対象とした「リズム楽器体験イベント」も行いました。

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誰かをサポートでき、
自分もサポートされていることに感謝できる人間に。

「松本山雅」の試合を応援にくるサポーターには家族づれも本当に多くみられます。サポーターと地域の連携があってその光景が築かれてきました。クラブ発信のスポーツビジネスとしてではなくボランティアに近いサポーター活動の「自分たちの街のクラブを愛する」という純粋な気持ちがそれを支えているのではないでしょうか。

同じ街に暮らしていても、知り合えない世代を超えた人のつながりが生まれることで、「自分がいるこの街には仲間がいる」ことを感じながら子どもたちは成長します。たとえ、就職や進学などで街を離れることになっても、その絆がある限り簡単に郷土を忘れることはないとも感じます。

アルウィンには広い世代のファンやサポーターが集まります。おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さんから小さな子どもたちも松本山雅を応援することをとても楽しんでいます。その中でそれぞれの立場で日常の生活に戻った時に、家族や学校の友達、職場の仲間も山雅の選手たちと同じようにサポート出来る、自分が必ず誰かから選手たちと同じようにサポート(応援)されているという事に気づき感謝する。

松本山雅を応援することでそんなことを感じる人が増えたならば、きっと松本という街は今以上に素敵な街に変わっていくと思います。そんな街になってほしいと思います。

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今、アルウィンに来る子どもたちは、これから先10年、20年、それ以上に渡って松本山雅をサポートする仲間であり、街の未来を一緒につくる仲間です。この街に生まれた子どもとしてのアイデンティティを持ち成長する子どもが増えることで、彼らが大人になったときにも地元を大切にできる。地域密着型のスポーツには、そんなつながりが生まれるきっかけがあります。

あなたの街にはどんなスポーツチームとファンがいますか?地域コミュニティという視点で探してみると新しい発見がありそうですね。